レビュー|TAEYO 1stアルバム『Pale Blue Dot』から紐解く、TAEYOにしかできないヒップホップ

【特集】ヒップホップでありながら型にはまることなく、貪欲なまでに様々なジャンルを吸収しながら進化するTAEYOの1stアルバムから、TAEYOとその楽曲を彩るアーティスト陣の魅力に迫る。
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2021.09.15 09:00

TAEYO(タイヨウ)がメジャーデビュー後初となるファン渇望のフルアルバム『Pale Blue Dot』をリリースした。



昨年リリースされたEP『ORANGE』ではトロピカル・ハウスの要素を取り入れたChaki Zuluプロデュースの「Let me down」で、ヒップホップの枠におさまらない幅広い音楽性を聴かせ、今年に入ってからはDJ KANJI「Over Night」へKANDYTOWNのMUDと客演。


さらに7月には本アルバムの先行リリースとなる「RUNNIN’」で、まさかのドラムンベース・ビートにのせて疾走感溢れるラップを魅せ、進化したTAEYOを聴かせてくれた。


メジャーデビュー後もヒップホップでありながら型にはまることなく、貪欲なまでに様々なジャンルを吸収しながら進化するTAEYO。初のメジャーアルバムとなると期待は高まるばかりだ。


フィーチャリングアーティストとしてRyugo Ishida (ゆるふわギャング)、JNKMN (YENTOWN)、Hayashi Masato (ex:Pablo Blasta)、ShowyRENZO、LEXやralphの作品にも客演していたAJAHが参加。


プロデュースにはグローバルなエレクトロニックミュージックシーンで活躍するstarRoを始め、これまでも抜群の相性を見せているCELSIOR COUPE、グローバルな活躍を見せるPULP K、vividboooyなどへもビート提供するES-PLANT & R.I.K、MVのプロデュースも手がけるマルチ・クリエイターDroittte、そしてR&B〜HIP HOPシーンで長いキャリアを持つシンガーソングライター/プロデューサーJiNと様々なクリエイター陣が参加し、TAEYOの幅広い音楽性を支えている。


この記事ではアルバム『Pale Blue Dot』の楽曲をレビューし、TAEYOとその楽曲を彩るアーティスト陣の魅力を紐解いていきたい。




***


01. ATTACK! feat. Ryugo Ishida (prod. starRo)


メジャーデビューアルバムのイントロダクションなので、幅広い層に受け入れられる、良くも悪くも丸くなったサウンドを予想するかもしれない。TAEYOのようにポップな作風を器用にこなせるアーティストなら尚更だ。


このアルバムはそんな予想を綺麗さっぱり裏切って、ドラッギーで不穏なシンセサイザーの轟音とともに幕を開ける。


スライドする808に淡々と刻まれるハイハットはトラップ以降のサウンドではありつつも、複雑なリムやパーカッションのパターンがトリッキーでトライバルなリズムを作り出す。グラミーノミネート・プロデューサーstarRoによる先鋭的で尖りきったビートだ。


これまでの楽曲と比較しても複雑なビートだが、TAEYOは飄々と、そしていつになく攻撃的にグルーヴする。出だしから「俺が通る道未来 敵いない試合」と圧勝宣言し、挑発的なリリックと洗練されたフローで、スタイリッシュにオラつく。


フィーチャリングのゆるふわギャングRyugo Ishidaもシーンでは圧倒的な独自路線をいくラッパー。このビートをなんなくライドし、いつも通りの超然とした余裕のフローを披露する。


タイトル通りのわかりやすい攻撃体制で、丸くなる気はなさそうだ。


02. LET’S GET IT!! (prod. starRo)


スピード感に溢れた1曲目から続くこの曲でも、さらに飛ばし攻めていく。まさかのレイヴィーなプログレッシブ・ハウス〜トランステイストな楽曲となっており、こちらもstarRoによるプロデュース。


前半でトランシーに引っ張り、ブレイクでは開放感あふれるシンセパッドとともにTAEYOによる美しいコーラスに包み込まれる展開。この曲は爆音で体を揺らしながら聴くのがおすすめ。フロア映え十分な迫力のある楽曲であり、1曲目から3曲目へのブリッジとしても機能している。


03. NEW SEASON (prod. CELSIOR COUPE)


幻想的なボイスサンプルとリバーブの海につかるようなギターで幕を開け、TAEYOならではのメロディアスなトラップ・ソウルがきた!と思わせておいて2ステップビートへと怒涛の展開を見せる。このアルバムの中でも注目の1曲と言えるだろう。


