全編LA制作したというBAD HOPの最新EP『Lift Off』。スタジオワークの模様がオフィシャルアカウントからアナウンスされており期待が高まるなか、新たにMike WiLL Made-It(マイク・ウィル・メイドイット)、 Mustard(マスタード)、Murda Beatz(マーダー・ビーツ)の姿が。
オフィシャルのアカウントからその制作の様子が随時アップされているBAD HOP。ちょうど昨年の今ごろは武道館公演を行い、満員のオーディエンスを沸かせ大歓声を浴びていた彼ら。日本の音楽業界のなかで武道館は依然、聖地としての格を持っている場所。武道館公演はアーティストにとってひとつの成功の指標であるといえる。
しかしスター街道をハコ乗りしながらドリフト攻めしまくる彼らの野望は止まらない。全国5つのZEPP単独公演を成功させ、TV番組『クレイジージャーニー』へ出演し、地元川崎への立ち返りを経て、ZEPP単独公演ツアーのファイナルでは2020年に横浜アリーナでのライヴを宣言。そしてEP『Lift Off』制作へ着手と、勢いは増す一方。
BAD HOPの最新EP『Lift Off』はその名の通り“MADE IN KAWASAKI”のBAD HOPというロケットが、新たな制作拠点となったLAから発射される期待の1枚だ。
今夏、BAD HOPがレコーディングするスタジオにMigosのQuavo(クエイヴォ)が訪ねてくる様子がアップされるなど話題を集めた。11月に入り、『Lift Off』のアートワークが公開。そしてさらなる参加アーティストの情報がアナウンスされた。
BAD HOP
— BAD HOP (@badhop_official) November 3, 2019
New EP「Lift Off」
全曲をLAにて制作したNew EP、
「Lift Off」のジャケットが遂に公開!
これまでの作品を超えるクオリティとなっているので、今後の情報公開を是非お楽しみに!#badhopworld pic.twitter.com/2k2lUQfgbH
LAのスタジオでのレコーディング中にMigosのQuavoが遊びに来てくれました🌐🌐
— BAD HOP (@badhop_official) August 7, 2019
メンバーも今までに経験のない環境で刺激を受け、充実した製作となりました🔥#BADHOPWORLD pic.twitter.com/ZXvU5tz8YJ
日を追って新たに公開された各動画ではヒップホップアーティストのプロデュースを始め、数多くの楽曲をBillboardチャートに楽曲を送り続けている超売れっ子、Mike WiLL Made-It、Mustard、Murda Beatzがスタジオ入りし、BAD HOPの面々と制作する様子が映し出されており、制作にジョインしたことをアナウンス。映像のバックトラックにはそれぞれが制作したと思われる楽曲が使われている。これに彼らのラップが乗っかったら、どんな仕上がりになるのか。マジで楽しみすぎる。
BAD HOP
— BAD HOP (@badhop_official) November 9, 2019
NEW EP「Lift Off」収録曲
ICHIMANYEN(Prod. Mike WiLL Made-It)
LAのスタジオにてMike WiLL Made-Itと曲を制作しました🌐
配信までお楽しみにお待ち下さい✈️#BADHOPWORLD pic.twitter.com/oXbNKu8ud0
#BADHOPWORLD 🌎🌎🌎 https://t.co/ql2spp7bTq
— YZERR (@yzerr_official) November 7, 2019
BAD HOP
— BAD HOP (@badhop_official) November 5, 2019
NEW EP「Lift Off」収録曲
JET (Prod. by Murda Beatz)
LAのスタジオにてMurda Beatzと曲を制作しました🌐
この曲はNEW EP「Lift Off」に収録されます🚀#BADHOPWORLD@murdabeatz_ pic.twitter.com/SEUqrXjUgA
この話題でLINEをやりとりした僕の実弟(音楽&カルチャーオタク)いわく、このヤバさを例えると「日本人アーティストのEPに最盛期のSwizz Beatz、Timbaland、Just Blazeのプロデュース曲が入るのと同じ」。
いずれもヒップホップシーンにおいて、トレンドを築いてきたスーパープロデューサーたちである。数々のヒット作に携わってきた彼らに共通するのは一聴して、「これ、Swizzじゃね? 」とか「Timbalandだな? 」と分かる独特のリズム感やクセの強いトラックメイキングが特徴。Just Blazeに至っては曲中に「ジャスブレーイズ! 」と入っていることが多いので分かりやすい。プロデューサーによるサウンドタグは今やお約束なので珍しくないが、彼らはその走りという印象がある。
2000年代のヒップホップ、ひいてはポップミュージックに影響を与えた、彼らに代わる2010年代の御三家がMike WiLL Made-It、Mustard、Murda Beatzと言っても過言ではない。
