【対談】音楽業界 エージェント vs 事務所、どちらがいいの?

m-flo☆Taku Takahashiと音楽プロデューサーstarRoによる対談。音楽業界においての事務所とエージェント、それぞれの特徴やメリット・デメリットを語る。
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2019.10.10 11:30

芸能事務所と所属タレントとの騒動。今年の夏、ここ日本で大きな話題となったニュースだ。それを受けて、以前は音楽事務所に所属し今は独立して音楽活動を続けるm-floの☆Taku Takahashiと、グラミー賞ノミネート経験を持ち、アメリカでエージェントを雇って活動するプロデューサーstarRoが対談を行った。音楽業界においては事務所に所属する・エージェントを雇う、どちらが良いのか?それぞれの特性やメリット、デメリットを本人達の経験から語る。


ポッドキャストで対談を聴きたい方は以下のリンクより視聴可能。

https://block.fm/radios/765





☆Taku(以下、T):以前ツイッターで、「日本にはエージェントシステムがあまりない」って話をしてましたよね。


starRo(以下、S):アメリカではエージェントを雇ってアーティスト活動をするのが一般的で、それが当たり前だと思ってたんです。でも日本に帰ってきて、20歳くらいの子がいまだに「事務所に所属しないとだめだ」って思ってることにすごくびっくりして。「事務所に入るためにはこういう音楽を作ったほうがいい」みたいな話をしてる子もいるので、それはなにか違うんじゃないかと思ってあのツイートに至ったんです。


T:最近だと吉本のニュース、契約書がないとかエージェント制を導入するっていう話が話題になったり。あとは能年玲奈さんが事務所を辞めてのんさんになったとか、日本の芸能界でも“事務所とエージェント”って気になる話題だと思います。あとはプロとして音楽をやっていくときに契約ってすごく重要だから、若いアーティストに向けて僕たちの経験談を踏まえつつ、事務所とエージェントの違いやそれぞれのメリット・デメリットを話していきましょう。


エージェントと事務所 それぞれのメリット・デメリット


T:まずはエージェントの仕組みについて。エージェント制だとアーティスト側がエージェントを“雇う”。その人にブッキングをお願いしたり、レーベルとの交渉をしてもらったりする、代理人っていう解釈が一番わかりやすいかと思うんですけど。


S:そうですね。仕事を取ってきてくれる人、ブッキングをしてくれる人、マーケティングをしてくれる人。それぞれの専門家がいて、アーティストの代わりに営業してくれるということですね。


T:アメリカの場合はエージェントをつけてずっと活動する人もいるし、最初はエージェントを雇って、作品が売れたら原盤を持って自分の会社を作って、エージェントを社員にする人もいる。自分でスタッフィングをしていくのがアメリカのスタイル。マルチタスクがこなせる人を一人雇う場合もあるし、専門分野に合わせて何人か雇う場合もある。あとは、個人のエージェントじゃなくて会社をエージェントとして契約したり。starRoさんはアメリカでエージェントを雇ってるんですか?


S:はい。僕の場合、最初は自分だけでやってたんです。ライブやDJも、楽曲提供も、自分でリリースするのも、手続きから何から全部自分で。そのうちに、いわゆるマネージャーになる人間が「マネージメントをやらせてほしい」と言ってきて。


T:この場合のマネージャーはエージェントっていう解釈?


S:そうですね。彼の仕事は簡単に言うと営業マン。僕の代わりに仕事を取ってきて、そのギャラのうちの何%が彼にいくっていう仕組みです。


T:“マネージャー”っていう言葉の意味が日本と海外で違うんですよね。日本の場合、マネージャーは“付き人”っていうイメージが強いけど。海外では“マネジメントする人”っていう感覚が強い。


S:エージェントは、自分に入る何%をできるだけ金額として大きくするためにどうしたらいいか、っていうスタンスで仕事をします。だから「こういう音楽がいいんじゃないか」「こういう企業が使ってくれるんじゃないか」とか、ビジネス的に助言をしてくれることはあるんですが、あくまで助言であって音楽のディレクションはアーティスト自身が決めることですね。


T:自分の作品をマネタイズするのを手伝ってくれる人だと。僕は、今は独立して自分の会社を作って動いてるんですけど、最初は事務所に所属してたんですね。starRoさんは事務所に所属した経験はありますか?


