村上隆とは何者なのか。日本のアニメ・フィギュアから問いかけるアートとは

サブカルチャーをアートに!! 村上隆が生み出す作品の魅力
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2020.03.11 13:28

サブカルチャーをアートに!! 村上隆が生み出す作品の魅力


村上隆をご存知だろうか。たとえ名前を知らなくても、アニメ的なひまわりの絵、あるいは一時話題をさらった等身大フィギュアを一度は目にしたことがあるだろう。何かと物議を醸し出すアーティストと言っても過言ではない、村上隆とは、一体何者なのだろうか。



ポップアーティスト・村上隆が世に出るまで


村上隆は高校卒業後にはかねてからの夢であったアニメーターを目指したがその時は挫折を味わっている。そこでもう一つの興味の対象であった日本画の道に進み、東京芸術大学日本学科で学んだ。ところが院修士課程の修了制作で首席を逃したために、純粋な日本画家への道を自ら絶ったという。このエピソードからも、村上隆の反骨気風をうかがうことができる。その後は同大学日本画科で初めてとなる博士号を取得し、日本での個展を経てアメリカへ渡る。アメリカでは創作活動に専念し、ロサンゼルスでも個展を開き話題をさらった。


創作の地であったアメリカで多くの影響を受けたのだろうか、村上隆と言えばアニメやフィギュアといった日本のサブカルチャーを題材に用いることで知られているが、その気風はどこかアメリカ的である。


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I am coming to @institutotomieohtake latest owen show. My first time in Brasil! #murakamipormurakami #murakaminotomie #institutotomieohtake

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フィギュアやアニメで村上隆がアメリカに問いかけた『リトルボーイ展』


2005年4月、ニューヨークで開催した個展 『リトルボーイ展』では、村上自身の作品とともに、「オタク」と言われる日本のカルチャーアーティストの作品を発表した。フィギュアやアニメ風の絵で会場が飾られるなか、村上隆自身が展示したのは広島のキノコ雲で表した人間の骨の描写である。展覧会の名前である『リトルボーイ』とは、まさに広島に落とされた原子爆弾の呼び名であった。キュレーターである村上隆はまた、展覧会に大胆にもある2つの文面を掲示した。それは第二次世界大戦でアメリカが日本に原爆を落とした後、軍事的圧力を誇示する敵国であるアメリカが書いた文面。そして呼応するように、敗戦国である日本の憲法9条の文面をも掲示したのである。


村上隆が語るところによると、日本は戦争に負け、アメリカに従来の日本らしさを去勢された。「オタク」とは、アメリカの庇護のもと産声をあげたある意味歪んだ文化であるから、オタク文化のきっかけの一端を担っているのはアメリカである、と言う。果たしてアメリカはこの挑戦的とも取れる展示をどう受け止めたのだろうか。翌年2006年、村上はキュレーターとして、ニューヨークの美術館開催の最優秀テーマ展覧会1位を受賞。その結果がある意味その答えである。


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WWD日本版 @wwd_jp の表紙になりました。 表紙の写真はRK @rkrkrk さん。スタイリングはチェリー @cherry0.5 さんと柚木一樹 @kazukiyunoki さん。 ファッション専門誌では初めての超ロングインタヴューが掲載されています。 ルィヴィトンでのマークジェイコブス @themarcjacobs さんとのセッションの流れや、カニエ・ウ エストさんが初めて僕のスタジオに来た話。最近のヴァージル・アブ ロー @virgilabloh さん の事など、僕の体験を元にしたファッション的な話をしました。 僕がストリートファッションに開眼したのは、2016年にコンプレックスメディア @complex の代表、マークエコー @beingmarcecko さんに招待されて「コンプレックスコン @complexcon 」にアートディレクターとして参加してからです。会場では僕の事を“アート言語”で見ていない観客がストリート ファッションの中にあるという事実に出会って、彼らのことを”ス ニーカー ヘッズ”と呼んでいることを知って、なんにも知らなかった世界が目の前にバーっと広がってて、新鮮で、心から嬉しくなって、そんな彼らが1万人以 上 「コンプレックスコン」に来ていて、僕のことを歓迎してくれて、僕の中で大きな変化が起こっていったこと。なんだか、僕も改めてそういう ス ニーカー ヘッズの人に向けたものづくりをやってみようと思ったことなんか を長々と話しました。いつか、英訳してくれたりしたら良いんだけどなぁ〜。 今年の秋のコンプレックスコン、ロングビーチにも僕と「カイカイキキギャラ リー @kaikaikikigallery 」「となりのジンガロ @tonari_no_zingaro 」なんかで全力参加します。期待しててね。 謝辞: WWD Jの編集長の向千鶴 @chizurumuko さん、編集部の小池ユウ @yuuki_koike さん。ホントめちゃくちゃわがままに付き合ってくれて、ありがとうございました。あと、内輪だけど 笠原さん @chiaki_kasahara_ もお疲れ様でした。