BADHOPの新しいEP
— T-Pablow (@TPablow) November 8, 2019
"Lift Off"収録曲
JET(Prod. Murda Beatz )
Poppin(Prod. Mustard)
早く感想聞きたい🦅#BADHOPWORLD pic.twitter.com/4XOPpnY6r1
Mike WiLL Made-ItはGucci Maneを始め、Kendrick Lamar、Big Seanなど数々のビッグネームを手がけており、日本でも広くその名が知られるようになったのはSwae Lee(スワエ・リー)がお兄ちゃんであるSlim Jxmmi(スリム・ジミー)とタッグを組んだヒップホップデュオ、Rae Sremmurd(レイ・シュリマー)のプロデュースワークだろう。Rae Sremmurdを世に知らしめた「Black Beatles ft. Gucci Mane」はMike WiLL Made-Itの仕事だ。
2017年は2枚組のソロ名義のアルバムをリリース。参加アーティストはRihanna、21 Savage、Lil Yachty、Migos、 Big Sean、Futureとオールスターなメンツが集まっている。そして、映画『クリード 炎の宿敵(原題:CREED Ⅱ)』のサントラを全面プロデュース。こちらもヒップホップアーティストが多数参加し、話題となった。
アルバム『DAMN.』が同年にピューリツァー賞を受賞、2018年のフジロックフェスティバルに出演し、NHKの番組に特集されたことでヒップホップファンだけでなく日本で広く知られることとなったKendrick Lamarの「HUMBLE.」もMike WiLL Made-Itメイドである。
YGによるサウンドタグでお馴染み、LAはサウスセントラルのプロデューサー。もともとはDJ Mustardとして活動していたけど、最近は冠の“DJ”を取りMustard名義になっている。誰もが知っている代表的な作品をあえて挙げるとすれば、Tygaの「Rack City」だろう。不穏なシンセサウンドとTygaによって繰り返されるフレーズが耳に残るヒットトラックだ。
YGを始め、TygaやTy Dolla $ign、Kid Ink、French Montana、といったハードなラップアーティストやOmarion、Trey Songz、Jeremih、Tinasheといったシンガー、RihannaやBritney Spearsといったビッグアーティストまで、幅広い仕事をこなす西海岸のニューアイコン。
2014年に1stアルバムとなる『10 Summers』、2016年に2ndアルバム『Cold Summer』、そして2019年6月に3rdアルバム『Perfect Ten』をリリース。これらの作品はYGや故・Nipsey Hussleの客演など地元への愛を忘れず、Playboi Carti、Yung Thug、A$AP Rocky、Migosなど参加したメンツはBillboardチャート常連の面々。
Mustardは西海岸特有のG-Funkyなウエストコーストサウンドを軸に、サウスヒップホップのダーティなトラップサウンドに落とし込み、アップデートしている印象がある。『Cold Summer』からMigosの「Pure Water」なんかはまさに今のMustardが感じられる。本人もノリノリで出演。
カナダはオンタリオ州出身の気鋭プロデューサー。カナダといえば、Drakeである。2016年リリースのDrakeの『Views』収録の「With You feat.PARTY NEXT DOOR」を手がけ、2018年リリース『Scorpion』収録の「Nice For What」もMurda Beatzがプロデューサーを務めた。
MigosやTravis Scott、Nicki Minajと6ix9ineの「FeFe」など、ヒップホップ、トラップアーティストを中心に起用されている人気アーティストで、海外のヒップホップ好きなリスナーにはすでにお馴染みのプロデューサーである。
「Nice For What」でのLauryn Hillの「Ex-Factor」のネタ使いやPARTY NEXT DOORと元One DirectionのZyneの共演曲「Still Got Time」に見られるように、独自のポップセンスで構成される、キャッチーさを伴った中毒性の高いループトラックが特徴。ジャンルという概念を取っ払い、広い裾野にリーチするまさに時代の寵児だ。
Lil PumpとSheck Wesを客演に迎えたソロ名義の「Shopping Spree」では、自身も出演し、タイトルのShopping Spree=“爆買い”の名のとおり何もかも金で買う(赤ん坊すら)胸糞キャラを好演。
お金を題材にしたMVといえばDrakeの「God's Plan」だが、まるで逆を行くこいつらクズだわ(褒)。日本だったら炎上間違いなしのMVにマッチした、Murda Beatzのトラックのアクの強さが光る。それにしても、Lil PumpとSheck Wes、Murda Beatzの組み合わせはバズい。
