絶対必聴! block.fm日本人音楽ライターが選んだ、2018年上半期最強のアンダーグラウンド・ミュージックとは?

2018年1月〜6月でblock.fm日本人ライターたちが注目した新作と、MVPアーティストをピックアップ
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2018.08.03 10:00

今年の上半期も国内外から多数の話題作がリリースされたが、その中でも個人的にはまだまだアンダーグラウンドなクラブミュージック界隈で「これは! 」と思わず唸ってしまうような次の可能性を秘めた作品が多かったように感じている。そこで今回は国内外のアンダーグラウンドシーンで特に心に突き刺さったリリースやアルバムをピックアップし、筆者なりの「2018年上半期Best Music 」としてご紹介したい。


2018年上半期ベスト・リリース(アルバム/EP/ミックステープ)


VA『Liquid Ritual Vol.1』 




今年は日本でもディーン・フジオカが新曲「Echo」でそのサウンドを採用したことで、ここ日本国でも注目されることになったUKの新興ベースミュージックWave。そのシーンを代表するロンドン拠点のレーベル「Liquid Ritual」による初のコンピレーションは、レーベルを運営するKareful、Stohouのほか、LTHLなど本場ロンドンの有名プロデューサー以外に、これまでに別のWaveコンピレーションでも常連のSorsari、カナダのDyzphoria、オランダのDeadcrow、上海のDownstateらなど世界中のWaveアーティストの最新音源をピックアップ、2018年上半期のWaveシーンの最前線を知る上では欠かせない一枚だ。


収録曲の中ではコンピの冒頭を飾る耽美的な王道Wave「Worth」、まどろむようなシンセが心地よい「I Loved A Witch Once」が特に秀逸だ。また「Deep Medi Musik」系のダブステップを通過したような「Cultro」、声ネタ使いとビートがUKGを彷彿とさせる「Gold Coffin」など、王道とはまた違った新機軸とも言える曲も収録されている点に注目したい。






Lycoriscoris 『Fight』



これまでに国内レーベル「Moph Record」やドイツの名門「Kompakt」のエクスルーシヴシリーズ「KX」などからリリースを重ねてきた東京拠点の日本人プロデューサーのLycoriscorisが、UKの人気ハウスレーベル「Anjunadeep」からリリースしたレーベルデビューアルバム。Four Tetファンや、ハンブルグ系音響ハウス好きに突き刺さるレフトフィールドハウスを中心とした構成は、ダンスミュージック以外に、チルアウト系の音楽として聴いても非常に心地良い1枚だ。


収録曲の中ではメロディックなピアノによる美メロが印象的なハウストラックのタイトル曲の「Flight」、「Escape」、極上のアンビエントチューン「Far」の3曲は必聴。それ以外にもアルバムの最後を飾るDJ Kozeラインの「Blue」など1枚を通して聴ける音楽は良曲ばかり。日本人特有の繊細な音使いとヨーロッパの電子音響音楽の要素が絶妙に組み合わさった東京発の"ポスト・クラシカル"な内容はディープ~レフトフィールドハウスからアンビエント~ドローンファンまでを必ずや魅了するはず。なお、YouTubeではアルバム収録曲で構成されたレーベル公式DJミックスも公開されているのでそちらも要チェック。





カルロスひろし&やなぎトライブ 『中央分離帯でGOODNIGHT』 




昨年頃からネット上で日本語ラップしばりのDJミックスをコンスタントに公開し、耳の早い音楽ファンの間でにわかに注目を集めていた正体不明の謎のDJ、カルロスひろし。わかっていることは川崎のスケートショップ「goldfish」に所属していることのみという彼が新たに謎の相方やなぎトライブを迎えて今年公開した本作は、オールドスクールな90s日本語ラップの名曲のみで、"日本の夏"を表現した超意欲作だ。  


同ミックスで使用されるのSHAKKAZOMBIE「虹」、MURO「Conrete Jungle」、MICROPHONE PAGER「東京地下道 feat.LAMP EYE」、和物レアグルーヴ「バイブレイション」ネタのECD「Viberation feat.HAC,SEINU」やスチャダラパー「サマージャム95」、かせきさいだあ「じゃ夏なんで」を使って見事に選曲で夏を描きだすDJスキルは圧巻。DJのバイオでよく見かける「ストーリーを描く」という文言を実際に体現するとはきっとこういうことなんだろうなと思い知らされる。ヒップホップに限らず全ジャンルのDJがDJ表現のお手本として聴いておきたい”DJ Mix of DJ Mix”。






