ゲームオブスローンズ最終章第5話 大虐殺のトリガーになったものとは? デナーリスの心の軌跡を読み解く【ネタバレあり】

【bfm海外ドラマ部】サーセイとデナーリス、マッド・クイーンの座はどちらに? 登場人物の心の軌跡を☆Takuが紐解く。
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2019.05.13 12:10

Written by ☆Taku Takahashi(Twitter:@takudj


※ネタバレあり。シーズン8 第5話を視聴した上で読んでください。


『ゲーム・オブ・スローンズ』にでてくるヒールキャラの中でも、サーセイ・ラニスターは本当に特殊な存在だ。彼女の政治的な策略や感じの悪い行動を、我々は幾度となく目の当たりにしてきた。にも関わらず、彼女がピンチになると、いつのまにか感情移入をさせられる。追われている時は助かってほしいと思わされたり、大聖堂をワイルドファイヤで大爆発させたあのシーンすら、何故か観てる僕らもスッキリした気持ちにさせられた。無実な人も巻き込んでしまう大量虐殺にも関わらず。そういう意味で彼女の魅力は不思議だ。




最終章の第5話。タイトルは「The Bells」。狂王に変貌したサーセイが、ワイルドファイヤで街をガンガンに燃やそうとする、そうイメージしていた人は多かったと思う。僕の予想(というより願望)も、緑の炎を放つサーセイをジェイミーが阻止するものだった。でも僕らが目にした光景は、赤い炎で燃え盛るキングスランディングの街だった。


物語の前半、ヴァリスの裏切りを知りデナーリスはドラゴンの火あぶり処刑を決行する。その時ヴァリスが「自分の決断が間違っていたのを切に願います」とティリオンに託す。いくらデナーリスが精神的に最悪な状態だったとしても、その後の彼女の行動は誰も予想していなかった。というよりそうなって欲しくないって思ってた人が多かったのでは?番組を見ながら友人とツイッターでやり取りをしている時も僕は「暗黒に引っ張られても、絶対にダニーは民を犠牲にしないよ」と言いきった。予想は見事に外れて後味の悪い終わり方をするんだけど(苦笑)。


彼女の行動を肯定をするのではなく、キャラクター・アーク(人物の心の軌跡)の視点で振り返ってみようと思う。まずはヴァリスの処刑。ジョンの出生のリークだけでなく、おそらく彼は彼女を毒殺しようとしていた。自分が雇っていたマーサという小鳥(女の子)に、デナーリスがご飯を食べていないと報告された時「晩御飯でも試そう。人に見張られるのは当然で、大きな報酬は大きなリスクと共に起こる」と伝えている。人が入ってくる時に手紙を隠蔽するだけでなく指輪を外したのもその伏線だと思う。もしヴァリスをあそこで処刑していなかったら彼女は暗殺されていたかもしれない。


虐殺へのアークはここから数カ所ある。デナーリスが焚き火の前でミッサンデイの遺品の首輪をグレイワームに渡す。彼は怒りの表情と共に首輪を炎の中に投げ捨てる。僕はアンサリードの風習はわからないが、この行為はこのあとの2人の行動を予兆しているように見える。


ジョンとの会話。彼女は「ウェスタロスの民があなたの出生を知ったら、彼らはあなたのことをもっと愛する。私は民から愛を向けられていない。彼らが私に持つのは恐怖のみ」とジョンに伝え、ジョンは「君を愛している、どんなことがあっても君が女王だ」と返す。その後デナーリスは「あなたにとって私は女王。ただそれだけ?わかったわ。恐れでいいわ」と言い放つ。この時点である程度、彼女は相手に恐怖を与えるしかないと自覚している。なんだかんだミーリーンの統治も最終的にはドラゴンの恐怖の支配だったりもするので、彼女の選択肢の中にあったのは間違いない。ドロゴンファイヤの虐殺をいつ決断したのかは不明なのだが。


