“パンデミック”をテーマにふりかえる2020年音楽シーンの6大ニュース

音楽フェス延期、配信ライブ、ミュージシャン支援、人種差別問題、TikTok発のバイラルヒットなど今年の重大ニュースをふりかえる。
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2020.12.30 10:30

written by Jun Fukunaga



未曾有のパンデミックに見舞われた2020年。それにより今年は人々の行動も制限され、以前までのように自由に外で音楽を楽しむことも難しくなった。しかし、そんな中でも新たな音楽表現を模索するミュージシャンや音楽体験を提供するイベンターが出現。また、これまでと違った方法でヒット曲が生まれるなど、苦境に立たされた音楽業界ではあるが、閉塞した状況を打破しようと多くのイノベーションが生まれたのも事実だ。そこで今回はパンデミックに見舞われた音楽シーンをテーマに2020年をふりかえり。今年の重大ニュースをピックアップしてご紹介。





コーチェラ、グラストンベリー、フジロック、スパソニ… 音楽フェスが姿を消した2020年  


コロナ禍の影響を受けて、日本でもよく知られているコーチェラSXSWグラストンベリーなど多くの海外の有名フェスが、軒並み開催延期や中止を発表。一方、日本でもRainbow Disco ClubGREENROOM FESTIVALフジロックスーパーソニックなど名だたる音楽フェスが開催延期・中止を余儀なくされた。 


しかし、これらのフェスは元々の開催日などにあわせて、過去のライブ映像や無観客でのパフォーマンス映像を配信するという代替措置をとることで、来年以降の音楽フェスファンの望みをつないだことも忘れてはならない。その意味では現在、YouTubeで公開されているコーチェラの20年の軌跡を追ったドキュメンタリーはこの年末年始の連休にぜひともチェックしておきたい映像作品だ。



秋以降も新型コロナの感染は残念ながら拡大しているが、そんな中でも海外ではアフリカの人気フェス、Nyege Nyege Festivalがリアルとバーチャルのハイヴリッド開催を実施。さらに今月、東京で行われたMUTEK.JPも同じくハイヴリッドでの開催を選択し、バンデミックによって、“音楽フェスが失われた1年”の年の瀬に新たなフェス開催の形を音楽ファンに示した。



こういった状況の中、来年のフェス開催に向けて安全にイベントを開催するための方法の模索も進んでいる。イギリスでは今冬、同国のイベント制作会社が、イベント業界を対象としたコロナウイルス検査サービスを開始。このサービスはイベント開催時に最短15分で新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判定できる検査キットを提供するものだ。


そして、12月には同様の検査キットを利用したソーシャルディスタンスを確保する必要のないイベントの試験をスペインの音楽フェス、Primavera Soundが実施。主催者側の声明によると試験結果は成功したとのことで、来年のフェス開催への望みをつなぐものとなった。





オンラインの世界で音楽を楽しむ配信ライブが急速に普及 


コロナ禍によって、音楽フェスが姿を消しただけでなく、ミュージシャンのライブツアーやクラブイベントも軒並み中止に。


しかし、新型コロナの感染拡大が騒がれだしたころから、ミュージシャンやDJはYouTubeなど配信プラットフォームを使った無料の配信ライブも盛んに行うようになった。その中でも日本で特に話題を集めたのはヒップホップグループのBAD HOPが3月に行なった横浜アリーナでの「BAD HOP WORLD 2020」だ。この配信ライブを行うことで抱える負債額は約1億円だということも本人たちが明かしていたが、それでも「やることに意味があるから決断した」とステージ上でその思いを吐露している。


その後、この負債額をカバーするために行われたクラウドファンディングも行われたが、彼らの心意気に打たれたファンはこぞってこの支援プロジェクトに参加した。

 


また、無観客での配信ライブは無料で行われることが多かったが、電子チケット販売プラットフォームのZAIKOがいち早く有料での配信ライブを行うためのサービスを開始。3月に人気バンドのceroが行なった有料配信ライブ「Contemporary http Cruise」は大きな反響を獲得した。これ以降、アーティストたちの間で有料配信ライブが広がり、今ではチケットを購入し配信ライブを視聴することはすっかり浸透した印象がある。加えて、こういった配信プラットフォームには、これまで一部のプラットフォームで可能だった「投げ銭」システムも実装されるようになった。  


そして、4月にはTravis Scottが人気ゲームの『フォートナイト』とコラボし、フルCGでのバーチャルライブを実施。バーチャル空間で繰り広げられる現実世界ではありえないオンラインライブならではの表現は、新たなライブ体験として大きな話題に。


それ以降、この流れは一気に加速。今夏にはThe WeekndがTikTokとコラボしたバーチャルライブを行ったほか、今年はグラミー賞での史上最年少18歳で主要4部門独占したことも話題になったBillie Eilishも同じくテクノロジーを駆使したXRライブを行うなど、Travis Scott以降、バーチャルライブの波は大きく音楽業界に広がった。


  一方、日本でもこういったテクノロジーを駆使したバーチャルライブを取り入れるミュージシャンも現れた。人気ラッパーのkZmは、バーチャルパークシステム『VARP』を利用したVRライブを行い、同じくPUNPEEは、リアルタイムXR配信システム「Chausie」を利用したXRライブを行った。


それ以外にも「SUPER DOMMUNE tuned by au5G」がフィッシュマンズ、DAOKOのARライブを配信したほか、今秋、VRワールド「バーチャル渋谷」内で行われた「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」では、Ken IshiiやEllen Allienらがアバター化してバーチャルの世界でDJプレイを行なっている。



そして、海外フェスでもTomorrowlandが今夏、Tomorrowlandの世界観をフルCGで再現したバーチャルフェス「Tomorrowland Around The World」を実施。この年末は、第二弾となる「Tomorrowland 31.12.2020」も配信される予定だ。


同日は、block.fmが今年スタートした配信フェス、BLOCK.FESTIVALの第4弾「BLOCK.FESTIVAL vol.4」も開催されるので、どちらもあわせてチェックしてはいかがだろうか?





