大流行のCITY POP(シティポップ)という音楽ジャンルはどんな音楽?

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ジャンル CITY POP(シティポップ)とは
竹内まりやが1984年4月に発表した「プラスティック・ラブ」のリバイバルヒットなどにより、CITY POPと呼ばれる音楽ジャンルに対する注目度が急速に増している。若い世代の間では聴き慣れない、このCITY POPというジャンルの音楽は一体どんなものであるのだろうか? またどんなアーティストがこのジャンルの代表的な存在なのか?
CITY POP(シティポップ)の定義
2010年代後半に入り日本において急速に流行り始めているCITY POP(シティポップ)というジャンルは、明確な定義がなくてややあいまいな部分がある。しかし、一般的には「1980年代に流行した、洗練された雰囲気のある都会派ポップス」といったように解釈されている。つまり、フォークギターなどのアナログ楽器を多用しているほか、歌詞も素朴な雰囲気のポップソングあたりとは対照的なものだ。具体的にはシンセサイザーなどのデジタル音楽機器を多用し、歌詞もおしゃれで都会的な雰囲気があるものがCITY POP(シティポップ)の曲として扱われてきた。その他、曲のタイトルがアルファベット表記またはカタカナ表記であるケースが大半を占めるのも特徴といえる。
日本を代表するアーティスト・竹内まりやの「プラスティック・ラブ」が CITY POP(シティポップ)の火付け役
日本におけるCITY POPという音楽ジャンルの人気再燃のきっかけを作ったといわれているのが、竹内まりやの「プラスティック・ラブ(PLASTIC LOVE)」という楽曲だ。この曲は元アイドルの彼女が、山下達郎と結婚したのち1984年4月に発売した勝負作『VARIETY』収録曲である。アルバム発売日に通算12枚目のシングルとしてリリースされたが、『VARIERY』購入者がわざわざこのシングルを買う必要はなかったため、それほどヒットしなかった。また翌1985年3月に発売された「プラスティック・ラブ(EXTENDED CLUB MIX)」というリミックス版の知名度も売れていない。さらに、1994年に発売して300万枚以上を売り上げたベストアルバム『Inpressions』にも収録されていないため、国内における認知度が高いとは言えなかった。
しかし、発表から30年以上が経過した2010年代後半に入り意外な形で脚光を浴びる事となる。海外のあるDJがYouTubeにこの曲のリミックス音源をアップロードし、じわじわと海外で人気が高まっていった。そして、竹内まりやの公式映像チャンネルは存在しない中、YouTubeにアップロードされたオリジナル作品の非公式音源が海外に住む外国人の間で大流行する。再生回数に関しては驚異の2000万回超えを記録したほか、その非公式音源ページには海外リスナーからの絶賛コメントが殺到するようになっていった。その後も竹内まりやの海外における人気はどんどん高まっていき、その事は日本でも大きくクローズアップされはじめる。なぜならば、日本のアーティストの曲がここまで世界中で受け入れられたのは、実に1960年代における「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」以来であるためだ。間隔で言うと、「SUKIYAKI」以来、約55年ぶりに誕生した日本発の世界的なヒットソングという事になる。
「プラスティック・ラブ」の海外における人気ぶりは、日本のメディアでも続々取り上げられ始め、この曲に対する日本からの注目度も急速に高まっていった。1984年にあまり売れなかったこのCITY POPの代表的な曲は、約35年の時を経て配信分野で大ヒットを記録する事になる。また、この曲の収録したオリジナルアルバム『VARIETY』に関しては、オンラインCDレンタルサービスでなかなか借りられないといった事態なども起こった。そんな国内外での大ブームを受けて、竹内まりや&所属レコード会社も遂に動き、これ以上非公式音源が出回られないためにもオリジナルのMVを2019年に制作する。すると今度はこちらの公式映像のほうに外国人からの絶賛コメントが大量に寄せられる事態となっており、竹内まりやというアーティストの海外における評価は高まるばかりの状況だ。
竹内まりや以外のCITY POP(シティポップ)というジャンルに該当するアーティストとは?
1980年代に流行したCITY POPはあいまいなものながら、それに該当するとされる竹内まりや以外のアーティストはたくさん存在する。例えば「プラスティック・ラブ」のプロデューサーで竹内まりやの夫としても知られる山下達郎が発表してきた1980年代以降の音楽は、まさにCITY POPそのものである。またオシャレなサウンドと歌詞で1980年代に人気を博し、一世を風靡したEPO、山下久美子といった女性ソロアーティストも代表的な存在として扱われてきた。他にも佐野元春や打ち込み系サウンドを得意としてきた大澤誉志幸、何人かのボーカルをコンビを組んできたオメガトライブなどの音楽性もCITY POPの概念と合致する。
逆に長渕剛や松山千春といったフォーク色が強いニューミュージック系アーティストはCITY POP系アーティストには分類されない。ちなみに海外勢で言うと、1990年代に日本において爆発的な人気を保持し続けてきたJamiroquai(ジャミロクワイ)の音楽性や歌詞はまさにCITY POP系だと言われている。
2010年代におけるCITY POP(シティポップ)
2010年代後半にCITY POPというジャンルの人気が再燃しはじめてから、メディアにて新世代のCITY POP系またはURBAN POPと称されるアーティストも登場し始めた。例えば、メンバー達が1980年代から1990年代にかけてのおしゃれなポップスに大きな影響を受けてきたと公言する湘南地域出身のSuchmosはその代表格である。他にも、ブームに合わせて1980年代に流行った往年のCITY POP風の曲を発表するアーティストが続出しており、それらの中から新たな世界的ヒット曲が生まれる可能性もあるだろう。
2020年には松原みき「真夜中のドア」がバイラルヒット
2020年末には1979年発売の松原みき「真夜中のドア〜stay with me」がSpotifyのグローバルバイラルチャートで18日連続世界1位を記録し、ここ日本でも大きな話題となった。前述した竹内まりや「プラスティック・ラブ」以前の曲である。「真夜中のドア」を手がけた林哲司はmikikiのインタビューでリバイバルの理由として「キッカケの元素としてDJたちが焼き直したり引用したりっていうことが入り込んで、インターネットの発達がYouTubeに繋がり、ストリーミングという音楽の聴き方の変化を経て、Rainychのカバーでダメ押しした」と話す。
今では海外のリスナーも多い「真夜中のドア」が歌詞のわからない人たちにも認められたのは、言葉や詞の響きも含めてトータルのサウンドが評価されたからであって、「音楽家としてはこの上ない喜び」と40年以上前の曲が再び人気となった背景を語っている。
現行のメジャーシーンでも広がるCITY POPブーム
過去の楽曲の再ブレイクだけでなく、現行の音楽シーンでも注目されるCITY POP。2021年7月には三代⽬ J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEのボーカリスト今市隆⼆の「Highway to the moon」がリリースされ、MVも公開された。「Highway to the moon」はロマンティックなメロディーとつい体がリズムに乗ってしまいそうなオールディーズなナンバー。その心地よい”楽曲“にのせた80年代のレトロな世界観は昔の短編映画を見ているかのような仕上がり。
またクラシックカーに乗った映像を中心に構成されており、楽曲と絶妙の調和に今すぐドライブに行きたくなるような作品で、視覚的にもCITY POPのバックグラウンドを彷彿させる魅力ある楽曲だ。
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source
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/29093
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0714/jtm_210714_5915408155.html
written by 編集部
photo: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/1239162/