インディーレーベルのボスに聞く音楽業界でサヴァイヴする秘訣とは?Peanut Butter Wolf インタビュー

Stones Throwの創始者でもあり、無類のレコードディガーでも知られる彼にDJプレイの醍醐味やレーベル運営、新人アーティスト発掘秘話などを聞いた
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2018.07.24 10:00

ヒップホップのレジェンドJ DillaやMadlibそしてMF Doom(エムエフ ドゥーム)など、時代を席巻したアーティストを輩出したインディーレーベルStones Throw。その創始者でもあり、無類のレコードディガーでも知られるPeanut Butter Wolf。2018年の初夏にレーベルのニュースターSudan Archivesと共に来日した際に、幸運にもblock.fmのスタジオにも足を運んでくれた、DJプレイの醍醐味やレーベル運営、新人アーティスト発掘秘話など、実力と経験に裏打ちされたキャリアのエピソードを語ってくれた。


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店員さんも知らないような曲を持っていくものだから、あっちも困ってしまってさ。「10歳の子供がこんな曲をどうやって知っているんだ」とか言われたりした覚えがあるよ


- これまでに何度も来日してますが、日本で思い出に残ったツアーや出来事はありますか??


Peanut Butter Wolf (以下PBW): 初めて日本に来たのが1998, 1999年頃だったからもう20年くらい来ているね。日本に来ると必ず思い出に残る出来事があるんだけど。一度クラブに行った時にDJ Spinnaがスティービー・ワンダーの曲をかけていて、何でか分からないんだけど俺が日本にいる事と、個人的に大好きな音楽に皆がノッていることがすごく感動的だったんだ。なんて説明したら良いか分からないんだけど、とにかく感動したよ。


- 今回はVisionでのStones Throwのショーケース以外にRDCでMuroとの7インチでのBtoBを行いました。世界で一番7インチのコレクションを持ってるとも言われてるあなたにとって、7インチを掘り出すことやプレイすることの醍醐味はなんですか?


PBW: 7インチでしか出なかった曲がいっぱいあったんだ。俺がレコードを買い始めた時はまだ子供で、大きいやつは買えなかったんだ。7インチの小さいやつは値段も安かったからね、確か1ドルとかだった。だから45’sを買うようになったんだけど。ラジオを聴く度に好きな曲をメモってレコード屋に持って行っていたんだけど、店員さんも知らないような曲を持っていくものだから、あっちも困ってしまってさ。「10歳の子供がこんな曲をどうやって知っているんだ」とか言われたりした覚えがあるよ。もう少し年齢が上がった時、そこで働いてくれって言われて働いたんだ。


それからB面も忘れてはいけないね。A面の方がヒット曲とかはいっぱい入っているけど、B面もかなり面白い音楽がのっているんだよ。


- 一緒に来日したSudan Archivesについて伺いたいのですが、彼女との出会い、そしてStones  Throwで契約するに至った経緯を教えてください。特にStones Throwでサインできるアーティストは滅多に少ない中で新人とも言える彼女に注目した理由はなんでしょうか?


PBW: Sudan Archivesを初めて聞いたのは、Stones ThrowのサブレーベルLeaving Recordsのマシューデビッドの紹介だったんだ。たまに新しいアーティストの音楽を聴かせてくれるんだけど、Sudanの音楽を聞いた瞬間、プロデューサー魂に火が着いたんだ。最初、彼は僕たちに彼女のことを任せるのを躊躇していたみたいなんだけど、何とか説得したんだ!Sudanの楽曲にマシューはミックスとかエンジニアリングに関して携わっているんだよ。








Flying Lotusの音楽を初めて聴いた時はハッキリ言って全然良いと思わなかった。でも、アーティストがどう進化していくかは分からないから諦めないことが大切


- 素晴らしいアーティストを発掘する秘訣はなんですか?


PBW: 自分の耳を疑わず、自信を持つことだね。自分が何が好きだかを分かっているから、あまり考えすぎず音楽を聴くといいね。好きな曲やアーティストがいて、すぐさまプロデュースしたいと思ったら、どうにかして出来るようにする。アーティストに会ってみて、自分とヴァイブするかも確かめた方がいいね。結局は、アーティストとの関係も良くないと良い音楽は出来ないからね。Sudanに関しては、そういう意味では良い関係だから良いものが出来るんだ。


- 凄まじい量のデモテープが送られてくると思うのですが、その中からどう良い曲を選出するのですか?