2018年上半期 MVPアーティスト - CRZKNY 




今年の上半期も国内外問わず多くの音楽を聴いてきたが、思い返せばコンスタントに、しかもかなり短いスパンであたかも連打されるように衝撃を与え続けられたのは、広島が産んだジューク/フットワークの鬼才CRZKNY以外にほかならない。3月にリリースされたベースミュージックシーンの異端者によるまさかのガバアルバム『GVVVV』は、「LOST」、「PEAK」、「SCUM」など単純明快なパワーワードが曲のタイトルとして付けられ、地獄のような低音とハイエナジーなガバキックの狂宴を見事に描ききった傑作だ。




また6月にはサニーデイサービスのリミックスプロジェクトに呼応して、勝手に「FUCK YOU音頭」の強烈なリミックスをブートレグとして2曲公開。狂気的な内容からのちに公式ブートレグ化も果たした。そして、今月は、暴力的な低音が魔物のように鳴り響いた評判になった代官山Unitでのrokapenisとのオーディオビジュアルライヴ動画を公開するなど本当にコンスタントに2018年上半期は音楽ファンの注目を集めてきたCRZKNY。筆者の中では2018年上半期MVPは彼しか考えられなかったので、1ミリも迷わず選出した次第。地獄でカオスで優勝だった彼が下半期はどういった活躍を見せるかにも期待したい。



written by Jun Fukunaga 


photo: Liquid Ritual / Anjunadeep /goldfish / CRZKNY





今年も半年が過ぎ、その間に世界中でたくさんの音源がリリースされた。今回は、そんな中でも際立って質の高い作品3つを独断と偏見でセレクト。聴き逃していた…なんて方はぜひともご一聴あれ!

また、上半期を振り返り、最も音楽業界に貢献したアーティストも同時にご紹介。彼なくして、これからの音楽は語れない。


2018年上半期ベスト・リリース(アルバム/EP/ミックステープ)


Ravyn Lenae『Crush EP』


昨年まで高校生、若干19歳のR&Bシンガー・Ravyn Lenae(レイヴン・レネー)の新作『Crush EP』が最高にクールで聴き心地抜群だ。今作は、西海岸発祥のヒップホップクルー・Odd Future(オッド・フューチャー)に所属しているソウルグループ・The Internet(ジ・インターネット)の中心人物であるSteve Lacy(スティーブ・レイシー)がプロデュースしたことでも話題となった。キャッチーかつグルーヴィーなメロディに、Lenaeの超高音域にまで達するボーカルが乗っかることで、暑さに鬱屈したマインドを澄み渡らせるほどの爽快感を演出している。



シングルカット曲「Sticky」は、勢いのある若手をフィーチャーするYouTubeチャンネル「A COLORS SHOW」で公開録音もされている。こちらも一見するだけで、彼女のパフォーマンス力の高さが伺える内容だ。




今やヒップホップシーンを牽引しているChance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)やVic Mensa(ヴィック・メンサ)らを輩出しているシカゴのゴールデンルーキーということで、今後の活動にも期待がかかる。


Evidence『Weather or Not』


Sick Team(5lack、ISSUGI、Budamunk)、JJJら日本のヒップホップシーンを代表するアーティストたちにも影響を与えるEvidence(エビデンス)が今年初旬に発表した『Weather or Not』。パートナーの乳癌が発覚したことにより転換期を迎えた、という彼の人生観を反映させたリリックが心に突き刺さる良作となっている。また、ヒップホップ界きってのカリスマであるNas(ナズ)などを手がける名プロデューサー・The Alchemist(アルケミスト)や実力派フィメールラッパーのRapsody(ラプソディ)らが参加していることで、オールドスクールさも漂うテイストに仕上がり、アルバム全体を上質なものに。



「Bad Publicity feat. Krondon」のMVでは、ロケ地に自身のフッドであるLAを選んでいる。誰もいない街を闊歩しながら、"I'm from The Coast(俺はコースト出身だ)"と誇らしげに歌う姿が印象的だ。



