曲のリクエストを無視するDJは、悪いDJなのか? 音楽関係者なら議論したいDJ論を探る

SNSでたびたび注目される様々なDJ論。答えがあるようでないこの議論を考えてみたい。
SHARE
2019.03.25 03:00

「DJ論」とは、DJが自らの音楽論を発言し、持論を展開することを指す。DJ論は度々SNS上で「音楽あるある」に発展しやすく、議論となることは少なくない。しかし、DJ論が正しいか、間違っているかを判断することは非常に難しい。なぜならDJ論は、DJの数だけ存在するからだ。

音楽関係者なら議論したいDJ論を探る


海外の音楽サイトのBPM SUPREMEが、DJ論についての興味深い記事を公開している。block.fmでもその記事を軸に、これまで議論されてきたDJ論から特に有名なものをピックアップ、改めて世界中のDJが議論を重ねてきたDJ論について考えてみたい。




DJは音質にこだわるべきか否か?


DJがプレイする音源は、フィジカルの場合、アナログ盤、CD、音源データが入ったCD-Rの3種類、データの場合は、MP3、AAC、WAVなど多岐にわたる。デジタルDJのDJ論として議論されるのが、データの音質問題だ。現在DJたちは、USBメモリから音源データをロードしてCDJでプレイしたり、DJソフトを利用することが多い。しかし、最近ではUSBやハードドライブの大容量化から、データ容量が多い音源を使ってDJプレイを行うことが可能になっている。そのため、DJがプレイする音源は、MP3なら最高音質の320kbpsを選ぶというDJたちと、より高音質なWavデータを使うべきだと主張するDJたちに分かれる。


筆者の経験では、MP3の128kbpsだと、やはりクラブのしっかりとしたサウンドシステムの場合、スピーカーから流れてくる立体感や音の輪郭が最高音質のものと比べてぼやけていると感じる時がある。しかし、正直な話、 320kbpsのMP3と、その約4倍程度で市販されているCD音質と同等だと言われるWavを聴き比べてみた場合、音質の差はあまりないようにも思える。


これについては、block.fmの「radio REBOOT」でナビゲーターを務めるQ’HEY氏が以前、検証を行っており、その結果をまとめた記事がDJたちの間で注目された。記事では320kbpsだと音質的には問題がないと結論づけられていた。それを参考にしていたDJも決して少なくなかったことだろう。かくいう筆者もその口で、beatportなどDJ向けの音源販売サイトでわざわざ追加料金を支払ってWavデータを購入するようなことはしなかった。しかし、現在では、サウンドシステムやCDJなど機材も進化して、より高音質な音源データをDJがプレイできる環境が増えた。それだけにこのDJ論の答えも今後はより複雑化しさらに色々な意見が出てくることだろう。




DJはイベントにノーギャラでも出演するべきなのか? 


世界的にも論じられることが多いDJ論は、ノーギャラでもイベント出演オファーを受けるか否かということ。これは、率直にいって、オファーされる側のDJがプロかアマチュアかでそのスタンスが変わってくる問題だと思うが、「お金が少額でも発生しているならプロとしてのスタンスでプレイにのぞむべき」「ギャラは発生しないという内容のために断った」など様々なDJたちの意見が出てきていたかと思う。プロであればDJ活動を継続したり、生活をしていくためにギャラを要求するのが当然だと思うが、セミプロレベルになると基準は人によって分かれることも多いことだろう。


この問題は、ブッキングする側の予算提示にも関わってくることなので、セミプロ、アマチュアに限らずギャラ交渉をしてくれるマネージャー的な人物がいると案外トラブルなくオファーを検討することができそうだとも思う。ただ、駆け出しのDJにとっては、例えノーギャラでも自分のDJスキルをPRするためにクラブや有名箱のイベントに出演したいという願望は高まるのではないだろうか? やはりこのDJ論もDJの数だけ存在するといえそうだ。


BPM SUPREMEは、ノーギャラでの出演にはNoというべきだと主張。理由は端的だ。もし、歯医者に行って無料で治療を受ける、つまり無償でサービスを受けることはできるのか? 答えはNoだ。だからクラブなりオーガナイザーがDJをブッキングし、プレイを提供してもらうというDJ側からのサービスを受ける限り、ギャラが発生するのは当然だとしている。DJが職業として確立している海外らしい意見に思える。




DJはオーディエンスからのリクエストに応えるべきなのか?