S:今、日本では一応事務所に所属してます。実際はエージェント状態ですね。


T:僕の経験から話すと、僕はすごくラッキーだったんですよね。この“ラッキー”っていうフレーズ自体が日本の状況を物語ってると思うんだけど、僕がラッキーだったのはクリエイティヴをかなり任されてたこと。ARTIMAGEの浅川さんって方なんですけど、契約する前からすごく気に入ってくれてて、荒削りながら僕の良いところを見てくれてたんです。だからいろいろと自由にやらせてもらえた。契約内容も、今考えてもすごくフェアな契約だったし、売れるかどうかわからない中投資してもらって。クリエイティヴも任せてもらってたし、block.fmを始めるのも「どうぞ〜」って感じだったりとか。浅川さんがすごく理解のある人だったから僕はラッキーだった。でも、そうじゃないケースも見てて。例えばどこかのアーティストが事務所に「今日から自分の好きな音楽は全部忘れて、俺が言う音楽を作れ。その代わり確実に売ってやるから」って言われて、その後200万枚売れたりとか。幸せなのか、幸せじゃないのか。暮らしとしたら幸せかもしれないけど、アーティストとしてはどうなんだろうとか。でも、単に有名になりたいだけの子たちだったらそれでハッピーかもしれないし、そこは人それぞれだからね。批判はしないけど、自分だったら嫌だなと思うことはいっぱい見てきた。実際に悩んでる子たちもいるし。


S:クリエイティヴの自由度はエージェント制のほうが高いですね。僕がアメリカでエージェントを雇っていたら、彼はギャラのうちの何%を持っていくだけで、交通費とかの経費は全部僕が持つ。だから経費がかかって利益率がほとんどない仕事だったとしても、僕がやりたいと言ったらエージェントが文句言う権利はない。結局、そこがアーティストとしての活動の自由につながってると思うんですよね。これを事務所に置き換えると、経費とかは全部面倒見てくれるけど…。


T:クリエイティヴ面は自分にフィットする事務所なら上手くいくし、フィットしない場合は自分がやりたい表現ができないかもしれない。あと、事務所に入っててすごく助けられたことがひとつあって。酔っぱらい運転の人に玉突きでぶつけられたんですよ。しかも車から降りてきて僕の車蹴り出して。まだ20代半ばだったんだけど、怖いじゃないですか。でもそこから警察行ったりとかは事務所のスタッフがやってくれて、全面的に守ってくれた。個人だと雇ってるエージェントが守ってくれるってことはないですよね。そこは全部自分でやらなきゃいけない。


S:まぁそうですね。事故とか何かあったときに全部を面倒見るっていうのは、金銭的なリスクも伴うことなので。そういう見えない経費とかも含めて、アーティストの面倒を見るためには、ある程度事務所側がアーティストをコントロールしないとビジネスとして危ない。事務所に所属するとアーティストの自由が制限されかねないのは、いろいろな場面で面倒を見てくれるっていうのがメリットで、その分代償としてビジネスが回るように協力する必要があるから。事務所の意向に沿って活動するとか、作品を作るとか。エージェント制は、そういうリスクを全部自分で持つ代わりに自由に活動できる。


T:日本の事務所の場合、収入の何%を分ける、もしくは毎月給料を支払うっていう大きく2通りあると思うんですけど。一方エージェントを雇う場合は、アーティストが稼いだお金の中から支払うという形。支払ってもらうか、支払うか。そこで関係性が変わってくると思うんですよね。雇われてるか雇ってるか。“支払われてる”っていう時点で雇われてる感が出ちゃうんですよね。アーティストが雇われてる場合、事務所のために何かしなきゃとかそういうバイアスがかかってしまうこともあるかなと。


S:逆にエージェント制にすると、アーティストが社長ですからね。


T:アーティストがビジネスも考えなきゃいけない。


S:そう。僕の場合は、ゼネラルマネージャー、いわゆる営業マンがいて、ブッキングエージェント、PR担当、弁護士、会計士がそれぞれ別にいる。つまりそれぞれの分野の専門家を自分で雇ってるんですよね。