振り幅の大きさを見せるビートはこれまでもTAEYOの楽曲に多く携わるCELSIOR COUPEによるものだ。





04. NOBODY (prod. CELSIOR COUPE)


先行配信されているこの楽曲はまさにTAEYOの得意とするメロディアスなトラップ・ソウル。彼が築き上げたメロディアスなフローと切ないギターリフは、どうやっても最強のコンビネーション。完全とも思えるずば抜けた完成度をみせている。


こちらもCELSIOR COUPEによるプロデュースで、サビ後の間奏でベースリフを聴かせるなど、ワンループでも飽きさせないトラックだ。


アンダーグラウンド・シーンでデビューして以来磨き続けた、メロディアスなフロー、飾り気のない言葉をセンス良く紡ぎ合わせて生まれるリリカルな世界もTAEYOらしい。



05. ANRI (prod. Droittte)


TAEYOの気だるくセクシーなフローとどこか危険な雰囲気の漂うリリックに、ソフトな音色をディストーションで歪ませたLo-fiなシンセサイザーがマッチする、どこか退廃的でありつつメロディアスな1曲。


ドラムにヒューマンビートボックスが重なることで立体感のあるサウンドに仕上がっている。ビートはMVのプロデュースも手がける多彩なクリエイターDroittteによるものだ。


06. HOOD (prod. JiN)


タイトル通りのハードなフッド・ラップソング。落ち着いたBPMのトラップビートにTAEYOのハードな中に哀愁も携えたフローがどハマり。


フックでは「要らないgucciとかダイヤもno more ダル着でフライト仲間とやることやる本当」と、変わらないフッドでのリアルを飾らずに綴る。


やたらと完成度の高いビートはAIやL-VOKALなどの楽曲も手がけ、R&B〜HIP HOPシーンで幅広く活躍するシンガーソングライターJiNがプロデュース。


07. RIDE (prod. JiN)


レイドバックなギターループの心地よいラテンポップテイストの一曲。ラテンポップというと陽気なイメージかもしれないが、R&Bやヒップホップと融合して進化しており、メロディやビートもアーバンで洗練された楽曲が多い。


USのポップチャートにおいては多くのアーティストがこういったテイストの楽曲を展開しており、Justin Bieberをはじめとするポップスターも取り入れている。


歌唱力、リズム感の良さ、そして色気の必要なジャンルということでTAEYOがやってハマらないワケがない。というかドハマりしている。


08. ALL FOR YOU (prod. CELSIOR COUPE)


TAEYOの真骨頂とも言える最高にメロディアスでチルな1曲。ドラムの音色ひとつひとつまでこだわり抜かれたチル・トラップビートはまたまたCELSIOR COUPEによるもの。ホワッとした柔らかい音色のシンセと、ゆるやかにスライドする808がATフィールドを中和する。


TAEYOのメロディアスなフロウを聴いていると、日常のどんな風景も優しくみえてくるような気がしてくる。





09. TOO MANY STARS feat. ShowyRENZO (prod. PULP K)


心地よいギターリフに808の重低音が響き渡る、トレンドをおさえた王道的トラップビート。その上に、まるでPolo GのメロディックなラップにJustin Bieberの歌声を掛け合わせたようなTAEYOのラップが乗る、グローバルクオリティな1曲。


フィーチャリングのShowyRENZOによる、間を聴かせるかのようなリズミカルなフロウはTAEYOのバースと好対照をなしている。


プロデュースは Lil Yachtyなどの作品にもクレジットされ、ループメーカー(ギターやシンセなどビートのウワモノ専門プロデューサー)としてグローバルに活躍するPULP K。


10. KEEP IT COMING feat. Masato Hayashi (prod. starRo)


本アルバム中で最も危険度の高い1曲。starRoによる未来的でアグレッシブなシンセサイザーに、うねるようなサブベースが低域を埋め尽くす。


フィーチャリングには今年に入りA.Y.Aの楽曲「Ave Maria」への参加や、自身のシングル 「血と汗」をリリースして勢いに乗るHayashi Masato(ex:Pablo Blasta)。聴き取れないほどにラフになったかと思うと、突如めちゃくちゃキレのある早口でまくし立てるなど、緩急の激しいフローでそのスキルを見せつける。


