「言葉とリズムが生む“波形”を追求して、もっと心地良いものを」birdがm-flo ☆Takuに語った、アルバム制作へのこだわり

3月20日にデビュー20周年を迎え、ニューアルバム『波形』をリリースするbird。m-flo ☆Takuとの対談で、20年での変化やアルバム制作について語ってもらった。
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2019.03.19 07:00

3月20日、自身のデビュー20周年の日にニューアルバム『波形』をリリースするbird。今回block.fmでは、同じく20周年を迎えたm-flo ☆Taku Takahashiとの対談を取材。デビューからの音楽環境の変化やニューアルバムの制作についてなど、幅広く語ってもらった。





bird
ソウルフルな歌声と独創性に満ちた楽曲で、ジャンルを選ばず音楽ファンを魅了するシンガー&ソング・ライター。 大沢伸一/MONDO GROSSO主宰レーベルよりデビュー、1stアルバム『bird』は70万枚突破、ゴールドディスク大賞新人賞獲得。新譜発売からbird 20周年プロジェクトが本格的に始動。現在、ジャンル関係なく各種野外FES、イベントに出演中。



「この20年で音楽を取り巻く環境はずいぶん変わったけど、自分の音作りに関しては根本的には変わらないのかな。」





☆Taku(以下、T):birdさんは今年で20周年ということで、僕も20年なので一緒なんですよね。おめでとうございます。


bird(以下、b):そうですよね。おめでとうございます!


T:20年の実感ってあります?


b:言われたら「20年かぁ」って思うんですけど、自分で20年をどっしり感じることはあんまりないですね。☆Takuさんは実感ありますか?


T:自分が20年やってきたっていうことより、同じ世代のアーティストが少なくなってきてるなっていう感覚の方が大きいかも。自分自身の活動ではそんなに時間経ったっていう感じはしてないです。この20年で音楽業界そのものもだいぶ変わってきてるなと感じていて。音楽の作り方も、リリースの仕方も、聴かれ方も変化してると思うんです。そういう違いは意識されたりしますか?


b:確かにこの何十年かって、テープからCD、MDって色々変わって今はもうデータで聴いたり、すごく目まぐるしかったと思うんですよ。CDだってちっちゃいシングル版があったり。その時代を体感したっていうのはすごく貴重だなという感じはしていて。とはいえ、音作りに関してのやり方は基本的には変わらないのかなって思うんですよね。


T:例えばボーカルレコーディング。デビュー当時は機材も違ったから、「録音します!」「歌います!」「巻き戻します!」みたいな会話ってなかったですか?


b:あぁ〜、「叩く」とか。そうですね、Pro Toolsの前。「すいません、録れてませんでした!」とかありましたね(笑)。今はそういうことはなくなりましたよね。とりあえずデータでずっと録ってるから、その瞬間を録り逃したみたいなのはないですもんね。


T:とはいえ、そういった機材の変化とかはクリエイションを根本的に変えるものではないっていう考えですか?


b:そうですね。でも、例えば仮歌を録るにしても昔はわざわざスタジオに行かないといけなかったものが、今ではデータで送れる。


T:お家でサクッと録音できますからね。


b:もしかしたら本番の歌入れギリギリまで、一緒に作る方と会わない可能性もあるじゃないですか。


T:今回のアルバム制作では会わない方っていました?


b:全く会わない方はいませんでしたけど、昔と比べたら会う機会は少なくなっちゃいますよね。


T:そのかわりスピード感は増してて。僕も今コラボレーションしてるアーティスト、電話とかチャットで話したりはするんですけど、同じ部屋では作ってない人が何組かいて。それが結構普通になってるなぁって感じてます。


b:便利な部分は使いようだとは思うんですけどね。どういう風にアルバムを作りたいのかっていう。例えばバンドが「せーの」で録ろうとしたら、会わないとできないですし。アルバム作りの手法として選択肢が増えたっていうのはあると思います。前だったら近くにいないと作れないものが、すごく遠方に住んでてもできたりだとか。歌素材だけデータで送ることも可能ですから、そうなると本当にどこでも一緒にやろうと思ったらできるんですよね。その便利さはあると思います。


T:会って作るのと会わずに作るの、どっちの方が好きですか?


