Sevdalizaが表現したエレクトロニックミュージックの芸術性「Red Bull Music Festival Tokyo 2019」レポート

4月8日に青山・Spiral Hallにて行われたSevdaliza待望の初来日では芸術性の高いパフォーマンスが披露された。
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2019.04.11 04:00

4月8日に幕を開けたRed Bull Music Festival Tokyo 2019。その初日を飾る「SEVDALIZA'S THE GREAT HOPE DESIGN」では、エレクトロニックミュージックだけでなくファッションシーンからも注目を集める気鋭のアーティストSevdaliza(セブダリザ)が出演し、集まった観客を魅了した。



音楽、ファッションシーンからも注目されるSevdaliza、待望の初来日公演を観た! 


Sevdalizaはイラン出身で現在はオランダを拠点に活動するシンガーソングライター/プロデューサー。2016年のRed Bull Music Academyの卒業生でもある彼女の音楽性はエレクトロニック、パンク、トリップホップ、グライム、アバンギャルドなど多様なジャンルで構成されている。特にエクスペリメンタルでありながらもポップスとして成立させている点においては、トリップホップのレジェンドPortis HeadやポストR&Bを代表するFKA Twings、さらにはBjörkといった大物アーティストと比較されることも多い。また近年の音楽シーンにおける芸術性が高いアヴァンギャルドなポップスという点では、奇妙かつ奇抜ながらも独特の美意識を表現するArcaにも共通項を見出せると評する音楽評論家も国内外に少ない。  


このように基本情報をふりかえるだけでも会場に足を運ぶ前から当日のライヴは何かとてつもなくアーティーで独創的なものになることが予想できたが、実際にそのステージを見ると独創的で芸術性が高いのはもちろんのこと、それに加えて神々しくもあり、なにか高尚な儀式を観ているような気分にさせられた。 



 (C)  Keisuke Kato/Red Bull Content Pool


日本人デザイナーによる衣装を纏い登場したSevdaliza 


20時を過ぎ、いよいよステージの幕が上がる。ステージにはドラム、チェロ、シンセ、マニピュレーター、ダンサー、そしてビデオグラファーがサポートアクトとして登場。序盤はステージの中央に設置された2つのスクリーンを用いて、彼女のパフォーマンスが映像として観客席に届けられるという演出が行われた。


そしてついに、奇妙な造形の衣装を身に纏ったSevdalizaがステージに登場。Björkも注目する日本人デザイナー、津野青嵐の3Dペンドレスを彷彿とさせる衣装を見事に着こなしている(実際にその予想は的中しており、ライヴ後にデザイナー本人がTwitterで当日の衣装について言及していた)。暗いホールの中スポットライトを浴びながら、独特のいでたちでコンテンポラリーを踊る彼女の姿は、非常に幻想的だった。 



(C) Keisuke Kato/Red Bull Content Pool


MVの登場人物のような気分にさせられた代表曲「Human」 


ライヴでは代表曲「Human」も披露。トラップのフロウも取り入れられた同曲のパフォーマンスではリズムにあわせて機械的なロボットダンスも取り入れらていたのが印象的だった。MVではどことなく緊張しつつも恍惚の表情を浮かべながら彼女のパフォーマンスを眺める男性たちの姿が表現されていたが、会場にいた観客は皆、その気分を味わっていたのではないだろうか?


時にエキゾチックな中東風のメロディーが響くSevdalizaの音楽。しかし、そこには近年のベースミュージック以降のアプローチが取り入れられていることを改めて会場に響く音を聴いて確認できた。芸術性が高い作り込まれたステージを観ているとそれだけに目が行きがちだ。だが、グライム、トリップホップ云々といったようにドープなエレクトリックミュージックを下敷きにしているだけあって低音の表現の仕方はとても厚みのあるものだったように思える。 


とはいえSevdalizaのステージは、何回かのステージ衣装チェンジやスクリーンを使った映像表現、ダンサーとの共演という演出も含めて、いわゆるポピュラー音楽のライヴでありながらも舞台芸術を彷彿とさせる要素をそこかしこに感じた。何か”秘密のショー”を観ているような気分になったのは筆者だけではないだろう。時間を追うごとにステージ上の彼女の姿は神々しさが増していき、時に神話を元にした戯曲を観ているようにも感じた。 



(C) Keisuke Kato/Red Bull Content Pool


エレクトリックミュージックが持つ芸術的可能性を実感したパフォーマンス 


音楽ファンとして、芸術性溢れるステージをエレクトリックミュージックというフォーマットを通して表現していることに非常に感銘を受けた。いわゆる“芸術性”とは離れた場所にあると捉えられがちなダンスミュージックが持つ、アーティスティックな可能性にも改めて触れられたように感じる。またステージでは彼女のシンガーという面も大いに機能していたように思える。その点においてはFKA Twingsと比較されるのは決して間違いではなく、今後も世界のアヴァンポップを代表し、シーンの未来を切り開いていくアーティストだと実感した。 


今月、Red Bull Music Academyが今年10月31日をもって幕を閉じることが発表された。それは確かに非常に残念なことではあるが、その精神はSevdalizaのようなRed Bullに見出されたアーティストたちに今後も継承されていくことだろう。また、今後のRed Bull Music Festival Tokyo 2019のイベントの数々を観れば、過去20年以上にわたってRed Bullが築いてきた音楽に対する真摯な姿勢は健在であることが実感できるはずだ。 


Written by Jun Fukunaga 


Photo: (C) Yasuharu Sasaki/Red Bull Content Pool


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