80KIDZが訊く、JusticeのGaspard Augé デビュー・ソロ・アルバム『Escapades』制作秘話

フランスのエレクトロ・デュオJusticeのGaspard Augéがソロとして初のアルバム『Escapades』をリリース。Justiceの大ファンでもある80KIDZがアルバム制作についてインタビューした。
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2021.06.23 09:00

毎月第4火曜日夜22時からblock.fmで配信中のラジオ番組「FM80」に、世界的に活動するフランスのエレクトロ・デュオJustice(ジャスティス)のGaspard Augé(ギャスパール・オジェ)がゲスト出演。


6月25日にデビュー・ソロ・アルバム『Escapades』をリリースするGaspard Augéにアルバムやビジュアルのコンセプト、Cassius(カシアス)の故Philippe Zdar(フィリップ・ ズダール)が所有していたMotorbass Studioを使用することになった経緯、JusticeのXavier de Rosnay(グザヴィエ・ドゥ・ロズネ)と一緒に活動することで受けた影響などについて話してもらった。


インタビューのアーカイブ視聴はこちらから。

▶︎FM80

https://block.fm/radios/48


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ALI&:実ははじめましてではなく、何回かお会いしているんです。13年前に来日された時に初めて同じパーティーに出演したのですが、しっかりお話することができませんでした。僕たち80KIDZはJusticeがいなければ結成していなかったと思うので、今日はインタビューできて光栄です。僕らはあなたたちの大ファンなんです。


Gaspard Augé:ありがとう!


ALI&:早速ですが、アルバムの中から一番お気に入りの曲を教えてください。また、レコーディングや作曲する中で印象に残っているエピソードもあればお願いします。


Gaspard Augé:どの曲も自分の赤ちゃんのように大切だから、一番のお気に入りを選ぶのは難しいね。それぞれの曲に好きな理由があるけど、今選ぶとしたら「Europa」という曲かな。アルバム全体のムードを表す一曲でもあるし、ヨーロッパらしいメランコリックな雰囲気を表現できたと思う。

Justiceのアルバム制作期間に比べると、それほど時間をかけずに完成できたかな。以前からメロディーやアレンジの仕方などをなんとなく考えていたから、その分短期間でできたんだと思う。さらに、パリにあるMotorbass Studioを借りて制作をしていたから、集中して作業しつつも考えすぎることはなく、よりスムーズに完成できたのかなと思ってる。


ALI&:Motorbass StudioはCassiusの故Philippe Zdarが所有していたスタジオですよね。スタジオへの思い入れや、Philippe Zdarとの思い出があれば聞かせてください。


Gaspard Augé:Philippe Zdarはとても仲の良い友達で、以前から何度かMotorbass Studioでレコーディングをしていたんだ。Motorbass StudioにはPhilippeが10年かけて最も良いシンセサイザーやマイク、MPプレイヤーを集めていた。まるで美術館を作るようにね。Motorbass Studioはパリで最も素晴らしいスタジオだよ。スタジオに行けばわかるけど、彼は細かいところまで意識してスタジオを作っていた。デザインから家具のチョイスまですべて自分でやっていたよ。とても快適で心地良いスタジオなんだ。彼が亡くなってから初めてスタジオを訪れたときは今までと違う雰囲気になってしまった気がしたけど、彼のスタジオで彼が大好きな音楽を作れたことは、僕にとってとてもポジティブな経験になったよ。


JUN:今作はGaspardさんのソロ名義ですが、根底にJusticeに通じるアイデンティティーのようなものが強く感じられました。場合によってはJusticeとしてのリリースも考えられたと思うのですが、個人名義でのリリースになったのはどうしてですか?


Gaspard Augé:はっきりした答えは自分でもわからないけど、タイミングがちょうどよかったからかな。まだ完成していない音楽がたくさんあって、それを使わないでいて後から後悔するより、何かしらリリースした方がいいと思ったんだ。

とにかく、自分が納得するために時間をかけることが重要だった。あと、今はほとんど全てがSNSの上で完結してしまうけど、フィジカルな物を残すために本やレコードをリリースし続けることも大切だと思う。オールドスクールな考え方かもしれないけど、今SNSで大切だと思われていることは数年後どうなっているかわからない、ということにみんな気づいていないように感じるよ。

僕は本やレコードのようなフィジカルな物が大好きで、それも日本が大好きな理由の一つなんだ。日本は今でもフィジカルな物を大切にしていて、素晴らしいレコードショップやブックストアがあるでしょ。カルチャーが保存されている様子が実際に見られるのが最高。ヨーロッパにもレコードはたくさんあるけど、ほとんどぼろぼろで汚くなっちゃってるから。



