なぜ? オランダの排水にはエクスタシーの成分が欧州で最も多く含まれている!?

2011年から定期的に行われている排水分析調査の結果、アムステルダムの排水にはMDMA(以下:エクスタシー)の残留物がヨーロッパの都市の中で最も多く含まれていることが分かった。
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2018.03.15 03:30

European Monitoring Center for Drugs and Drug Addiction(以下:EMCDDA)は地域に住む人々のドラッグ摂取習慣を探ることを目的として、2017年は19ヵ国、56のヨーロッパの都市で排水分析調査を実施。その結果報告レポートで、アムステルダムの排水にはもっとも残酷な現実が残留物として含まれていることが分かった。

アムステルダムだけじゃない。オランダの排水にはドラッグ残留物が多く含まれる


7年間に渡る調査結果として、アムステルダムの排水にはエクスタシーの残留物がヨーロッパの都市の中で最も多く含まれていることが分かった。この分析に重点を置いたもう一つの都市は同じく、オランダのアイントホーフェンだ。排水中のエクスタシー残留量で第2位。日本では覚醒剤に分類されるアンフェタミン残留量で最も多い都市となっている。オランダ、どうなってんだ。




EMCDDA 排水濃度チャート(2017)上位6都市の抜粋。アムステルダムとアイントホーフェンが1,2フィニッシュ。他の地域を圧倒する数値を叩き出している。





EMCDDA アンフェタミンの排水濃度チャート(2017)上位6都市の抜粋。オランダを筆頭に、隣国のベルギー、ドイツが独占。


アムステルダムといえば、世界的に有名な巨大歓楽街を擁する。売春街や大麻を嗜むコーヒーショップなどが有名だ。クラブパーティ文化も盛んであり、ナイト・メイヤーと呼ばれる「夜の市長」の役職を制定。クラビングやナイトライフにおけるさまざまなインフラ整備、企画立案、情報発信の役割を担う。7年に及ぶ排水分析調査ではナイトライフ先進国として脚光を浴びるオランダの皮肉な現実が浮き彫りになってしまった。


オランダの薬物規制法ってそもそもどうなっているの? 


そもそもオランダの薬物規制法は「完全に規制出来ないものは管理する」という理念のもとに成り立つ。ドラッグの使用は犯罪ではなく公衆衛生上の問題として捉えているのだ。ざっくりまとめると、「管理下でドラッグやってもいいけど、あとは個人の判断で」ということである。アムステルダムの音楽イベント「ADE」で2014年に起きたエクスタシーのオーバードーズによる死亡事故を受け、翌年にオランダ政府が講じた対応策は、1日限定の政府公認エクスタシーショップを開き、販売。そのリスクを体験させるというものだった。また、そのドラッグが身体に合うかどうか、何錠まで飲んで大丈夫なのかといった検査を医療機関でテストしてくれる。日本ではおよそ考えられないトンデモ政策である。こんな具合なので違法薬物売買を生業とするマフィアがオランダには存在しないとされており、かたや「国全体がマフィアだ」なんていう意見も見られる。このような政策思想はオランダの地理的な成り立ちや、法整備の過程、宗教的背景などが複雑に関係しているのだ。







ヨーロッパの薬物使用分布は地域によって違う


この研究におけるアムステルダム、アイントホーフェンの結果は、ヨーロッパのエクスタシー、アンフェタミンの生産と消費が部分的に集中していると推測される。コカインの残留率は国別ではやはりオランダは上位でベルギー、オランダ、スペイン、イギリスなど西欧と南欧がコカインの使用率が高い。コカイン濃度がもっとも低いのは東ヨーロッパ諸国となっているが、代わりに北から東にかけてはメタンフェタミンの数値が高いということが分かっている。




EMCDDA コカインの排水濃度マップ抜粋(2017年)



EMCDDA メタンフェタミンの排水濃度マップ抜粋(2017年)


EMCDDAによれば「7年間の監視期間中、エクスタシーのもっとも高い数値がベルギーとオランダの都市で一貫して見られた。長期的傾向を見ると、少なくとも6つのデータポイントを持つ大部分の都市では2011年よりも2017年のエクスタシーの数値が高く、アントワープとアムステルダムを含む一部の都市で急激な増加が見られた。2011年から16年の期間に急激な増加が見られた都市の大半は、2017年にその傾向が安定しているように見られる。全体としてはアンフェタミンとメタンフェタミン(日本では覚醒剤に分類。クリスタルメスと呼ばれる。ちなみに米ドラマ「ブレイキングバッド」に登場する「ブルーメス」は主人公ウォルターが独自のレシピでメタンフェタミンの純度をさらに上げて精製したもの。)のデータは、観察された一般的な使用パターンに大きな変化を示さなかった」とのこと。これは試験が最初に開始されて以来、さまざまな薬物の使用がユーロ圏で一貫して行われていることを意味しているのだ。




EMCDDA エクスタシーの排水濃度マップ(2011年)抜粋。調査開始時点でアムステルダムが群を抜いている。




EMCDDA エクスタシーの排水濃度マップ(2017)抜粋。アムステルダムのマーキングは国土よりも巨大化するほどに。



音楽イベントとドラッグ摂取の関係性


EMCDDAのこの調査レポートは地理的な流通、使用データだけでなく、不正薬物使用の週別、時間別パターンの変動なども割り出している。やはりパーティドラッグとして蔓延しているエクスタシーの使用は平日よりも音楽イベントが行われる週末に増加傾向であることが分かる。つまり、週末に摂取されたエクスタシーは平日に排水となって流れ出ているため、平日の濃度数値が高くなるのだ。クラブカルチャーの発展とドラッグは切り離せないものなのだろうか。最近ではLil’Peep(リルピープ)に代表される、有望な若手アーティストの悲劇的な死が相次いでいる。それを受けて脱ドラッグ宣言をするヒップホップアーティストも少なくない。Joey Bada$$に至っては大麻断ちを行っているという。一方でエクスタシー利用をヒップホップミュージックが促しているという研究結果を大学のチームが発表する事案も発生。block.fmではこのような音楽カルチャーにまつわるドラッグについての記事も取り上げていく。





EMCDDA エクスタシーの排水濃度チャート(2017)上位三都市の抜粋 週末(上)/平日(下)



今後も排水調査は続く。ドラッグの使用は犯罪です


今回の排水調査は不正薬物使用の公衆衛生プログラムや政策に役立てることを目指し、今後も継続される見通しだ。さらに精度の高い新たなモニタリング方へ移行するとEMCDDAのレポートには記されている。全編の詳細なレポートはこちらのリンクを参照してほしい。なお、参照のレポートは不法な覚醒剤の使用に焦点を当てており、大麻に関する結果は報告されていない。

最後に念の為に書いておくが本稿はドラッグを推奨する記事ではない。EMCDDAより発表されたレポートを基に知識のひとつとして紹介した記事であり、日本国内ではどのドラッグも当然“犯罪”となる。個人の使用や売買を行ってどのようなことになっても、その責任を一切負うことはできないのであしからず。


参考:http://mixmag.net/read/amsterdams-wastewater-contains-the-highest-concentration-of-ecstasy-in-europe-news/

http://www.emcdda.europa.eu/topics/pods/waste-water-analysis


Written by TOMYMOCHIZUKI

Photo:mixmag,EMCDDA,PIXELS



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