b:はじめて一緒に作らせていただく人だったら会えたほうが嬉しいですよね。きっと、一緒に作ろうとしてる人って、自分としてもすごく興味がある人だと思うので。それで会えないっていうのはちょっと切ないかな。機会があるんだったら会いたいですね。4枚目のアルバムのときに結構色んな人に曲を書いてもらったんですよ。イヴァン・リンス、アル・クーパー、ジェシー・ハリス…。振り返ってみると、直接会って「こういうアルバムを作りたくて…」っていう話ができたことはすごく貴重だなと思いますね。今は会わずにできることが増えた分、直接会って話すこと自体が難しくなってるかもしれないので。




T:そうかもしれませんね。音楽の聴き方はどうでしょう?何を使って聴くことが多いです?


b:パソコンですかね。スマホも使いますけど。私音楽好きなんですけど、実はそんなに聴かないんです。歌を歌うのが好きなのかな。いつも聴いてないと、みたいにはならないので。読書のほうが好きです。


T:へえ。本読まれるんですか?


b:大好きなんですよ。本の虫ですね、活字中毒。


T:どういうジャンルが好き?


b:物語も好きですし、詩集とかも読みます。


T:読書の時も音楽は流さないんですか?


b:流さないです。音が耳に入ってくるとメロディーとかプレイが気になっちゃって、活字が追えないんですよ。それで訳わからなくなっちゃう。どちらかというと無音がいいんですよね。


T:じゃあ家にいるときに読む感じ?


b:そこが難しいんですよ。家って家族もいて色んなことしてるので、音がないってことはまずないじゃないですか。TVがついてたり、音楽も流れていたり。そうなると、ゆっくり活字にむかえなくなるんですよね。一番落ち着いて読めるのは台所(笑)。音は聞こえるけど少し隔たりがあるというか。


T:一番没頭できるんですね。


b:死ぬまでに、存在する本全部は読めないじゃないですか、音楽や映画もそうですけど。だから「ペース上げてかないとな」って思うんですよね。もう少ししたら目も悪くなると思うし、それならちっちゃい本は早めに読んでおかないといけない、とか(笑)。


T:あはは(笑)。じゃあ文庫から攻めてるんだ。どっちかというと僕は、本は面倒に思っちゃうんですよね。本から入る情報って、映画とかとどう違います?


b:本はある程度読む習慣がないと読めないと思うんですよ。映像はぼーっとしてても入ってくるじゃないですか。なので、目が悪くなったとしても情報が多いので何かしらキャッチができると思うんですけど、活字は自分で読んで想像していかなきゃいけない。ある程度の長編とか昔の名作とかになると「読むぞ!」っていう気合いがないと、読破できないと思うんですよね。


T:確かに「読もう!」ってならないと読まないな、なかなか。


b:難しい本とか最初は抵抗あるじゃないですか。だけど読み進めていくと、興味深いことが書いてあったりするんですよね。それはある程度エネルギーがないとできない。


T:それこそ本の中でもグルーヴとかあるじゃないですか。この人の文章掴みづらいなぁとか。


b:ありますね。独特の文字のリズムが病みつきになったり、この人独特なんだよな〜と思いながらも頑張って読む快感とか。読みやすい文章が良い部分ももちろんあるんですけど、読みにくいものの方が思い出深かったりとか、そういうのは面白いなと思います。私自身も文字を書くので、そういうリズムは気になりますね。


T:自分の作品と照らし合わせたりすることはあります?


b:以前、谷川俊太郎さんっていう詩人の方と詩の朗読をさせていただいたことがあって。谷川さんはご自身の詩を、私は自分の歌詞を読んだんですよ。そのときに歌詞と詩は全く違うものだってことを体感したんですよね。歌詞はメロディーがついて、歌ってはじめて成立するものだって感じたんです。詩だとその言葉だけで成り立つ。逆にメロディーとかが全部合わさって成り立つのが歌詞の良さ。同じ言葉でも用途によって全然違うというか、作り方ももちろん違うと思うし。そう考えると世の中には色んな種類の言葉があって奥深いですよね。


