Dua Lipa『Club Future Nostalgia』から感じる懐かしくも新しい”00年代感”の正体を探る

今夏リリースされたリミックスアルバムから感じる00年代的な要素を構成や収録曲から紐解いていく。
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2020.10.09 10:00

Dua Lipaが今春リリースした2ndアルバム『Future Nostalgia』は、ABBA、Bee Gees、Olivia Newton-John、INXSなど80年代ダンスポップを引用しつつも、Kylie Minogue 『Fever』、Madonna『Confessions on a Dance Floor』といった00年代のメインストリームダンスポップの雰囲気を持っていることが特徴だ。そして、今夏リリースされたリミックスアルバム『Club Future Nostalgia』もまた、オリジナル同様にクラブミュージック側から80年代から00年代のシーンの歴史を辿るような内容になっている。




『Club Future Nostalgia』に感じる00年代要素  


『Club Future Nostalgia』は、コロナ禍という非現実の産物であるステイホーム期間にファンがオンライン上で『Future Nostalgia』を楽しんだことを受け、それに励まされたDua Lipaからのファンへの恩返し的な意味で制作された作品だ。クラブシーンの人気DJ、The Blessed Madonnaとのコラボによって制作された本作には、Madonna、Missy Elliott、Gwen Stefani、BLACK PINKといった新旧のグローバル・ポップスターに加えて、日本からは星野源参加。そのほかにもMasters at Work、Larry Heard、Moodymann、Mark Ronson、Paul Woolford、Joe Goddard、Midland、Jayda G、Yaejiらベテランから若手まで錚々たるメンツがリミキサーとして参加するなど本格的なクラブ仕様になっていることが大きなウリになっている。



奇しくも今年は、メインストリームのダンスポップを見れば、Dua Lipa以外にも、Lady Gagaによるフレンチタッチなフィルターハウスを彷彿とさせる「Rain On Me」、Miley Cyrusのディスコパンク感のある「Midnight Sky」、00年代ディスコ回帰オリジネーターKylie Minogueの「Magic」など、80年代にインスパイアされた00年代初頭のダンスポップを感じる曲が続々とリリースされているが、クラブシーンでも、00年代エレクトロの傑作Mylo「Drop The Pressure」のリメイク曲が人気を博すなど、”00年代感”は、2020年の音楽シーンのトレンドに大きく関わっている。




実際に聴いてみると『Club Future Nostalgia』でも00年代感は作品における重要な要素になっているように感じるが、それはまさにDua Lipa自身が「Future Nostalgia』でテーマにしていた”新しくも懐かしい”要素だ。では、一体どの部分がそれにあたるのだろうか? アルバム構成や収録曲を振り返りながら探っていきたい。



アルバム構成と収録曲に見る00年代らしさ 


近年のポップスターには珍しくリミックスアルバムでありながらノンストップのDJミックスという形態をとった本作では、ディスコ、プリープハウス、エレクトロ、チルウェーヴ、ボルチモアブレイクスなどアルバムのコンセプトに沿う形で、これまでのクラブミュージックのトレンドを取り入れたリミックスがシームレスにつながれていく。その中では特にJayda Gによる「Cool」のリミックスでのフィルターハウス感が、先述の『Fever』や『Confessions on a Dance Floor』のような00年代のメインストリーム・ダンスポップを彷彿とさせる。またDJミックス中、リミックスとマッシュアップされるNeneh Cherry「Buffalo Stance」、Gwen Stefani「Hollaback Girl」のような大ネタ使いも、2manydjsの『Radio Soulwax』シリーズのようで00年代を感じさせてくれる要因になっている。



次に本作の構成にも筆者は、00年代感を感じている。LA Timesは、再構築されたリミックスをノンストップでミックスしていく本作の構成について、Madonnaの『The Immaculate Collection』を引き合いに出しているが、筆者はMadonna作品であれば、むしろ00年代のライブアルバム『The Confessions Tour』の方が頭に浮かぶ。なせなら『The Confessions Tour』ではエレクトロに再構築された「Like a Virgin」、「Erotica」のようなMadonnaクラシックやDonna Summer「I Feel Love」、The Trammps「Disco Inferno」のような大ネタ使いのマッシュアップがノンストップで繋がる構成は『Club Future Nostalgia』との共通項と言えるからだ。



またMadonna関連で言えば、MadonnaとMissy Elliottを客演に迎えた「Levitating (feat. Madonna and Missy Elliott) [The Blessed Madonna Remix]」が収録されていることも筆者の00年代へのノスタルジーを掻き立ててくれる。その理由は、MadonnaとMissy Elliottのコラボ曲「Into the Hollywood Groove」をイメージできるからなのだが、00年代の音楽的系譜のことを考えるとおそらくこれは制作サイドからすると織り込み済みのオマージュのはず。特に00年代をリアルタイムで通過した世代であれば、きっと筆者が言わんとすることがわかるだろう(それにしてもGAPのCMが懐かしい)。





“Jacques Lu Cont”で深まる00年代感  


加えてリミキサー陣にJacques Lu Contの名前があることもやはり00年代へのノスタルジーを誘う。Jacques Lu ContことStuart Priceはプロデューサーの1人として『Future Nostalgia』にも参加しているが、彼はJacques Lu Cont名義やそれ以外の名義でも00年代には多くのメインストリーム・ダンスポップのクラブリミックスを残している。



ちなみに今回、彼が手がけた「That Kind Of Woman」リミックスは、まさにその頃のムードをしっかりと踏襲したエレクトロハウス。安定のStuart Priceリミックス仕事に00年代を感じないわけがない。そんなわけで彼がThin White Duke名義で手がけたRöyksopp「What Else is There」のリミックスを聴いてみてほしい。



このように振り返ってみると『Club Future Nostalgia』には改めて00年代的な要素が随所に散りばめられていることがわかる。先述のとおり、今年は00年代を思わせる音楽がメインストリームのダンスポップでもクラブシーンでも注目を集めているがそのことを考えると『Club Future Nostalgia』は、まさに2020年の音楽シーンの雰囲気をパッケージした”新しくも懐かしい”作品になっていると言えるだろう。 


Written by Jun Fukunaga 


Photo: wmg.jp



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