東欧から来たラッパー、TOMMY CASHの魅力とは?

ラッパーの世界にはまってみよう
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2020.03.10 05:00

ラッパーの世界にはまってみよう


数ある音楽の分野のなかでもラップの世界は奥が深く、世界中には多くのラッパーが存在しているのであるが、意外に東欧のラップについては知らないという方も多いのではないだろうか。そこで以下では東欧を代表するラッパーであるTOMMY CASH(トミー・キャッシュ)に焦点を当てて、その魅力を探ってみることにしよう。



TOMMY CASHの生い立ちとは?


TOMMY CASHは、東欧にあるバルト三国の一つであるエストニア出身のラッパーである。エストニアは、かつてはソビエト連邦の一角をなしており、その崩壊によって独立を果たした国家であり、そのためTOMMY CASHが歌うラップもソ連崩壊後の東欧の動乱を舞台にしたものが数多くある。彼はエストニアの中でも首都であるタリンの生まれであるのだが、もともとは14歳のときにはじめたダンスがきっかけで音楽の世界に進むことになるのである。


その理由はクラスの女子たちがヒップホップ・ダンスをやっていたからという単純なものであったが、踊りを続けているうちにはまってしまいアートの学校に進学したものの、そこでの生活に飽き足らずに授業中は寝てばかりいることになるのであった。彼の関心はダンスに留まらずスケッチやストリート・アートにも手を出し、それがきっかけとなってラップの世界にも足を踏み入れることになるのである。TOMMY CASHにとってラップもアートも自らを表現する方法のひとつであり、やっているうちに自然とクリエイティビティが溢れてきたと本人の口からも語られている。


ヒップホップ・ダンスをはじめた後、ステップアップしてヒップホップ・アーティストになったTOMMY CASHであったが、当時の生活は楽ではなく、映画移管で床に落ちているポップコーン拾いなどの仕事をして生計を立てていたようである。彼にとって好きなことをできるのであれば、それだけで十分でありお金などいらないと考えていたようであるが、やがて生活するためにはお金を稼がなければならないと思うようになり、本格的にプロのラッパーの道へと進むのであった。



影響を受けたアーティストとは?


TOMMY CASHの音楽に大きな影響を与えたのは、「東欧のKanye West(カニエ・ウエスト)」という異名からも分かるように、Kanye Westである。彼自身も「カニエ・イースト」になると公言してはばからないことからも、いかにその影響が大きいかが分かるであろう。もっとも、彼は単にKanye Westの真似事をしているわけではない。様々なジャンルの音楽を聴いてきており、そのなかには2000年代のヒップホップや、Nas(ナズ)、Eminem(エミネム)、Marilyn Manson(マリリン・マンソン)といったビッグネームが含まれている。


ただし数あるアーティストのなかでも、やはりKanye Westだけは別格であり、かつてのインタビューにおいてTOMMY CASHは、Kanye Westこそが夢を信じることを教えてくれた存在であると述べている。実際Kanye Westを聞いたことで、TOMMY CASHは音楽作りをはじめる第一歩を踏み出すことができたのである。



音楽の特徴とは?


ラッパーであるTOMMY CASHの音楽の特徴は、彼自らが自分のアートを「ポスト・ソビエト・ラップ」と呼んでいることからも分かるように、生まれ育ったエストニアと、そこにおける思い出から得たインスピレーションをもとにしているという点がある。そのため彼の曲の多くにはエストニアの風景やそこで暮らす人々の生活が詳細に描写されており、その歌声を聴くだけで同地のイメージを鮮明に頭の中に浮かべることができるのである。


また自分の声や音を非常に重要視しており、最大限に自己表現することができる曲調の音楽を歌う傾向にある。彼自身も「他の誰かになろうとは思っていない」、「他人に扮して歌うようなことはしたくない」といった趣旨のコメントを残していることからも、そのことは良くわかるであろう。



TOMMY CASHの音楽について


世界的に知られるラッパーの1人となったTOMMY CASHの音楽の中でも一度聴けば衝撃を受け、驚愕を覚えるのが「Winaloto」と「Surf」の2曲である。前者はTOMMY CASHが恋人と始めてフランスのパリを訪れて、ルーブル美術館の見学後に地下鉄の駅に降りた際に、何気なく「肌をテーマにしてビデオを作ってみるのはどうだろう」といったことがきっかけでMVが作られた作品であり、後者は彼自らが自分の性欲に忠実に作曲したという生々しい作品である。


またTOMMY CASHの曲にはたびたびスポーツメーカーであるadidasが取り上げられることが多いのであるが、これは彼の父親が同社のトラックスーツをよく着ていたことが理由である。彼の記憶の中にその服を着た父親が長時間散歩をしていたということが鮮明に植え付けられており、それが音楽作りにも大きな影響を与えているのである。家の中にいても服を着替えない父親の姿を見て、東欧文化の無頓着さに思い至ったTOMMY CASHは、それを自らの歌に取り入れることによって、自身の生まれ故郷の特徴や文化を世界中に発信しようとしているというわけである。




written by 編集部


photo: https://www.youtube.com/watch?v=K5kD_vYnbe4


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