T:自分が好きなもので人とセッションして、そういうことを気づける機会ってすごくうらやましいなぁ。今の話を聞くと、アルバムは「birdさんの詩集」と言ってもいいかもしれませんね。


b:そうですね。


T:やっぱり好きなものは自分の音楽にも大きな影響を与えますよね。常に作品作ることを考えてるから、どんなものでもヒントになる。


b:アウトプットが音楽なわけじゃないですか。だから何を体験しても最終的には音楽になっていくことを考えると、無限だなぁと思いますね。


T:同感です。





「“言葉とリズム”が混ざり合って生まれる“波形”の心地良さを追求した作品」





T:今回のアルバムは冨田さん(冨田ラボ・冨田恵一)のプロデュースだとお聞きしたんですが、冨田さんとは結構前から一緒にやってらっしゃるんでしたっけ?


b:遡ると私の3枚目のアルバムからなので、15年以上のお付き合いですね。フルでプロデュースしてもらうのは今回で3枚目になるんですけど、前作の『Lush』っていうアルバムを作り終えた後、もう1枚冨田さんと作りたいな思ったんです。次は「言葉とリズム」をテーマにして作りたいっていう話をして、前作ができてからそれほど期間をあけずに今回のアルバム制作に入りました。タイミング良くできあがりが20周年に合ってよかったなとは思ってます。


T:20周年を意識して作ったわけじゃないと。


b:そうですね。普通に新しいアルバムを作ろうと思って。


T:「言葉とリズムをテーマにする」っていうのは、どんなきっかけがあって?


b:長いこと歌詞を書いてきてるんですけど、書けば書くほど日本語の多様性っていうか、響きや使い方が限りないなと思って。言葉とリズムの組み合わせをもっと心地よくできるんじゃないかな、もっと突き詰めてみたいなっていうところから始まりました。それを冨田さんにお話したら、「birdさんがそう思うんだったら、先に歌詞を書いてもらっていい?」って言われたので、歌詞から書き始めて。


T:詩が先行の場合、メロディーやリズム、譜割りとかは全く考えずに書くんですか?


b:私は一応なんとなくはあるんですよ。詩の構造と、メロディーの手前みたいなものはあるんです。でもそれはそのまま自分の中に置いておいて、言葉だけ送ります。


T:そこに音が乗って返ってきたときに「歌詞の解釈がちょっと違うなぁ」とか感じることはないんですか?


b:自分の発想になかったものが出てくることに対しては、誰かと一緒に作ってる楽しさを感じます。自分でなんとなく考えたものとは全く違うものが上がってきたときに、共同作業の喜びというか、そこがいいんですよね。


T:セッションして楽しいって感じですね。


b:☆Takuさんはあります?返ってきたものがイメージと違うってこと。


T:ありますね。イメージと違うときは話しますけどね。どっちかっていうと僕、どういう効果が得られるかとかを考えるタイプで。伝えたいトピックがあったらそれが一番伝わるにはどうしたらいいかとか。構造的に考えてそういう説明をして、LISAとケンカになったりします(笑)。LISAは直感的なタイプなので。


b:そういうの「チーム」って感じがしていいなぁと思います。


T:そうですね、バンドなのでそういうのはよくありますね。よくケンカしてます(笑)。


b:ケンカできるっていいですよね。思ってることを言えるっていう。


T:そうですね。気付かされることもたくさんありますね。「リズム」っていうのは、言葉のリズムでもあり音楽のリズムでもある感じですか?


b:そうですね。言葉の発音の組み合わせでおこる響きと、音楽のリズムと、それを歌い手としてどういう風に歌うのかっていうのは曲ごとに違って、すごく奥深いなと思っていて。どこで歌えば一番心地よく聴けるんだろうって、すごく試行錯誤しながら今までやってきたんです。今回はそれが、スローな曲もアッパーな曲も「今まで考えてきたことが出せてるのかな」っていう気がします。トラックがすごくかっこよかったとしても、歌のリズムひとつで一気にダメになっちゃうこともあると思うんですよ。そのリズムの混ざり具合って本当に色々あるし、それを言葉の響きによってどういう風に着地させていくのかっていう面白さもある。日本語って割とパキパキしてるので、言葉の選びようによってどういう風にうねるのかとか、キリがない楽しさがある気がします。