T:それがアウトソーシングの場合もあるし、自分の会社に入ってもらうこともある。


S:そうです。


T:この違いは、クリエイティヴの進化のスピードにすごく影響すると思うんですよ。自分が人を雇うってことは、全部自分でリスクを背負うってこと。全て自分の責任である分、クリエイティヴで冒険ができるんですよね。一方、事務所に所属しちゃうと、新しいことをやりたくても、事務所やレーベル、みんなで集まって相談するとどうしても安全第一になる。たとえ良い事務所だったとしても。ここ数年、J-POPが進化しなかった。別に退化はしてないけど進化しなかったと思ってるんですけど、それは同じようなことをずっと続けてたのが大きくて。事務所主体の中で、安全パイで確実に売れるものを出していってたんだけど、実際はそれが売れたわけではなく、自分たちの首を締めてた。しかも進化を遅らせてしまったっていうのが日本の現状で。ただ、今日本は目まぐるしく変わってきてて、シーンがすごく面白くなってきてる。starRoさんもチェックしてると思うんですが、今面白い人達が生まれてるのは、アーティストたちがエージェントと一緒にやるような感覚で、自分たちでリスクを背負って表現する時代になってきてるんじゃないかと。それで急激に進化してるんじゃないかと感じていて。


S:そうですね。なぜそういう変化が起きてるのかを考えたんですけど、音楽ビジネス自体が昔みたいにアーティストのリスクまで背負えるようなビジネスとして成り立たなくなっているんだと思うんです。


T:音楽自体の収入が減ってしまって。


S:今までみたいに同じような曲を作って何十万枚も売れることはなくなった。そうなるとリスクが取れなくなって、余計に安全パイになっていく。元々僕はゲーム業界にいたんですけど、同じなんですよ。ファミコンの時代は開発費がほとんどかからなかったから、クリエイターさんが好き勝手にゲームを作ってて、だからすごく面白いゲームがいっぱいあった。でも僕が働いていたPS2、3の頃は開発費がすごくかかるようになってしまって、リスクをカバーするために確実に売れるゲームしか作らなくなった。例えばNBAのゲームで、選手入れ替えてアップデートしただけ、みたいな。


T:テッパンを出し続ける。


S:そう、シリーズ物とか。面白いと思っても売れるかわからないから、それに何億円もかけられないっていう状態です。


T:実際、彼らの立場で考えてもそのリスクを背負うのは難しいですよね。


S:僕も管理側にいたのでその難しさはわかるんですよ。音楽と一緒で、このゲームがなぜ売れたかなんて後付けでしかない。「このゲームが面白い」っていうのは感覚的なものなので。それで決まりきったようなものしか作れなくなると、開発者さんもつまらなくなってくるし。ただ、音楽とゲームで違うのが、音楽は今すごく安く作れるってこと。


T:デジタル化されてだいぶ安く作れるようになりましたね。珍しいですよね、デジタル化して安くなるのって。昔はストリングス録るのに大きいスタジオ借りてやってたものが、今はシンセで再現できるようになってたりとか。ボーカルも宅録してリリースっていうケースも普通になってきてるし。


S:映画、音楽、ゲームが一緒くたにエンタメビジネスって言われてるけど、音楽に関しては今までになかった現象なんですよね。ほとんどタダで作れて、大手の会社を通さなくてもリリースできるっていう状況。


T:プラットフォームがいっぱい現れたから。昔は事務所、レーベルに所属しないとCD出せなかったけど。レコードも、例えばドラムンベースの老舗レーベルから出す場合、そのレーベルのボスが好きな音にしないとリリースできなかったりとか。海外もありましたよね。


S:ありました。だから今、自分で何でもできる状況になっちゃうと、安全パイばっかりやってるところに入るんだったら、別に自分でやればいいやってなる。アメリカではもう10年くらい前からCDをほとんど売らなくなって、タワレコが潰れたりしてます。僕がstarRoとしてやり始めたのが5、6年前なんですけど、ちょうどSoundCloudが一番盛り上がっていたときで、みんなSoundCloudにバンバン上げていて。音楽のコミュニティがそこにできて、フォロワーが多い人にブッキングが殺到したりっていう現象が起きていた。ただ、今まで普通に家で音楽作ってたような人たちだから、お金の計算とかも不得意だし、もっと大きなブッキングを取るためには大手のプロモーターとのコネクションがないとダメじゃないですか。それでビジネス側をやってくれる人が必要になって、エージェントを雇う。アメリカではCDの衰退とともにそういう流れが強くなってるところがあると思うんですよね。


T:日本も徐々にそういう流れができているのかも。


S:コネクションっていう点でいうと、アメリカではエージェント同士で集まってファームを作ったりもするんです。どんどんアーティストが大きくなっていくと、どこの誰かわからない人が営業しても仕事が取れないので、ファームに所属してその名前を使ったり。例えば僕のエージェントは、RADIOHEADのマネージャーが立ち上げたファームに所属してて、そこの名前が使えるんですね。


