Awichインタビュー “弱さ”という毒をも食らう孔雀に。

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ニューアルバム『孔雀』をリリースしたAwichがm-flo ☆Taku TakahashiとTJOがナビゲートする「TCY RADIO」に登場。☆Takuがインタビュアーとなり、アルバムの制作からYENTOWNへの想いまで話を聞いた。
【番組情報】
☆Taku&TJO「TCY RADIO」
毎週金曜日21:00-22:30放送
☆Taku:Awichさん、ずっとお会いしたかった!
Awich:ありがとうございます。
T:ニューアルバム『孔雀』がリリースされるということで、アルバムのコンセプトの前に、まずは「孔雀」という鳥について話を聞きたいんですが。美しいだけじゃなくて特殊なところがあるんですよね。
A:私、昔から孔雀がなんとなく好きなんです。美しくて飛べない鳥って切ないなと思ってて。美しいのは雄だけっていうのも切ない。でも、“孔雀は毒がある虫や蛇を好んで食べる”ってことを最近聞いて「それって私じゃね?」と。アルバムのコンセプトを考える前に作った曲で「毒を持つ蛇を好む孔雀」っていう私のラインがあるんですけど、それが頭の中にこびりついちゃって。前作の『8』は天使のモチーフだったから、正反対の毒々しいものを作ってみたいと思い『孔雀』になりました。アルバムは“毒々しさ”から始まってその後展開が変わっていくので、アルバム全体通してストーリーを楽しんで欲しいなと思ってます。
T:Awichって女性の強さを見せるロールモデルみたいな存在で、毒を持つものすら食べてしまうっていう強さも見えてくるんだけど、ダメな毒というか“弱さ”も食べてるっていう意味もあるのかなと思ったんですが。
A:それ当たり!そういう毒もくらって最終的にどうなるのかっていうストーリーなんですよ。私は強いってよく言われるんですけど、弱いところもめちゃくちゃあって。弱さを認めることが強さなのかなと思います。
T:今回もChaki Zuluさんのプロデュースですが、彼とはどういう風にアルバムを作っていくんですか?曲ができて、“孔雀”っていうテーマが浮かんできたときに、それをChakiさんに話すみたいな感じ?
A:そうですね。今回は脱線してまた戻って、って色々あったんですけど。EPも出してるし。
T:『8』のあと『BEAT』と『HEART』の2枚のEPをリリースして。あの2枚を1つにしたらアルバムじゃないですか。
A:ですよね。アルバムを出したイメージの人もいると思います。ダブルEPっていうのもChakiさんのこだわりで。EPだけ出すのはちょっと納得いかないけど、2枚出したら豪華だよね。8曲でアルバムとは言いたくないし、って。
T:それであの形に。コンセプトやジャケ写も繋がってて良かったよね。
A:それは、私もChakiさんも“宇宙の流れ”を大事にしてるから。いろんなところでシンクロニシティが起こるんですよ。「あれもこれも繋がる」みたいなことが私たちの周りでずっと起こってるんです。だから、最初からプランニングしてた感じなんですけど、実は作り上げたものがパズルみたいにどんどん繋がっていくような感じ。そういうシンクロニシティで遊んでるんです。
T:脱線もシンクロニシティに繋がるってこと?
A:そう。例えば、『8』は今までの私の人生の話だったので、次の作品はどういうストーリーにしようかって話もしたんですけど、作っていくうちにどんどん脱線して。だからストーリーとか考えずにやろうってなったんです。でも今度は徐々にそのストーリーに戻っていく。自分たちが力んで作る部分も、力抜いて作る部分も、すべて正しい方向と正しい順序で行われているって信じて作ってる感じです。いろんな浮き沈みも全て繋がってく。
T:今回のアルバムは「Love Me Up」から始まるでしょ。すでに『HEART』に収録されてるこの曲を1曲目に持ってきたのはどんな理由があるんですか?
