88rising、アジアから世界を席巻するレーベル。初来日する5組を徹底解説


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北米でのツアーを順調に進めている88risingの日本初公演がついに決定した。アジア発信の世界的レーベルを見られるチャンスに日本中から注目が集まっている。公演の詳しい情報は以下のリンクから確認できる。
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2016年に突如インターネット上でバイラルした「Dat $tick」から2年。88risingは力を蓄え続けている。正体のわからないアジア出身のラッパーたちが突如巨大なマーケットに放り込まれ、「アジア」の席を作るまでそう長い時間はかからなかった。2017年はHIgher BrothersやJojiの台頭、2018年は88risingのコンピアルバムをリリース。現在は北米18都市を回るツアーの真っ最中なのだから。
そんな彼らの魅力はどこからきているのだろうか? 日本公演を楽しむためにも、来日が予定されている5組のアーティストにスポットライトを当てていきたい。
Rich Brian
from Indonesia
上記でも少し触れたが2016年にリリースされた「Dat $tick」がインターネット上でブレイクすると、そのままシーンに飛び込み88rising成功の道を切り開いた張本人だ。この曲はリリースされるとインターネット上で賛否両論が巻き起こった。到底ブラックカルチャーと関わりがあるように思えないRich Brianだが、リリックではNワードが使用されたり、当時のステージネームもRich ChiggaとNワードを連想させるものだったためだ(現在はそれらに関して後悔しており2018年にRich Brianに改名した)。しかし誰1人としてスキルを否定するものはいなかった。インドネシアのコントロバーシャルなトピックから、C-Walkまで、多岐に渡るリリックをマシンガンのように吐き出したRich Brianは、当時16歳ながら確実にファンベースができ始めていたのだ。
この動画は2年以上前に取られたラッパーたちによるリアクション動画だが、2年経った今では彼らと同等以上の規模のステージで公演を行なっている。いかに猛スピードでシーンを駆け上がっているかがわかるだろう。
Rich Brianの面白さはインドネシアで育ちながら培った、スラングや細かいネタに関するデータベースだ。11歳の時までは字幕なしでは英語を理解できなかったという彼だが、YouTubeやTVにて吸収した多くの情報は、今や彼のストロングポイントになっている。
Joji
from Japan
現在進行形で開催されている88 Degrees & Rising Tourにて、トリを務めているのが日系オーストラリア人のJojiだ。活動の拠点はNYだが、出身は大阪であり、88risingで唯一日本と所縁のあるアーティストである。彼がシーンに持ち込んだのはアーティストとしてのJojiとコメディアンとしてのFilthy Frankの2面性だ。Jojiの曲を聴いたことがない方でもこの動画は見たことがあるかもしれない。
Youtuberとして、端的に説明すると「バカ」な動画を投稿し続けていた「TVFilthyFrank」。高校生の時にスタートさせたこのチャンネルは、登録者数約600万人と気付けば人気Youtuberになっていた。しかし、メリットの裏にはデメリットがあるように、Youtuberとしてのアイデンティティは次第に彼を悩ませるようになる。高校生の時から続けていたPink Guyという彼が作り出したキャラクターは、歳を取るにつれ自分自身とは離れていったそう。Youtuberとしてのビジネスも上手くいっていなかったこともあり、次のキャリアを模索していたJoji。そんな時に現れた88risingは、彼を次のステージに押し上げる重要な出会いであった。
Jojiは88risingに参加し、音楽の道へ進んだ選択について「キャリアの変換ではなく、人生の変換であった」と語っている。Lo-Fi HIP HOPなスタイルでシーンに挑み続けるJojiの新アルバム、『Ballards 1』は10月26日にリリースだ。
Higher Brothers
from China
四川省は成都から現れた4人組のラップグループHigher Brothers。メンバーはMaSiWei、DZknow、Psy.P、Meloから構成されており、元はインターネットから始まったグループだ。彼らはJoji、Rich Brianらと変わらぬ人気とファンベースを獲得しておきながら、英語でのラップはほぼ皆無。それでも全米で注目されているのは「Higher Sister」と呼ばれているLana Larkinの存在である。彼女の役割はビデオグラファー兼翻訳であり、彼らの人気をよりグローバルにしている最重要人物だ(MVは彼女が翻訳を手がけている)。言葉が直接伝わらなくとも北米中に名を轟かしているのは、それだけ世界が小さくなっている証拠なのだろうか。
彼らの人気はそれぞれの個性の強さにある。「Made In China」でフックを担当しているMaSiWeiは、スムーズに流れるようなラップが特徴だ。4人で最もスキルが高いのは彼だろう、フロウも多彩だ。DZknowはHigher Brothersにエナジーとキャラクターを持ち込んでいる。ファンからの愛称は「Snorlax(カビゴン)」だ(笑)。高身長のPsy.Pはスピーディーなラップにハイトーンの癖のあるラップをしてくる。見た目はナード系だが、マイクを持てば特徴あるフロウで存在感を示すMelo。どこを切り取っても最高なラップが聴けるのがHigher Brothersの強みだろう。
ビート選びも間違いない。Chris BrownやNicki Minaj、Gunnaとも仕事をしているRichie Soufに、Kanye Westの『The Life of Pablo』に参加しているアトランタのヒットメイカーCharlie Heatらがビートを提供している。もはや説明不要の布陣だ。
NIKI
from Indonesia