PBW: この間、10年以上前から集めていたデモテープがぎっしり詰まった箱を見つけて、聴いてみたんだ。世の中には良い音楽が溢れている。出来るだけたくさんのデモテープを聞いて、Stones Throwに最もふさわしい音楽を選出している訳さ。


- アーティストの選出方法は時代と共に変化したと思いますか?例えば、昔のデモテープを聞いて、「サインしておけば良かったな」と思うことはありますか?


PBW: Badbadnotgoodとか、Flying Lotusの音楽を初めて聴いた時はハッキリ言って全然良いと思わなかった。でも、アーティストがどう進化していくかは分からないから諦めないことが大切。Flying Lotusに関しては、ウチでインターンをやっていたんだよ。だから、本当に何が起こるか分からないよね。だから俺はFlying Lotusの事を嬉しく思っている。一緒に働きたいアーティストを選んで仕事が出来るということは非常に贅沢なことだ。


- ビデオコレクションを駆使したVideo DJも随分と定着してきましたね。最初に始めた頃から映像や音楽技術も進化した中で、自分のDJも進歩したと感じる部分はありますか?


PBW: 出来るだけヒット曲を流さないように気をつけているよ。でも、お客さんはA Tribe Called Questを聞きたいという事も承知しているから、かけるけどね。また、酔っ払うとヒット曲をかけたくなっちゃうから出来るだけ飲まないようにしているよ。。。結局飲んじゃうんだけどね!まあでも、クラブでかけるような曲ばかりかけて良い場合もあるんだ。例えば、この番組(MIX BLOCK)とか。ラジオはクラブとは違ってお客さんの事をそこまで気にしなくて良いしね。

     



- インターネットによる音楽革命をどう駆使して新しい音楽を探していますか?


PBW: もちろん。SpotifyやSoundcloudもあるけど、インスタとかでピックアップする場合や、昔ながらの方法でライブで聴く場合もあるよ。


- 自身が拠点に置いているLAなどのベイ・エリアのヒップホップシーンに関してどう思いますか?


PBW: ベイ・エリアか。。。正直あまり分からないな。俺がヒップホップにハマり始めた頃は、特定のサウンドがあって、それが好きだったんだけど。。。今はトラップ系のサウンドが好きなんだよね。俺の世代の人は絶対同意してくれないと思うけど。でもまあ、今の俺は音楽だったら何でも好きさ。Stones Throw始めた時はブームバップにハマっていたんだけど、今はそうでもないかな。


- 最近のアジアの音楽シーンとはどう接触していますか?


PBW: 俺はただ単に色々な場所に行けることが嬉しいよ。日本は前から好きだったし、いつでも来たいと思っていたけど最近は中国や韓国からも声がかかって来たね。5年前は考えられなかったけど、非常に嬉しいことだ。


- 地域ごとのサウンドは未だに存在していると思いますか?


PBW: インターネットの素晴らしい所は場所を選ばず情報を拡散してくれるという事だね。おかげさまでブラジルや南アフリカのサウンドも分かる。ありがたいことだね。今って地域ごとのサウンドっていうものが無くなって来ているんだ。例えば、トラップは元々アトランタ発祥だけど、今はニューヨークのアーティストでもやっている人がいるし、世界にも広まっているよね。


俺が音楽を作り始めた時はニューヨークサウンドが流行っていて、それが好きで始めたんだ。もう少し時間が経ってからベイ・エリア(ウェスト・コースト)サウンドが出て来て、あまり好きじゃ無かったんだけどギャングスタラップが流行り始めたよね。でもやっぱり Schoolly DとかJust-Iceのハードコアなサウンドが好きだったんだ。ベイにニューヨークサウンドを持って行ったのは俺らで、Cypress Hillが大ヒットした事をキッカケにこれはいけると思ったんだ。でも、最近は90sウェスト・コーストラップにハマっていて、レコードを買いあさっているんだ。E-40とか、そういった人達だね。面白い事に、E-40の息子がStones Throwに音楽を売り込みに来たんだ。彼はお父さんとは違ってギャングスタラップには興味が無く、むしろウチのJames Pantsの音楽が好きでウチのことを知ったらしいんだ(笑)。


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Stones Throw Records

Peanut Butter Wolf (@pbwolf)


written by M.A



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