Written by Amy 『French Waves』はフランスのエレクトロニック・ミュージックの歴史を振り返るコラム、オンラインドキュメンタリー、そしてフィルムドキュメンタリーで構成された壮大な音楽映像プロジェクトです。歴史のタイムラインは1989年にまで遡り、フランス音楽の最も重要な瞬間を捉えた日記でもあります（日本では、ドリカム、フリッパーズ・ギターが新人アーティストとしてデビューしたのが1989年）。オンラインドキュメンタリーシリーズは、フランスの有力ミュージシャンをフィーチャーし、自らのトラックを解説します。そして、1992年生まれで現在25歳の若手フランス人監督ジュリアン・スターク（Julian Starke）によるフィルムドキュメンタリーは、遠くアメリカの伝説的なアーティストがフランスの音楽シーンへ与えた影響を映像で美しくまとめあげました。

ここではスカイプによるロングインタビューで、ジュリアン・スタークがドキュメンタリーをまとめたプロセスを、block.fmに語ってくれました。最初はシンプルだったアイデアが繊細なマルチパートのプロジェクトに発展していくまでのプロセスを情熱的に披露してくれます。Spotifyでは『French Waves - 25 Years of Electronic Music』というタイトルのプレイリストが公開されています。 ▷『French Waves』を始めたきっかけは何ですか？ ジュリアン・スターク（以下JS）：3年半前に、友人のFelixが映画監督のミア・ハンセン＝ラヴ（Mia Hansen-Løve）とDJスヴェンことスヴェン・ハンセン＝ラヴ（Sven Hansen-Løve）が制作する『Eden／エデン』という「フレンチ・ハウス」がテーマの映画に出演することになったことから始まった。当時、私はFelixと何人かの友たちとコレクティブを結んでいて、それぞれ違うことをやっていた。音楽をやっている人もいて、私はすでにショートフィルムやミュージックビデオを監督していた。『Eden／エデン』の脚本を読んだ時、私たちのY世代は、「フレンチ・タッチ」（＝フレンチ・ハウス）をやっていた90年代の世代に結びついていたことに気づいた。だから私はその2つの世代をつなぐプロジェクトをしたいなと思って、そこから始まったかな」■関連記事：フレンチハウスのドキュメンタリー映画「EDEN」からDaft Punkの初DJシーンが公開に ▷映画やオンライン動画など、『French Waves』にはいろいろなスタイルがありますが、そのようなフォーマットに作った理由はありますか？ JS：私はフィクション映画製作者になりたかったけど、ドキュメンタリーを作成するフォーマットもすごく好きだったんだ。長いフィルム感覚でね。でも私の年代では、もっと短いフォーマットが適していると気づいて、できるだけ多くの形でこのストーリーを伝えることができる方法を考えた。それで、オンラインシリーズをやるアイデアが発達して、エピソードごとに1つのトラックの話を伝えることを考えた。これは、人々が好きなトラックや好きなアーティストを選ぶことができるようにするためであり、自分が見たいパートにたどり着くまでに全員分を見る必要がない方法だから。ストーリーを伝えるだけでなく、ストーリーを人々に体感させるようにできたらクールかなと考えた。そして、すべての世代を代表するパーティーもやりたいと考えた。 ▷すべての世代を代表するパーティー？ JS：フランスでは、みんな他の世代と触れあうことには慣れていなくて。それぞれが自分の（音楽的に）ニッチなジャンルに入れ込んでいるから。例えば、『French Waves』のドキュメンタリーを撮影していた時、あのアーティストから「このアーティストと自分は入っているニッチ（なジャンル）が違うから関わりたくない」と言われたことがある。でも、フィルムを実際に観た人は、「もしかしたらこれは同じようなバイブがあるかも」と思って、一緒にプレイしても大丈夫と考えはじめたと思う。自分の世代だけについてやることも考えてたけど、それだと私が聴いて、楽しんでいる音楽とは必ずしも一致しない。ウェブサイトがある理由は、私はジャーナリストではないけど、より多くの歴史をそこに盛り込みたかったから。