40代を迎えても進化し続ける彼の"今"が込められたこの名作を聴けば、どんな向かい風も乗り越えられる活力が得られるはずだ。


System 7 & Mirror System『Café Seven』


プログレッシブ・ロックファンには言わずと知れたミュージシャンであるSteve Hillege(スティーブ・ヒレッジ)と、そのガールフレンドのMiquette Giraudy(ミケット・ジローディ)のふたりによるスペシャルテクノユニット・System 7 & Mirror System(システム7 & ミラー・システム)が、約3年ぶりとなる音源『Café Seven』を今年6月にリリース。ダンサブルなビートが連続するナンバーもあれば、耳を澄ますと涼風の音が聞こえてくるようなリラクシングサウンドも、というまさに至高のアンビエント・テクノとなっている。ソリッドなテクノDJプレイで定評のあるDubfire(ダブファイア)に見出され、世界で活躍中の日本人兄弟テクノユニット・SUDOとのコラボ曲「Sensation」も収録されるなど、コアなクラバー必聴の作品だ。



7月14日にはSUDO主催のパーティー「BLISSDOM」の20周年アニヴァーサリーイベントに出演するため、来阪した彼ら。エクスペリメンタルでエキサイティングなライブにオーディエンスは大熱狂。フロアが抜けそうになるほどの盛り上がりを見せた。



2018年上半期 MVPアーティスト - Febb as Young Mason



今年2月、トラックメーカーであり、ラッパーのFebb as Young Masonが不慮の事故により逝去した。Buddha BrandのD.L.ことDev Largeに「ここ10年でナンバーワンの日本語ラップ」とまで言わしめた逸材の死に、同じ土俵でともに戦ってきたラッパーたちからも数えきれないほどの反響が。


先日、PUNPEE単独公演に登場したISSUGIは、Febbの代表曲「The Test」のトラックで、MONJUの「BLACK DE.EP」のバースをキックしている。彼らしい粋な計らいに、ファンからも賞賛の声が挙がっている。


Chaki Zuluは、Febbの遺作となる曲「SLAY」をYouTube上にアップロードしている。タイトルに似つかわしいダークな世界観を表現するChakiのビートと、Febb自身のラッパーとしての強い覚悟を感じられるリリックが上手くマッチした傑作だ。動画の概要欄には、Febbに宛てたメッセージも。




彼ら以外にも数多くのアーティストや業界人が彼の早過ぎる死を惜しんでいる。だが、たとえ彼がこの世を去ったとしても、遺された作品がある限り、その才能は語り継がれていくだろう。ご冥福をお祈りいたします。


written by Kenji Takeda

source: https://playatuner.com/2018/02/evidence-weatherornot/

photo: Febb as Young Mason Instagram





例年のごとく夏を前にしてアルバムのリリースが多かった2018年上半期。ヒップホップも話題に上ることが多かったが、その中でも注目のアルバムと話題のアーティストを代表曲とともにおさらいしておこう!



2018年上半期ベスト・リリース(アルバム/EP/ミックステープ)

6ix9ine『DAY69』



昨年からヒップホップ界では異端児、問題児として話題の絶え無いTekashi 69(テカシ・シックスナイン)こと6ix9ine(シックスナイン)ニューヨークはブルックリン出身の若干22歳の彼は髪をレインボーに染めた独特の出で立ちと過激な発言、そしてオリジナリティー溢れるフローで一躍スターとなった。ブレイクのきっかけとなった「Gummo」はビルボードで12位をマークし、YouTubeの再生回数も現在2億再生を超えるなど大ヒットとなった。


The Game(ザ・ゲーム)やYG(ワイジー)といった西海岸の大御所ともビーフを展開し、ツアーで訪れる都市からは入場を拒否されるなど、危険人物と扱われ敵も多い6inx9ineだが、SoundCloudラップ全盛期の近年、その人気は今や不動のもの。今年2月にリリースしたミックステープ『DAY69』ではOffset(オフセット)Tory Lanez(トリー・レインズ)らをフィーチャーし、ビルボードでも4位にまで上る躍進をみせた。ラッパー引退宣言もしていたが、現在はツアー中であり、その最中にもいくつかのシングルを発表している。残念ながら今年の来日はキャンセルとなってしまったが、今日本で見たいアーティストの1人であることは変わり無い!