A:「悪の力みたいなものに飲み込まれちゃおうよ」っていう感じから始まりたいと思ってて。「Love Me Up」は、曲調はかわいいけど内容は「麻薬のように私を愛して」っていう曲。ビデオも教育番組風だけどバグってたりとか、それこそ“洗脳”だよねって思ったので1曲目に持ってきました。
T:普通だったら「洗脳」を1曲目にすると思ったから、なるほどね。
A:だから「洗脳」の頭で「Love Me Up」がちょっと歪んでいく。それから「洗脳」で“裏の話”が始まる。私も「日本昔ばなし」みたいな話し方で。
T:音も昔っぽい感じにしてるよね。この曲をDOGMAさん・鎮座さんと作ったっていうのもまたやばい。
A:鎮さんは7年前くらいに沖縄でライブ観たときからファンで。DOGMAくんもめちゃくちゃファンなんですよ、私。「洗脳」はこの2人だ、っていうイメージが私の中であって。衝撃のメンバーだけどそれを実現させることができました。
T:この日本の現代社会の窮屈な部分だったり、過剰コンプライアンスだったりに人々が洗脳されてるというか。そういう変なベクトルに向かってるのは感じてて。この間鎮座さんが捕まったじゃないですか。Twitter見てて面白かったのが、今までは「なんて悪いことしてるんだ!」っていう人たちだけだったのが、今回は「まぁ、鎮座さんだしねぇ」って感じだったこと。徐々に日本も、少なくとも討論しようという風に変わってきてるのかなって。この曲を作ったのは結構前?
A:それのちょっと前ですね。
T:すごいねー。それで鎮座さんも元気にツイートしてらっしゃるし。
A:かっこいいんですよね、それが。言ってることがリアルっていうか、バースの中でも。
T:一貫してるよね。
A:かっこいいなと思います。
T:あとは、Sam Tibaプロデュースの「NEBUTA」もすごく好き。
A:青森はJNKMNとPETZの故郷でもあるし、YENTOWNのファンもめちゃくちゃ多いし、いつも歓迎してくれる場所なんですけど。ライブで青森に行ったとき、ねぶた資料館に行ったんです。そうしたらめちゃインスパイアされちゃって。その年の優勝したねぶたが飾られてて、とにかくかっこいいんですよ。踊りのレクチャーとか太鼓とかもあって。さすが日本が誇る祭のひとつだなと思って、無我夢中でビデオを撮ってたんです。ちょうどそのときSam Tibaと連絡取ってたんですけど、このビデオを送ったらどう調理してくれるんだろう?と思って。それで「ねぶたっていうやばいカルチャーがあるからそれを曲にしたい」って送ったら、Sam Tibaもめちゃインスパイアされちゃって。それで、3日でできたビートがこれです。
T:なるほど。じゃあビデオを見てすぐ作って返ってきた。
A:そう。それで私もバーって書いて。そしたらkZmが乗りたいって言ってくれて、最高の曲になりました。この曲はEPにも入れたんですけど、ビデオも出すことになってて。青森で撮影してきました。YouTubeだと聴いてくれる人が広がるじゃないですか。ねぶたっていうカルチャーも、この曲も、もっと世界に広がって欲しいと思って。だから私のところはフックもバースも英語にしてるんですよ。
T:英語のリリックと日本語のリリック、どっちのほうが書きやすいですか?
A:どっちもどっちだけど、英語のほうが音にはのせやすい。ただ、日本語のすごさも最近感じてて、やっぱり表現がかっこいいんですよね。あと、チャレンジでもある。英語圏のカルチャーで言われてるかっこよさをトランスレートするのが私の使命だと感じてて。英語を直訳しちゃうとめちゃ説明臭くなる。だから日本語では詩的な感じを出さないとかっこよくない。直訳じゃなくて、日本のカルチャー内でそれに匹敵する表現、そのブリッジになるのが私だなと。それが今、チャレンジでもあるし楽しくもあります。
T:それはずっとやり続けてるなっていう印象があるんだけど、インタールードにも繋がるね。
A:(笑)。インタールードもめっちゃ良くないですか?
T:「Interlude 1(Island Girl)」。これは“Nightmare for boys”だよね(笑)。
A:違うよ!これは夢のある話でしょ(笑)。
T:このインタールードって演技じゃないよね?
A:演技です。でも、そういうことを普段話してるから、そこからインスピレーションを受けて再現してるだけなんで。こういう話を毎日してるんですよ、友だちと。
T:それが“男の悪夢”なのね(笑)。何言われてるのかなとか、男子たちは恐怖だから。でも「男は顔じゃない。優しさと勇気だよ」って言ってたじゃないですか。そこグッときたんだけど。「ワンチャンあるかな、俺」とか思いながら(笑)。
A:あはは!夢がある話でしょ?
T:(笑)。そのあと、「4:44」で言ってる「危険を冒して」。これと勇気は関係あるんですか?
A:ありますね。よく聴いてくれてる〜!男って勇気ない。基本的に。
T:どういうところで感じる?