キングスランディング側の降伏のサインでもある「The Bells」こと鐘の音はサーセイの意思ではなかったとしても、完全にラニスター側は戦で「詰んだ」状態にいた。デナーリスは勝利を確信する。しかし、彼女の気持ちは浮かばれていない。むしろ、あまりのあっけのなさからか、復讐の気持ちがおさまらない。そして、まだ自分が持つ恐怖を植え付けられていない。そんな表情をしていた。僕はそのままレッド・キープにいるサーセイへ直接攻撃にいくと思っていた。でも実際はそうでなく、彼女の一方的な大量虐殺が始まる。それにトリガーされるかのようにグレイワームも丸腰の相手を虐殺し始める。


感情的になっていたのは確かだが、デナーリスの心理状態はある程度理性的だったし、計算もできる状態だった。そういう意味では父の狂王よりも、もっとさらに醜く冷酷だ。ずっと彼女を信じていたデナーリス支持者にとって胸が引きちぎられるようなシーンだったと思う。


今回の状況はシーズン4でブランが見た、キングスランディングの上空から見えるドラゴンの影のビジョンそのもの。そして真っ白な雪が浮かんでいる鉄の玉座(このビジョンはシーズン2でデナーリスも見ている)がそのまま起こっている。真っ白な雪は、実は燃えまくったあとの白い灰だったと誰が予想できたか。これがシーズン2から決まっていたことだったのかは、僕らには現段階では知るすべはない。





後味が悪い度合いがあまりにも大きすぎて注目がデナーリスにいってしまいがちだが、他にも大きな出来事が起こった。マウンテンとハウンドの決戦『クレゲイン・ボウル』の実現。これはファンにとって大きなイベントだった。結末はハウンドがトラウマだった火の恐怖の根源の兄を、皮肉にも火の中へ入って共倒れで倒す。これは公式のメイキングで語られるまで、僕もわからなかった。


今回いちばん感情移入をさせられたのがハウンドとアリアの生涯の別れのシーン。最後の最後でアリアはハウンドを本名で呼んでいる。『ゲーム・オブ・スローンズ』では、人が付けた悪い印象の呼び名でなく本名で呼ぶときの意味は深い。ハウンドの本名はサンダー・クレゲイン。アリアは最後に「サンダー、ありがとう」と言って別れる。そして彼女は「今日が死ぬ日ではない」から「生きる」という感覚に移ったように感じさせられた。


大虐殺で起こる醜いことをありのままに表現する。このドラマの真骨頂が久しぶりに見られた。民間人が斬られたり燃えたりするシーンが生々しく描かれていたり、虐殺やレイプなど、歴史的に戦場で起こってきた醜い部分をジョンとアリアの視点から今回はしっかりと見せていった。アリアとジョンの視点から見せることによって、観ている側も彼らが今後デナーリスへどんな感情を持つか?というのが理解できる。


そしてサーセイとジェイミーの最後のシーン。僕は最後にジェイミーが第1話で言った台詞「愛ゆえに」でサーセイを殺して自分も死ぬ、そう予想していたが予想は的中せず。最後に言ったのは「他は何も関係ない。僕らだけだ(Nothing else Matters. Only Us)」という言葉。どこかで言った台詞のように感じて、ふたりの会話を探しまくってもなかなか見つからず。そこで思い出したのがシーズン6の第8話。ジェイミーとエドミュア・タリーの会話。チェックしてみたら、見事に的中。ここでジェイミーは「城にいる奴らもどうでもいい。サーセイだけだ(People in the castle don’t matter to me. Only Cersai」と言ってる。最後の台詞はおそらくここをベースにしていると思う。実は先週の丸屋さんとのトークショウでもこのシーンの話を持ち出して、このシーン、意外とヒントあるんじゃない?って無責任に言ってたのが、見事に当たってしまった。


ちなみにこのエピソード、他にもひっかかるシーンがある。アリアが「東はエッソス、西はウェスタロス。ウェスタロスの西は?誰も知らない。見てみたい」と語っている。もしこれが最終話のアリアの「生きる道」となったらこのエピソードは大きなターニングポイントになったということになるが、真相は来週の最終回までわからない。


納得がいかない展開でフラストレーションが溜まっている人。意外な展開を楽しんでいる人。過去との繋がりの発見を再確認している人。色々な感情が交差する最終章。皆の『ゲーム・オブ・スローンズ』という旅は間も無く終わる。最後の「ビター・スウィートなエンディング」は人々にどんな感情を生むのかが楽しみだ。



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