音楽業界が黒人差別に抗議、 #TheShowMustBePaused で拡がった「Black Out Tuesday」をふり返る

アーティストだけでなく音楽レーベル、プラットフォーム、メディアも人種差別に対する抗議のためのストライキを実施した。
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2020.06.04 11:00

先月起きた警察による不当な暴力によって亡くなったGeorge Floyd氏ほか、アフリカ系アメリカ人の痛ましい事件を受け、現在、アメリカ各地だけでなく、世界的にも拡がりを見せている人種差別に対する抗議運動。それを受けて、6月2日に音楽業界が、大規模なストライキキャンペーン「Black Out Tuesday」を実施した。



#TheShowMustBePaused ともに拡がった音楽業界のストライキ  


「Black Out Tuesday」に参加したのは「仕事から離れ、ブラックコミュニティと再び繋がる日」というテーマが掲げられており、Dirty Hit RecordsのJamie Oborne、元Hot 97音楽ディレクターのKarlie Hustle、Beats 1の番組ホストのEbro Dardenらが提案したもの。当日は、事件発生後に生まれた #TheShowMustBePaused というハッシュタグ付きの投稿がSNSで拡がりを見せた。


 同キャンペーンには、アーティスト以外にもUniversal、Sony、Warnerの3大メジャーレーベルのほか、多数のインディペンデントレーベルが参加。それぞれ問題に対し、意思表示を行ない、当日は業務を停止し、人種差別撤廃のためにそれぞれ行動を示すように呼びかけた。



また音楽レーベルのほかにApple Music、SoundCloud、Tidal、Spotify、Amazon Music、YouTube Music、Beatport、TikTokのような音楽プラットフォームも参加。例えばSpotifyでは、特別にキュレーションされたヒップホップやR&Bなどブラックミュージック関連のプレイリストやポッドキャストを公開し、黒人アーティストが目立つように宣伝を行ったほか、それらのプレイリストやポッドキャストの全てにGeorge Floyd氏が窒息した時間と同じ長さの8分46秒の無音トラックを収録。Beatportがすでに表明していたbandcampと同じようにNAACPへの収益の寄付を発表するなど各音楽プラットフォームは、それぞれの方法で問題に向き合いつつ、ユーザーたちに問題提起している。



さらにMixmag、NME、DJmag、YourEDM、Rolling Stoneなど音楽メディアも同様の取り組みを行なっており、例えばMixmagはその日の業務としての記事更新や関連するSNS投稿を休止する代わりに問題についての理解を深めるための情報発信を行なっている。





日本の音楽メディアの取り組み 


こういった音楽メディアの取り組みは日本でも見られ、uDiscover日本版のuDiscover.jpが『Black Lives Matter 2020」:繰り返される人種問題と抗議運動、ミュージシャンの反応』というコラム記事を公開したほか、ele-kingが『編集部より ──いまアメリカで起きている抗議デモについて』という記事を公開。またFNMNLが”国内外のラップミュージックを中心に、ブラックカルチャーをルーツに持つコンテンツを発信しているウェブメディアとしての責務”として、Black Lives Matterの理解の一助となる特集を準備しているとステイトメントとともに発表しているほか、ヒップホップ・ラップミュージックの情報を扱うメディアのSUBLYRICSが、同媒体の5月の広告収益から維持費・人件費を引いた利益全てを不当に逮捕されたデモ参加者の支援団体へ寄付を表明。カルチャーメディアのi-D日本版は『オンラインでBlack Lives Matterを支援する方法』という日本語訳記事を公開している。



このように音楽業界では、#TheShowMustBePausedのハッシュタグとともにそれぞれのメッセージを添えた黒を基調とした画像をSNSに投稿。それに連帯の意思を示す音楽ファンが同様の投稿を行う様子が見られた。



「Black Out Tuesday」に対するブラックコミュニティからの声  


しかしながら、音楽業界のこういった取り組みも、当事者側のブラックコミュニティにとっては必ずしも十分なものではないという意見もあり、「Black Lives Matter」を支援するために各団体に総額で50万ドル(約5400万円)を寄付したThe Weekndは、ブラックミュージックから利益を得ている音楽業界の大企業である先述の3大メジャーレーベルやSpotify、Apple Musicに対し、大々的な寄付を行なってほしいと訴えている。



またJoey Bada$$は、大企業(音楽以外にも大手スポーツブランド、テック企業など)やブラックコミュニティ以外のインフルエンサーたちがこの人種差別問題について、SNSで投稿したりシェアすることを受けて、”ポーズ”に過ぎないという意見を表明しており、大企業や音楽レーベルがブラックコミュニティに対して行なってきた経済的な搾取の事実を省みて、労働環境の改善や正当な対価を支払うことが本当の意味での変化を起こすことだと連投した投稿で訴えている。



人種差別問題に対して、社会的な責任を果たす意味で抗議に参加する音楽業界の企業が現れる中、当事者側からはその取り組みでは不十分だという意見があがることに問題の根深さがある。



問題について知ること、考えること、そして学び続けること  


日本においても人種差別に対する抗議、そこから派生した暴動や略奪行為などに関するセンセーショナルな形での報道、”ブラックカルチャーに親しみがあるから差別はいけない”という趣旨の発言の受け取り方、SNS上での意思表示、アジア人差別問題など様々な観点が加わり、それに付随する形でこの問題に対する多種多様な意見が見られる。  


問題に対して、声をあげ、意思を表示するという意味で行われたこのキャンペーンからもこういった論争が起きていることを考えると”声をあげる”ということについて、もう一度深く考えさせられる。しかし、それでも問題について知る、理解を深めようとすることは、声をあげるためや意思を表示するためには必要なことであり、行動の変容を促すきっかけにつながるはずだ。 


なお、block.fmでも過去に人種差別に問題に触れた『日米の文化を知るアーティストに訊く「Nワード」のリアル』を公開している。同記事では日本とアメリカ、両方の文化を知るDuke of HarajukuとDJ K.DA.Bに黒人以外の人種が使う「Nワード』についての意見を聞き、その背景にある歴史と人種差別問題についても論じられている。また今週放送されたINSIDEOUTでもアトランタ在住のフォトグラファーAKI IKEJIRIさんを迎えて”現地で起こってること”を特集した「What’s really going on in America?」を放送している(こちらは、みやーんZZによる書き起こしも参考にされたし)。  


そのほかにもこの問題に対する考えを深めるためにNetflixがYouTubeで現在、無料公開している人種差別、法と政治、大量投獄の関係性に踏み込んだドキュメンタリー『13th -憲法修正第13条-』(日本語字幕付きで視聴可)やアメリカンセンターJAPANが公開している「米国の歴史と民主主義の基本文書」、Martin Luther King Jr.による「私には夢がある」(1963年)スピーチにも改めて目を通しておくべきだ。  


人種差別だけでなくあらゆる差別はどれも根深い問題だ。だからこそ問題解決が訴えられても未だに世界から完全に払拭されてない。そういった事実を踏まえて、我々は問題について理解を深めていかなければならない。そのためには知ること、考えること、そして学び続ける必要がある。 


関連記事:日米の文化を知るアーティストに訊く「Nワード」のリアル 


written by Jun Fukunaga


photo: Instagram キャプチャー画像

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