【レビュー】Burialが2step回帰を経て新たなサウンドを提示する「Claustro」

約2年ぶりとなるEP『Claustro / State Forest』収録曲では『Untrue』期を思わせるビートアプローチに加え、新たな要素が見受けられる。
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2019.06.17 02:00

UKベースミュージックを代表するプロデューサーのBurialが、最新EP『Claustro / State Forest』を古巣、Kode 9主宰レーベル「Hyperdub」からリリースした。昨年、BurialとKode9は、有名DJミックスシリーズ、FABRICLIVEの最終作となった『FABRICLIVE 100』を共同で手がけていたが、Burialが「Hyperdub」からEPをリリースするのは、2017年のEP『Rodent』以来、およそ2年ぶりだ。



2019年現在のBurialのモードを感じる「Claustro」 


またEPリリース自体も先述の作品以外に『Subtemple/Beachfires』、『Pre Dawn/Indoors』という計3枚のEPをリリースした2017年以来となり、ファンにとっても2019年現在のBurialのモードがうかがい知れる重要なリリースだったのではないだろうか? 


振り返ってみると2017年のリリースのうち、『Rodent』では、アトモスフィアリックなダークシンセパッドとベースライン印象的なディープハウス、『Subtemple/Beachfires』は、Bruialらしいヴァイナルノイズを絡めたアンビエント、『Pre Dawn/Indoors』は、ベルリン系の疾走感のあるエクスペリメンタルテクノといったように、いずれも『Untrue』に代表される典型的なBurialらしさはなかったように思われる。


  

もちろん、これらのEPではダークな世界観を表現する深いシンセサウンドは健在だった。しかしながら多くのファンにとってBurialらしい、特に『Untrue』のイメージが強い場合、聴きたかったサウンドは、彼のルーツでもある2Step/UKG由来の変則的なビートだったはずだ。『Untrue』は2007年にリリースされた作品で、先述の3枚がリリースされたのはその10年後。その年は、多くのメディアで『Untrue』10周年を記念した特集が組まれていたためか、聴く側としては否が応でも”Burial=『Untrue』”のイメージを強められた感が確かに否めない。




変化の兆しを感じた『Street Halo』  


しかし本人としては、それだけの月日を経ていると新しいサウンドアプローチを行うことは当たり前といえば、当たり前だ。実際に過去の作品でも、ソロ名義EPとしては2007年の『Ghost Hardware』以来、4年ぶりのリリース作となった『Street Halo』収録曲を発売当時に聴いた時も、どことなく『Untrue』ライクなものを求めていた筆者にとってはBurialらしさを感じることはできなかった。これについては、まさに今、改めて曲を聴きなおして考えると…といった感じで、実際にはBurialらしいビートは健在でシンセ使い、声ネタ使いは言わずもがなだ。



ただ、ほかのダブステップ曲にすんなりマッチするBPMではなく、特に『Untrue』収録曲の「Archangel」、「Ghost Hardware」あたりと比べるとテンポはかなり遅くなっていたためか、当時の自分としてはなんとなく作風の変化を感じ、少なからず不満に思っていたのだろう。しかし、本作収録の「Claustro」でBurialは、かつての『Untrue』サウンドに回帰。しかもただの回帰にとどまらず、そこに新たな要素を加えることで、自らのアイコニックなサウンドをさらに進化せているのだ。



『Untrue』を感じる2step/UKG回帰と新たに加わったポップさ  


「Claustro」の特徴としてまず挙げられるのは、『Untrue』を彷彿とさせる2step/UKGビートを再び取り入れていることだろう。イントロのBurialらしいアンビエントシンセが鳴りだした直後から聴こえてくる疾走する複雑でリズミカルなビートは、往年のスタイルを十分に想起させる。ただ、この曲が素晴らしいところは、ノルタルジックなBurialのスタイルに新しいアプローチが織り交ぜらているところにある。




2stepビートの次に耳に入ってくる、エディットされたヴォーカルサンプルは同じく2stepライクなアプローチで、これまでのBurial作品でも聴くことができた(リリースインフォにはヴォーカルサンプルの元ネタがR&BシンガーのBrandyだということを匂わせるような記述も。Burialは「Fostercare」でBrandyの「I Wanna Be Down」、「Unite」でBrandy参加曲「Missing You」をサンプリング。こういったR&B曲からヴォーカルをサンプリングするのも2Step/UKG的だ)。  


しかしながら、その声ネタと一緒になるのは、Burialらしからぬポップなエレクトロ系のベースライン。このあたりは2stepの歴史に名を刻むTodd Edwardsマナーに沿ったアプローチのようにも思えるが、これまでのダークなイメージを覆す部分でもある。そして、曲自体はこのようなポップでアップリフティングなパートとBurialらしいダークなパートが交互にシーケンスとして並べられ進行していく。繰り返されるポップさと意識が覚めるような深い音像は摩訶不思議でとにかくドラッギーといったところか。そのあたりに最新のBurialモードを感じるわけだが、この曲は最後にまた大きなサプライズが潜んでいる。



ハイテンションなユーロビートパートはアリかナシか  


終盤、タイムコードでいえば、5:00頃のブレイク部分。唐突に”This song goes out to that boy”という声ネタが入り、その後、唐突に始まるハイテンションなユーロビート調の展開はこの曲における最大のサプライズでありギミックの部分だ。全く予想だにしない、謎ともいえるこの要素はファンの間では賛否が別れる部分だとは思う。しかし、こういったギミックは曲をプレイする側のDJの視点でみれば、フロアを沸かすキラーチューンになり得るはずだ(もちろん使い所を間違わなければだが…)。  


2step/UKG回帰とポップ要素に謎のユーロビート。「Claustro」は、近年のBurialサウンドになかった要素が取り入れられている。Burialにとっての新機軸ともいえる、ルーツに立ち返りながらもダークさとポップさを行き来するこのアプローチは今回だけの実験なのか? それとも…。筆者としてはこのアプローチで作られる次回作、そして『Untrue』以来のアルバムに期待したい。 


written by Jun Fukunaga 


source: 

https://boomkat.com/products/claustro-state-forest

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photo: bandcamp



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