音好きも唸るラインナップが実現 野外フェス「THE CAMP BOOK 2019」レポート

石野卓球ら実力派DJ、BASIやHANG × 唾奇のglitsmotel、PUFFYやYonYonなど、ジャンルも世代を超えて楽しめた野外音楽フェス「THE CAMP BOOK 2019」の様子をレポート。
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2019.07.01 14:00

今年で3回目となる「THE CAMP BOOK」は名の通り、キャンプがコンセプトとなっている野外フェスだ。今年は初となる長野県富士見町にある富士見高原リゾートで開催された。





注目の野外フェス「THE CAMP BOOK 2019」のステージを振り返る



今年は富士見高原リゾートで初の開催となった「THE CAMP BOOK」。長野県ではあるが山梨からもほど近い場所(というか県境)にあるため、筆者も含め山梨在住の人にとっても比較的アクセスしやすいフェスといえる。


ファミリー層をコアターゲットにしているというだけあって、親子で遊べるようなアクティビティや催しを取り入れており、訪れた人々が非日常の時間を快適に過ごせる空間が作られていた。


キャンプともうひとつ、「THE CAMP BOOK」の大事な要素となっているのが音楽。というか音楽が良くなきゃね。野外音楽フェスですから。肝心の出演アーティストも音好きのツボを抑えた絶妙なラインナップ。結論から言うとキャンプをやらない(嫌いとかじゃない)インドアな僕でも存分に楽しめた。キャンプ好きだけじゃなく、音楽好きも楽しめるフェスだ。




YonYonからMonaural mini plug、OMK グローバルな世界観で踊る


小雨の降る富士見高原、3つのステージからなる「THE CAMP BOOK」においていちばんダンスミュージックが流れていたステージが、会場のちょうど中腹に位置する「TEMPLE STAGE」だ。大きなテントが張られているため半野外という感じ。


このステージのトップを飾るのは、YonYon(ヨンヨン)。DJ/シンガー/イベントオーガナイザー/ファッション誌でモデルまでこなす、各地のフェスやクラブで活躍中のアーティストだ。


向井太一、SIRUP、一十三十一とのコラボレーションに続いて、7月3日にはTENDRE(テンダー)、Samuel Seo(サミュエル・セオ)とともに最新シングルをリリース。詳しくは記事参照のこと。


クラブだと割と深い時間に回している印象だが、着いていきなり昼間からYonYonのDJ聴けるなんて贅沢な気分。雨が降っていたなか、YonYonがいちばん最初にかけたのは曲はSIRUPの「Rain」。そしてTENDRE「Document」、TSUBAME(ツバメ)がItto(イット)とAAAMYYY(エイミー)を迎えた「You」とアーバンポップな曲を立て続けにミックス。


そしてブラックミュージック系のクラブイベントの終わり際によく聴いた人も多いであろう(そして一生懸命口説いたこと、ない? )Keyshia Cole(キーシャ・コール)の「Love」、Destiny’s Childの「Say My Name」、Earth, Wind & Fire 「Beijo」など往年の名曲をダンス仕様にリミックスしたバージョンを投下。


中盤ではディスコティックなナンバーからディープなHOUSEで踊らせ、一十三十一の「Serpent Coaster」から水曜日のカンパネラ「一休さん」でシメ。数多くの現場でDJをしているYonYonならではの幅広く、懐深い選曲はさすがだ。若いカップルから音楽好きなパパママも踊り出すグルーヴィーなプレイを披露した。




続いて、一踊りした僕らを更に高めてくれたのがMONAURAL MINI PLUG(モノラルミニプラグ)。生で体感するのを楽しみにしていた、タイ・イサーン地方のピン・プラユックを独自にアップロードしたピンバンドである。


このピン・プラユックなる音楽は、村から出家する人のお祝いや結婚式などに際し、「ピン」というギターのような伝統楽器のエレキ版を巨大なスピーカーや拡声器にぶっさして、爆音を奏で村中を踊りながら練り歩くという風習にルーツをもつ。むっちゃ最高でしょ? 