T:信頼できる人だよっていうことがわかるように。


S:弁護士も一緒ですよね。○○法律事務所って言えば、それだけで信頼してもらえたりとか。


T:その構図は実は日本も一緒で、信頼できる人かどうかっていう点で事務所同士の付き合いがあって。どこの誰かわからない人に任せたらトンズラされるかもしれないし。僕もイベントでギャラ踏み倒されちゃったことあります(笑)。


S:困りますよね(笑)。


T:日本みたいなちゃんとしてる国ですらこういうことあるんだ、って。日本の場合、どこの事務所は信頼できる、できないっていう話があったりとか、あそこの事務所の紹介だからこの新人出しましょうとかって当然ある。だから信頼という点では個人も組織も同じように大事。ただ、日本の場合エージェントのファームみたいなものがないから、そこはひとつの壁ですよね。


S:そうなんですよ。今後エージェントがどんどん普及していくと、絶対にファームもできるはずなんです。そうすると、エージェントが抱える細かい雑務をやってくれたり、ファームの中で横のつながりもできる。


ー事務所からエージェントへ、という話を聞いていて思ったのが、新しい地図の3人が事務所を辞めてテレビに出れなくなったことが、独占禁止法に引っかかるかもっていうニュースもありましたよね。


T:誰かが事務所とケンカ別れして辞めたら、テレビの露出が急激に減るっていう話ね。これはあくまで僕の予想なんだけど、誰かと揉めてる人を使うと、そのトラブルに巻き込まれちゃうと思って使わない、その結果干してることになってるような気がするんです。干そうと思って干してる人はいないと思うんですよね。


S:吉本の話にもつながるんですけど、事務所に所属していないと仕事が取れませんっていうのはあくまでテレビの世界じゃないですか。例えば僕、カジサックの動画良く見てるんですけど、キングコングの梶原さんみたいにYouTubeでやってる芸人さんもいるわけですよね。仕事をテレビにずっと頼ってたら、それはもちろん事務所に入っていないと…。


T:事務所とテレビのパイプはすごいですからね。


S:だけどそこは音楽と一緒で、YouTubeでテレビ以上に稼いでる人もいるし、テレビにこだわらないなら、リスクはあるけど他の場所でチャンスを狙うこともできる。芸能人だからってYouTubeに出せば必ず伸びるわけじゃないけど、リスクを負ってでも自由にやりたいなら、YouTubeを選ぶのもアリなわけですよね。


T:選択肢としてはアリですよね。日本のエンタメ全体が転換期に入ってるのかな。吉本のニュースも、ジャニーズのニュースも。露出の形が変わってきてる。今もなんだかんだ日本はテレビ、地上波が強いと思うんです。だからテレビとのパイプを持ってる事務所はレバレッジがあるし、それが強み。だけど露出の選択肢が増えた分、そのレバレッジだけに頼らなくてもいい時代が来てるっていうのが最近のニュースの現れなんじゃないかな。


S:間違いないですね。


T:自分にフィットする媒体がなにかっていうのも自分なりに考えたほうがいいですよね。


S:そうですね。テレビの場合、事務所に所属してる人達の中での競争なんですけど、YouTubeだと素人さんも含めて無限とライバルがいる。有名人だから通用するわけじゃないから、その人がどれだけ発信力を持っているかも大事になってくると思います。


T:発信力とフィットするメディア。YouTubeは合わなくてもAbemaは合うかもしれないとかね。アメリカでも、地上波しかなかったところにケーブルテレビが生まれた。もともと地上波だと「お笑いは3分で笑わせてください」みたいな時間の制約がすごくあった。でもHBOとかができて「1時間フルで観せていこう」ってやってたら、それを面白いと言ってくれる人が集まって大きくなった。Abemaはインターネットでそういうことをやろうとしてるだろうし、Netflixやプライムビデオもあって新しい表現が生まれてる。どこにフィットするかはそれぞれ違うだろうから、そこで自分たちを見極めていかなきゃいけない。


S:そうですね。見極める力が必要ですね。


T:実際、新しい地図の3人は見極める力があったから、結果すごく上手く行ってるって聞くしね。





エージェント・事務所 選ぶ上でのポイントは?


T:今活動してるアーティストで、エージェントを雇ったり事務所に所属したいアーティストに何かアドバイスするんだったら、どんなことを伝えますか?


