block.fmライターがニュース記事からふりかえるDaft Punk

『Random Access Memories』でグラミー賞受賞後から始まった解散までの"空白期間"。その間に話題になったDaft Punkニュースとは?
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2021.02.25 13:00

日本では2月22日深夜頃、明らかになったDaft Punkの解散。音楽シーンの全てを変えたと言われるフレンチエレクトロデュオの突然の解散報告は、YouTubeの公式チャンネルで公開された動画「Epilogue」の中で行われた。

「Epilogue」は、2006年の映画『Electroma』で使われた映像フッテージを用いたものだ。解散を思わせるDaft Punkメンバーの1人の爆発、そして、荒野を1人佇むもう1人のメンバーの姿が印象的で、まさに"フレンチエレクトロの伝説の終焉"を示すにふさわしいものになっていた。 


Daft Punkの解散発表は、その後、光の速さでSNSを駆け抜けた。翌日2月23日は祝日だったこともあり、朝からSNSのタイムラインではファンはおろか、多くのミュージシャンが思い思いにDaft Punkの思い出をつぶやいていたことは記憶に新しい。長年のDaft Punkファンである筆者も思いつくままにDaft Punkの思い出をTwitterに投稿したものだ。


もし、Daft Punkに関する思い出をここでひとつひとつ、挙げていくとすれば、それは膨大な数になるだろう。解散発表以来、暇を見つけてはいくつかの思い出話を自身のブログに書き綴ったが、その4、5本程度のエントリーだけでも文字数は相当なものだ。そのことは、筆者のDaft Punk愛がそれくらい深かったことを改めて証明していることにほかならず、今回の解散劇でそれが改めて明らかになったといえる。 


さて、肝心のDaft Punkをトリビュートするようなものを考えた時、どういった内容にするべきか? ということは、ここ2、3日の間、ずっと筆者の頭を悩ませるものだった。そんな思案の果てに答えとして頭に浮かんだのは、これまで自分が追いかけてきたDaft Punk関連のニュース記事をふりかえるということだ。



Daft Punkといえば、2005年にリリースした『Human After All』以来となった4枚目のオリジナルアルバム『Random Access Memories』が、2014年の第56回グラミー賞では主要部門の「最優秀レコード」、「最優秀アルバム」を含む、ノミネートされた5部門すべてで受賞したことで、文字通り音楽界の頂点を極めている。このアルバムからはPharrell Williams、Nile Rodgersら著名ミュージシャンがゲスト参加した「Get Lucky」が、世界32か国以上でチャート1位を記録。930万枚を売り上げる記録的な大ヒットとなった。


しかし、その後、Daft Punkの活動は停滞する。2016年にThe Weekndとコラボした「Starboy」、「I Feel It Coming」以外に彼らの名義が入ったリリースはなく、それから2021年までDaft Punkとしての"長い空白期間"が続いた。ただ、その間もDaft Punkに関する噂や関連ニュースは定期的に発信され、その度にファンの注目を集めてきたのも事実だ。そこで今回は、ファンが最も気になる『Random Access Memories』から解散までの空白期間に焦点を当て、その間に報じられたDaft Punk関連ニュースの中でも特に印象深い記事をふりかえることで彼らをトリビュートしたい。





1. 幻に終わった全ファン待望のワールドツアー「Alive 2017」 


『Random Access Memories』以降の空白期間に最もDaft Punkファンの期待を煽り、それと同時に最もがっかりさせたのは、2017年に開催されると噂されたDaft Punkの大規模ワールドツアー「Alive 2017」だろう。

「Alive 2017」は、それまでにDaft Punkが1997年、2007年と2度にわたり10年周期で行ってきたツアーがルーツになって、ファンの間で噂されてきたものだったが、これまでに出た「Alive 2017」の噂は全てガセ。結果的に世界中のファンが待望した「Alive 2017」は、実現しないまま、Daft Punkは自らその活動に終止符を打った。 


2. 1000曲にも及ぶ「Daft Punkに影響を与えた曲」のプレイリストが公開 


前年より噂されていた「Alive 2017」の開催年を迎えた2017年1月に話題になったのが「Daft Punk’s Teachers」というSpotifyプレイリストだ。このプレイリストは、Daft PunkファンがGiorgio Moroder、DJ Deeon、DJ Slugo、Eric B & Rakim、Isaac Hayes、The Ordなどハウス、テクノ、エレクトロ、ファンク、ヒップホップといった多岐に渡るジャンルの中から、Daft Punkに影響を与えた"師匠"の音源を1000曲ピックアップした壮大なプレイリストだった。 


Daft Punkは、一体なぜ世界中のファンから愛されたのか? このプレイリストの収録曲からその答えの一端がうかがえることは間違いない。



3. 深すぎるDaft Punk愛を感じるファンメイドコンテンツの数々 


『Random Access Memories』以降、Daft Punk名義が付いた音源は結局、The Weekndとコラボした2曲にとどまり、新曲がリリースされない状況が長く続いた。しかし、そんなやきもきする期間にファンの心のオアシスになっていたのが、前述のDaft Punkファンによるプレイリストのようなファンメイドのコンテンツだ。 


