クイーン・オブ・フューチャー・ソウル、Janelle Monaeの魅力!

名盤『Dirty Computer』も含めて徹底分析! Janelle Monaeの魅力にせまる。
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2020.02.18 02:00

名盤『Dirty Computer』も含めて徹底分析! Janelle Monaeの魅力にせまる


身長152センチの童顔の女性。タキシードに身をつつむ。女性器を模した格好で「ピンク」について歌う。クイーン・オブ・フューチャー・ソウルであり、プリンスの魂の継承者。アンドロイドのアルターエゴを持つ。クィアなアーティストとして名高い Janelle Monae(ジャネール・モネイ)の魅力に迫っていこう。





音楽、映画など多岐に渡るマルチな才能


クイーン・オブ・フューチャー・ソウルことJanelle Monaeは1985年カンザスシティに生まれた。彼女は自分の育った環境について次のように述べている。「私は混乱とナンセンスが占める環境で育った。私は私の作ったちょっとした言葉で反応を返したりしていた。音楽が世界を変えるさまを見て、世界がアニメやブロードウェイのようだったらいいのにと夢想した。そこは音楽が空から落ちてきて、なんでも起こる場所なの」今のジャネールの魅力のひとつ、キャンプな感性がこの時点ですでに生きていることがわかるだろう。彼女は成長すると、演劇を学ぶためにニューヨークに移り、フィラデルフィアでは最も古いアフリカン・アメリカンの劇場『フリーダム・シアター』でパフォーマンスを行った。


彼女がスターとなったきっかけを掴んだのは、移住先のアトランタでのことだ。彼女はOutKast(アウトキャスト)のBig Boi(ビッグ・ボーイ)と出会った。Big Boiは彼女の初期のキャリアを支える重要人物となる。2004年にははじめてのEP『The Audition』をリリース。これは400枚限定となった。その後もOutKastのアルバムに客演参加。2006年にはバッド・ボーイ・レコードと契約した。2007年に『Metropolis: Suite I(The Chase)』を発表した。構成は「組曲」を意識。そのため、部分的には、次のフル・アルバムと地続きである。1927年の古典映画『メトロポリス』にインスパイアされたこの作品は、彼女のアルターエゴであるアンドロイド、シンディ・メイウェーザーの物語である。なんとこれがいきなりグラミー賞にノミネートされた。2010年に、初のフル・アルバム『The ArchAndroid』を発表。中でも前述のBig Boiを迎えた「Tightrope」は必聴。2011年には客演したFun.(ファン)の「We Are Young」も大ヒットした。


重鎮も一目置くアーティストとして知られるようになったJanelle Monae。2013年にはセカンド・アルバム『The Electric Lady』を発表。Prince(プリンス)、Erykah Badu(エリカ・バドゥ)、Miguel(ミゲル)、Solange(ソランジュ)らが参加した。このアルバムではファンクとSFを融合したような彼女の世界観を思う存分味わうことができる。彼女がクイーン・オブ・フューチャー・ソウルと呼ばれる所以だ。


グラミー賞に8回ノミネートされ、ソウル・トレイン・ミュージック賞や、ビルボード・ウーマン・イン・ミュジック賞も受賞している。その活躍は音楽だけにとどまらない。2016年は演技の年となった。彼女は『ムーンライト』『ドリーム』に出演。ここでも独特の存在感を観客に見せつけた。演技は初挑戦だったが、ブラック・エンターテイメント・テレヴィジョン・アワードの最優秀女優賞にノミネートされるなど、俳優としても注目を集めた。




名盤『Dirty Computer』を分析


そんなマルチの才能を持つJanelle Monaeが当時サードアルバムとして手掛けていたのがアルバム『Dirty Computer』だ。リリースにあたり、彼女の才能に惚れ込んでいた巨匠Princeと共同作業を行ない、精力的に行動していた。しかし、悲しい出来事が起こってしまう。2016年に彼が急逝してしまったのだ。そのため製作が一時中止された。アルバムは、悲しみを乗り越え、2018年にリリースされた。Brian Wilson(ブライアン・ウィルソン)やZoe Kravitz(ゾーイ・クラヴィッツ)、Grimes(グライムス)、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)らを迎え入れたこのサードアルバム『Dirty Computer』は、好意的なレビューで迎えられた。ローリング・ストーン誌も星4つで評価している。


これまでのサイファイ的な世界観を踏襲する表題作「Dirty Computer」は壊れたコンピューター目線で歌われる。Daft Punk(ダフト・パンク)の影響が指摘されるサイケな雰囲気がおもしろい。Brian Wilsonが客演しているこの作品は必聴の1曲だ。さらにJanelle Monaeは「PYNK」にて同性婚をめぐるキャッチフレーズである「愛は勝つ」というメッセージを発信し、「Diango Jane」では有色人女性にとっての世界について歌った。ローリング・ストーン誌はこうしたところに着目し、このアルバムを「もっとも未来的で、リベラルなファンクの傑作」だと評している。クイーン・オブ・フューチャー・ソウルにぴったりな評価だろう。


このアルバムで特に注目されたのがPrinceの影響だ。ミニマムなソウルナンバー「Make Me Feel」はプリンスの「Kiss」の影響が指摘されている。最後のトラック「Americans」も「Lets’s go crazy」を彷彿とさせる。また、アルバムと同名の「Dirty Computer」という映像をYouTube上にて「Emotion Picture」という言葉とともに公開したのも、「Purple Rain」のようだと言われている。『Dirty Computer』は、Princeの流動的でラディカルなファンクとポップの魂とジャンルを超えた活躍を、Janelle Monaeらしい形で結晶化させたものだ。




フェミニストとして、クィアとして


『Dirty Computer』でクイーン・オブ・フューチャー・ソウルとしての確固とした座を手にした Janelle Monae。彼女は他にフェミニストとクィアのアイコンとしても知られている。『Dirty Computer』収録のグライムスとのコラボ「PYNK」はJanelle Monaeのそういったところがよく現れている。俳優仲間のTessa Thompson(テッサ・トンプソン)を招いたMVでは、女性器を模した衣装を纏い、女性の性的な自主決定権や女性同士の恋愛について歌っている。


クィアとはもともと「奇妙な」という意味で、いまはLGBTQのような性的少数者を指す言葉として使われている。キャリアの当初から、タキシードを着てパフォーマンスしていたJanelle Monaeは、クィアなアイコンとして人気を博していた。前述のTessa Thompsonとの交際も噂されていた。Janelle MonaeはLGBTQコミュニティの支持を表明する一方で、自身のセクシュアリティについては発言を控えていた。しかし『Dirty Computer』の発売とともに、インタビューに応じたJanelle Monaeは沈黙を破った。自分を「アメリカに住むクィアな黒人女性」と形容し、「男性とも女性とも関係を持ってきた」とカミングアウトした。自分のことはバイセクシュアル、そしてパンセクシュアルとして定義している。彼女はさらに「このアルバムは、クィアなみんなにむけて作った」と特に性的マイノリティのファンに向かって語りかけた。


多様性を誇る未来を語るアーティストJanelle Monae。クイーン・オブ・フューチャー・ソウルのこれからの活躍に期待だ。




written by 編集部


photo: facebook

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