イサーンに伝わるマッドマックスなお祭りスタイルを日本に持って来て、フェスなどで再現しているのがMONAURAL MINI PLUGというわけ。これについては説明するより体験しなければ分からない高揚感がある。今年フジロックに出演するとのことなので注目だ。P-VINEからアルバム『Samurai Mekong Activity』もリリースしている。ピンとタイコの音、ケーンという笛のかたちをした民族楽器の音、マジでカッコイイぞ。タイの民族楽器に精通するstillichimiya/OMKのYOUNG-G(ヤング・G)いわくケーンを吹くにはけっこうコツがいるそうだ。






MONAURAL MINI PLUGが動画(2018年、19年にstillichimiyaが山梨で主催したイベント「KAMIKANE3000」のもの)のようにひとしきり会場を練り歩く。鼓膜と身体をあたためてくれたところで、ピン・プラユックというローカルミュージックを日本向けに翻訳した張本人Soi48(ソイ48)と、stillichimiya YOUNG-G、MMM(トリプルエム)からなるアジアンダンスミュージックカルテル、OMK(ワンメコン)が3時間のロングセットを敢行。




OMKは東南アジアのまだ見ぬダンスミュージックカルチャーを現地から掘り起こしており、アメリカ人にも知られていないリアルな東南アジアの“アジアンフューチャーベース”を次々に投下。正直全く知らない曲ばかりだけど、めちゃくちゃ踊れるし、カッコイイ。それが楽しい。クラブに行き始めたころの初期衝動を思い起こさせてくれる。


東南アジアのダンスミュージックはグローバルなそれと何ら遜色ないどころか、言語や楽曲の独特なリズムに加え、タイの伝統音楽モーラム、歌謡ジャンルであるルークトゥンといった音楽や、トラップやブレイクビーツを織り交ぜるなど革新的な試みがとても新鮮に聴こえる。


OMKはこのようなアジアンダンスミュージックをフィーチャーし、「ADM」と題した独自のイベントを行ったばかり。OMKが発信するアジアンフューチャーベースに今後も注視していきたい。MMMがめっちゃ好みな曲をかけており、探し出して発見したので貼っておきます。タイ語のタイトル読めないけど、むちゃくちゃ気持ちいい。最高。






PUFFYの爽快なパワーポップとジャジーなBASI、骨太なヒップホップのglitsmotel


日本のポップミュージックにおいて長きにわたって活動するPUFFYは、90年代のストリートファッション誌のカバーを幾度となく彩ったストリートアイコンでもある。僕は1996年のPUFFYが表紙のBOONを携えてライヴに臨んだ。「THE CAMP BOOK」においていちばん大きなステージである「HALL STAGE」はあっという間に超満員。見渡すと若者からパパママ世代まで幅広く、PUFFYのファン層の広さをそのまま物語っていた。




ゆったりとしたジャンプスーツに身を包んだAMI&YUMIはバックバンドをしたがえて颯爽と登場。20年経っても変わらない姿、というかますますカワイイPUFFYに僕はビックリだよ。


ライヴは「渚にまつわるエトセトラ」からスタート。会場も大興奮である。「愛のしるし」のダンスもたまりません。「お子さんたちも多いと思ってこの曲を用意しました」というMCのあとに演奏されたのはアニメ、ちびまるこちゃんのエンディングテーマ「すすめナンセンス」。「これが私の生きる道」をすっかり晴天となった富士見高原に響かせれば、後半はPUFFYの十八番、ギターのメロディをいかしたポップなセットにますます観客も勢いづいていく。「マイストーリー」、「誰かが」と続き、GREEN DAY(グリーンデイ)の「Basket Case」カバーでテンションは最高潮。最後はやっぱり「アジアの純真」で会場大合唱に。PUFFYの20年と“らしさ”がギュッと詰まったライヴパフォーマンスだった。




興奮冷めやらぬまま、「LODGE STAGE」に移動。韻シストのフロントマンとして、世代を越えて支持されるBASI(バシ)のライヴは外せない。最新アルバム「切愛」についてはあらためて語らせていただくとして、この日のオーディエンスは若い人、特にクラブで見かけるようなストリートファッションに身を包んだおしゃれキッズを多く見かけた。ハードなトラップサウンドがヒップホップのメインストリームとして聴かれている一方で、ジャジーでチルい、そしてベーシックなBASIのラップとサウンドが若者にも支持されているのだなと実感。


