DinoJr. インタビュー 挑戦し続けた音楽こそが100年先も残る。

楽曲制作からプロモーションまで自身の手で行うフリーのシンガーソングライターDinoJr.が2ndアルバム『2091』をリリース。石若駿、吉田沙良、リべラルら気鋭のアーティストを迎えて完成したアルバムについて話を聞いた。
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2020.01.28 07:00

石若駿、吉田沙良(ものんくる)、リべラル(SANABAGUN.)ら気鋭のアーティストを迎えて制作されたアルバム『2091』をリリースしたDinoJr.。事務所やレーベルに所属して音楽活動を行うのが一般的な日本において、楽曲制作からプロモーションまで自身の手で行う“フリー”のシンガーソングライターだ。1stアルバムのリリースから4年、一時は方向性を見失ってしまったという彼が、自分の軸となる作品を生み出すに至った経緯とは。




DinoJr.
1991年生まれ、千葉県出身のシンガーソングライター。
台湾人と日本人の血を引き、幼少期に台湾暮らしを経験。全ての曲の作詞作曲、アレンジ、DAWでのトラックメイクをこなす。
NeoSoul,Hip-Hop,Funkなどの要素を現代的な色彩感覚で荒削りにコラージュした『トーキョー・サイケデリック・ネオソウル』を掲げて活動中。
2016年に全国リリースした1st Album『DINOSENCE』は自主制作ながらKan Sano、Shingo Suzuki(Ovall)などの面々が全曲参加し話題となる。
2020年タワーレコードの一部店舗限定でリリースされた2nd Album『2091』は前作同様自主制作のノンプロモーションなのにもかかわらずSpotifyの『New Music Friday Japan』『New Wednesday Music』『Weekly Buzz Tokyo』など数々の人気公式プレイリストにピックアップされ、収録曲の『RWY ft. 吉田沙良』は全世界のH&Mでストアプレイされるなど注目を集める。またApple Music上のJ-POPカテゴリで大々的にバナー展開されるなど無所属のアーティストとしては異例の活躍を見せる。



ーDinoJr.さんが音楽を始めたきっかけは何だったのでしょうか?


DinoJr.:小学生の頃は勉強や運動が苦手で鬱屈とした子供だったんです。ある日、音楽の授業で合唱することがあったんですが、僕は大きい声が出せたんですよね。そうしたら先生が「彼を見習いましょう!」って褒めてくれて、クラスメイトも僕のことを見直してくれて。その瞬間に「あ、俺は歌手になるんだ」って確信を持っちゃったのがきっかけです(笑)。


ービビッときちゃったんですね(笑)。ギターや曲作りはいつから?


DinoJr.:高校生になってギターを弾き始めて、ほぼ同時に曲作りも始めました。声変わりが始まって、今まで歌えてた曲が歌えなくなっちゃったんです。普通はコピーとかから始めると思うんですけど、それができなかったので自分で歌える歌を作ろうと。高校卒業くらいから、“DinoJr.”という名前で活動し始めました。以前は違う名前で歌ってたんですが、周りに「もっと印象に残る名前のほうがいいんじゃない?」と言われて。僕の父親は台湾人で、彼のイングリッシュネームが“Dino”なんです。昔から父親に「Dino Jr」ってあだ名みたいに呼ばれてたので、それをアーティスト名にしました。


ーDinoJr.として影響を受けたアーティストはいますか?


DinoJr.:16歳のときにStevie Wonderを聴いてハマったのが最初ですね。そこからDonny HathawayとかのソウルやR&Bを聴いていくうちに、D'Angeloに巡り合って。「今まで聴いていたものと全然違うじゃん!」って感じで、そこからはThe Soulquarians、Erykah Badu、The Roots、Maxwellとかを聴いて影響を受けてきました。“生”であることにこだわった音楽に感銘を受けたというか。ドラムのハイハットのニュアンスや、ベースのゴーストの音、弦のキュッという感覚、そういう音がグルーヴにすごく影響してくるので、自分の曲でもそこは納得行くまで何度も弾き直したりします。




ーそうやってできた作品が、2016年にリリースされた1stアルバム『DINOSENCE』。このアルバムをリリースした後、自分を取り巻く環境って変わりました?


