「有名DJは常に貪欲」だから業界が潤う UKドラムンベースで海外と日本の差を語る DJ Takaki & Kasraインタビュー

ロンドンのドラムンベースナイト「Critical Sound」日本初上陸にあわせて来日した2人が現地シーンや海外で日本人DJが活躍する方法などについて語ってくれた。
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2019.02.06 10:00

ドラムンベースの本場イギリス・ロンドンで15年以上の歴史を持ち、今やドラムンベース年間セールスチャートでは堂々の1位を獲得するだけでなく主催するレーベルナイトは常に満員状態になるなど、現在、最もロンドン、そしてドラムンベースシーンで話題性のあるレーベルとして知られているのが「Critical Music」だ。そのレーベルナイトである「Critical Sound」が、ついに今月、本国イギリス完全公認のもと日本に初上陸する。


全ドラムンヘッズが参加するべきロンドン屈指の人気レーベルナイト「Critical Sound」が日本初上陸! 


記念すべき「Critical Sound」初上陸ツアーは、まず2月8日(金)に大阪・Trangleで開催され、続く2月9日(土)は名古屋・Cafe Domina、2月10日(祝前日)は東京・Contactという日程で開催される。またツアーでは全公演に「Critical」の創始者で、EDCなどの超大型フェスへのヘッドライナー出演や、名門クラブFabricのDJミックスシリーズ「Fabric Live」を担当するなど、アーティストとしても華々しい活躍を続けるKasraがヘッドライナーとして出演。さらに過去、日本国内にてDJターンテーブリストとして確固たるバックグラウンドを確立しながらも、現在はロンドンに拠点を移し、ヨーロッパ、アジアにて精力的な活動をし続ける日本人DJのDJ TAKAKIが帯同する。



そんな「Critical Sound」開催にあわせてblock.fmでは、今回のツアーで本国公認のインヴァイターも務めるDJ TakakiとKasraにロンドンの最新ドラムンベースシーンや、日本人が海外で活躍するための秘訣、さらにツアーへの意気込みなどについて話を聞いてみた。


DJ Takaki & Kasra「Critical Sound」日本初上陸記念インタビュー 



ロンドンを始めヨーロッパのダンスミュージック業界への憧れや衝動が抑えきれなくなり、移住を決断


--まず最初にDJ Takakiさんが東京からロンドンに拠点を移したきっかけを教えてください。 


DJ Takaki:過去東京を拠点に、約15年程、DJ,ターンテーブリストやプロデューサーとして、本当に様々な活動をさせて頂いてきました。ですがある時を境に、DJとしての理想の在り方や、自分が今後進んで行きたい人生など、より深く考えるきっかけが訪れました。ちょうどその時は音楽活動以外でも人生の様々な転機となるような出来事が有り、その時の人生の状況全てが海外への移住を後押するような形となっていきました。そして今まで長い間追いかけてきた、ロンドンを始めヨーロッパのダンスミュージック業界への憧れや衝動が遂に抑えきれなくなり、思い切って移住を決断をしました。海外への移住は決して簡単なことではなく、数年程時間をかけて様々な準備をし、考え抜き、ビザ取得の算段を明確に建て、最終的な決断に至りました。  


--現在、3年間ロンドンを拠点に活動されていると思いますが、最初の1年と最近では自分の音楽活動の中で何か変わった部分はありますか?  


DJ Takaki:本来自分が魅力を感じていたダンスミュージックのよりアンダーグランドな側面に、環境も含め存分にフォーカスするようになりました。自分の中でそれはとても必然的で本望的な事です。ご存知の通りヨーロッパではアンダーグランドなダンスミュージックが主軸となり、数千人、数万人規模のシーンやイベントが産業として平然と成り立っていて、こちらでの沢山の現場体験からも、非常に多くの影響を受けました。  


自分はこちらでは何のコネクションもないゼロ地点からスタートしたのですが、最初の1年目に行ったロンドンでの最初のギグの後、イギリスの有名なカルチャー誌が自分のインタビューを丸々1ページ誌面でフル掲載してくれたり、またその他のイギリスの有力webサイトも同様に自分のインタビューを掲載してくれたりと、幸運にも様々な方々と繋がることができ、またロンドンのシーン内で有力な1人のプロモーターと出会い、老舗クラブ「Egg London」でのレジデント枠も決定しました。そんな中で今回来日するKasraとも出会い、「Critical Music」とのツアーも決定しました。本当にみなさんへの感謝しかありません。




新しいDJやアーティストがどんどん発掘されていく環境が産業自体が停滞しない理由に繋がる


--DJ Takakiさんから見て、今のロンドン、UKのシーンはどのように見えますか? またUKのシーンにあって、日本のシーンに足りない部分というのは決して少なくないと思いますが、あえてひとつ挙げるとすれば、その部分はどのようなところだと思いますか? 