A:かっこつけてるんですよね、みんな。かっこつけてるのがかっこいいと思ってるけど、女からしてみれば…、いや、私からしてみれば、かっこつけてない部分を見せられる方がめちゃくちゃかっこいいんですよ。そういう勇気を持ち合わせてる男のほうがかっこいい。
T:弱さを見せられるってこと?
A:そう。好きなら好きと言える。傷つくのが嫌とかも。
T:男って…、いや、俺痛がりだからな、って言っておこうかな。
A:(笑)。そういうこと。男って痛いの嫌なんですよね。生物学的にも男が痛みに耐えられないのはわかってる。女のほうが絶対痛みに強いんですよ。恐れずに自分の心をさらけ出す人はすごく勇気のあるいい男だなって思ってて。
T:「私が忙しくても“忙しいんでしょ?”って言わずに素直に“会いたい”って言ってきなよ」っていう、あそこも結構グッときたんだよね。
A:そのくらい勇気のある器の広い男を私は求めてる。
T:でもその前のインタールードで「またあいつから電話来た」って言われてるんだよ?
A:それは違う男なんですよ。
T:わかってるよ、でも、その連絡してこない彼は「俺もそういう風に見られてるのかな」と思ってるのかもよ?
A:あぁ、そういうジレンマがあるんですね。そういうのも人間の醍醐味(笑)。でも、一貫してずっと同じこと言ってくれる、私が辛いときもいい感じのときも、いつでも好きって言ってくれる、そんな風に自分の愛とか心をさらけ出してくれる人は勇気あるなって思います。
T:今回いろんな人をフィーチャーしてますが、ひとりフィーチャーされなかった人が…(笑)。
A:問題作(笑)。
T:「Open It Up」の歌詞で…。このBaauerのトラックもかっこよかった!
A:種明かしをすると、Baauerは私のことは知らなくて、YENTOWN用に送ってくれたトラックなんです。それをChakiさんが聴いて「これは絶対Awichだろ」ってことでPETZが譲ってくれたんですよね。
T:いろんな可能性を見せてくれる感じの曲だったんだけど、「MIA like 唾奇」って(笑)。
A:「いつでもFucking 行方不明」ですよ、まじで(笑)。でも、唾奇のこと大好きなんです。
T:ツアーも一緒に回ったし。ツアーでは「DEIGO」は唾奇くんと歌ってませんでした?
A:歌ってました。衝撃の問題作「DEIGO feat. OZworld」。これはぜひアルバムに入ってる4つ目のインタールードを聴いていただければ。ツアーを観てくれてた人から「え?なんで?」みたいなDMとか来るんですよ。だから、「唾奇、禊だけはやろうぜ」って(笑)。「Pressure」っていう曲の次、「Interlude 4 (No Pressure)」。これも沖縄の男たちの性質。それでいいんですよ。私はあいつらを愛してるし、これからも愛していく。「そのままでいいんだよ。唾奇はこれからもその素晴らしい歌声を絶やさずに歌い続けてね」って言いたい。
T:唾奇くんの良さって、そういう自由度があるところなのかも。
A:そういうことです。
T:5曲目くらいからその話がポツリポツリ入ってるのが面白かった。あとはその唾奇くんとのライブで「Cho Wavy De Gomenne」を生バンドでやったりしてたら、アルバムにもJP THE WAVYさんが入ったり。ちゃんと繋がってるよね。
A:繋がってるでしょ?全て。でも全部が全部プランニングしたわけじゃないんです。宇宙のプラン。シンクロニシティがあちらこちらで起こってて、いろんなガイダンスが起きて、全てがまとまる。
T:“まとまる”でいうと「Bloodshot」聴いたときに、AwichさんとWAVYさんの歌詞に統一感があんまり感じられなかった。
A:あはは!確かに、私も思わなかった(笑)。
T:曲としては統一感があるんだけど、ネタのテーマが。
A:よく聴きましたね。すごい!ちゃんと言葉を聴いてくれてるんですね。
T:もちろん。「Bloodshot」の意味、これは目が赤いっていう。
A:そうです。血走ってるくらいクレイジーなやつら。WAVYもそれを理解して「いがみすぎて目がBloodshot」とか「眠れなくて忙しすぎて目がBloodshot」とか言ってくれてるんですよ。私は「ベロベロのヨレヨレ」の…。
T:そうだよね。Awichさんの言ってるのはバグってる人、WAVYさんの言ってるのはちゃんとした人じゃん。それで統一感がないなって思ったの。でもお互いそれぞれの「Bloodshot」を出してるんだなってサビを聴いてやっとわかったの。
A:『8』と彼のEPが出たのが同じ時期だったんですよ。同じ時期にシーンに出てきた感じで。私自身が「お前が誰だよ?」って言われるぐらいのときに「WHORU? feat. ANARCHY」のビデオに出演してもらってたり、そのときから知り合いで。一緒にやりたいなとは思ってたので聞いたら、「やります!」って感じで言ってくれて、WAVYになったんです。まずその気持ちが嬉しいし、「Bloodshot」の意味もわかってくれて、彼なりの「Bloodshot」を描いてくれてできた曲ですね。
T:今回は歌も増えました。もともと歌えるしすごくキレイな声ですが、意図的に歌を増やしていこうって感じですか?
