音楽ジャンル「グライム」への差別は今も続く。メディア炎上、音楽ファンが怒るUKの現状とは?

人気グライムMCのSkeptaやWileyに対し、過去の犯罪歴を強調するなど、黒人アーティストを差別するような記事を公開したことが問題になっている。
SHARE
2018.03.14 03:15

先日、block.fmではグライムのゴッドファーザーと称される有名MCのWileyが、イギリス王室によって、同国の文化勲章である大英帝国勲章を授与されたことをお伝えしたが、その偉業に水を差すような心ない記事がイギリスメディアのDaily Mailによって掲載されたことが発覚。現在、その内容が人種差別的だとしてグライムコミュニティーを中心に音楽ファンが猛反発している。 


 ■関連記事:Skepta、Stormzyがリスペクトする「Grime」の神Wiley、音楽の発展に貢献し大英帝国勲章を授与 


Skepta、Wileyの音楽的功績よりも過去の犯罪歴を強調  


Daily Mailが記事で取り上げたのは、Wileyと同じくグライムシーンのスターMCであるSkeptaの2人。Wileyは先述のMBE獲得、Skeptaはマーキュリー賞獲得など近年、特に目覚ましい活躍を続けており、今やグライムシーンだけでなく、イギリスの音楽業界においても重要なミュージシャンといえる存在だ。 しかし、Daily Mailは彼らの音楽的な功績よりも、ミュージシャンとして成功する前の過去の犯罪履歴を強調。グライムアーティストがまるで危険人物であるかのような記事に仕立て上げた。



その記事では、Skeptaの友人が刺されてなくなったことや、ギャングや犯罪、ドラックまみれの人生から逃れるためにミュージシャンを志したことや、かつて武器を不法所持し、怪我をしてコミュニティーセンターの厄介になっていたことなどについて書かれているため、暴力的で危険人物のような印象を受ける。 


 また最近、Skeptaが90年代のスーパーモデルとして知られるNaomi Campbellとともに有名ファッション誌GQの表紙を飾ったことについても、47歳のNaomiが若い”ツバメ”とトップレスで表紙を飾ったと否定的なコメントを掲載。そしてWileyもまたSkeptaと同じように「大英帝国勲章を得たのはドラッグディーラーから転身したラッパー」という見出しをつけられた上で、過去にコカインを含む危険度の高いドラッグを売っていたことなどが強調され、読者にマイナスイメージを持たせるような書き方で紹介されている。 


グライムコミュニティーや音楽ファンが人種差別的だとして猛抗議  


そんな2人の現在の名誉を貶めるような記事内容に以前運営されていたネットラジオ局、Radar Radio内で番組を放送していたJammznが憤慨。黒人ミュージシャンが多くを占めるグライムコミュニティーに対して、Daily Mailの記事は差別的だとTwitter上で訴えた。 


その結果、問題の記事はすぐにコミュニティーやファンの間に広まり、「彼らは黒人が表彰される場面を見たくないと思っている」、「なぜ、Skeptaの音楽的な功績に触れず、過去の武器の不法所持やNaomiの”ヒモ男”として紹介するのか? ネガティヴなイメージしか伝えていない」、「こんなことに触れる必要はない。Daily Mailは人種差別主義者だ」、「エスニックグループ出身という理由で彼らの成功を憎むのはジャーナリズムとしては程度が低い、しかも何年もシーンのトップにいるSkeptaを未だに”新星”と呼ぶことはリサーチ不足の証明だ」といったようにグライムファンや音楽ファンたちからの抗議の声が数多くDaily Mailに向けられた。



人種差別的な記事公開には別のグライムMCによるDaily Mail批判がきっかけか?  


RT.comによるとこのグライムアーティストたちに対する人種差別的な記事が公開された背景には、記事公開前にグライムMCのStormzyがブリットアワードで行なったイギリスのメイ首相とDaily Mailを批判するフリースタイルがきっかけになっているとのこと。  


そのフリースタイルでStormzyは、昨年6月に71人の死亡者をだしたロンドン西部の高層マンションの火災に対する政府の支援体制に関してメイ首相を激しく批判。また以前、彼の音源がドラッグ使用を助長させていると専門家が発言しているという記事で彼を非難していたDaily Mailに対しても批判していた。



今年初めには有名音楽プロデューサーが人種差別発言で炎上  


イギリス国内には非白人の多様な人種が存在しているが、近年は彼らに対する人種差別的な行動をとる者も少なくない。今年に入ってからも、同国の音楽業界では有名ドラムンベースプロデューサーのMistabishiが、ロンドン市長を務めるカーン市長がマイノリティー出身だということに対し、差別的な発言を行い、大炎上する出来事が起こったばかりだった。今回のDail Mailによる人種差別的な記事も同じようにSNS上では大きな炎上騒動になっている。  


■関連記事:イギリスの音楽業界、人種差別発言の有名ミュージシャンにブチ切れ「リリース作品、削除します」 


 白人だけでなく、多様な人種が住むイギリスにとって人種問題は社会的な課題だ。しかし、多様性が尊重されるべき今の時代においては今回の出来事は見過ごせない由々しき問題であり、今後のDaily Mailの報道姿勢のあり方にも注目が集まりそうだ。


参考:

https://www.rt.com/uk/420502-wiley-skepta-racist-grime/

https://www.theguardian.com/music/2018/feb/21/stormzy-asks-may-wheres-the-money-for-grenfell-at-brit-awards


Written by Jun Fukunaga

Photo: Batiste Safont

SHARE