DJ Takaki:ドラムンベースのシーンは本国イギリス・ロンドンというだけあり常に安定の盛り上がりがあります。ロンドンでドラムンベースシーンの勢いが失速したりしているイメージは、今まででも本当にないように感じています。そのほかテクノやハウスのシーンも移変りの中で小さな波は有れど、全体的にはやはり安定して大きなシーンがあるイメージで、新しいベニューやイベントスペース等でも大規模なイベントが定期的に開催されています。 


UKのシーンにあって、日本のシーンに足りない部分という点でいうと、やはりこちらはリスナー其々単位で音楽に対する拘りが強い人がほとんどなので、例えばどれだけ有名なDJがプレイしていてもそのプレイが気に入らなかったらお客さんは引いていくし、逆にどんなに無名なDJでも良いプレイをすれば必ず人が集まり反応してくれます。この点はやはり海外のシーンの良い所で、アップカミングな新しいDJやアーティストがどんどん発掘されていく環境がやはり産業自体が停滞しない理由のひとつに繋がってくるのではないでしょうか。


また新鋭のDJ、プロデューサーの平均レベルも非常に高いです。既にネームバリューを獲得している有名DJ達も、自分が魅力を感じた新しいDJやプロデューサーをピックアップし、それを自分達の大舞台上でスポットを当てる事に、常に貪欲な印象があります。結果、必然的に業界や産業が潤う理由のひとつに繋がっているのではないのでしょうか。


--やはりロンドンのリアルなシーンの現状は現地を拠点にしていないとわからないと思います。そこでDJ Takakiさんから見て、今後、日本人がロンドンに遊びに行った際に、現地で今のドラムンベースのリアルなシーンを体感できるクラブ、パーティーで絶対に行っておくべきものがあれば教えてください。 


DJ Takaki:最近の中で最も印象的なベニューは、セントラル・ロンドンにある「The Steelyard」というベニューです。キャパも全体で数千人ほど収容可能な大型ベニューなのですが、ここで不定期で行われるドラムンベースのナイトは本当に毎回ヒストリカルで、、とにかく熱気がハンパじゃないです。以前、ここで行われた「Virus Recordings」のアニヴァーサリーナイト「20 Years of Virus」の1回目は、個人的にロンドンで経験したドラムンベースのイベントの中ではかなり上位でベストな体験でした。


そのほかにも、サウス・ロンドンの「Corsica Studios」は中型ベニューながら徹底されたラインナップや、客層とヴァイブがいつも良く、個人的にもお気に入りのベニューです。「Critical Sound」も「E1 London」や「Studio 338」などの大型新鋭ベニューでの開催の傍ら、現在は「Corsica Studios」でも定期開催されています。



--以前はDMCの大会でも優秀な成績をおさめられていたりと東京とロンドンでDJ/プロデューサーとしてこれまキャリアを積んでこられましたが、この部分はUKほか、海外のDJにも絶対負けないと思うDJ Takakiのストロングポイントはどこだと思いますか? 


DJ Takaki:自分の現在のDJ時は、4トラックをフルに使い、ミキサーはただ曲を繋ぐための機械ではなく、4つの音素材を的確に混ぜ、新しいひとつの音楽を作り上げるため、というような認識でいます。この辺はターンテーブリストとしての思考背景がかなり武器になり得ているかもしれません。ですので、僕の現在の最新のDJセットは基本的に全てオリジナル楽曲に近いような構成の元で密に構築しています。またターンテーブリストに有りがちな、音楽を度外視して技術だけに走ることがとても苦手で、過去のDMCターンテーブリストとしての経験を踏まえつつも、現在は99%を音楽にフォーカスし、そしてスクラッチやビートジャグリング等ターンテーブリスト特有の技術的な側面は、あくまで残りの1%、”音楽的なアクセント”として捉えています。是非どうか今回のツアーで僕の最新セットをクラブの現場で御一聴して頂けましたら、幸いです!




--ロンドンシーンで現在、注目すべきDJ、プロデューサーを教えてください。 


DJ Takaki:前述の「20 Years of Virus」でも拝見したのですが、プロデューサーとしては大ベテランのMatrixが”Classic Set”という題目でやっていたアクト、これは本当に印象的でした。洗練され尽くした選曲からなる90年代~2000年初期までの質感、決して行き過ぎない、BPM173程で地をいやらしく這うような一級に上品なグルーヴ、彼独自の世界観の説得力、それら全てが完璧に合致し醸し出している雰囲気とヴァイブ、どれをとっても最高でした。



数年先の人生設計を明確にし、それと自分の目標を天秤に掛ける  


--今後、DJ Takakiさんのように日本からUKに拠点を移して活動することを目標にしている日本のDJたちに何かアドバイスを頂けますか? 


DJ Takaki:海外に住むということは、同時に自分のビザを的確にマネージし続けていかなければならないという事、そしてDJという事を抜きにしても、1人の人間としてのヒューマンパワーと強さが常に問われます。言わずもがな英語も、居住し、現地人と仕事をするなら、”最低限のマナー”としてキチンとした深いコミュニケーションが出来るようになるまで勉強する事が絶対必須となります。まず数年先の人生設計を明確にして、それと自分の目標を天秤に掛け、それでも行きたいと強い意志があるのなら、迷わずGoする事をお勧めします! 日本では、また旅行では経験できない、本当沢山の貴重な経験と時間を過ごせます。逆境に負けない強い意志と心が何より大事ですね!  