S:繰り返しですが、エージェントを雇うってことは自分が社長になるってことなので。例えば美味しいラーメンを作れる人がいたとして、ビジネスにする場合はラーメン作れるだけじゃ人は雇えない。ビジネスの知識がないと、人を雇っても結局使えないわけですよね。僕の場合、まずは自分で全部やってたっていうのと、他のバンドのツアーマネージャーとかやってたこともあったんです。いろんな経験をした上でエージェントを雇ったんですが、それでもたくさん失敗した。仕事がいっぱい来て「やったー!今年は豪華な生活できるじゃん!」って思っても、年末になると「あれ?全然残ってない…」みたいな(笑)。すごく経費のかかる、利益がほとんどないような仕事ばっかり取ってきたりとか、投資を勧められてのっかってみたら全然上手くいかなかったりとか。だからエージェントの仕事を理解するためには、自分がやってみないとわからないこともあるので、そこは絶対重要だと思います。それが面倒だと感じる人は事務所に入ればいい。アーティストとしての自由が欲しかったら、ビジネス面でもいろいろわかってないと痛い目見ますよ、ということですかね。




T:音楽で食べていく場合、ビジネスを無視するわけにはいかないですよね。でも、年末の決算とか考えずに音楽のことだけ考えたい、みたいなときありません?


S:めちゃくちゃありますよ(笑)。実際、アメリカの確定申告を半年遅らせてますもん。延期しても締め切りが来るので、面倒くさいと思いながらもやらなきゃいけないわけで。そんなときに限ってすごい曲ができたりするじゃないですか(笑)。でも仕方ないというか、お金が発生していて納税義務があるので。それが嫌だったらSoundCloudにあげてフリーダウンロードで趣味としてやっていればいい。


T:僕が事務所に所属したい子にひとつアドバイスするとしたら、絶対に契約書だね。デビューできますとか、良い事務所、良い条件だったとしても、契約書は弁護士さんに一度確認してもらうべき。だいぶ僕も読めるようになってきたけど、契約書って難しくないですか?


S:甲とか乙とかなに?みたいな(笑)。


T:そう(笑)。すごくお金がかかるわけじゃないから、弁護士さんに頼んで契約書の内容を頭から最後まで理解すること。その後の選択はそれぞれだから。エージェント雇ってる場合はビジネス面を考えなきゃいけない代償があるのと一緒で、事務所との契約内容もギブアンドテイクでギブの部分はあるから。鵜呑みにして契約書にパッとサインするんじゃなくて、理解した上で選ぶのが大事なんじゃないかな。


S:そうですね。ロイヤリティの仕組みを理解することも重要になってくると思いますね。あとエージェントを雇うのであれば、利益率を常に気にしていかないとお金が残らない。ギャラが一見高く見えるけど、シーズンによっては飛行機とかホテルがすごく高くて、全然残らなかったりするので。


T:経費でほとんど持ってかれちゃう。


S:そうです。例えばギャラが100万でも、経費が90万だったら10万しか残らない。でもエージェントは100万からのパーセンテージで手数料引くので結果的に赤字じゃんみたいなこともある。


T:純利益から何%とかはできない?


S:あまり聞かないですね。純利益を計算するのが大変だし、どこまで経費とするかも結構難しいんです。エージェントはそういうの面倒くさいからやってくれないし、だったら仕事しないってなる。結局お金が残らなかったみたいな話は、年末アーティスト同士でよくするんですよ。


T:エージェントからしたら「俺がギャラ設定してきたんだから、そこから何%引かせてくれ」っていうことですよね。


S:そう。だからその持ってきた仕事を取るか取らないかっていう判断にも関わってくるので。自分で利益率計算して、その上で判断しないと。


ーstarRoさんはエージェントを選ぶときにどういう視点で選びますか?


S:事務所タイプのビジネスに比べて、エージェントは自分の取り分をコントロールしにくいから、その分モチベーションが低くなるんですよね。


T:取り分のパーセンテージを上げれば高くなる?