DinoJr.:DinoJr.はどういうアーティストか、どんな音楽かっていうことが世の中に少しは認知されたかなと思います。運良くその時期は、向井太一くんやiriちゃん、WONKとか、僕と同じような音楽から影響を受けた同年代のアーティストが出てきた時期だったので、そのカテゴリで紹介されたことも大きかったですね。ただ、当時もフリーでやっていて、プロモーションとして何をしたらいいかがよくわからなくて。それで結局、大きな波が起こせずに落ち着いちゃって、そこから4年間低迷したんですよ。曲を書いたりライブはしてたんですけど、方向性が見えないままで。アドバイスをくれるような人もいないし、お金を生むためにどうすればいいのかもわからず、次の動きに移れない。本当はすぐ次のステップに行きたかったんですけど。何度かレコーディングしようともしましたが、うまく行かなくて。たぶん、音楽を作る能力が自分の理想とするところには足りてなかったんです。作ってはボツにして、っていう時期が続きました。


ーこの4年間はそういった時期だったんですね。今もフリーで、全てご自身で動いているんですよね?


DinoJr.:はい。やっていくうちになんとなく自分でできるようになってきちゃって(笑)。難しいところはもちろん専門の人を頼るんですけど、できるところは自分で動いてます。


ーでは、今回のアルバム『2091』についても聞かせてください。コンセプトは「自分が100歳になった頃、どんな世界が待っているか」だそうですが、アルバムタイトルの「2091」は、2091年に100歳になるからっていうことですか?


DinoJr.:その通りです。この4年間ずっと曲作りはしてたんですけど、自分は新しい表現をしているつもりでも、周りからはあまり理解してもらえないような時期があって。「どうせ誰もわかってくれない」って卑屈になってたんですよ。でも、「自分が100歳になる頃には評価されてる」っていう思いで「2091」っていう曲を書いたんです。1番が未来の状況、2番は地下室の情景を歌ってるんですが、その地下室がその時の僕の現状を表してて。「夜な夜な曲を作ってるけど誰も評価してくれない。でも、コールドスリープ装置に入って100年後に目覚めたら俺はきっとスーパースターだ」っていう歌詞です。そういう思いで作った曲がいくつかあって、だからこのアルバムは、100歳の自分に向けたメッセージボトル的なアルバムだなと思って、アルバムタイトルも『2091』にしました。


ー100年先まで残る音楽に必要な要素ってなんだと思いますか?


DinoJr.:Anderson .PaakやLouis Cole、Thundercatとかが好きでよく聴くんですが、彼らは常に新しい表現を探して、時代に迎合せず新しい音楽を作っていこうという思いで活動してるんですよね。この先も、新しい時代を作っていこうっていうマインドでリリースするアーティストがどんどん増えていくと思うんです。いつかは過去になってしまうんですけど、今の時代にないものを作ろうというマインドは残ると思うので。100年後に残るのはそうやって挑戦しようとした作品なんじゃないかなと思います。


ー今回の作品でもそういった“挑戦”をされているということでしょうか。


DinoJr.:そうですね。僕はドラマーでもベーシストでもないし、ギターもギタリストより弾けるわけじゃない。鍵盤も打ち込みもそれほど上手くないし、技術的な制限もいっぱいあるんです。でも、技術的な制限がある中にこそクリエイティヴが生まれると思ってて。Anderson .Paakの『Malibu』っていうアルバムは、Mac Bookとへこんだゴッパチマイクだけで作ったっていうのを聞いて、やっぱり挑戦するマインドが作品にも表れるんだと確信しました。僕自身も、ある時期からひとつの曲にめちゃくちゃ時間をかけて、どうやったら自分の持っているものでいい作品が作れるかを試行錯誤していたんです。そんなときにAnderson .PaakとかiPhoneで音楽を作るSteve Lacyの話を聞いて、「自分は間違ってなかったんだ」と。だからそれを突き詰めたいなという気持ちで作りました。