たゆたう」に始まり、evisbeatsをフィーチャーした「笑み」、「PEPPERMINT」と人気曲を歌い、「あなたには」では、トラックはそのままに違うアーティストの曲を歌ってリワインド(曲をキュルキュルっとして止め、曲アタマに戻す)するという、ライヴDJを務めたISSEI(イッセイ)との息の合ったパフォーマンスで会場を盛り上げる。この日はRIPSLYME(リップスライム)の「楽園ベイベー」、SIRUPの「LOOP」をBASIが歌った。このBASIによる「LOOP」のくだりは、ファンの間でおなじみかもしれない。僕自身もBASIが他の会場でやっているのを見たことがあるので、同じ大阪のアーティストとしてSIRUPのことを本当に好きなんだろうなという、愛情がうかがえる一幕だ。こういった茶目っ気のある振る舞いもアーティストとリスナーの両方からBASIが支持される理由のひとつだろう。


そんな愛溢れるBASIの象徴的な曲のひとつといえば「愛のままに」。フィーチャリングの唾奇(ツバキ)はこの日HANG(ハング)とglitsmotel(グリッツモーテル)として出演していたのだが、スケジュールの都合上BASIひとりでの「愛のままに」となったが、オーディエンスによる合唱によってなんのその。その後はBASI率いるTHE BASIC BANDもステージに登場し「rainy」「NICE」「ANATAGAITANATSU」「JULIET」を演奏。ジャジーでメロウなBASIのステージに酔いしれた。




陽も沈み、高原が少し肌寒くなってきた頃、HANGと唾奇によるglitsmotelが登場。ライヴ前のマイクリハの最後、


「この世には目には見えない闇の住人達がいる。奴らは時として牙をむき君達を襲ってくるかもしれない。彼はそんなやつらから君達を守る為に地獄の底からやってきた正義の使者、なのかもしれない」


と某有名ホラー漫画原作のアニメナレーションのセリフをまんま言い残し、ステージを後にするセンスにやられてしまった(世代だし)。

glitsmotelに関して言うと楽曲はさることながら、2人の素直でユーモラスな人間性がその人気ぶりを裏打ちしている。気温の下がった高原のオーディエンスをアツく盛り上げていた。




唾奇とHANGによる掛け合い、合間のMCも見所となったパフォーマンスはMuKuRo(ムクロ)をフィーチャーした「ame」やSweet Williamsプロデュースの「i Bilieve」、「Thanks」、などglitsmotelの楽曲や、北海道のシンガー/ラッパー TOCCHI(トッチ)が登場し、客演曲を披露。TOCCHIはBASIのアルバム『切愛』収録の「素顔」に参加している注目のアーティストだ。


クラシックなヒップホップトラックを織り交ぜつつ、唾奇とHANGは見事に乗りこなしてオーディエンスを鼓舞する。アンコールとして、唾奇がBASIを呼び込みサプライズ登場。待ちに待っていた「愛のままに」の大合唱で幕を閉じた。




glitsmotelの盛り上がりを見るに、トラップとは一線を画す、BASIの世界観とも共通したオーセンティックなビートとラップスタイルは「THE CAMP BOOK」の客層にハマっていたように思う。


ヴァイナルディガー四天王とラスボス石野卓球


「THE CAMP BOOK」夜の部はTCB DISCOと称し、TEMPLE STAGEで豪華DJたちが共演。


同じ長野の野外フェス「りんご音楽祭」の主催者であり、THE CAMP BOOK主催者である樋口大貴の同級生であるという、dj sleeper(スリーパー)がTCB DISCOのトップバッターを務めた。


TEMPLE STAGEはフードやアパレルグッズを取り扱うTCB MARKETに併設されているので、お酒、各種フード、寒ければ服を調達したりと楽しみながらアーティストのDJパフォーマンスを観ることができる。小腹が空いたらお昼には行列で食べられなかったメニューも狙えるというわけだ(地元山梨甲府のゲストハウス&バーNAP bed and loungeの甲州牛バーガーは売り切れで泣いた。めちゃくちゃ売れたらしい)。




寒かったのでYonYonに紹介いただいたショップでフーディを購入。来年は「THE CAMP BOOK」に行きたいなという方、シャカシャカ系アウターもいいけど、冷えたときのためにスウェット素材のものをバッグにひとつ入れておくといいですよ。