T:birdさんの場合、独特の心地良さが声に出るじゃないですか。発声の仕方がすごいな、birdさんならではだなっていうのが。言葉とリズムにそれだけこだわってるからこそなんだなって思ったんですけど、そこから「波形」っていうものにはどういう風に繋がっていったんですか?


b:アルバムタイトルになってる1曲目の「波形」っていう曲は、まさに歌詞先行で一番最初に作り始めた曲なんですよ。さっき話に出た「巻き戻してください」とかの時代には、波形を目にすることはあまりなかった思うんです。でも今は、ミュージシャンなら画面で音の波形を見ることはすごく普通のことですよね。


T:見ないことのほうが珍しいです。


b:ミュージシャンじゃなくても今はスマホでなんでも録れるし、そこで全部波形になるのですごく身近なものになってる。そしてその波形自体も、色んな音が組み合わさってその空間が成立している。そのことがすごく興味深いなと思って。曲やアルバムは、私の声と冨田さんのサウンドの組み合わせでできているので、そういった「波形の組み合わせの絶妙感」っていうのがいいなぁと思って、アルバムタイトルにもしたんですよね。





T:冨田さん以外の方が書かれた曲もすごく印象的ですよね。楽曲提供を受けた3人の方とははじめて一緒に作ったんですか?


b:はじめてですね。今回のテーマをお伝えして曲を書いてくださったんですけど、ものんくるの角田さんには先に詩を書いて欲しいって言われて、送った詩にメロディーを乗せてもらったんです。「これは詩が先じゃないとできない曲かもしれないね」って冨田さんとも話してたんですけど、そうやって言葉先行で生まれた「Know Don't Know」が、同じく歌詞先行の「波形」と一緒に入れられたっていうのは良かったですね。




b:アルバムの統一感はプロデューサーの冨田さんならではだなという感じです。冨田さんとやりとりすると、どんどん音がアップデートされていく過程を一緒に体感できるんですよ。それが冨田さんの頭の中を少しだけ覗かせてもらってるような感じですごく面白いです。


T:作るときにサウンドのジャンルのことを話したりはするんですか?


b:あんまりしないですかね。冨田さんも私も色んなタイプの音楽をやっていてジャンルのくくりではあまり考えていないので、今回のアルバムも色んな要素が組み合わさっているかなって思います。


T:確かに。シティポップテイストの曲もあれば、トラップじゃないんだけどトラップ的なアプローチのリズムが入ってたり、色んな要素が入ってるなと思いました。ボーカルの乗っかり方も今までにない感じだし心地いいなっていう印象でしたね。


b:聴けば聴くほど、「ここにこんな音が入ってる」とかどんどん面白く聴けると思うんですよ。私もそうだったので。だから繰り返し聴いてもらって、たくさん味わってもらえたら嬉しいなと思います。




【リリース情報】


bird『波形』




○発売日:2019年3月20日

○価格:¥3,000+税

○品番:MHCL-2800

○発売:(株)ソニー・ミュージックダイレクト


○トラックリスト

1. 波形

2. ミラージュ

3. 記憶のソリテュード

4. Know Don't Know

5. GO OUT

6. Sunday Sunset

7. Hakeinterlude

8. 雪のささやき

9. 3.2.1

10. スローダンス


【ライブ情報】


アルバム発売記念『 bird“波形”ライブ 』 

4月19日(金) Billboard Live TOKYO

5月2日(木・祝) Billboard Live OSAKA


東京公演

[1st stage] 17:30 Open / 18:30 Start

[2nd stage] 20:30 Open / 21:30 Start


サービスエリア¥7,400 / カジュアルエリア¥6,400(1 ドリンク付き)

Club BBL 会員先行 : 2/20(水)11:00〜

一般予約受付開始 : 2/27(水)11:00〜


大阪公演

[1st stage] 15:30 Open / 16:30 Start

[2nd stage] 18:30 Open / 19:30 Start


サービスエリア¥7,400 / カジュアルエリア¥6,400(1 ドリンク付き)

Club BBL 会員先行 : 2/20(水)11:00〜

一般予約受付開始 : 2/27(水)11:00〜


公式HP:http://www.bird-watch.net/


written by Moemi



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