ー歌詞もご自身で書かれていますよね。聴いていて日本語を丁寧に歌ってる印象がありました。


DinoJr.:本を読むのが好きなんですけど、村上春樹とか谷川俊太郎のような、ポエティックな文を書く人たちが好きで。言葉数が少なかったり、ひらがなだけで情緒を表現するような文が美しいと思っていて。説明的になりすぎる歌詞も好きではないので、想像の余地を残してあげるために、漢字で表すべき部分もあえてひらがなにしたりとか。


ーだからちょっと懐かしさも感じるのかもしれないですね。


DinoJr.:そうかもしれません。こういう音楽を日本語で歌うのって結構難しくて。グルーヴにどう乗せるかってところが、英語で歌えばすぐ解決するんだけど。でも僕は日本語が好きなので、その可能性も追求できたらと思って日本語で歌っています。


ー今回のアルバムは客演も豪華ですよね。


DinoJr.:自分のMac Bookで作ってたので、いろんな場所で曲を作れたんです。曲について考える時間もたくさんあったし、その間に友達が増えて、参加してもらってたらゲストが豪華になった感じですね。


ーじゃあ、ゲストのみなさんはもともとの知り合いなんですね。


DinoJr.:はい、みんな友達です。ものんくるの沙良ちゃんはもう3,4年の付き合い。同い年なんですけど、いつか一緒にやりたいねって言ってたのが実現しました。沙良ちゃんとの「RWY」は旅立ちをテーマに書いた曲。当時、Sadeの「Smooth Operator」を聴いていて、歌詞にLAとかChicagoとか街の名前が出てくるじゃないですか。それを日本の街の名前でもやってみたくて歌詞に入れてみました。歌詞を読んだ人にしかわからないんですが、街の名前は全部3文字の空港コードで書いてて。「トーキョー」と歌ってるところも最初は“HND”、最後は“NRT”にしてちょっと遊んでます。旅先がどんなに孤独だったとしても自分を信じていれば本当の意味での孤独にはならない。自分を信じて、一人でもどんどん進んでいこう、というメッセージを込めた曲です。




ーSANABAGUN.のリベラルさんを迎えた「Get Ready」はどういった曲でしょうか。


DinoJr.:リベラルはライブ会場で会って挨拶するような仲だったんですが、僕のインスタを見て、自分の新しいアルバムにトラックを提供してくれないかっていう連絡が来たんです。それで「Let Me Show」っていう曲を一緒に作って。僕もリベラルとやりたいトラックがあったので、今回のアルバムに参加してもらいました。リベラルがラップの歌詞を書いて、トラックは僕の中のリベラルやSANABAGUN.のイメージで作りました。彼と話したり彼の曲を聴いてると「かましてやるよ」「なめんじゃねえよ」みたいなヒップホップ的なバイブスを感じるときがあって。この曲を作ってるときは僕も鬱屈としてた時期だったので、気持ちとして重なるものがあるなと。初めて男臭い歌詞を書きましたね。現実はちょっとしたことで変えられるんだよ、という思いを込めてます。


ー他にもMimeのひかりさん、Scarf & The SuspenderSのMC SCARFさんも参加されてますね。


DinoJr.:ひかりちゃんはMimeというバンドのボーカルなんですけど、同じイベントにブッキングされることも多く、仲良くなって。すごくコーラスワークが上手なんです。一緒に作った「Summer End」は最初、ひかりちゃんにコーラスワークを考えてもらい、自分で入れようとしてたんです。でも、あがってきたひかりちゃんのデモがすごく良くて、それをそのまま採用しました。前田拓也(MC SCARF)さんとの「YAWN」はさっき話に出た“理解してもらえなかった”っていう曲。自分がやったことのないアプローチを入れたりして、ノイローゼになるくらい時間かけて作った曲です。セッションとかで一緒に遊んでた前田さんに声をかけてラップしてもらいました。このアルバムの中で一番古い曲で、この曲を基準にアルバムを作っていった感じですね。




ーミュージシャンも石若駿さん、宮川純さん、磯貝一樹さんなど本当にすごいメンバーが揃っていますよね。MVも公開された1曲目の「Safari」ですが、この曲をアルバムのメインに立てた理由はなんでしょうか?