さて、ここでNOEL & GALLAGHER(ノエル&ギャラガー)の登場だ。もちろんオアシスのフロントマンであるファ○キンお兄ちゃんがDJするわけじゃない。ピチカート・ファイヴのリーダーであり音楽家、小西康陽が高松でDJとして活動していた辻一成ことDJ NOELとB2Bを行うDJユニットがNOEL & GALLAGHERである。


同じイベントに出演をした際にB2Bを通じて意気投合し、歴史に残る名言


「キミがDJ NOELってわけか。じゃあ、オレはDJ GALLAGHERだな」

clubberia/小西康陽による紹介文より)


が生まれた。知る人ぞ知る。というか一度体験すれば愛さずにはいられない2人組。個人的には、NOEL & GALLAGHERをよくぞブッキングしてくれたという感じ。


和モノのレアグルーヴから、洋楽、J-POPまで。ありとあらゆるネタをレコードでほぼカットインでブチ込む。そのB2Bはまるでスポーツのようにアクティヴ。それを聴いて踊ったり歌ったり、技術やうんちくなどは置いておいて、音楽の根源的な楽しさを教えてくれる。何より2人がいつも、その場にいる誰よりも楽しそうにしているのが素敵だ。僕は30年後、こんな風にありたいとすら思う。




そして、DJ NORIとDJ MUROという日本を代表するヴァイナルディガーが手を組んだ、CAPTAIN VINYLに会場はさらに色めきたつ。ドープなディスコ、ガラージといったグルーヴ感満載のハウスクラシックチューンのオンパレードに富士見高原の野外ステージがダンスフロアと化した。




クラブ&ダンスミュージックカルチャーを支えてきた、レジェンドDJたちの夢の共演。すっかりあたたまったTCB DISCOのトリを飾るのは石野卓球である。


次の楽曲を選びながらナナメ上を指差したり、独特の動きで指揮者のように会場を煽る。ギュウギュウに詰めかけたオーディエンスの踊る足が止まることはない。石野卓球の一挙手一投足に、歓声をあげた。


正直、僕も昼間からもう踊れないってくらい踊っていたけど、石野卓球の作り出すグルーヴには疲れも忘れて踊り続けた。YMOの「ファイヤークラッカー」をリミックスしたり、テクノ愛あふれるDJセット。深夜帯にも関わらず、この日いちばん「TEMPLE STAGE」に人を集めたという。さすがの貫禄である。




コンパクトながらクオリティの高い「THE CAMP BOOK」


アツいステージを支える会場のハード面についても触れておきたい。「THE CAMP BOOK」を主催しているのはリフォームやリノベーションの会社。ステージデザインや装飾などを独自で行っているため、フェスのイメージに沿った会場装飾のクオリティが高いのも特徴だ。


建設系ということもあり、寅壱のようなガチな職人ワークウェアブランドが協賛に入っている点も面白い。近年ファッションシーンからも注目される寅壱と、寒さ対策にオリジナルのかっちょいいドカジャンを来年のオフィシャルマーチャンダイズとして制作・販売してほしい。


「TEMPLE STAGE」を始め、ゲートなど会場各所に装飾された特徴的なグリーンのプロデュースは横浜のフラワーショップ、The Bulb Bookを運営するヒップなグリーンアーティストSHOTA NAKAHACHIことハチさんの手によるもの。「THE CAMP BOOK」の雰囲気にピッタリの世界観を演出していた。




ショッピングやフードも山梨や長野の地元勢、都内からも感度の高いショップ・飲食店が出店しており、オリジナリティがあって他のフェスとは一線を画すラインナップが楽しめた。




「THE CAMP BOOK」はフジロックをコンパクトにしたような規模感で会場の設計も過ごしやすい。首都圏からも日帰りは充分可能である。小さな子供を連れていた家族連れの他、カップルや女子だけの参加者も多かった。周囲には温泉施設や宿泊施設もあるのでキャンパーじゃなくても遊びやすい。個人的には会場に対しての人の入りもほどよくて快適に感じた。


トリを務めた石野卓球は2年連続の出演、CAPTAIN VINYLは初開催から3回全てに出演しており、このような著名なアーティストが連続して「THE CAMP BOOK」に出続けているのは、アーティストにとっても魅力的なフェスであるということではないだろうか。このまま来年、そのまた来年と続いて常連のアーティストが増えていってほしいと思う。

written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


photo:THE CAMP BOOK



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