Post Malone『Beerbongs & Bentleys』



21 Savage(21・サヴェージ)をフィーチャーした「Rockstar」が世界中でヒットし、待望のアルバムとなった今作は初登場でビルボード1位に輝くなど、強烈な印象を残したPost Malone(ポスト・マローン)は2015年にリリースした「White Iverson」で話題をさらい「オレはラッパーではなくて音楽を作りたいんだ」とインタビューで話すとおり、カントリー、ロック、ヒップホップどのスタイルにも当てはまら無い彼のオリジナリティースタイルは海を渡りここ日本でも受け入れられた。


今回のアルバムにはNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)Ty Dolla Sign(タイ・ダラー・サイン)G-Eazy(G・イージー)らが参加。ラジオではもちろんクラブでも多くのPost Maloneの楽曲がプレイされているうえに、今年のフジロックにも出演するということで日本でもますます人気が高まりそうだ! 現在ユニバーサル・ジャパンのサイトでは「週刊ポストマローン」と題した連載企画もスタートしているので気になる人はそちらも合わせてチェックするとより深く彼を知ることができるだろう。



DJ RYOW『NEW X CLASSIC』



ラッパーでも到達することが難しい10枚目のアルバムにDJ/プロデューサーとして到達した唯一の日本人DJ RYOW。東海地方を代表するクラブDJであることはもちろん、AK-69、"E"qualのライブDJも担当。自身のレーベル「DREAM TEAM MUSIC」を主宰し、さらにはアパレルブランド「DREAM TEAM」も経営。日本で最も多忙なアーティストと言っても過言ではないDJ RYOWの10枚目のアルバムはベテランから最注目の新人までバリエーションに富んだまさに「DJ」ならではの人選となっていて、1枚通して聴くと今の日本のヒップホップシーンがこれほどまでに盛り上がっているのかと驚かされる。


タイトルに含まれる「X」はもちろん10枚目という意味もあれば、DJ RYOWが尊敬して止まない故・Tokona-X(トコナ・X)そして新しいヒップホップとクラシックを融合させているトリプルミーニングになっており、このアルバムにぴったりの「X」だ。AK-69、"E"qual、SOCKSらの名古屋勢から、JP THE WAVY、SALUさらにPUSHIMとTinaといった日本の歌姫まで参加の幅広いアルバム。USのヒップホップ好きにも是非チェックして欲しい!



2018年上半期 MVPアーティスト - Drake


Drake(ドレイク)に関しては今年の上半期というよりは常に話題ではあるのだが、ギリギリ下半期になってしまったアルバム『Scorpion』に収録の「God's Plan」のMVが何よりも話題のビデオとなったのではないだろうか。1億円以上のビデオの予算を学校や子供のいる家庭などに寄付している様子がそのままMVになっていて、この行動にはアンチドレイクなリスナーも心打たれた事だろう。


しかしMVで素晴らしい印象を残したかと思えば数ヶ月後には上半期にアルバム『DAYTONA』をリリースしたPusha T(プッシャー・T)とのビーフが再燃し、Jeniffer Lopez(ジェニファー・ロペス)との破局後に噂になった元ポルノスターとの隠し子騒動の発端に、さらにアルバム中で自分の子供だと認めるといった一連の流れ。ビーフになっても強い、慈善活動も行う、女性にもモテモテというDrakeの振り幅がよくわかる上半期だったかと思う。もちろんアルバムも最高だ! 




今回は3つの作品と1人のアーティストで2018年上半期をまとめてみた。ヒップホップの記事を書く事が多いので偏りもあるが、ビルボードチャートを常に賑わすまでにマーケットの広がったヒップホップ。紹介した以外にもイケてる曲が溢れているのでお聴き逃しのないよう! 気になったアーティストの記事はblock.fmで検索してみるといいかも!




written by #BsideNews


photo: youtube


source:

https://www.vibe.com/2018/05/tekashi-6ix9ine-controversy-list/

https://pitchfork.com/reviews/albums/post-malone-beerbongs-and-bentleys/

http://www.dreamteammusic.jp/vccd2024/




2018年上半期ベストアルバム3枚をセレクトする。これがなかなか難しい。HIPHOPアルバムはMigos(ミーゴス)『Culture Ⅱ』を皮切りに、Post Malone(ポストマローン)『Beer&Bong』などビッグタイトルが豊作だったからだ。


