サラリーマンの哀愁? DOTAMAというラッパーの音楽と面白さ

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DOTAMAというアーティストが生まれたきっかけ
DOTAMAは一見普通のサラリーマンのようにも見える。しかし、その中身はラッパーそのものだ。DOTAMAは1984年生まれ、栃木県佐野市出身である。曽祖父に祖父、父母の4人が教師という職業についている家庭環境の中でも、彼は特別な存在ではなかった。進学校へ通い生徒会でも会計として活躍している。教員という職業についている家族の中で伸びやかに、しかし音楽とはあまり縁がない環境で育ったDOTAMAがどうやってラップに目覚めたのだろうか。
中学生になったDOTAMAが出会ったのが、Dragon Ashの「Deep Impact」という曲のMVである。ここではじめてラップと出会った彼は、MC・DUFFとともに「5W1H」という2MCユニットでラップを歌い始めたのだ。このMC DUFFとDOTAMAは幼馴染である。ラッパーとして活動しはじめた頃は、このユニットの他にも「KITAKANTOSKILLZ」というグループにもメンバーとして属していたという。ラッパーとしての彼のキャリアはたったひとつのMVとの出会いがきっかけなのだ。進学校で生徒会の会計をしていた彼がラップを歌い出すとは誰も、本人さえも考えてはいなかっただろう。
ラッパー兼正社員? 働きながらMCバトルに出場
進学校を卒業後、DOTAMAは地元の栃木県にあるホームセンターで正社員として働いていたそうだ。その年数は10年、決して短くはない年月を社員として働きながらラップを続けていたのである。彼がようやく行動しはじめたのは2003年、MCバトルに出場することから注目されはじめた。初出場した「B-BOYPARK2003」では賞を逃しているが、その後2013年と2015年に出場した「UMB GRAND CHAMPIONSHIP」では準優勝に輝いている。次いで2017年には優勝したのだ。また同時期の2013年・2014年に行われた「戦極 MCBATTLE第7章」と「第9章」では優勝するなど、様々なMCバトルに出場して賞を総なめしはじめる。
これらのMCバトルに出場する前、2005年の8月には自主制作でソロ音源を出している。その名も『DOTAMATICA EP』という。2007年になると音楽レーベルの目にとまるようになり、「術の穴」に所属をしている。同年9月にはジャズベーシストとのコラボアルバムを販売し、2010年の4月にはファーストフルアルバムになる『音楽ワルキューレ』を発売したことでラップ好きに知られるようになっていく。いくつかのアルバムなどを販売後、2011年の11月に出場した「ULTIMATE MC BATTLE東京」の予選ではじめて優勝をすることになる。このMCバトルには2005年から出場していたが、この年はじめて優勝することが出来た。12月には東京代表のラッパーとして本戦に出場するも、ベスト4になっている。
ちなみにこの本戦には大阪代表のR-指定と1回戦で、準々決勝では千葉代表として出場していた輪入道と戦っている。準決勝まで勝ち残るが、群馬代表で出場していたNAIKA MCに敗れてしまった。実力派のラッパーたちと戦うことで、DOTAMAのラップは全国的に知られていくようになる。ラッパーとして活動しつつ、ホームセンターの正社員としても働いていたころからすでにその実力の片鱗は見え始めていたのである。
見た目よりもエネルギッシュなラップ! 映画にも出演?
見た目が真面目そうなのにラップではエネルギッシュな歌詞とリズムでバトルの意外性に驚き、そこからファンになった人も多い。辛辣ではあるがユーモアもあるバトルが印象に残ることが多いので、一度耳にした人はもう一度聞きたいという人もいる。彼が上京したのは2012年の10月年齢的にもラップに力を入れていこう、頑張ろうという気持ちだけで行動して脱サラをしたという。確信があったわけではなく、とにかく行動しようと考えた上での行動のようだ。
実はDOTAMAは、2014年に上映された漫画の『TOKYO TRIBE2』という作品を実写化したものに出演している。YouTubeで応募された公開オーディションに参加をし、見事出場することになったのである。ここから彼はラッパーとしてだけではなく、楽曲提供などの仕事も少しずつしていくようになる。彼の独特の音楽センスとラッパーとしても活躍は、一気に加速していくのだ。コラボした作品もいくつもあり、彼の魅力をさらに引き出している。MCバトルとも少し違ったラッパー・DOTAMAの音楽を知りたい人にはおすすめだ。
サッカー業界でも活躍! 業界初のラップオフィサー就任
ラッパー・DOTAMAのラップバトルは、その真面目そうな見た目に反して力強く激しいことで知られている。2016年頃まで行われたライブでは、曲間に自分が機材を使って音を出しアレンジをするというスタイルで通していた。しかし、2017年の初め頃からはバックDJとしてDJ YU-TAを帯同するようになり、ライブのスタイルにも変化があったようだ。彼のラップは音楽業界だけではなく、2019年にはJリーグ史上でもはじめてサッカーチーム・サガン鳥栖のチーフラップオフィサーとして1年間、同サッカーチームをラップミュージックで応援していくことになる。これはサッカー業界でも初の試みであり、ラップファンだけではなくサッカーファンにも驚きを与えることになった。
DOTAMAは地元である栃木の観光大使にも就任しており、ラップ業界だけではなく様々な場で活躍する機会が増えている。もちろんラッパーとしてもこれからたくさん活躍し、精力的に音楽業界を引率していってくれるだろう。彼の独特のラップや歌詞はMCバトルで観るのもいいが、コラボされたラッパー同士のアレンジされた楽曲にも注目していきたいものだ。フェスやライブも積極的に行っているので、一度は彼の見た目に反する激しいディスと魅力的なラップを聞いて欲しい。
written by 編集部
photo: http://dotamatica.com/profile