DinoJr.:自分の代表曲を作りたいっていう思いがあったんです。例えば「今夜はブギー・バック」みたいな、絶対会場が盛り上がるような曲。メロディはシンプルで、歌詞の最初にはわかりやすい言葉があって。あとは自分が好きな要素もたくさん入れたくて。ミドルファンクで、ねばーっとしてるけど甘いような曲。ハロウィンの渋谷で若者たちがはしゃいでる様子がナイトサファリの動物たちに見えて、“ナイトサファリ”っていう言葉から始まる曲にしました。歌詞は「2091」の世界観にも繋がってます。頭のいい人たちはとっくに地球を捨ててロケットで宇宙に逃げていて、この地球に残ってるのは能天気な人間だけなんじゃないかっていうストーリー。そういう伏線があるような仕掛けも好きなんです。MVもSF的でバグってる感じを出しました。一番やりたかったことを詰め込んだ曲なので、ライブで合唱が起こるような曲になるといいなと思います。




ーなるほど。そして、ラスト「Daybreak」だけ他の曲とは雰囲気が違いますよね?


DinoJr.:これはもともとシングルで出してた曲で、アルバムに入れるつもりはなかったんです。周りがどんどん成功していく中で自分はうまくいかなくて、他人ばかり羨ましく見えるような時期に作った曲なんですが、アルバムの一番最後に入れてみたらこの曲の持つ意味合いが変わったような気がして。「Daybreak」が始まる瞬間に、夢から覚めるような雰囲気になるんです。だからあえて入れた感じですね。


ーアルバムで通して聴くと意味が変わる曲なんですね。ジャケットなどもご自身でディレクションを?


DinoJr.:アートディレクターの人と話しながら決めました。僕は昔からカラフルなものが好きで、ケースに並んでるアイスクリームとかを見るとグッとくるんですよね。ただ、『2091』はカラフルなだけじゃなく毒味も詰めたアルバムだと思ってて。そういう意味で、ドラッグ入りアイスを食べてぶっ倒れちゃった女の子をジャケットにしました。


ー最後に、これからスタートするツアーについて聞かせてください。DinoJr. Bandでまわるということですが、メンバーは固定なんですか?


DinoJr.:はい。Anderson .Paak and The Free Nationalsみたいなチーム感がいいなと思っていて。以前はライブごとにサポートが違っていたのでサウンドも安定しなかったんですが、同じメンバーで2年くらい続けて、今は一つのバンドの音みたいになってきました。今回はBREIMEN、Kroiと僕らの3組でツアーをまわるんですけど、彼らも相当アクの強いバンドなので、彼らに負けないように気合い入れていきます。あとは、『2091』っていう自分の基準になる作品をひとつ世の中に示せたので、この作品を生ならではの形にどれだけ崩せるかっていうのも挑戦したいと思っています。


ーいわゆるライブ化け。


DinoJr.:そうです。ライブじゃないと見れないアレンジとかでお客さんを驚かせたいですね。この夏はフェスにもたくさん出たいです。フジロックとかのフェスにも出て、自分のバンドの音を世に知らしめて行くのが一つの目標ですね。




【リリース情報】




タイトル:2091

リリース日:2020年1月22日(水)

レーベル:EXOMUSIC

流通:ULTRA-VYBE

品番:EXMU-002

価格:¥2,273+tax


■収録曲■

01. Safari

02. Get Ready ft. リベラル from SANABAGUN.

03. Where Do We Go

04. RWY ft. 吉田沙良 from ものんくる

05. Gimme the Night

06. Summer End ft. ひかり from Mime

07. YAWN ft. MC SCARF from Scarf & the SuspenderS

08. 2091

09. Daybreak




【ライブ情報】




BREIMEN × DinoJr. × Kroi 〜TOHANMEI TOUR〜


ADV. ¥3,000 / DOOR. ¥3,500


3/7(土)六本木VARIT. w/ ヘンショクリュウ OPEN 18:00 / START 18:30

3/8(日)南堀江SOCORE FACTORY w/ トライコット OPEN 18:00 / START 18:30

3/9(月)池下CLUB UPSET w/ ペンギンラッシュ OPEN 18:30 / START 19:00


SNS


Twitter

https://twitter.com/DinoJr214


Instagram

https://www.instagram.com/dinojr_tokyo/



written by Moemi





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