そういったコンテンツを公開するファンの中には、アイコニックなロボットマスクを自作した者もいれば、テクノロジーを駆使して、Daft Punkが敬愛する日本の漫画家松本零士とコラボした『インターステラ 5555』の世界観をVRで再現する者も。また、中にはAlive 2017のガセサイトを作る不届き者もいたが、多くのDaft Punk愛が深いファンは、熱心にファンメイドコンテンツを作り続けた。



また、最近でも「Alive 2007」のフッテージ動画を独自に編集して、新たなライブ動画としてオンラインで公開する者がいれば、解散直後にその「Alive 2007」をVRで再現した動画コンテンツを公開した者もいる。こういった熱心なファンがいる限り、解散後もDaft Punkは不滅の存在としてファンの間で語り継がれていくに違いない。


4. Daft Punkはいつ、人間をやめたのか? その答えはこれを見ればすぐわかる 


Daft Punkのルーツは90年代に彼らが結成していた前身バンド「Darlin」の楽曲が、某音楽誌のレビューで酷評されたことにある。その後、彼らはDaft Punkとして、1994年にデビュー曲「The New Wave」リリースするが、「Around The World」などヒット曲が収録された1997年1stアルバム『Homework』の頃はまだ、ロボットマスクは被らず生身の人間の姿のままだった。では、いつ彼らは人間をやめてロボット化したのか? その答え合わせは、Mixmag Franceが公開した3分で彼らの歴史をふりかえることができる動画「The evolution of Daft Punk」を見ることで可能だ。



なお、1997年のツアー「Alive 1997」を記録した動画では、まだ生身の2人がライブを行う様子を確認することができる。 https://twitter.com/NTSlive/status/1363903771743555584?s=20 


5. Daft Punkが音楽を手がけるという話も噂された映画『トロン 3』サントラ 


ツアーはない。新曲のリリースもない。そんなないない尽くしのまま迎えた2020年、ファンを歓喜させたのが、かつてDaft Punkがサントラを手掛けた映画『トロン:レガシー』の続編となる『トロン 3』制作という噂だ。


噂は2020年4月に突如出てきたものだったが、その時点ではすでに映画の関係者がサントラの制作を依頼するためにDaft Punk側にコンタクトを取っていることも報じられていた。それを受けて、ファンの心は一気に弾んだことは想像に難くない 。映画は同年8月、正式にスタジオが映画の製作にゴーサインを出していないため、その段階では、実際に映画公開されるかどうかはまだわからないとされた。しかし、主演にジャレッド・レトが起用されることが報じられるなど、公開に向けて大きく前進した印象があった。そのため、Daft Punkのサントラ制作にも大きな期待が寄せられたが、ご存知のとおり、Daft Punkは今月解散。筆者としては、すでに水面下でサントラ制作を済ませており、それが彼らからの置き土産になることを願わずにはいられない。 


余談だが、『トロン:レガシー』のサントラは昨年、映画公開10周年を迎えたタイミングでコンプリートエディションがリリースされている。



 6. フレンチハウスの名曲「Music Sounds Better With You」がリイシュー


少し時間を遡って2019年の話を。Daft Punkの片割れであるThomas Bangalterが、かつてAlan Braxe、Benjamin Diamondとともに結成していたユニット「Stardust」による「Music Sounds Better With You」が、2019年にアナログ盤とデジタルでリイシューされた。 


同曲は、後に続く"フレンチタッチ"と呼ばれたフィルターハウスの代表曲で、ボーカルを取り入れていたことで、Daft Punkの代表曲「One More Time」にも影響を及ぼしたことが考えられる曲だ。そのリリースからおよそ20年を経たタイミングで正規リイシューされたわけだが、Daft Punkが解散したというのであれば、今後、Thomas Bangalterには、是非、リリース元だったレーベル「Roulé」を復活させてほしいものだ。そして、フレンチタッチファンとしては、同時にGuy-Manuel de Homem-Christoにも彼が運営していたレーベル「Crydamoure」を復活させてもらって、それぞれが新曲を各々のレーベルからリリースすることに期待したい。

そう思うのは、近年の2人はDaft Punkとしてのリリースはなかったものの、それぞれ盟友の映画監督ギャスパー・ノエの映画作品(Thomas Bangalter)やThe Weeknd、シャルロット・ゲンズブール(Guy-Manuel de Homem-Christo)の作品に関わっているからだ。今後は、2人が別々に歩む音楽プロデューサーとしての姿にも注目していきたい。



「Epilogue」に寄せて 


最後に「Epilogue」を見た感想を。「Epilogue」では冒頭で書いたとおり、Daft Punkの終焉が描かれていたが、それを見た筆者の頭に浮かんだのは、フランスの映画監督ジャン=リュック・ゴダールによる映画『気狂いピエロ』のラストシーンだった。ゴダールは、Daft Punkと同じフランスのポップカルチャーを代表するクリエイターということもあってか、『気狂いピエロ』の"顔面ダイナマイトによる爆発"と"太陽と朗読されるランボーの詩『永遠』の一節"という描写が「Epilogue」とやけに重なった。


おそらくDaft Punkも爆破されることで永遠になったのだろう。そして、我々ファンも空に太陽が浮かぶ限り、永遠にDaft Punkを感じ続けるだろう。このコラムを執筆するにあたり、改めて動画を見返した後にそう思った。 


ありがとう、Daft Punk。我々はあなたたちを決して忘れない...。



written by Jun Fukunaga 


photo: Proximity YouTube



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