先述のSwizz Beatzたちのようなスーパープロデューサーたちが活躍した最盛期よりも、今はサブスク配信サービスの普及も手伝い、プロデューサーにスポットが当たりやすくなっているように思う。Drakeのようなトップアーティストともなれば、1曲をコーライティングする(ひとりではなく、複数人のプロデューサーチームが楽曲を制作)ことが多い。リリースされた楽曲のクレジット表記にリスナーやメディアの関心が集まっている。
映画で例えるなら、監督とか製作総指揮に誰が関わっているかをチェックして、観る作品を決めるのと同じ具合。今や、Spotifyなどのサブスク配信サービスでも詳細メニューからクレジットをチェックできるし、リリースされたアルバムからいち早く詳細なクレジットを紹介する海外メディアの記事が注目を集めたり、音楽の世はまさに群雄割拠の大製作者時代なのである。
BAD HOPの『Lift Off』EPに参加した3人に、Metro Boomin(メトロブーミン)が入れば四皇。さらにPi'erre Bourne(ピエール・ボーン)が加われば五影。とは呼ばれていないし、浸透しない形容だろうけど、マジでそれくらいヤバイ。
稼いだお金で、川崎からどんどん自分たちの世界をスケールアップしている彼ら。(普通に考えたら、このオファーめっちゃお金かかってると思うんだけど)。
#BADHOPWORLD のタグで拡散されている一連の海外の動きを見るに、本格的な世界進出に向けて“離陸”の準備を進めているBADHOP。映画『ワイルドスピード』シリーズのようなド派手アクションをカマしてくれそうだ。
(2019年11月12日 追記)
新たにBAD HOPからアナウンスされた参加プロデューサーとしてWheezy&Turboが追加。EP 『Lift Off』に収録される楽曲のうち、Wheezyが1曲、Wheezy&Turboとして1曲、プロデュースを担当したようだ。彼らは現在進行形のアトランタサウンドを作りだしているコアメンバーである。
BAD HOP
— BAD HOP (@badhop_official) November 11, 2019
NEW EP「Lift Off」収録曲
Dead Coaster(Prod.Wheezy)
Foreign(Prod. Wheezy & Turbo)
LAのスタジオにてWheezy&Turboと曲を制作しました🌐
近いうちに配信日など詳細の発表がありますのでお楽しみに✈️#BADHOPWORLD@1TurboTheGreat @wheezy5th pic.twitter.com/TsEK7XicbL
TurboはT.I.の2017年にGrand Hustle Recordsとサインし、2019年現在は大手レーベルWarnerとも契約。Lil'BabyとGunnaのコラボミックステープ『Drip Harder』のプロデュースやTravis Scott『Astro World』収録の「Yosemite」のプロデュースを手がけたことで知られる。
(11月15日追記・修正)※当初の記事ではDaBabyがアトランタのアーティストであるような誤った表記をしてしまい、多数の読者からDaBabyはアトランタのアーティストではないというのご指摘をいただきましたので追記して修正いたしました。お詫び申しあげます。
WheezyはYoung Thugのサウンドチームとして、Young Thug楽曲のプロデュース、アルバムへの参加を始め、21Savege、Future、Migos、Fetty Wap、Travis Scottといったビッグネームから、TurboとともにLil'Baby、Gunnaなど、イケイケの旬なアトランタ・トラッパーたちをチャートに送り込んでいるヒットメイカーである。
「Lil'」や「Young」のようなラッパーネームのトレンドのひとつなっている「Baby」つながりで、ノースカロライナ州シャーロットのラッパーDa BabyとLil'Babyが共演し、Migosが所属するQuality Controlのコンピアルバム『Control the Streets Volume 2』に収録された「Baby」のもWheezyのプロデュースだ。
Young Thugアルバム『So Much Fun』収録、GunnaとTravis Scottを客演に迎えた「Hot」を始め、収録曲を複数手がけた。またLil'BabyとDa Babyがコラボした「Baby」もWheezyがプロデュース。
それぞれがヒットトラックを連発しているにかかわらず、タッグを組んだらマジで無双。Wheezy&Turboが共同プロデュースしたGunnaの『Drip&Drown 2』はBillboard R&B/HIPHOP アルバムチャートで1位を獲得している。
かねてより、BAD HOPのSNSではWheezy&Turboの姿がチラついており、「え? もしかして」とは薄々感づいていたフォロワーも多いと思う。そんな彼らが正式にBAD HOPのEPに参加というビッグニュース。アトランタ事情に詳しい(国内外問わずヒップホップカルチャー全般に精通しているスペシャリストだが特に)block.fmプログラム『INSIDE OUT』のナビゲーター/音楽ライターの渡辺志保さんもにんまりしているはずだ。