JUN:ストリングスやチェンバロのサウンドなどにクラシカルな雰囲気も感じられましたが、レコーディングで使用した楽器で印象的なものがあれば教えてください。


Gaspard Augé:Motorbass Studioのほかに、もう少し小さいスタジオを使ったんだけど、Motorbassにないシンセサイザーがあったんだ。今まで使ったことないがない機材に触れて、一つのスタジオに限定しなくてよかったと思った。そのスタジオにはKorg DW-8000という400ユーロくらいの安いシンセサイザーがあったんだけど、とてもインスピレーションが湧く音が入っていて意外と使ったよ。一番値段が高いシンセサイザーと一番安いシンセサイザーの両方使っていて、どっちもすごくいい音を奏でてくれた。実はこのKorg DW-8000は、スタジオのオーナーがバンド・Yesのキーボーディストから買ったらしい。だからYesのサウンドが今回の僕の作品にも入っているかもね。


ALI&:今回のアルバムのためにご自身でドラムを叩きましたか?


Gaspard Augé:いや、友達のVictor le Masneに叩いてもらったよ。彼が以前所属していたバンドのセカンド・アルバムにPhilippe Zdarが参加していたこともあって、Victorはこのスタジオについて詳しかった。彼は最強のドラマーでピアニストでもある。僕と同じようなサウンドやメロディーが好きで、一緒にレコーディングしていてとてもやりやすかった。プログラミングやビート制作に何時間もかけるのではなく、その辺にドラムセットを置いて、自由に機材を触りながら作ろうと一緒に決めたんだ。いろんな機材を自由に触って、おもちゃ屋さんで遊んでいる子供のようなセッションになったよ。


JUN:今回のアルバムに収録されている楽曲はいつから制作していたのですか?


Gaspard Augé:2年前くらいからかな。常にデモをレコーディングしているから、メロディーのアイデアやラフなデモはたくさん持っていた。一番良いと思った曲ではなく、アルバムのコンセプトに合う曲を選んでから、Victorと一緒にMotorbass Studioに入ってレコーディングした。レコーディングだけで2ヶ月かかったよ。短いセッションを週6日やって、そのあと1、2ヶ月期間を空けて次のセッションに入った。デッドラインもなく急がずに制作することができて、最終的にこの方法で作ってよかったと思ってる。


JUN:今回のアルバムのジャケットは70年代のレコードのテイストが感じられて、すごくかっこいいと思いました。


Gaspard Augé:長い間レコードを集めていて、ジャケットのアートワークが好きで買ったこともある。イメージとタイポグラフィーが完璧に融合したものがレコードジャケットのグラフィックデザインだと思う。Hipgnosisというグラフィックデザインスタジオがあるんだけど、70年代と80年代のレコードジャケットのデザイナーとしては最も有名なアートグループで、昔から大ファンなんだ。彼らはPink Floyd(ピンク・フロイド)『The Dark Side of the Moon』のジャケットデザインなんかを手掛けてる。素晴らしい写真も撮っているし、強くて象徴的なビジュアルを作るんだけど、僕もそういうカバーにしたかった。巨大なクロームオブジェがラフな感じで置いてあって、過去のものに現代的な側面を入れたんだ。 




ALI&:先行で公開された「Hey!」のMVはとても印象的で素晴らしい作品だと思いました。JusticeのMVもユーモアがあって毎回楽しませてもらっています。今回の「Hey!」のMVはGaspardさんのアイデアから生まれたものだと聞きました。思いついたアイデアについて詳しく聞かせてください。


Gaspard Augé:ユーモアと違和感を感じる要素があることが重要だったから、君がそこを理解してくれて嬉しいよ!僕はコメディアンではないけど、内容が重くなりすぎないように少しでも明るい内容にしようと意識したんだ。最近の音楽は綺麗すぎるしクールすぎる。Instagramのトレンドにクリエイティブが影響を受けているところが気に入らない。このレコードにボーカルを入れたくなかった理由の一つがそれだよ。ボーカルを入れるとその部分ばかりフォーカスして聴かれる可能性があると思ったんだ。MVはシンプルに1分の動画を作った。さっきも言った“違和感”をコンセプトに楽曲を作っていたから、それを実現できて嬉しかった。アルバムのコンセプトにも繋がるんだけど、それぞれのビデオはたった1分でナレーションもボーカルもない。そのちょっとした映像を観て、リスナー自身で続きを想像して欲しかったんだ。映像を観ることで小旅行にでも出かけたような気持ちになってほしいよ。



JUN:パンデミックの影響でJusticeのライブショーやツアーができなかったと思いますが、何か制作に影響したことはありますか?


Gaspard Augé:正直、制作に関してはパンデミックの影響は特に受けなかった。スタジオで制作することがパンデミックを乗り越える一番いい方法だったと思う。安全なスタジオに閉じこもって、とにかく音楽を作っただけ。アルバムを制作するのにはパーフェクトなタイミングだったよ。


ALI&:今回の作品を作り終えたことで、あなたの中に何か変化や発見などはありましたか?