ドラッギーなトラックに呼応するTAEYOのリリックは幻覚症状かのよう。「Open瞳孔 ギリ素面じゃない」との言葉通り、スレスレの感覚のまま突き抜ける。


11. CHO FIRE feat. JNKMN (prod. ES-PLANT & R.I.K (SHIMIZU BEATS))


vividboooy、Yo-Seaなども手がけるビートメイカー兄弟ES-PLANT & R.I.K をプロデュースに迎え、フィーチャリングには日本を代表するヒップホップ・クルーYENTOWNを率いるJNKMNと、どこからどう見ても隙のないメンツが、クラブ映え確実なドリル・ビートの上でタイトル通り超ファイアする。


ドリルマナーでブンブンとスライドしまくる808にJNKMNのSMOKE ALL DAYなラップが抜群の安定感。そこにTAEYOのスムースなフックを合わせることで、ドリルでも重苦しくなりすぎないJPドリルとでもいうべき開放感のある曲に仕上がっている。


ヒップホップシーンで重要なトレンドとなっているドリルビート上での「このゲーム終わりない俺ゲーム下りない」というラインは、自身が身を置いているのは変わらずヒップホップゲームの盤上だと宣言しているかのようだ。


12. REALIZE feat. AJAH (prod. starRo)


今回のstarRoとの楽曲はどれも最高の出来だが、この「REALIZE」は最も美しくアーティスト同士の才能が融合した結果と言えるだろう。


starRo流の極上トラップソウルビートはここまでやっていいのかと思うほど歪みきったボーカルサンプルをハッとするようなタイミングでカットしており、イントロから一気に引き込まれる。


メロディアスではあるものの実験的なビートに、TAEYOのバースがシンクロ率100%で融合していく。圧倒的メロディセンスで物語が展開するかのようなフローは1小節も聴き逃せない。LEXやralphの作品にも参加する次世代シンガーAJAHのボーカル力も異常に高く、圧巻の歌唱力とリズム感を見せる。


グローバルクラスのオリジナリティーと先進的な音楽性を兼ね備えた次世代R&B/トラップソウルといえるだろう。


13. RUNNIN’ (prod. CELSIOR COUPE)


アルバムのラストにふさわしい、全てを吹っ切るような疾走感溢れるドラムンベース。

『ORANGE』から約1年ぶりの新作として、この楽曲の先行配信リリースを聴いた多くのファンが「これだからTAEYOはやめられない!」と叫んだだろう。


プロデュースはおなじみのCELSIOR COUPEで、イントロの焦燥感を掻き立てるようなシンセボイスのループが響き渡った時点で、これは最高潮に盛り上がる曲だと思わせるキャッチーさがあるトラックになっている。


ライブやクラブでこの曲がかかったらブチ上がりは確実なので、アルバムでしっかり復習しておこう。



***


本アルバム『Pale Blue Dot』では真骨頂とも言えるメロディアスでスムースな楽曲から、超先鋭的な曲やクラブフロアを沸かせるコアな楽曲まで、期待を大きく上回るTAEYOにしかできないヒップホップが詰まっている。


音楽的な自由度の高い日本のヒップホップシーンだが、その中でもこのアルバムは随一の振り幅を見せているだろう。


とにかく待ちに待ったフルアルバム。いち早くチェックしてほしい。



【関連記事】

レビュー|Taeyoung BoyからTAEYOへ。EP『ORANGE』が示すアーティストとしての普遍性




【リリース情報】




TAEYO メジャー1stアルバム『Pale Blue Dot』


01. ATTACK! feat. Ryugo Ishida (prod. starRo)

02. LET'S GET IT!! (prod. starRo)

03. NEW SEASON (prod. CELSIOR COUPE)

04. NOBODY (prod. CELSIOR COUPE)

05. ANRI (prod. Droittte)

06. HOOD (prod. JiN)

07. RIDE (prod. JiN)

08. ALL FOR YOU (prod. CELSIOR COUPE)

09. TOO MANY STARS feat. ShowyRENZO (prod. PULP K)

10. KEEP IT COMING feat. Masato Hayashi (prod. starRo)

11. CHO FIRE feat. JNKMN (prod. ES-PLANT&R.I.K (SHIMIZU BEATS))

12. REALIZE feat. AJAH (prod. starRo)

13. RUNNIN' (prod. CELSIOR COUPE)


発売日: 2021年9月15日(水)

商品形態: CD / 配信 PCCA.06059 / 税込3,520円


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TAEYO


■公式サイト

https://taeyo.jp


■各DSPアーティストリンク

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written by Yui Tamura





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