最近、日本の有名DJたちが激論したのは、DJがオーディエンスからのリクエストに応えるか否かというDJ論だ。これまで幾度と論じられてきたものだ。例えば、80年代のディスコDJでも、フロアにいるオーディエンスからのリクエストを受け付けるという習慣もあったかと思う。クラブDJは、信条、美学として自分の選曲でフロアコントロールし、オーディエンスを盛り上げるということがひとつのカルチャーとしてこれまであったように思う。さらにプレイする音楽自体を制作するプロデューサー側の立場の人間がDJする場合もあり、その場合は、よりアーティストのライヴに近いマインドでDJの現場に臨むため、リクエストは一切受け付けないという信条を掲げる人間もいる。


日本でも、同じようにプロとして音楽を作り、クラブの現場でプレイするプロデューサーDJたちの間では、リクエストを受け付けるか否かは意見はわかれるところだ。BPM SUPREMEでは、リクエストには必ずしも応じる必要はないとしている。理由はDJがすでにフロアの流れを読んで次にプレイする曲を選んでいることは往々にしてあるからだとしている。DJがフロアを見極めて導き出した選曲の流れを台無しにするくらい雰囲気にそぐわないリクエストがオーディエンスから起こった場合、あえて答える必要はないのかもしれない。特に流れを楽しんでいるオーディエンスがいる場合はなおさらだろう。


セットリストを組まずにプレイするべきなのか?


DJがあらかじめその日プレイする予定のセットリストを組んで現場に臨むことはアリかナシか?これは、先述のリクエスト問題とも近しい。その場の雰囲気を臨機応変に察知してフロアメイクできることが良いDJだという意見もあれば、選曲でまごついてフロアの雰囲気を台無しにするくらいならあらかじめセットリストを組んだ方が良いという意見がある。


筆者は、セットリストに頼るより、これまで培ってきたセンスや楽曲の知識を下敷きにその場の雰囲気を最高のものにできるDJが上手いDJの定義だと思う。しかし、最近はガチガチのセットリストを組んで自分のDJセンスで勝負をかけるタイプのDJも、一周回ってアリなのではないかと考えることもある。有名EDMスターのAfrojackは、CDJを複数台使ってリアルタイムでプレイし、オーディエンスを盛り上げるスキルを持っているが、数万人規模のオーディエンスが集まる野外フェスではあらかじめ録音したDJセットを流すと告白している。その理由は絶対に失敗することができないからだという。



関連記事:レイドバック・ルークとアフロジャック、”事前録音のDJセット”のアリナシについて激論する


プロのDJならではのポリシーだと云う人のいれば、プロならどんな状況でもミスを起こさずにプレイしてほしいと云う人もいる。ボタンを押すだけのプレイを見るために高いチケット代を払ったわけではないと憤る人もいるのではないだろうか? 事前録音した音源でオーディエンスを盛り上げ損なったらどうするのだろうか? と考えてしまうが、そこはプロ中のプロだけあって、適宜に事前録音のセットに別の曲をミックスして修正していくことが予想できる。その修正力を持ち合わせているからこそできる芸当なのではないだろうか。そう考えるとやはりプロはすごい…。



DJ論が議論されるのはDJたちが何かを語りたい、意見を言いたいからに違いない


DJ論が正しいか、間違っているかを一つづつ解明していみたいところだが、さすがにこれまで何度も議論されているテーマでは、考えれば考えるほど明確な答えがなくDJの数だけやはりDJ論が存在すると思った。だが、これだけDJ論が度々SNSで浮上してくるのは、DJたちが何かを語りたい、意見を言いたいからに違いない。それ故にDJたちは事あるごとに自らのDJ論を戦わせあうのだろう。


今回例として挙げたDJ論や、他にも気になっているDJ論がある人は、この機会にDJやクラバー仲間たちと自分たちの意見を議論しあってみてはいかがだろうか?


written by Jun Fukunaga


source:

http://news.bpmsupreme.com/10-things-only-a-dj-will-understand/

https://www.mixmag.jp/blog/171027_qhey.html


photo: pixabay
SHARE