ANARCHYは日本のゲットー出身のラッパー

ANARCHYって何者?
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2020.03.11 03:53

ANARCHYって何者?


ANARCHY(アナーキー)は日本人のラッパーである。スラングでゲットーと呼ばれる治安の良くない地域の出身で、ブルース調のライムが最大の特徴だ。日本人では数少ないゲットー出身のラッパーとして大成したANARCHYについて、今回は紹介をしていく。



ラッパー・ANARCHYはどこのゲットー出身? プロフィールは?


ANARCHYは、1981年に関西で生まれた。そして3歳の時に本人がゲットーと呼ぶ京都府伏見区の向島団地に引っ越し、以降はそこで育つ。向島団地というのは、向島ニュータウンとも呼ばれ、最盛期には2万人以上がいたマンモス団地である。一般的な集合住宅とは違っており1977年の受け入れ開始以来、主に暴力団関係者、在日外国人や貧困層が住み、凶悪事件も多く発生するなど、一帯はとても治安の悪い地域とされている。ANARCHYは向島藤の木小学校から向島東中学校へと進み、その頃はまだやんちゃで済むようなバスケットボール好きが好きで部活動に打ち込むただの少年だった。


中学2年生となった1995年に当時、黎明期であった日本のHIPHOPと出会いのめり込むようになる。ライブと洋服屋に足繁く通いラジカセでテープが擦り切れるほど聴き、向島団地の仲間達とラップをしていたという。ラップでは社会や学校に対する不満をナメるなという思いにのせ、仲間から称賛され中学生にしてクラブを貸し切り数百人の前でライブをした。その頃の様子は楽曲はもちろん自伝や映画監督作の『WALKING MAN』で強く触れられている。またブレイクした当初には、少年院の中でZEEBRAが特集をされている音楽番組を見て、ラップに目覚めたというエピソードも話していた。


中学卒業後は京都市内を転々としながら、仕事をしつつラップに打ち込んでいく。仲間と組んでステージをいくつもこなし、自主でEPなど発売、手売りをして売りさばいていた。そうした活動から、22歳の頃には、周囲から「お前ラップ上手いぞ」や「お前はラップだけで飯が食えるぞ」と言われるようになり、調子に乗って(本人談)仕事をやめ、ラップ一本で勝負するようになる。翌年にはRYUZOが主催している関西の人気レーベルのR-RATED RECORDSと契約をし、その活動を本格的にさせた。2005年になると初のシングルである「Ghetto King」を発売した。この曲ではタイトルのようにANARCHYが過ごしたゲットーの様子を、ラッパーとして歌い上げている。翌年のセカンドシングル「Growth」もやはり、ゲットーに関するリリックが中心で、ANARCHYはゲットー出身のラッパーであるという認識をシーンに定着させた。


2006年に初のアルバムである『ROB THE WORLD』を発売。このアルバムの評価は凄まじく『Riddim』や『BLAST』といった専門誌、業界誌では軒並み年間ベストアルバムを獲得し、『BLAST』が休刊する際の「The Future 10 Of Japanese HipHop」という企画にも選出された。他にも『Quick Japan』などでも特集された。2008発売のセカンドアルバム『Dream and Drama』も高い評価を受け、業界誌、音楽誌では、2008年を代表する日本語ラップアルバムと評され、アップルストアでの無料ライブには過去最高の人数を集めた。この頃にはSEEDAやNORIKIYOらと並び、次世代の日本語ラップを引っ張る存在であることが多くの人に再確認される。


その後も勢いは止まらず、2011年発売の「Diggin’ Anarchy」では、ANARCHYが一番リスペクトしているラッパーであり、日本語ラップのアイコンでもあるZEEBRAと共演を果たす。また世界的なチャートでもあるBillboardの日本法人が開いたライブで日本人ラッパーとして初めて登場したり大手新聞紙の記事にもなるなど、ANARCHYはその名前をシーンの外にまで知らしめることとなる。2014年には所属レコードを大手のエーベックスに移籍し、メジャーデビューをした。人気ドラマ、映画の『HiGH&LOW』に出演したり映画を撮影するなど、2019年ではその活動を多岐に渡らせている。



ANARCHYがシーンにおいて与えた役割


ラップ、HIPHOPというとどこか不良であったり、貧困層の音楽であると思われる方が多い。それは必ずしも間違いではないのだが、世界中で活躍しているラッパーやDJ、トラックメイカーには、貧困層どころか富裕層の出身の人間も多く、ラップ=貧困層でなければならないということはない。また、日本においては、いとうせいこうや高木完による意欲的な取り組みから始まり、キングギドラやRHYMESTER、KICK THE CAN CREWにRIPSLYME、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDなどといった富裕層の子どもたちによる活動が主流であり、中身もギャングスタ・ラップは少なかった。それを打ち破り新たなシーンを開拓したと評されるのが、ANARCHYである。


2019年ではフリースタイルブームや貧困化などもあり、貧困層出身のラッパーというのは決して珍しいものではなくなったが、ANARCHYがデビューした当初には少なくほとんどが売れていなかった。ANARCHYは自分の育ったゲットーと、自分の経験してきたことを、魂を揺さぶるブルース調のライムでラップし成り上がっていくという、世界的にもまれな本当のギャングスタ・ラップによる成り上がりを果たす。こうしたANARCHYがシーンにおいて果たした役割というのは多くのラッパーを志望する若者たちの目にも映り、夢を与えることとなったのである。




written by  編集部


photo: https://www.facebook.com/pg/ANARCHYc9c/photos/?ref=page_internal


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