--最後に今回の「Critical Sound」ジャパンツアーの注目ポイントを教えてください。また日本のドラムンベースヘッズたちにメッセージをお願いします。  


DJ Takaki:東京・大阪・名古屋、3都市で展開される今回のツアー、100%の事実として現在ロンドンで最も旬な最新のドラムンベースサウンドが、Kasraのセレクトから体感出来ます。また東京公演ではDJ KRUSHさん、Goth-Tradさんご両名の出演も決定し、Criticalのレーベルショーケースとしてのアンダーグラウンドに徹した世界観を、是非現場に足を運んで頂いて、体験して頂きたいです! 


自分のスタイルを見つけた上で人あたりを良くし、他人があまりやらないセットを引き受ける  


--ありがとうございます。では、次にKasraさんにお聞きします。 DJ Takakiさんのようにロンドンを拠点に活動する日本人DJがUKで成功するためにはどういったことが必要になるかと思いますか? 


Kasra:イギリスで、特にロンドンで、成功するのは本当に簡単な事ではないと思う。でも僕が言えるのは、自分のスタイルを見つけた上で人あたりを良くし、そして他人があまりやらないセットを引き受けることかな。




--運営しておられるレーベル「Critical Music」がドラムンベースヘッズたちから支持されている理由は一体どの部分にあると思いますか? 


Kasra:はは、それは自分でもわからないよ(笑)でも、僕たちはただおもしろいと思うアンダーグラウンドで活躍するドラムンベースのアーティストをリリースし、彼ら自身が可能な限り独創的な音楽を作り出すよう促進させているだけさ!


--「Critical Music」の最近のリリースの中で今、最もおすすめのリリース作品を1つ教えてください。またその理由は? 


Kasra:ちょうど最近リリースした『New Energy Vol 1』を聴いてみてほしい。僕らの追求している「音」がどういうものなのか分かるコンピレーションだよ。



--Kasraさんが今、注目しているドラムンベースプロデューサーは誰ですか?  


Kasra:たくさんいるよ。でもその中でも今1番エキサイティングなのはロンドンで活躍してるプロデューサーのParticleだ。




「Critical Music」に興味を持ってくれたプロデューサーは是非デモテープを渡してほしい  


--今回は東京、大阪、名古屋でプレイしますが、今、日本を拠点とするプロデューサーで注目している人物はいますか? 


Kasra:まだ日本のローカルプロデューサーをあまり知らないんだ。でも僕は新しい音楽をいつでも聴きたいと思っているから、もしこのインタビュー記事を読んで「Critical Music」に興味を持ってくれたプロデューサーは、公演の際に是非デモテープを渡してほしいよ。  


--今、Kasraさんが注目するロンドンのローカルアクトでアップカミングなプロデューサーと思うのは誰ですか?


Kasra:それもたくさんいるよ。さっき言ったParticleに加えて、あとは僕らのレーベルに所属しているShyunというすごい才能を持ったやつがいるんだけど、そのアーティストのことを是非チェックしてほしい。




 --最後に今回の「Critical Sound」ジャパンツアーの意気込みと日本のドラムンベースヘッズたちにメッセージをお願いします。  


Kasra:ずっと前から日本に行きたいと思っていたんだ。日本の文化を見て、日本でできうる様々なことを体験してみたいよ。日本で音楽をプレイできるのはとても楽しみだ。それにドラムンベースが好きな日本のヘッズたちの前でプレイるのが待ちきれないし、早く君たちの素晴らしい国を見てみたいよ!  


--ありがとうございました。「Critical Sound」初上陸ツアーの成功を願っています。 


***


このように非常に興味深いことを語ってくれたDJ TakakiとKasraだが、block.fmのドラムンベース番組「Localize!!」でもDJ Takakiをゲストに迎え、ツアーを総力特集する放送が2月6日(水)22時に行われる。また今回、それにあわせて番組ナビゲーターのTETSUJI TANAKAとMC CARDZが以下のようなコメントを寄せてくれた。 


「Localize!! 初期から良作を送り続けてきたKasra率いる名門「Critical」がついに日本初上陸! 本国UKでしか聴くことができないレーベル最新音源がかかりまくる貴重な一夜になるはず。洗練された先鋭ビーツを体感してほしい」



「Critical Sound」のことが気になっている人は、この特集放送も忘れずにイベント前にチェックしておくべし!


▶︎イベント情報

Critical Sound Japan Tour


2月8日(金)大阪・Trangle

http://triangleosaka.jp/event/critical-sound-2019-japan-tour/

2月9日(土)名古屋・Cafe Domina

http://cafe-domina.com/

2月10日(祝前日)東京・Contact

http://www.contacttokyo.com/schedule/critical-sound-tokyo/


written by Jun Fukunaga


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