Gaspard Augé:自分の名前を使って自分を世界に表現して、2人で制作することの快適さを改めて感じたし、十字架(※注:Justiceを象徴するアイコン)の後ろに隠れることが出来なくなったのも新しい経験だったよ。自分がMVに登場することも珍しいよね。このアルバムはJusticeの作品と比べてよりパーソナルな作品で、自分が表現したいことを100%表現できた。もちろん聴いてくれる人のためにエキサイティングな作品を作っているけど、そういった部分を含めても僕が今一番表現したいことを詰め込めたと思う。音楽的にもビジュアル的にも、自分が好きなことに対して忠実にいることができた。スペシャルな作品を作るためにはそうするのが一番だと思うよ。


JUN:今回のアルバムはリスナーにはどのようなシチュエーションで聴いてほしいと思いますか? 


Gaspard Augé:このアルバムを聴くのに一番いい場所は、たぶん車かな。それか新幹線や電車の中で。気を紛らわせることができるアルバムだと思う。特に今は誰も旅に出ることができないから、アルバムを聴くことでその人が想像したユートピアへの入り口が開いて、どこへでも旅に出ることができると思うよ。


ALI&:このアルバムについて、周りのアーティストからはどんなリアクションがありましたか?Xavierさんとは作品について何か話しましたか?


Gaspard Augé:アルバムをレコーディングしていたとき、Xavierとは他の作品を一緒に作っていたんだけど、完成したアルバムを聴かせたら気に入ってくれたみたいで、応援してくれたよ。でも、一番気に入ってくれた曲が一番Justiceらしくない曲だったのが面白いと思ったね。


JUN:今までXavierさんと一緒に制作していて、今回の作品にもプラスになった経験はありましたか?


Gaspard Augé:もちろんだよ!もうXavierとは20年間も一緒に音楽を作っている。2人で制作する時は基本的にお互いを尊重しながらやっているけど、もちろん意見が違うときは自分が妥協する必要もある。今回は彼のフィードバックがなかったから、1人で制作する方が難しいと感じたよ。でもこのアルバムにはVictorもMichael Declerckも参加したから、完全に1人ではなかったんだけどね。ただ、最終的に判断するのは僕だったから。この数年間Xavierと一緒に制作していて学んだことは、トレンドを気にしないこと。トレンドを気にしていると必ず流行には乗り遅れる。例えば、今から急にトラップを作り出しても意味はない。もうトレンドに入ってから数年経っていて、たぶん上手に作ることも出来ないし、最後の波に乗ろうとするメリットがないんだ。新しいことを試すのはいいけど、自分に忠実であり続けることが重要だよ。


ALI&:最後に、同じフランス出身でEd Banger Recordsとも関係が深いDaft Punk(ダフト・パンク)の終焉が発表されたとき、このニュースに対してどんな気持ちでした?


Gaspard Augé:勇敢だと思うよ。彼らはキャリアのピークに到達して、もう音楽を作りたくないのであれば、次のDaft Punkのアルバムをファンに期待させることもなく、一番いい方法でお別れを発表したと思う。別のプロジェクトに参加するのかも知らないけど、もうDaft Punkとして何も作れないと思っているのならば、こうやって発表したことは素晴らしいと思っているよ。


80KIDZ:ありがとうございました!







【リリース情報】


Gaspard Augé『Escapades』

2021年6月25日発売(輸入盤/デジタルのみ)

 

<『Escapades』トラックリスト>

1. Welcome

2. Force Majeure

3. Rocambole

4. Europa

5. Pentacle

6. Hey!

7. Captain

8. Lacrimosa

9. Belladone

10. Casablanca

11. Vox

12. Rêverie


【Gaspard Augé】

フランスを代表するエレクトロ・デュオ、Justice(ジャスティス)の一人、ギャスパール・オジェ。ジャスティスは、ダフト・パンクの元マネジメントであるペドロ・ウィンターが代表を務めるEd Banger Recordsから、2007年にリリースしたデビュー・アルバム『†』(クロス)が世界的な成功を収め、グラミー賞「ベスト・エレクトロニック/ダンス・アルバム部門」にノミネートされるなど、一躍シーンのトップ・アーティストとなった2人組。現時点での最新作『Woman Worldwide』(2018)もグラミー賞「最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム部門」受賞を果たすなど高い人気と実力を持つ。そのジャスティスのギャスパール・オジェが、遂にソロ・デビュー作となる『Escapades』を2021年6月にリリースする。


【番組情報】

FM80

EVERY 4TH TUESDAY 22:00 - 23:00

80KIDZが送る音楽、カルチャー、ファッションなど彼らの最新の旬を紹介する番組。

▶https://block.fm/radios/48






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