2018年に88risingと契約をしたばかりのインドネシアはジャカルタ出身のシンガー。5歳の誕生日にピアノを買ってもらい、Destiny’s ChildやAaliyahを聴いて育ったというNiki。滑らかな歌声と2000年を彷彿とさせるスタイルは聴くもの全てを魅了し、急激にファンベースを増やしているところだ。
体だけの関係になってしまった男の子とまた1からやり直したいと切なく歌う「I like U」や、過去を思い出し再び恋しくなる「Vintage」は、ティーンエイジャーの恋愛を代表した名曲だ。「Vintage」では1976年にリリースされたThe Bellamy Brothersの「Let Your Love Flow」のことを言及していると受け取れるリリックもあり、謎めいてたパーソナリティーに不思議と心惹かれていくのもNIKIの魅力である。
NIKIが最初に姿を表したのは2014年(当時15歳)の時だ。Ride to FameというTaylor Swiftのジャカルタ公演でオープニングアクトを賭けたオーディションで見事優勝。その後15000人の前でパフォーマンスを披露したのが、彼女のキャリアが加速していった分岐点になった。それ以前、GarageBandでトラックを作っていた彼女だが、さらにいい音を追求するためにもLogic Proに乗り換えたそう。NIKIの才能を見つけたRich Brianから、インスタグラムでDMを貰ってから88risingのメンバーになるまで一瞬の出来事であった。Halseyとツアーを回るなど、実力、経験ともに積み上げているNIKIに今後さらに注目したい。
August 08
from Las Angeles
ロサンゼルスのコンプトンから現れ、リンウッドの学校に行き、ロングビーチで育ったというAugust 08。彼が他のメンバーと1つだけ違うところは、アジア人の血が1mmも流れていないことだ。彼はアジア人の可能性について1000%否定している。
I’m 1000% black ? https://t.co/5POa48bEg7
— AUGUST 08 (@august08) October 1, 2018
彼のアジアとの繋がりは今現在住んでいる場所だ。コリアンタウンに住んでいるAugust 08は非常にこの地を気に入っているらしく「ここから引っ越しできない」と話しているほどだ。
August 08の音楽は幼少時代の経験に大きく影響を与えている。他の88risingのアーティストとは少し違った雰囲気を持っているのもそのためだ。彼の音楽へのモチベーションは、あまりうまくいっていなかった家庭環境が根底にある。リリースされたEPの名前は『Father』、そしてステージネームであるAugust 08は父親の誕生日からだ。これは決してリスペクトからではない。このEPについてAugust 08はこう語っている。
「このEPで俺は友達、家族、そして感情を表にできない子供達について話しているんだ。『俺たちは成功できる』と人前に表現することを恐れている人のためにね。それがこのEPでやりたかったことなんだ。なぜなら父親についてと、10歳か11歳くらいの時に父親が残していったものがこのEPの基盤になっているからね」
子供の頃から一度も両親とともに夕食を囲むことがなかっという彼。かなり根強く、そして深く心に住み着いた過去の痛みは、彼のあらゆるところから感じ取ることができる。『Father』の先行シングルである「Funeral」では、「俺の葬式で言わないでくれ、今言ってくれ」と優しく包み込むように歌い、「Separate Ways」ではもう叶わない愛を表現し続けている。全体を通して内省的な表現が続くが、どこか方法を探していくように染み渡っていく彼の歌声は、彼と同じ境遇で育った人を助けているに違いない。
アジア旋風は止まらない!
もともとVICEでエレクトロミュージック専門のThumpチャンネルを創設したことで知られるSean Miyashiro。彼によって立ち上げられた88risingのプロジェクトは、わずか3年でアジア、アメリカを中心に世界中で聴かれる音楽を配信し続けている。Youtubeでの再生回数は半分が東アジア、35%がアメリカ、15%がその他の地域で聴かれている。東アジアの20億の市場とアメリカをHIP HOPの視点から繋げた、最初の人物だろう。これから音楽はさらにクロスオーバー的に聴かれる時代が来るのだろうか。Sean Miyashiroは今行われている北米ツアーのあとは、映画製作に取り組みたいと発言している。日本公演までは少し時間があるが、88risingはどんな動きを見せるだろうか? 今や世界が注目するアジアのHIP HOP。生で体感するチャンスを見逃すな!
written by Yoshito Takahashi
source:
https://www.gq.com/story/rich-brian-amen-interview
https://adage.com/article/qaa/q-aa-88rising-s-sean-miyshiro/313297/
https://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/8061822/joji-interview-will-he-filthy-frank
https://www.thefader.com/2018/03/30/higher-brothers-lana-larkin-translator-interview-88rising
https://www.nme.com/blogs/nme-radar/niki-interview-2018-2316838
https://i-d.vice.com/en_uk/article/ne9qpk/august-08-is-set-to-be-88risings-next-breakout-star
https://pigeonsandplanes.com/discover/2018/02/august-08-funeral-father
https://adage.com/article/qaa/q-aa-88rising-s-sean-miyshiro/313297/
photo: 88rising Facebook