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日本、そして世界は村上隆を受け入れるのか


村上隆作品を受け入れる人がいる一方で、批判を口にする人、いやもっとあからさまに不快感を示す人もいる。「オタクのアニメ・フィギュア文化を利用しアートと偽った作品だ」ととる人もいる。確かに、村上隆の作品を表面的に見ただけではそう取れるかもしれない。カラフルでゲテモノのアニメのような絵。ウェイトレスを模した等身大フィギュア。高額で落札された、白い液体を放出する裸体の青年のフィギュア・・・アメリカで高く評価される一方で、日本での評価は大きな開きがある。アーティストでありながら、起業家であり、プロデューサーという肩書きもまた、バッシングのネタにされがちだ。


しかし村上隆の作品がただ単にサブカルチャーを模しただけのものであるならば、ルイ・ヴィトンがデザインを依頼したりするだろうか。多くの企業や団体からコラボレーションの声がかかるであろうか。フランス・ベルサイユ宮殿で行った大規模な作品展『Murakami Versailles』は、結果的にはフランス国内の団体により抗議され、作品展中止を求められるという事態に至ってしまったが、多くのオファーがあるということ自体が、村上隆の作品が持つインパクトと影響力に惹かれる人間がいかに多いかということを示している。



現代に問いかけるアーティストであり続けること


村上隆は積極的に若者の支援も行う。自身が代表取締役を務める有限会社カイカイキキでは、雇用形態を与えることで様々なアーティストやスタッフを創作活動に専念させている。若手アーティストの育成スタジオ「ちゃんば」では単にアートだけでなく、礼儀作法に重きを置き、生活面でも指導を行なっている。カイカイキキの札幌アニメスタジオでは人を雇い、映画やアニメの制作を促す。さらに『GEISAI』という若手アーティスト向けのアートイベントも主催している。とても精力的だ。積極的な若手支援には、村上自身のアートで日本を変えたいという、強い思いが垣間見える。


2015年に日本国内では14年ぶりとなる大型個展を開催。先にドーハで展示していた全長100メートルに及ぶ『五百羅漢図』を発表した。その大作は中国の古代思想から着想を得ており、「生死や人間の限界」などをテーマに描かれた。今までの村上作品の代名詞であるアニメ・フィギュアといったポップカルチャー・アートのジャンルでは収まりきらない圧倒的スケール。オタク文化を利用しているだけだといった、それまでの批判的意見を蹴散らすほどの作品の力強さがそこにはあった。


アーティストとは何なのだろうか。美しく、古典的な技法で表現することだけがアートなのではないことは、現代はすでに看破している。それではアニメ的であって、何が悪いのだろうか。フィギュアで表現することはいけない事なのだろうか。いや、アートの定義は様々だ。少なくとも村上隆は、純粋に作品で世のなかに問いを投げかけるアーティストの一人であることには違いない。村上隆の世の中への強い「問いかけ」はまだ続く。




written by 編集部


photo: https://www.instagram.com/takashipom/


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