話題のラッパー、kamuiがソロアルバム『Cramfree. 90』をリリース!

既成概念に捉われない独特の音楽観を持つオルタナティヴ・ラッパー
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2020.02.19 06:05

既成概念に捉われない独特の音楽観を持つオルタナティヴ・ラッパー


kamui(カムイ)とは、音楽ユニット「TENG GANG STARR」に所属するヒップホップ・ラッパーだ。ユニットも彼自身も本格的な活動を初めて間もないが、9月19日にソロアルバム『Cramfree. 90』をリリースしその名を広めつつある。このアルバムを語る上で欠かせない、彼の波乱万丈な半生に触れつつ、kamui自身の人物像やリリースまでの遍歴などを見ていこう。




向上心に溢れる勤勉な人物。TENG GANG STARRのラッパーkamuiについて


kamuiとは、名古屋生まれのラッパーである。音楽ユニットTENG GANG STARRのメンバーで、kamui自身はラップパートや映像制作を担当するほか、「3-i」名義でトラックメイクを行う事もある。2015年に「なかむらみなみ」らと3人で音楽ユニットTENG GANG STARRを結成するも、16年にメンバーが脱退しkamuiとなかむらみなみの2人体制となる。17年の夏頃から本格的に音楽活動をスタートし、18年の9月5日にファーストフルアルバム『ICON』したが、19年の2月に活動を休止しkamuiがソロ活動に専念することを公表。そして同年の9月19日にソロアルバム『Cramfree. 90』をリリースする。


kamuiの音楽活動は彼が上京してからスタートした。だが、感情のコントロールが苦手な彼は東京でも暴力沙汰の日々を過ごし、遂には逮捕されるまでに至ってしまう。しかし留置所において母親から「吉本隆明」や「ニーチェ」などの高名な著書を差し入れとして受け取り、本の影響を受けたことで過激な性格が一変。現在の彼は、哲学書や純文学といった学問を愛する勤勉さと好奇心を持ち、過去の境遇を微塵も感じさせない落ち着いた物腰の好青年となっている。ラッパーとしての派手な外見をしながらも、真面目で誠実な姿勢を崩さないというギャップもファンを惹きつける魅力のひとつだろう。




暴力ではなく「言葉」と「音楽」による自己表現をモットーに活動


初のソロアルバム『Cramfree. 90』には、kamuiの波乱万丈な生い立ちが鮮明にあらわれている。彼の生い立ちは非常に複雑なもので本人が語るところによると、幼少期の家庭環境は決して良いと言えず彼自身も母親の再婚相手と上手くいかなかった。苗字が3つもあったという本人の弁から、母親は何度も再婚を繰り返していたようだ。インタビューでは「自分では覆しようのない状況が現実にあり、しがらみから抜け出したかった」と当時の自分を振り返り、上手くいかない現実に対する八つ当たりのように何度も喧嘩を繰り返していたことを語っている。それは上京後も変わらず、前述したように彼が留置所で改心するまで続いていた。


彼は自身のステージネームについて、ヒップホップを始めた際に格好良い名前を名乗りたいと考え、白土三平の漫画『カムイ伝』からインスパイアしたとインタビューで公表している。『カムイ伝』とは非常に喧嘩が強い非人出身の少年「カムイ」の物語だ。彼は出自のせいで百姓の子供から常に差別されているが、弱い人間から馬鹿にされる理由が理解できない。しかし、次第に身分という名の「しがらみ」を知り、力だけの世界を求めて忍者になっていく。現実に対してしがらみを抱えていたkamui自身、しがらみから抜けだそうと生きる主人公に共感する部分が多く、カムイという名前を自身のステージネームにしたのだという。




kamui独自の世界観に溢れたソロアルバム『Cramfree. 90』


『Cramfree. 90』はユニット解散後、kamui自身によってリリースされた初のソロアルバムである。彼の世界観を色濃く描いた「オルタナティヴ・トラップ・ヒップホップ」とも言うべき作風で、タイトルはKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の『Section.80』をリスペクトしている。NYヒップホップのダークな曲調とkamuiが持つ内省的な世界観がマッチしており、ネオ・トウキョウ的な雰囲気を醸し出している。サウンドは過去の楽曲・音源を再構築する「サンプリング」を主体としており、彼の過去を表すようにアンダーグラウンド的なムードを放っている。説明を一聞すると風変わりな楽曲に聞こえるが、音楽そのものはストレートなヒップホップであり、ラップの中でも非常に聞きやすい部類だ。


因みにオルタナティヴという単語には「もうひとつの選択、代替手段」などの意味がある。音楽ジャンルとしては、レコード協会が主導する大衆向けの産業ロックや、一般に好まれるポピュラーな音楽とは異なる、流行や常識といった既成観念に捉われないアングラ的な音楽シーンを指している。より簡単に言えば、普遍的な価値観から外れた「もう一つの音楽表現」という事だ。『Cramfree. 90』はこのオルタナティヴという観念を体現しているアルバムであり、まさにkamuiが独自に持つ世界観の集大成と言える。




ソロ活動中の現在も己のスタイルを貫き通すストイックさは変わらない


『Cramfree. 90』をリリースした後も精力的に音楽活動を続けており、ユニット活動の休止はファンたちから大いに嘆かれたものの、ソロ活動中の現在も多くの注目を集めている。ソロ活動がスタートして以降もユニット活動をしていた頃と変わらず己のスタイルを一貫し、ファンの数は増える一方だ。本人が語るように決して幸福とは言えなかった人生すら、己の個性として磨き上げたkamui。彼と同様に後ろ暗い過去を歩んできた若者の中には、勇気づけられた人も多いはずだ。彼は苦難の果てに「自己」を見出し、今もなお音楽と共に歩んでいる。己を作り上げた音楽に対する情熱は、これからも変わることはないだろう。



written by 編集部


photo: https://www.youtube.com/watch?v=gAw9jkJDHh0

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