フランスの雑誌のジャーナリストにウェブサイト上のすべての記事を書くように依頼した。 ▷その世代のストーリーをすべて伝えたかったため、フィルムやオンライン形式のシリーズを作ったんですね。どうやってアーティストを集めたんですか？そして、アーティストを選んだ理由は何ですか？ JS：フィルムに協力してくれる人を探すために、とても、とても時間がかかった。何百回もメールでのやり取りをして。やってくれる人を探すのにはすごく難しかった。何のためにこのドキュメンタリーをやるんですか？と聞かれた時に、やりたいからやるという理由以外はなくて。でも最終的に、何人かのアーティストの協力を頂けて、そこから上の世代からフィルムを組み立てていった。セレクションのプロセスについて、実はあまり深くは考えていないんだよね。自分の大好きなアーティストにインタビューしたいだけだった。「Cassius好き、Underground Resistanceも好き。会えるなら、会ってみよう」と考えていた。撮影しはじめたら、自分が好きな音楽に深いルーツがあることに気づいて、そこから辿るようになって、もっと過去の歴史についても調べはじめた。 ▷フランス以外のアーティストはどう繋がったんですか？ JS：Felixのおかげでミアに会って。そこから彼女に自分のアイデアを伝えた。その時にプロダクション部分は何かアイデアあるかと聞かれて、正直に「いいえ」としか答えられなかった。それでもミアはきっといい結果が出ると信じてくれて、彼女が以前一緒に働いたプロデューサーを紹介してくれた。紹介してくれたプロデューサーのギョーム・デ・ラ・ブライユ（Guillaume de la Boulaye）がストーリーを書く手伝いをしてくれた。　『Eden／エデン』がアメリカで撮影されることになって、私のプロデューサーに「私たちも行かないと」と伝えて。私たちを信頼してくれて「そうだね。リスクを取らないといけない」と言って、私とサウンドディレクターとカメラマンを行かせてくれた。それでアメリカでいろんな人と繋がった。フランスに戻った時、やっと人に見せられるだけの素材がたまって、それをスポンサーに見せて資金調達した。少し時間が経ったら、またアメリカに行くお金ができて、シカゴやデトロイトに行った。その後、French TVやインターナショナルのエージェントなどに話して、徐々に資金を増やして、撮影と編集が進められた。だから、すごく時間がかかちゃった。 ▷フランス音楽とその歴史で、あなたは今までどのアーティストに影響を受けたか知りたいです。 JS：小さい頃はよくJusticeを聴いていた。どうやったらロックミュージックの上にエレクトロニックミュージックをうまく混ぜられるかがわからなくて、コンサートも見に行ったりしたね。彼らはピンポイントで私の大好きなものだった。Justiceからダフト・パンクを知って、そこからフレンチ・タッチのシーンに入ったんだ。■関連記事：ファン必聴。Daft Punkデビュー当時のDJ MIXが話題にハウスを知って、テクノを知って、もっとクラブに行くようになったね。そこからアメリカのパイオニア達に興味が沸いたんだ。Underground Resistanceと、彼らの音楽の基本を見て、この特定のジャンルの創始者とみなされていることには驚いた。だけど、この音楽の背後にある、人間的な要素から生まれた多くの物語を発見できた。私は彼らの音楽とともに、そこにいる人々と彼らの物語に影響を受けたと言える。 ▷今日作られている音楽は、まだそのようなクオリティがあると思いますか？ JS：特に今はテクノロジーとソーシャルメディアがある。テクノロジーのおかげで音楽をプロデュースすることはもっと簡単になったし、パソコンや机の上から安く作れるようになった。そして、そのおかげでトラックを作る人も増えた。でも実際にいいものを作っている人たちはすごく少ないと思う。今、ソーシャルメディアのおかげで自分が好きな音楽を探しやすくなっているけど、その影響で、いろんなニッチが共存できるプラットフォームができていると思う。人々はよりクレバーに過去に作られたもののから知識を得てると思う。インターネットを掘り起こし、多くを発見するのはより簡単なことになった。昔だとレコードショップで時間をかけて探していたし。だけど、今の若いプロデューサーは新しいものを作る必要性や緊急性を感じていないと思う。