A:ここはラップで、ここは歌で、とかはあんまり話してなくて、作っていくうちに歌が増えた感じですね。ラップをめちゃくちゃスピットしたいっていうのはあったので、「Open It Up」とか「洗脳」はそう作りました。でも、めちゃくちゃ歌いたいよねっていうのは意識してないです。
T:歌によって表現できるものとラップして表現できるものは分かれますか?
A:私にとってはラップか歌かでは分かれてないです。曲調で分かれるかな。ラップでも歌でも同じことを表現できる。でも曲調で「この音にはこういう気持ち」っていうのはセットだと思ってます。
T:なるほど。最後に、AwichさんにとってYENTOWNってどういう存在ですか?
A:私はYENTOWNのことを一生背負っていこうと思ってます。新メンバーでこんなこと言うのもアレなんですが、私、みんなの姉さんなので。YENTOWNは入る前から知ってたし、kZmやChakiさんと出会ってYENTOWNの愛を存分に受けてきた。JNKMNに「YENの愛は多様性に対する愛。いろんなものがあっていいっていう、それをすべて愛するのがYENの愛だと思ってる」って言われたことがあって。だからYENTOWNは統一性が全くないけど、みんなそれぞれ自分らしくいて、みんなが愛し合ってる。この愛をみんなの芸術活動を通して広めていこうっていうものが「YENTOWN」なんです。ただバグって遊んでるように見えるんですけど、実はめちゃくちゃ絆が深くて愛がとっても温かいクルーなの。私は一生愛していける、YENTOWNを。責任持ってます。
***
トークの様子は番組アーカイブでも視聴可能。
TCY RADIO 2020年1月10日放送回
【リリース情報】
Awich 『孔雀』
2020年1月11日(土)Release
BPMT-1018 / ¥2,500 +tax
01. Love Me Up (Prod. Chaki Zulu)
02. 洗脳 ft. DOGMA & 鎮座DOPENESS (Prod. Chaki Zulu)
03. NWO (Prod. Chaki Zulu)
04. NEBUTA ft. kZm:AL ver. (Prod. Sam Tiba)
05. Open It Up (Prod. Baauer)
06. Poison ft. NENE (Prod. Chaki Zulu)
07. Bloodshot ft. JP THE WAVY (Prod. JIGG)
08. Interlude 1 (Island Girls)
09. 紙飛行機 (Prod. Chaki Zulu)
10. 4:44 (Prod. Matt Cab)
11. Lose Control (Prod. Chaki Zulu)
12. What You Want ft. IO (Prod. Ke Yano$ & Chaki Zulu)
13. Interlude 2 (Good Man)
14. First Light (Prod. Chaki Zulu)
15. Gangsta (Prod. Chaki Zulu)
16. Interlude 3 (Remember?)
17. Pressure (Prod. Chaki Zulu)
18. Interlude 4 (No Pressure)
19. DEIGO ft. OZworld (Prod. Chaki Zulu)
20. Arigato (Prod. Chaki Zulu)
配信リンク
▶http://smarturl.it/Awich_KUJAKU
【リリースツアー】
1/24(金)横浜 Bridge
1/25(土)神戸 Harbor Studio
1/26(日)岐阜 Ragza
1/31(金)京都 Chambers
2/1(土)金沢 Double
2/2(日)福岡 Drum Logos
2/7(金)長野・松本 Mole Hall
2/8(土)広島 L2
2/9(日)香川 Rad
2/10(月)大阪 PINK
2/11(火) 名古屋 UTAGE
2/14(金)静岡 Roxy
2/16(日)帯広 Bene
2/21(金)札幌 Riviera
2/22(土)青森 Milk Room
2/23(日)仙台 Squall
2/24(月)長野・飯田 Earth
2/28(金)宮崎 Real-D
2/29(土)大分 Freedom
3/1(日)鹿児島 Duckbill
SNS
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