アルバムも素晴らしい出来のJorja Smith(ジョルジャ・スミス)、SZA(シーザ)、Jay Rock(ジェイロック)らを収録した『Black Panther: The Album』はベストアルバムにいれたかったが、アーティスト単体作品から選びたくて除外した。このアルバムをプロデュースし、ピューリツァー賞を受賞したKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)はG.O.A.T.(Greatest of All Time)である。


というわけでHIPHOP中心にメディアへの露出、話題性もある程度考慮した上で実際に自分がよく聴いていたアルバムをピックアップした。




2018年上半期ベスト・リリース(アルバム/EP/ミックステープ)



A$AP ROCKY『TESTING』



photo: A$APROCKYUPTOWN


アルバム単位で曲を聴くことが少なくなってきた最近。その中で、アルバム全編を通して楽しめる1枚に巡り会えることは幸せだ。A$AP MOBを束ねるリーダー的存在であるA$AP ROCKY(エイサップ・ロッキー)通算3枚目のアルバム『TESTING』はタイトル通り、実験的で挑戦的。新たなHIPHOPサウンドに果敢に挑んでいる。


Kid Cudi(キッド・クディ)、Kodak Black(コダック・ブラック)、Frank Ocean(フランク・オーシャン)、FKA Twigs(FKAツイグス)、Skepta(スケプタ)など客演も豪華。プロデュースに、Blood Orange(ブラッド・オレンジ)ことDev Hynes(デヴ・ハインズ)もクレジット。高火力な布陣とともに、ROCKY自身もそのほとんどの楽曲を手掛けたという意欲作だ。


特に「Praise The Lord (Da Shine) 」でフィーチャーされているSkeptaの存在感が群を抜いていい。良い仕事しますね。リードトラック「A$AP Forever」ではテクノ、エレクトロミュージックの大御所Moby(モービー)を迎え「Porcelain」のまんま使いという大胆なサプライズ。A-Trakによるカットアップ動画も含めて、ROCKYは大いに楽しませてくれた。N.W.Aをオマージュするかのようなアートワークも最高。


参考記事:A-TRAKが「A$AP Forever」の極上ルーティンを披露









XXXTENTACION『 ? 』



photo:XXXTENTACION『 ? 』 Spotify


先日急逝してしまったXXXTENTACION(XXXテンタシオン)だが、亡くなったことを抜きにしてこのアルバムは衝撃的に良かった。 今年2月、Xのホームタウン地元フロリダで起きたストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件での犠牲者へ捧げた曲「Hope」や、成功の儚さを歌った「Moon Light」を収録。「Changes」では暴力沙汰で問題となっていた元恋人との関係性について歌っているとされる。


それらの楽曲はHIPHOPでは形容できないほど多様性にあふれている。Punk、Metal、Emo、あらゆる要素を孕んでいるのだ。死後公開された「SAD! 」のビデオでは自身の葬式へ行くところからストーリーが始まっている。今年4月に撮影されたというから驚きだ。生前、「俺がこの先死んでもファンのみんなは下を向かずにポジティヴに生きてほしい」とメッセージを残しており、20歳にして常に自分の死を意識しながら生きていたのではないだろうか。


彼は誰よりも先を行き過ぎていたのかもしれない。年齢以上のメンタリティの成熟とアート性を感じさせるXの、劇的な人生観が詰まったアルバム。









kZm『DIMENSION』



photo:BPM Tokyo


アルバム単位で音楽を聴くことが少なくなってしまったということを先述したが、ライフスタイルの変化の中で、2018年上半期もっともスピーカーを通して聴いていたアルバム。東京を代表するコレクティヴのひとつYENTOWNの最年少ラッパーにしてかつてはクセの強いKillaクルーで番長的な存在感を発揮していた。


そんなkZmの1stアルバムは全体的に夜の匂いに満ちている。「WANGAN」 、「Sect YEN」、「狂-Rari-」、「Deadman Walking On The Moon」「Emotion」、この世とあの世の次元が曖昧になる夜が醸し出す不思議な感覚が、深く沈むビートとkZmのハスキーボイスで描き出される。


途中の「Skit」では、仲間たちと暗い洞穴の中に迷い込む。彼らが導き出した答えは「戻るよりも反対まで掘っちゃおう」というポジティヴなもの。アルバムは最後に収録された「Dream Chaser feat.BIM」で夜明けを迎える。これまでのTrapビートとは一転して、ムーンバトン調のビートにゆったりと乗り、Emoなシャウトを披露。この気持ち良さがクセになる。カタルシスの解放と構成の妙。次作が早くも楽しみだ。