とりあえず、自分がやりたいことをやっているね。私はすごく今Jacquesがやっていることは好きだよ。共感できるエモーションがある。インターネットのおかげで、たくさんの若いアーティストが、いろんなものを出せるようになった。、それが未来にもインパクトを与えるものであって欲しいね。でもそれは誰もまだわからないことだから。今この時点でも何か起こっていると思うけれど、それが次の次の世代にまで影響があるといいね。 ▷フィルムの話に戻りますが、レイブの映像はどこで探したんですか？ JS：90年代のレイヴパーティーの存在を知った時、経験できなくて本当に残念と思っちゃった。そんなパーティーをやりたいと思ったけれど、私の世代がやっているパーティーじゃないし、私たちがやるものじゃないと思うんだよね。でも、自分は経験したことないのにすごくノスタルジックな気持ちになるんだ。これらのパーティーに関わった人たちにも会ったよ。彼らはそれまでとは異なる自由意識を持とうとしていた。当時はカメラやビデオカメラは持ち込み禁止されていたからそういう映像を見つけるのは難しかった。やっと探しても、結構使えないものもあって。映っている人がハイなのかはわからないけど、ちょっとクリーピーな感じがあったり。■関連記事：3つの動画で振り返る素晴らしきレイヴの世界レイヴが人生の全てというLukeという人物に出会い、彼が持っていたたくさんのテープから、7時間分くらい素材をもらった。それ以外はインターネット上から取った。一番大変だったのは、インターネット上で探した素材と、音楽の著作権の許諾をもらうこと。著作権の問題で、提出するギリギリ前に一曲を変えなければならなくなって、制作の最後はバタバタしてしまったんだ。だけど、自分が伝えたかったものは変わらなかったから、大きい変更だったけど、焦らなかった。使ってない映像がたくさん残っていたから、ウェブサイトにアップすることになったしね。どうしても全部使いたい、絶対にシェアしたいと思ってた。 ▷本当に羨ましいですよね。今のパーティーは昔と比べようがなさそうですね。 JS：今のいいパーティーは、クラブで行われるよりも、ちゃんとしたイベントとして成立しているかな。音楽の内容を忘れてパーティーをするコレクティブもいるけど。いいミュージックフェスもたまにはあるよ。でも個人的には小さいイベントの方が好きかな。▷私もそう思います！今後『French Waves』では何をしますか？もっと増やしていきますか？ JS：そうだね。ツアーを続けるかな。ヨーロッパと韓国。シーズン2をやる話はあるけど、シーズン1とは少し違った感じだね。アイデアは、それぞれの監督がユニークなエピソードを作ること。でもその前にお金がもっと必要だね（笑）。今年後半にフランスではもう少し小さいフィルムをリリースをしようかなと思ってる。

▷最後に、このプロジェクトからみんなに伝えたいメッセージは何ですか？どんなことを学んで欲しいと望みますか？ JS：ああ、難しい質問だね（笑）！自分の好きなDJや好きなプロデューサーは作品から自分の気持ちをしっかり伝えていているように、私も彼らのように自分がディレクションしたプロジェクトからストーリーを伝えたくて。このプロジェクトを通じて尊敬するアーティストに会えて、ファンとしてすごい経験だったけど、そこで知ったことや学んだことを他の人にシェアしたい想いが大きい。だから、昔はどのようなことがあったか、現在は何が起こっているかを知って、その上で未来に向かってポジティブな考え方を持つようにしてほしい。今の音楽業界のクリエイティヴなものは結構暗くて、楽しめる感じはしない。今の社会を反映してるかもしれない。でも、『French Waves』が誰かに対して、自分の大好きなものを楽しむという姿勢のきっかけになったら私はすごく嬉しいよ。 ありがとうございました！ 参考：French Waves https://twitter.com/french_waves https://www.facebook.com/Frenchwavesexperience https://www.instagram.com/french_waves/

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