気鋭の京都のラッパー、Daichi Yamamotoの挑戦

Daichi Yamamotoって誰だ?
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2020.02.19 05:58

Daichi Yamamotoって誰だ?


Daichi Yamamotoはラッパー・美術家である。2019年9月4日にファーストアルバム『Andless』をリリースした気鋭のラッパーは国内だけではなく世界的にも注目される、いま必聴のアーティストである。彼はどんな人物なのか?




アーティストとして、美術家としてのこれまでのキャリア


彼の経歴は興味深い。注目されたきっかけはSoundCloudだ。2016年に「she feat.JJJ」が配信された。これはロンドン滞在中の出来事。Daichi Yamamotoが2017年に帰国すると、さっそく音楽レーベルのJazzy Sportsからのリリースが発表された。故郷に戻った彼は精力的に活動する。2018年にはSTUTSの作品に客演参加、桑原あいのアルバムではジャズとラップの新たな境地を見せた。これは根強いファンをもつパフォーマンスだ。 さらに「上海バンド」でApple Musicの「今週のNEW ARTIST」に選ばれる。これで彼の名を知った人も多いだろう。続いてPSGのGAPPERとMONJUの仙人掌を迎え入れた、Aaron ChoulaiとのジョイントEP『Window』を発表した。Daichi Yamamotoの強みがよくわかるEPだ。このことはまた後述する。


JJJやAi Kuwabara(桑原あい)というお馴染みのメンバーに加え、VaVa、Kaho Nakamura、Kid Fresinoらが参加しているファーストアルバムはこれまでの彼の集大成、続編ということもできるだろう。MVは、「上海バンド」や、前述のAaron ChoulaiとのジョイントEPに収録されている「All Day Remix feat. GAPPER & 仙人掌」を手掛けたYuki Horiが引き続き担当している。Daichi Yamamotoの音楽を聴くとき、彼女とのクリエイティブなケミストリーは楽しみのひとつだ。ふたりのコラボはそれだけではない。ファーストアルバムに収録されている「Escape」のデジタル・ブックレットもそのひとつ。スタリッシュな写真は必見だ。


彼の活躍はこれだけにとどまらない。レコードショップ・音楽レーベルのJazzy Sportsの店長にも任命されているのだ。また、ロンドンでインタラクティブ・アートを学び、作品を発表。美術家としても評価されるなど、多岐に渡る活躍を見せている。




生い立ちと青春期


さまざまなフィールドで活躍するDaichi Yamamotoはジャンルの境界線を越えてしまう彼の表現のように、多様なバックグラウンドを持っている。


1993年このバイリンガル・ラッパーは、日本人の父とジャマイカ人の母の間に京都で生を受けた。父は京都の音楽シーンの大御所、ニック山本だ。関西電力を退職したあと、NYとジャマイカに滞在。1985年にジャマイカ人の妻と帰国。(Daichi Yamamotoは生まれる前のこのときの母について、桑原あいのアルバム『To The End Of This World』に参加した際、「MAMA」で歌っている)。日本に帰ったニック山本は京都市内に日本最古のクラブである「メトロ」を立ち上げる。革新的で伝説的なこのクラブは世界で行くべき14のクラブのうちのひとつに選ばれた。Daichi Yamamotoもここでライブを行っている。


彼が具体的に音楽に目覚めたのは小学校6年のとき。彼はヒップホップをはじめ、レゲエ、ジャズに耽溺する。家庭教師の影響でハウスミュージックにも興味を示し、18歳になる頃にはラップやビートメイキングをはじめていた。京都市立芸術大学の試験に2度落ちてしまった彼は「アートやるなら、海外やったほうがええわ」という父親の助言を受けて、ロンドン芸術大学に進学。インタラクティブ・アートを学びながら、音楽活動も行った。そのうちの成果のひとつが前述のJJJとのコラボ曲だ。このとき、美術家としてもフランスのワイン会社とコラボしたりと、いくつかの作品を発表した。




Daichi Yamamotoの音楽


Daichi Yamamotoの音楽は独特だ。DJのRen Yoshikiも彼との対談のなかで「彼のラップは誰の真似でもない」と評している。彼の音楽はエスニック・ルーツであるアフロ・ミュージックを軸に、その他のジャンルも貪欲に吸収し、発展し続けている。


ヒップホップ、ジャズ、レゲエ、ハウスミュージック、さらにジャジーヒップホップ、グライムなどの影響を受けた彼の音楽はグローバルだ。しかし真に注目すべきは、違ったジャンルの音楽をひとつに融合させるその創造力だろう。桑原あいとのコラボは、佐藤剛に「2018年日本のジャズとラップの金字塔だ」と言わしめるほど。同じく2018年に発表したAaron Choulai x Daichi YamamotoジョイントEP『Window』ではサイケデリックなビートとの絶妙なラップを披露している。それはRen Yoshikiが「すごい」と舌を巻くほどだ。


また、彼の音楽は切なくて郷愁を誘うような雰囲気がある。なにかを思い出すようなフローは、同郷のくるり「京都の大学生」やモーモールルーギャバンなどに見られるローカルなエモーションを喚起させる。



あらたな挑戦


ロンドンでもなく、東京でもなく、京都で活動を続けるDaichi Yamamoto。彼は「京都は人間関係も街も伝統的。そこに新しさをもたらすことができればよいと思う。何年かあとに「京都のあそこ面白いよね」と言ってもらいたい」と述べる。


そんな彼が将来的に着手したいのは映画だ。彼は映画がすべての集大成に近いものだと捉える。VRなどの新技術によって、映画にも改革がもたらされるのではないかと彼は期待している。ここでも彼の意欲的な先進性が表れている。ボーダーレスな音楽を創造し、インスタレーション作品「Dégorgement」では観客をパフォーマーに変え、観客に芸術的な喜びをもたらした彼。映画をつくるとならば、期待できるものとなるだろう。ローカルと世界を行き来し、あらゆるものをミックスして新しい音楽を創造するDaichi Yamamotoが、京都から世界を巻き込むようなグルーヴを起こすのを待つばかりだ。




written by 編集部


photo: https://www.youtube.com/watch?v=DhPk4YCFoNU

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