【レビュー】メインストリームと一線を画す世界観。Dos Monosのデビューアルバムは極上のグロテスクだ

荘子it、没、TITAN MANからなるヒップホップユニット、Dos Monos。デビューアルバム『Dos City』が描き出す世界観をレビュー。
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2019.03.20 03:10

荘子it(ソウシット)、TAITAN MAN(タイタンマン)、没(ボツ)からなる3人組ヒップホップユニット Dos Monos(ドスモノス)が、アルバム『Dos City』をリリースした。




映画『Sin City』を彷彿とさせるグロテスクなモノクロ世界、『Dos City』


音楽メディアPitchforkの「Best New Music」でも紹介されたJPEGMAFIA(ジェイペグマフィア)を擁するLAのレーベル、Deathbomb Arc(デスボム・アーク)。日本人として初めて、このDeathbomb Arcとリリース契約を結び話題となった3人組ヒップホップ・ユニットDos Monosが、日米のレーベルからアルバム『Dos City』を同時リリースした。日本からは気鋭のアーティストを数多く輩出するレーベル、bpm tokyoがリリースを担う。


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2018年にMVが公開され、ノイジーで退廃的なDos Monosの世界観を表現した「in 20XX」や、2018年12月7日にファーストシングルとしてリリースされた「Clean Ya Nerves」を収録した初となるフルアルバムだ。マスタリングはIllicit Tsuboi氏が手がける。


混沌と雑音入り混じるDos Monosの世界


Dos Monosは荘子it、TITAN MAN、没の3人からなるユニット。アルバムで唯一、没がトラックを手がけたインタールード的楽曲「ドストロ」から『Dos City』は幕を開ける。すでにこの時点で不穏な空気がひしひしと伝わってくる。


無節操なストリングスに歪んだ打ちこみが強烈な「劇場D」。MVとして公開された「in 20XX」はご存じ、これぞDos Monosなリードトラックである。セロニアス・モンクの「Brilliant Corners」をサンプリングしたトラック(著作権の関係で一時、MVの公開を中断していたが現在は再アップされている)は、原曲の特徴的な旋律のピアノ、怪しく鳴り響くサックスの音はそのままに、クラシックジャズによるホラー映画のような様相を呈している。ゾンビ化したセロニアス・モンクが踊るおどろおどろしいトラックの上で、あっけらかんとラップして個性を放つ3人の存在感が圧巻。


 

映像を監督したのはBiSH、水曜日のカンパネラ、chelmicoらのMVを手がける映像作家、渡邉直(ワタナベナオ)。「in 20XX」はテレビ東京系「流派-R」の3月期エンディングレコメンドにも選出された。

1stシングルとしてリリースされ、3人のキャラが立ちまくったラップが鼓膜にめり込んでくる「Clean Ya Nerves」は、沈み込むベースラインが振りきっていて凶悪そのもの。再生して数曲、わずかな時間に圧縮された音と言葉の濁流に巻き込まれ、Dos Monosの世界に飲み込まれていく。


 

こちらのMVの監督は『パビリオン山椒魚』、『南瓜とマヨネーズ』などの作品で知られる映画監督、冨永昌敬(トミナガマサノリ)。

メインストリームと一線を画す唯一無二の個性


「ドス大名」ではオリエンタルな調子の囃子が「AKIRA」や「攻殻機動隊」的サイバーパンクSFを彷彿とさせる。押韻を踏み声を揃えるオーセンティックなラップを展開し、オーソドックスなラップの手法もDos Monosの手にかかれば、キメラのような異形に聴こえてしまうのが恐ろしい。


「バッカス」「マフィン」では、Dos Monosの得意とするフリージャズをギトギトに調理し、特徴である“捻じれ”や“ズレ”を強調した禍々しいトラックを味わうことができる。レトロゲームの音をねじ曲げて膨張させ、現代的にアップデートしたスキット的なトラック「ドスゲーム」と、続く「EPH」がアルバムのグロテスクな世界観をより一層拡大させていく。


しかしそこから一転して、「アガルタ」はフルートの音色が印象的なチルい1曲。個人的にはこの曲がいちばん好き。


ここまで「怒り」とか「興奮」、いわゆる「躁」の感情が一貫して漂っていたのだが、不意に見せる哀愁と情緒が聴く者の耳を惹きつける。この辺のワビサビが実に日本的でDos Monosの人間的な魅力を匂わせる。




MVの監督は『きみの鳥はうたえる』が大絶賛されている映画監督、三宅唱(ミヤケショウ)。シネフィルからクラブカルチャーまでシームレスに繋ぐセンスが評価されており、活動開始時からDos Monosに注目していたことからのタッグとなった。


かと思えば再び獣が眼を覚ましたかのように、カン高いサックスの音色、ブーンバップなジャズビートが立ち昇る「スキゾインディアン」で暴れ回る。まったく忙しないアルバムだ。乱暴な軌道を描きながら猛スピードで駆け巡る音のジェットコースターとでもいうべきか。半ば強制的にその音にひきずりこまれ、瞬間的なフレーズに恍惚する。いわゆる「ドープ」という感覚を直感することができ、そのなんともいえない高揚感が『Dos City』には詰まっているのだ。





Dos Monos序章。始まりの終わりに見える光


12曲目、「生前退位」なんて旬なワードをタイトルに持ってくるのもニクい。タイトルの荘厳さはかけらも感じない、プリミティヴで野性的な楽曲から最後の「Dos City」へと続いていく。