配信イベント増加によって、新たな課題も  


先述のような状況により、配信イベントは一気に普及した。そういった需要を受け、Mixcloudが独自配信プラットフォーム「Mixcloud Live」をローンチしたことも話題になった。このシステムでは配信を行うDJがマネタイズできることに注目が集まった。



しかし、その一方では著作権を持たない音源を使った配信も問題視されるようになった。特にそれまで比較的にDJたちの間でBANされにくいといわれてきたTwitchでは、著作権侵害のクレームが相次ぎ、ストリーマーに対して大量の削除要請が行われたほか、音源使用に関するガイドラインに違反する動画を削除し、それを遵守することを呼びかけるということも起きた。 


また、先述の「Mixcloud Live」では、Mixcloudとレーベルが契約を結んでいることから、プラットフォームが配信するDJに代わって楽曲の使用料を払っていることも話題になったが、例えば専門家によるとMixcloudがライセンス契約を結んでいない楽曲使用に関しては著作権者がDJ使用を承諾したとはいい切れない部分があるなど、この問題には課題が残る。





コロナ禍によって苦境に立たされたミュージシャンを支援するプロジェクトが広がる 


今年はコロナ禍の影響によるクラブやライブハウスの営業自粛によって、収入が断たれてしまったミュージシャンは、経済的に苦境に立たされる事態にも直面した。


しかし、そんなミュージシャンたちを支援するためにいち早く行動に移したのが音楽プラットフォームのBandcampだ。 Bandcampは、今年3月に24時間に限り、通常Bandcampが受け取る販売手数料をアーティストやレーベルに還元する支援キャンペーン「Bandcamp Friday」を初実施。それ以来、今年は計9度、毎月第一金曜に同樣のキャンペーンを行なっており、その間にユーザーが支払った金額の総額は4000万ドルにものぼった。


今月、このキャンペーンは2021年5月まで継続されることが発表されている。こういった取り組みにより、Bandcampは”ストリーミング時代の英雄”と呼ばれるようになるなど音楽ファンからの株を上げた。  


また、BandcampのほかにもSoundCloudやSpotify、Beatportなどもアーティスト支援キャンペーンを展開。ファンが直接アーティストに寄付できるサービスや配信イベントで寄付を募ることなども行われた。





BLMを受けて、人種差別撤廃に関する動きも加速 


さらにコロナ禍ではアメリカでのBLMをきっかけに音楽業界でも人種差別撤廃に関する動きも加速した。先述のBandcampは、アメリカ奴隷解放宣言を祝う記念日である6月19日の売上をNAACPに毎年全額寄付することを発表。ほかにも音楽業界各社は、6月に黒人差別に抗議するストライキ「Black Out Tuesday」に参加を表明した。 


DJ業界でもこういった動きを受けて、The Black Madonnaが”The Blessed Madonna”に、Joey NegroがDave Leeに改名するなど、事実上白人が優遇されてきた業界の変革を促すための行動も増え、Project PabloがPatrick Hollandに、Detroit SwindleがDam Swindleに、ロンドンの人気レーベル「Whities」も「AD 93」に改名している。

フェス業界ではコーチェラが黒人差別問題を受け、運営体制の中に「GV Black」というチームを設立することを発表したことも注目を集めた。





TikTokから意外なクラブ関連バイラルヒットが生まれる  


コロナ禍によるロックダウンのような外出自粛が起きている期間にはTikTokで音楽を楽しむ人が増え、そのムードに関連したDua Lipaの「Don’t Start Now」などが人気を博した。 


また、ムードに関連したものでいえば、ベルリンの有名クラブ「Berghain」がまさかのTikTok上でバイラルヒット。数年前に公開されたドアポリシーが厳しいことで知られるBerghain入場を仮想体験できるサイト「Berghain Trainer」で遊ぶ様子が大きなバズに。その結果、「Berghain Trainer」のサーバーがクラッシュするほど大量アクセスされることになった。



そのほかにもTikTokからはクラブ系トラックの「Vibe」も大ヒット曲に。無名アーティストだったCookiee Kawaiiによるジャージークラブ曲のこの曲は、TikTokによる2020年ふりかえり「Year on TikTok: Music 2020」の「Down The Rabbit Hole: Unexpected Hits and Niche Discoveries」部門でも最初に名前が挙がっている。


また「Remember These? Songs Revitalized On TikTok」という過去の有名曲部門では、00sエレクトロの名曲として知られるLa Rouxの「Bullletproof」の名前も見受けられる。






photo: Alan Paone





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