2018年上半期 MVPアーティスト - Hyper Potions


ストリーミング数やチャートなら問答無用でDrake(ドレイク)がMVPだろう。Post Maloneでさえ歯が立たない数字を叩き出している。恐るべきDrake。話題性、ビデオの再生回数ならChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)がMVPだ。Kanye West(カニエ・ウェスト)は6月にひたすら新作をリリースした。いろいろなことを考えながら音楽を聴いているうちに、HIPHOP疲れしてきてしまった。なので、HIPHOPから離れて、自分が純粋に楽しむことができたアーティストを選出した。イキりオタクなんで、こういうのも好きなんです。


Hyper Potions



photo:Hyper Potions Twitter


個人的にフェイバリットかつBFM的にもフィットするのでは? と思うアーティストをレコメンドしたい。サンフランシスコとフィラデルフィア出身のFuture Bassを軸としたサウンドクリエーターユニットHyper Potions(ハイパーポーションズ)である。


ゲームやアニメにオマージュを捧げ、ジャパンカルチャーが大好きなふたりのアイコンは柴犬。Twitterでは内容と関係なく可愛い柴犬が映っているTweetをRTするお茶目な2人組だ。


上半期は4月に「Snow Day」、5月に「Cherry Brossoms」、6月に「Jungle Cruise」をリリース。季節感のあるエレクトロサウンドとどこかジャポニズムを感じるメロディに、レトロゲーム好きはグッときてしまう。


加えて、昨年彼らが公式の楽曲制作を手掛けたセガの名作『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズオムニバス作品『ソニックマニア』のうちの1曲「Time Trial」 に、ゲーム作曲家でギタリスト、セガ所属のJun Senoue(瀬上純)を迎えた「Time Trial Plus」を今年発表。ギターパートが生音になってめちゃくちゃかっこいい。


最近、彼らの代表曲である「Adventures」を中田ヤスタカ氏がプレイした。その模様をTwitterで知ったふたりは大興奮。今後の更なるブレイクに期待を込めて、俺はHyper Potionsを推すぜッ!  










Hyper PotionsのTwitterではアートワークのように仲良しなふたりの姿が満載。見ているだけでも幸せな気持ちになる。


Written by Tomy Mochizukiy




2018年上半期ベスト・リリース(アルバム/EP/ミックステープ)


Lil Skies  『Life Of A Dark Rose』

-サンクラ出身のラッパーが、メインストリームで通用することを証明した意味のある1枚-

 


2018年1月10日はHipHop界にとって歴史的な日になった。1つはKevin Gatesが刑務所から釈放されたこと、もう1つはこのアルバムがリリースされたことだ。Lil Skiesの育ったペンシルベニア州のウェーンズボロ市は、HipHopとはあまり馴染みのない、人口たった1万人の小さな都市である。音楽家の父をもち、現行サウンドクラウドの影響を受けたラッパーは、2018年を代表するヒットの仕方であった。オープニングの「Welcome To The Rodeo」ではLil Skiesのスムーズなラップとスキルを堪能できる。特にインパクトの強いセカンドバースでは音楽で生きていく覚悟を表明するために、フェイスタトゥーを入れたことなどをラップし、現に成功していることを実力で示した。「Lettuce Sandwich」はパンパンに膨れ上がる財布をレタスサンドイッチに例えたクリエイティブな一曲だ(レタスはスラングでお金の意味、お金の意味を表す、Greenからきている)。アルバムを締めくくる「Nowadays」のMVはCole Bennettによって制作され、Youtubeで1億回再生以上再生されている。バスケットボールとのワードプレイを交え、心地よいラップで締めくくられた。アルバムを通してキャッチーなビートでまとめられており、気がつくと41分が過ぎている、魔法のようなアルバムに出来上がっている。  


Lil Baby 『Harder Than Ever』

-変わりゆくTrapの流れにおいて、再びアトランタの音楽を定義した1枚-

   


