block.fmライターが選ぶ「ベストアンダーグラウンドリリース 2019」

CRZKNY別名義、舐達麻、Vegynなど国内外から2019年の音楽シーンに衝撃を与えた作品5タイトルを選出!
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2019.12.28 10:00

有名無名、様々なアーティストのリリースが行われた2019年。その中でも今回は来年、さらなる飛躍が予想されるシーンにアンダーグラウンドから衝撃を与えたアーティストたちの作品をピックアップしてご紹介。



CRZKNY別名義によるゲットーハウス音源集 - DJ ANACONDA『ANACONDA TRAX vol​.​1』  


2018年は燃え盛る地獄のごとき、業火を搭載した進化系ガバアルバム『GVVVV』で話題をさらった鬼才CRZKNY。2019年も圧倒的に多作な彼は様々な音源を発表してきたが、その中でも最も印象的だったのは、別名義プロジェクトDJ ANACONDAとしてリリースした『ANACONDA TRAX vol​.​1』だ。


シカゴゲットーサウンドをリスペクトしたゲットーハウス音源集は、グルーヴ、アシッド音、歪んだキックなどCRZKNY節の効いたヘヴィーウエイトなサウンドで彩った完全フロア爆撃曲全13曲で構成。オススメはリード曲の「MY DICK IS ANACONDA (version)」 、パーカシッヴなリズムが疾走する「HARDCORE」、危ないアシッドベースラインが毒っ気抜群のフロアキラー「CRAZYMAN」。なお、CRZKNYは先述の『GVVVV』に通じる最新アルバム『WHITE BOX』を2019年12月にリリースしているのでそちらもチェックしておこう。



インドネシアが生んだ狂気のガムランハードコア - Gabber Modus Operandi『HOXXXYA』  


今年、アジアのアンダーグラウンドシーンで産声をあげ、世界のコアなクラブミュージックリスナーに衝撃を与えた作品のひとつといえば、インドネシアを拠点にするユニットGabber Modus Operandiが上海のレーベル「SVBKVLT」からリリースしたアルバム『HOXXXYA』だろう。


インドネシアのポップスであるダンドゥットや伝統音楽のガムランを、凶悪なインダストリアルサウンドと融合させた異形のクラブミュージックは、とにかく速い、重い、そしてヤバいというアンダーグラウンド好き歓喜の三拍子が揃った問題作だ。オススメは高速ガバチューン「Semeton 10 Ton」、クレイジーなほどに多幸感満載のトランス「Trance Adiluhunxxx」、民族音楽を1番ありえない形でハードコア化した「Sangkakala III」あたり。伝統的な儀式音楽に現代のダンスミュージックの要素が強引にぶち込まれたことで生まれた奇跡のアンダーグラウンド音源集。まだ未体験の方はこの機会に是非。飛べます…。





大麻のあるストリートライフをリリカルに描写したヒップホップ青春白書 - 舐達麻『GODBREATH BUDDHACESS』 


埼玉県熊谷市を拠点とするヒップホップクルー、舐達麻が、今年、リリースした2ndアルバム『GODBREATH BUDDHACESS』。4年ぶりとなるアルバムのリリース日は大麻の隠語である”野菜”の日=8月31日にリリースされたもの。アルバムカバーアートからも一目でわかるとおり、彼らがラップするのは大麻や過去に犯した罪に関するトピックが大半だ。しかし、その全てがリリカルにラップされていて、ひとつのアートフォームとして完成しているといっても過言ではないだろう。


リアルなストリートライフを詠う舐達麻の楽曲はかつてのMSCを彷彿とさせるといわれるが、実際に聴いてみると確かにそのとおり。流行のトラップとはまた違った、基本的にジャジーなサンプルネタのワンループで構成されるオールドスクール感の強いトラックは、Nujabesや昨今のLo-Fiヒップホップのようなインストヒップホップ好きににも刺さるだろう。オススメは逆回転サンプルにプリズンと空耳?してしまう声ネタと「俺は輩とは違う、ラッパーだクソ野郎〜」から始まるくだりがパンチラインすぎる「LIFE STASH」と舐達麻入門に最適なNujabesもサンプリングしたGigi Masin「Clouds」ネタの「FLOATIN’」。



“グリッチエモい”エレクトロニカ・トラップ - Vegyn『Only Diamonds Cut Diamonds』 


リリース時期としては2019年11月と年間ベストに入れるには遅い時期ではあるが、サウスロンドン拠点のVegynによるデビューアルバム『Only Diamonds Cut Diamonds』は、2020年以降のインストヒップホップの新しい潮流を生み出しそうな予感に溢れていたため、選出。


Frank Oceanのアルバム『Blonde』にも参加していることからもその高い音楽センスに定評があるVegyn。本作ではまずリード曲「Blue Verb」、そして「Debold」という曲がとにかくエモい。そして、エモいだけでなく、エディットセンス抜群のグリッチ的なアプローチが施されたトラップ、ビート曲になっている。特に「Debold」はTychoを思わせるリリカルさにWARP周辺のIDM感が見事に合わさった曲で、思わず“グリッチエモい”という言葉で形容したくなる珠玉の1曲だ。2000年代に流行したIDMヒップホップ、グリッチヒップホップブームから早20年。来年はそろそろ2020年版の”Prefuse 73”が登場してもおかしくない。そんな風にこのアルバムを聴いていると思わされる。今後のVegynの飛躍に期待だ。



大阪から遅れてやってきた『KID A』への回答的作品 - Ayu Okakita『Sayonara Dance』 


2000年代初頭はメジャーシーンで活躍し、2004年に渡英。その後、エクスペリメンタル系ベースミュージックユニットのNedryのメンバーとして、Sonar、Roskilde Festivalといったヨーロッパを代表するフェスにも出演した経験を持つ、大阪在住のシンガーソングライター、Ayu Okakitaによる11年ぶりとなるソロアルバム。


RadioheadのThom Yorkeを思わせるどこかアンニュイさ漂うかつての歌唱スタイルはそのままに、本作ではエレクトロニカ、トリップホップ、ニューウェイヴ、インダストリアルのようなエレクトロニックミュージックからアーコスティックといった様々な音楽を取り入れ、独創的な世界感を展開。その意味でRadioheadの名盤『KID A』に対する大阪からの遅れてやってきた回答といえる作品だと個人的には考える。そんなアルバムのオススメはタイトル曲でドラムンベースビートを取り入れた「Sayonara Dance」、OPNのようなエクスペリメンタル系電子音響音楽好き必聴の「Sento」と「Moonlight」。なお、今年11月にはUKドラムベースシーンの巨匠、dBrigeによる「the lights are extinguished」リミックスを収録したEP『Yoru no Onso』もリリースされたばかり。そちらもあわせてチェックしておくべし!



written by Jun Fukunaga



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