今回『Lift Off』に参加したプロデューサーズへのペイはマジでダイヤモンドを袋で渡すとかかな。もしくは金塊か? とにかく夢がある。ますます期待が高まるBAD HOPの『Lift Off』、心して待とう。
(2019年11月15日追記)
BAD HOPのSNSより、Metro Boominの参加も発表された。EP『Lift Off』は制作ドキュメンタリー映像とともにApple Music限定で配信。
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神奈川県川崎市を拠点とする、8MCによるヒップホップ・クルー。双子であるT-PablowとYZERR を中心に、Tiji Jojo、Benjazzy、Yellow Pato、G-K.I.D、Vingo、Barkのメンバーで構成される。T−PablowとYZERRはそれぞれ「高校生RAP選手権」での優勝経験を持ち、T-Pablowは現在テレビ朝日系列「フリースタイルダンジョン」に初代モンスターとしてレギュラー出演していた。まさに、ここ数年の日本語ラップ・シーンを牽引してきた存在だ。一方、彼らの地元である川崎の工業地帯である池上町は「日本で一番空気が悪い場所」とも言われ、BAD HOPのメンバーも幼少の頃から特異な環境の中で生活を送ってきた。2015年11月には彼らの日常に迫った映像メディアVICE JAPANによるドキュメンタリー・ムーヴィー「MADE IN KAWASAKI」が制作され、彼らへの注目度は上がっていく。
2016年3月には『BAD HOP 1 DAY』をネット上で無料DLのミックステープとしてリリース。その中に収録されたT-PablowとYZERRによるシングル「Life Style」のMVは現在Youtubeでの再生回数が約1100万回を誇り、彼らの勢いの強さを見事に裏付けた。2016年9月には『BAD HOP ALL DAY』を発表。無料配布CDという形態を取り、ゲリラ的に日本全国のアパレルショップやレコード店に配布された。取り扱い店舗には開店前から行列が出来、ネットークションでは高値取引されるなどの事態を起こしつつ、発表後わずか1か月で1万枚以上を配布。BAD HOPの存在感をより一層全国に知らしめる形となった。
2017年9月には初の全国流通となるセカンド・フルアルバム『Mobb Life』をリリース。
このアルバムはiTunes総合チャートで1位を獲得し、その後行われた初の全国ツアーである『Mobb Life Tour』も見事大成功を収めるなどBADHOPの名を一躍日本全土に轟かせた。
2018年4月にはZepp Tokyoにてワンマンライブ「BAD HOP HOUSE」を主催。販売当日に前売りチケットが完売するなどインディーズのHIP HOPアーティストとしては異例となる3000人以上を動員し、大成功を収めた。
その後発表したEP 「BADHOP HOUSE」もiTunes総合チャート1位を獲得するなど、その人気を不動のものとしていく。
そして2018年11月13日、初となる日本武道館でのワンマンライブ”Breath of South”を開催。
異例となる3ヶ月を切った状態での開催決定にも関わらず、チケットは約3時間で完売。
告知からステージング、演出までの全てをメンバー自らがDIYでこなしていき、約8000人の動員数を記録する大成功を納めた。
2019年6月には1ヶ月間に渡るZEPP5大都市ホールツアー「COLD IN SUMMER TOUR」を主催。北海道以外の会場を「COLD IN SUMMER TOUR」ラッピングバスで回るなど、武道館からさらにパワーアップしたプロモーションにより全5箇所のZEPP会場を埋め尽くすことに成功。そして最終公演であるZEPP DIVER CITY 東京にて、2020年、過去最大規模となる横浜アリーナでのLIVE開催を宣言。
川崎から“20代のリアル”をラップに乗せて発信し続けるBAD HOPは今や、日本のシーンにおける一大ムーヴメントとも言える。常識では考えられないようなスピードと、どこにも所属をせずセルフメイドによるプロモーションなど、次々と新しい手法と記録、歴史を築き上げていく彼らの躍進は続く。
written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki
source:https://genius.com/albums/Mustard/Perfect-ten
https://www.complex.com/music/2017/04/murda-beatz-interview-teases-travis-scott-quavo-album
https://www.redbull.com/int-en/5-things-you-should-know-about-mike-will-made-it
https://genius.com/artists/Turbo
https://genius.com/artists/Wheezy
photo:BAD HOP/Breath Official Web Site