S:それもあるんですけど、「アーティストを自分の思い通りにできる」っていうのと、「アーティストのやりたいことをサポートする」っていうのを比べたら、モチベーションは前者のほうが高くなるじゃないですか。自分でコントロールできるから。


T:売りたい商品を自分が売りやすくできる。


S:そう。だから、サポートし続けてもらうためにはパッションがずっと続かないといけない。なので僕の場合は、僕の音楽をすごく愛してくれてる人を選びます。選ぶときに難しいと思うのは、僕の場合、アーティストの気持ちをわかってくれる人のほうがいいんですよね。でもそういうアーティストタイプの人って結構ずさんだったりするんです。雑務が苦手とかで、オールマイティにできる人ってなかなかいなくて。


T:わかる。


S:パートナーとしてアーティスト目線で話せる人ってすごく重要で。でもツアーやるときとかはしっかり仕切れる人が必要になるんだけど、僕のマネージャーはそういうのがすごく不得意。いろんなことに気づかないし、途中で帰っちゃったりとか(笑)。そういうときは別で専門家を雇えばいいので、ゼネラルマネージャーとなる人は、僕の気持ちをわかってくれる人がいいです。友達でありパートナーであり、奥さんみたいな。


T:クリエイションする場合、メンタルもすごく影響してくるからそこは重要ですよね。


S:そうなんですよ。僕の場合は多少抜けててもそういう人を選ぶ。人によっては几帳面な人がいいっていうアーティストもいるし。それは人それぞれで、恋人とか奥さんを選ぶときにどこを重視するかって話と全く同じですね。だってある意味、奥さんとかよりも長い時間を過ごしますからね。


T:僕もそこは共通してる。僕が所属してた事務所やavexのチームは僕の作るサウンドにすごくパッションを持ってくれてた。レーベルの人たちは給料制だから、成功したって別にインセンティブが入ってくるわけじゃない。それでもパッションを持ってくれたってのはすごく大きくて。そこはエージェントも事務所も一緒ですね。


S:そうですね。


T:今のチームもすごくパッション持ってやってくれてて、だから今でも続けていられるっていうのもある。starRoさんの言う、自分の作品のファンでいてくれてる、そういう人がスタッフでいるってすごく重要なのかな。


S:「レーベルどこがいいですか」とか「マネージメントやってくれる人紹介して」とかよく相談されるんですけど、僕的には自分からマネージメントやって欲しいって頼むことじゃないと思ってて。これはさっきの話と少し矛盾するかもしれないんですけど、向こうから来てくれるのがベストだと思ってます。人間なのでパッションって半年もすればなあなあになってくるじゃないですか。特にその人がいろんなアーティストを持ってたらなおさら。


T:収入につながるところを優先順位上げていかれちゃいますよね。


S:あと、新しいアーティストのほうが楽しかったりして。


T:新鮮に感じる。新婚感をもう一回、みたいな。


S:だからよっぽどその人がやりたいものじゃないと、最終的に上手く行かなくなると思ってて。レーベルも、自分からデモを送るのも大事なんですけど、向こうから来てくれたっていうのに勝るものはない。だからそういう人の目につくように曲を出して、自分で頑張って向こうが来てくれる状態にするのが先だと思う。


T:事務所にバズらせてもらうんじゃなく、最初に自分からバズらせる。方法はそれぞれだけど、なんとかしてそれをやることが重要だと。


S:さっき言った、全部自分でやってみないと人も使えないっていうのにもつながる。自分だけで発信し続けることもできるんだけど、もっと大きくするために誰かにお願いしたいっていう段階で、エージェントとかが必要になってくるので。だからそこまでは自分で持っていくことが大事なんじゃないかなと。


T:ネットがあるから、そういう露出の仕方が上手い子は上手いですよね。海外見てても新人の段階でもSNSの使い方とかが上手いなって。


S:今はYouTubeやTikTokである程度バズって有名になる子が多いですよね。


T:そこはアーティスト側にレバレッジがありますもんね。自分にそういうお客さんがついてるって言えるから、事務所やエージェントもマネタイズしやすいし。




T:今日話してみて、改めて事務所だけじゃなくレーベルの形も問われてることが確認できました。CDでインカム作ってた時代から変わってきてるから。


S:音楽でどうやったらマネタイズできるのかっていう正解が全くなくなってますからね。


T:10年前まではある程度正解があったけど。


S:だからこそさっきTakuさんが言ってたスピード感も重要だし。正解がない状態のときは、アメーバみたいに時代に合わせてどんどん変化できることが重要だと思います。そういうときにどこか大きいところに所属しているのが足かせに感じる人も出てくるだろうし、自分だけでやってる人も臨機応変にチームを変えられるということが重要なので。特にアメリカで今そうなってるので、日本でもそういう流れになっていきそうですよね。



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☆Taku Takahashi Twitter:https://twitter.com/takudj



Written by 編集部





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