トラックメイカー、EVISBEATSの魅力とは?

EVISBEATSについて
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2020.02.26 02:00

EVISBEATSについて


国内において確固たる地位を獲得したヒップホップにおいてはトラックメイカーの存在が極めて重要である。彼らの多くは精力的に曲作りを行っており、なかにはアーティスト以上に多くのファンを獲得している者もいる。以下では、そのうちの1人であるEVISBEATSの魅力について、彼の音楽の特徴と併せて見ていくことにしよう。




元・韻踏合組合のメンバーとして


EVISBEATSは、もともと大阪を中心に活動していたヒップホップグループである韻踏合組合(いんふみあいくみあい)の奈良本部という位置づけであったNortable MCのメンバーであり、当時はAKIRAという名前で活動していた人物である。この韻踏合組合というグループは、主に大阪の中でもファッションの発信地として知られているアメリカ村を本拠にしており、CHIEF ROKKA、HEAD BANGERZ、Nortable MCという3つのグループにヒップホップMCであるMINTが参加することによって結成された異色のグループである。そのため、その作品は、各グループが自分たちの音源を持ち寄ったコンピレーション的なアルバムになっているという特徴がある。


このように、韻踏合組合は様々なグループの集合体であり、音楽の方向性についてはそれぞれが独自の方向を向いていたことから、2004年6月にMCのMINTが、2005年にはNortable MCの2名が相次いで脱退している。ただしグループそのものはその後も残ったメンバーで存続しており、フリースタイルラップバトルである「ENTER MC BATTLE」の企画や運営を行い、メンバー自身がそれに参加するなど、精力的に活動を続けている。




アミダとEVISBEATSとして


前述のとおりEVISBEATSは韻踏合組合から脱退したわけであるが、その後の彼はトラックメイカーとして活動する一方で、MCとしても活動の幅を広げている。MCとしての彼は「アミダ」と名乗っており、2008年には自己の名前を冠したアルバム『AMIDA』をリリースしている。一方で、トラックメイカーとしても存分に才能を発揮しており、『AMIDA』の楽曲も彼自身が打ち込みを行って作り上げたものばかりである。なお、EVISBEATSというのはトラックメイカーとして活動するときの名前であり、彼が歌う曲は歌い手であるアミダと、作り手であるEVISBEATSという2つの名前をもったアーティストの作品という位置づけである。


彼自身の言葉を借りると『AMIDA』というアルバムは、4年の歳月をかけて山を一歩ずつ登ってくるかのように曲作りを続けてきてようやく頂上に到達したところで出した作品集であるということである。その音楽の特徴は音と言葉が縦糸と横糸のように組み合わさった絶妙のハーモニーを醸し出している点にあり、一度聴いた者は瞬く間に彼の持つ無限に広がっている音楽の世界に惹きつけられることとなる。


また、彼自身のアルバムの特徴として多くのアーティストが作品に参加しているということが挙げられる。彼自身も波長の合う人との縁は非常に重要であると語っている通り、楽曲の提供などを通じてヒップホップ業界の内外を問わず広い交友関係を持っているということが背景にはある。例えば『AMIDA』に収録されている「CHILL」という曲を歌っているのはゴスペルクワイヤーの吉坂和麿であるし、別の楽曲「八百万」では謎のラッパーである908が参加していることからも、いかに彼が広いネットワークを有しているかが分かるのではないだろうか。




トラックメイカーとしてEVISBEATSの音楽へのこだわりとは


トラックメイカーであるEVISBEATSはドラムキットをどう組むかやどのような言葉を選ぶかなど、音楽作りにも独自のこだわりを有している。1曲1曲ていねいに作り上げるという姿勢を大事にしており、そのようにしてできた作品の集大成がアルバムであると考えているのである。アルバムありきで曲を作るのではなく、バラバラでもいいので一つずつ楽曲を作り上げていった結果としてアルバムに繋がればよいという考え方である。


また、販売至上主義という考え方には批判的であり内容が薄っぺらくてもよい万人受けするような作品をリリースするという思想については、彼自身が同じように考えて作品作りをすることはできないというコメントを残している。いくら販売数が多くても、それがすべての価値を決める訳ではないということについては徹底したこだわりをもっているのである。ただし売れたらそれはそれで嬉しいとも述べており、決して売れ行きを気にしていないということではないようである。


トラックメイカーやMCとして彼が心掛けているのは聴く人の頭ではなく、心に届くような魂を揺さぶる音楽を作るということである。そのためのひとつの方法としてインドなどの海外に行ったり、様々なジャンルの本を読んだりすることで日本のことを客観的に見る視点を養っており、その中で今の日本の価値観が歪んできているという点に危機感を感じ、それを変えるための音楽作りを志すようになっている。そのために彼が心掛けているのは自己主張だけを続けるのではなく、世の中のためになるような音楽を作るということであり、多くのアーティストたちとコラボレーションしているのもそのような考え方のひとつの表れなのである。




written by 編集部


photo: https://evisbeats.bandcamp.com/releases

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