アルバムタイトルであり、作品を締めくくる「Dos City」はディストピア感満載の荒廃的なトラックの上で、今後の快進撃を予感させる勢いのまま終わりへと誘う。彼らのスタンスが色濃く反映されたリリックには、決意表明とも言えるワードが散りばめられている。


荘子it


この際 終わりの始まりに 馴れ合う代わりに

生まれ変わり 降臨

Chaosの中で帝王となって

西洋と東洋の境界の果てへと

知ってるもんは全部忘れて

未来を指すコンパス


DATSやyahyelにも楽曲提供し、プロデューサーとしても活動する荘子itはDos Monosとして、特異性や既存のアーティストとは一線を画すスタンスを表現。そのリリックからは、音源を出す前から初の海外ライブをソウルの「THE HENZ CLUB」で行い、『Deathbomb Arc』との契約などセンセーショーショナルなトピックをバラ撒いてきたDos Monosの今後の活躍を予感させる。



RIP to ジョニーオーティス

I like him better than Ludwig van Beethoven

頭入れるオーブン

熟成の毒入りバース

単発で殺す 手はずを確認


ギリシャ系移民として育ちながらもブラックコミュニティで生活していたことから、R&B、ジャズ、ソウル、ファンクなどブラックミュージックをこよなく愛したジョニー・オーティスにRIPを捧げた没。ベートーヴェンより、彼(ジョニー・オーティス)が好きだ、というシニカルにその感情とスタンスを吐露するDos Monosらしい一説が印象的。頭でっかちなロジック、既存の価値観を突っぱねカッコイイものを作る、ピュアな姿勢がリリックから滲み出ている。


そしてTITAN  MANはDos Monosという名前の、由来のひとつである“NEO HUMAN”というキーワードを用い、かけ声とともにスピットする。


TITAN MAN


『NEO HUMAN!!』

このエンドロールは

終わりを告げながら一歩先のネオンを照らす

わずか35ミニッツのムービー


そうTITAN MANがラップするように、真っ黒いグルーヴで譜面を塗り潰したアルバム『Dos City』は、映画『Sin City』のようなグロテスクでスタイリッシュなモノクロ世界をヒップホップで構築したアルバムである。アルバムを聴き終わると、なんとも言えない余韻が残る。


ラップもビートもトレンドに沿うことはなく、メインストリームとは別の次元に独立した存在として現れた新人類。「これがDos Monosだ」と挨拶がわりに、極上のクソ(Shit)を投げつけられた気分だ。


これはあくまで筆者の推察だが、Dos Monosは音楽における体系的な知識にも造詣深く(とても僕などでは追いつかないくらい)本当はすごいアカデミックな人たちがアカデミックな手法で制作しているんだろうけれど、あえて、そんなもん犬に食わせろ! といわんばかりにぶっ壊している様が爽快である。


異端として生まれたDos Monosが奏でる刺激的で先鋭的な全13曲の『Dos City』。このアルバムは混沌とした現代社会のフラストレーションが産み落とした“バグ”による、進化の序章に過ぎない。


本作では一貫してフィーチャリングアーティストを迎えていないが、本作以降、他のアーティストと共演してどんな化学反応を見せてくれるのかというのも楽しみである。


ヒップホップアーティストはもちろん、ジャンルや国境を越えたコラボレーションを見せてほしい。まだまだその全容はこのアルバム1枚では計りかねるが、世間をビックリさせてくれるような“バグ”作品を今後まだまだ増殖させていってくれるような気がする。


また、「Clean Ya Nerves」を監督した冨永昌敬とともにスペースシャワーTV×BEAMSの共同プロジェクト『PLAN B』で短編映画制作するなどその世界観は音楽だけでなく映像にも波及している。映像作品でもこれから、さらにわれわれリスナーの度肝を抜いてくれるのではないだろうか。







▶Dos Monos 1st Album 

『Dos City』

価格:2,500円(税別)

リリース:2019年3月20日(水)

レーベル:Dos Monos/bpm tokyo

品番:BPMT-1013  


01. ドストロ  <作曲:没>

02.  劇場D <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>

03.  in 20XX <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>

04.  Clean Ya Nerves   <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>

05.  ドス大名 <作曲:荘子 it / 作詞:荘子 it>

06.  バッカス <作曲:荘子it /  作詞:Dos Monos>

07.  マフィン <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>

08.  ドスゲーム   <作曲:荘子 it> 

09.  EPH <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>

10.  アガルタ <作曲:荘子 it / 作詞:荘子 it, TAITAN MAN>

11.  スキゾインディアン  <作曲:荘子 it / 作詞:Dos Monos>

12.  生前退位  <作曲:荘子 it / 作詞:荘子 it, 没>

13.  ドスシティ  <作曲:荘子it  / 作詞:Dos Monos>  




Dos Monos


荘子 it(MC/ トラックメーカー )、TAITAN MAN(MC)、没 a.k.a NGS (MC/DJ) からなる、3 人組 HIP HOP ユニット。フリージャズやプログレ等からインスパイアされたビートの数々と、3MC のズレを強調したグルーヴが特徴。MC 兼トラックメイカーである「荘子it」は向井太一や DATS、yahyel 等にも楽曲を提供するなど新進気鋭のプロデューサーとしても活躍しており、同じく MC を担当するTAITAN MANと共に FUJI ROCK FESTIVAL’ 17 において DATS のステージにゲストラッパーとして出演したことでも話題に。また、2017 年に初の海外ライブをソウルで成功させ、その後は、SUMMER SONIC2017 などに出演。2018 年、初の音源を LA のレーベル Deathbomb Arc からリリースすることを発表し、その後フランスのフェス La Magnifique Society 等にも出演した。



written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:bpm tokyo



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