17曲収録されたこのLil Babyの4枚目のアルバムは、本当によくできたアルバムだ。Michael "MikFly" Dottinが、このアルバムのほとんどである16曲のミキシングを担当した、ただ1曲「Yes Indeed」を除いて。アルバムをリリースする直前のギリギリになって完成したこの曲は、客演で参加したDrakeの大きな助けもあり、リリースされるとすぐに、チャートを登っていった(最高位Hot100 6位、プラチナム達成)。正式リリースされる前はコーラスで特に印象的だった「ピカチュウ」というフレーズがそのままタイトルになると思われていた。決してキャッチーな音楽とは言えないが、不思議な魅力を詰め込んでいたこの曲は、プレイリストに1度入ってからというもの、皆勤賞である。混じり気のないリアルなアトランタを反映した曲は、アトランタを超え全米中、世界中でヒットしている。「Exotic」と「Bank」ではそれぞれ、Tay KeithとMoneybagg Yoをフューチャーし、メンフィスの力を添えた強烈な曲に仕上がった。Gunna、Young Thug、Hoodrich Pablo Juanと、ご近所アトランタのハードワーカーたちと作られた楽曲はどれも濃厚な曲ばかりだ。抑揚をつけて気だるそうに呟かれるラップは、中毒性があるので無闇に手を出さないことをお勧めしたい。気が付いた時には、禁断症状が出てしまう。何周しても飽きないアルバムだ。   


Juice WRLD 『Goodbye & Good Riddance』

-ドラッグ、憂鬱、愛、と今現在若者が直面している問題を見事に表現した傑作-

 


「Lucid Dreams」がヒットしたことで、世界に知られたJuice WRLDだが、この曲のヒットの仕方は少し変わっていた。Cole Bennettによって作成された「All Girls Are The Same」のMVがバイラルヒットすると、彼に興味を持ったリスナーの中で、1年前の7月1日にリリースされた「Lucid Dreams」に再注目する動きが見られた。Stingの「Shape Of My Heart」を大胆にサンプリングしたこの曲は、1年の時を経てJuice WRLD2度目のバイラルヒットを果たす。悲しくも哀愁を感じさせるJuiceの声は、ドラッグや失恋、精神的苦痛をトピックとして扱う彼のスタイルとガッチリマッチし、一躍スターの座に上り詰めた。アルバムに収録されている「Black & White」は黒を表現する、黒人、黒いベンツ、コデイン、そして白を表現する、白人、白いベンツ、コカイン、との対比が美しくも儚く歌われており、隠れた名曲となっている。またこのアルバムは小ネタも色々隠されている。Karma(Skit)ではBillie EilishとKhalidの「Lovely」のビートが、ほぼそのまま使われた。この曲は13の理由シーズン2のサウンドトラックであり、青年期の不安定な精神にフォーカスを当てた同作品と絶妙に相性がいい。XXXTentacion、Lil Peeppへのトリビュートソング「Legends」やLil Uzi Vertとの「Wasted」など、ヒット曲を次々に出しており下半期も注目したいアーティストだ。   


2018年上半期 MVPアーティスト - Tay Keith 

-流行に多大な影響を与えている、メンフィスの若き天才プロデューサー-

 


2018年に入ると、空前のメンフィスブームがやってきた。Three 6 Mafiaを中心に展開されたこのブームは、「Slob On My Knob」をサンプリングしたG Eazyの「No Limit」、A$AP Fergの「Plain Jane」、「Side 2 Side」をサンプリングしたRae Sremmurdの「Powerglide」など数々の名曲を誕生させた。この波に乗じて彗星の如く現れたTay Keithは、今やどのアルバムにも引っ張りダコの売れっ子プロデューサーだ。同じくメンフィスで育った幼馴染のBlockboy JBとの「Look Alive ft.Drake」はスマッシュヒットを記録し、Hot100のtop10に1ヶ月に渡り居座った。不気味なコードに悪そうなハイハット、なおかつシンプルなビートが特徴の彼のスタイルは、アルバムに入ると一際目立つ癖のある曲に変貌する。Drakeの「Nonstop」、Rico Nastyの「In The Air」、Lil Babyの「Exotic」など、彼らのアルバムには1曲ずつしかビートを提供していないのだが、それぞれ強烈なインパクトを放っており、絶妙なアクセントを加えている。Trapが誕生してからというもの、常にHipHopの心臓はアトランタに存在した。それが今年に入り少しずつ西に移ろうとしているのを感じる。21歳とまだまだ成長の過程でありながら、現行の音楽シーンに影響を与えている彼は、上半期のMVPと呼ぶに相応しいだろう。


written by Yoshito Takahashi




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