モーリー・ロバートソン「“肯定”と“開き直り”は別物」戦後の欧米コンプレックスから突き抜けた「暗黒舞踏」を語る

モーリー・ロバートソンが暗黒舞踏の革新性を例に、「#MeToo」の時代に人々がどう変化すべきかを語る。
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2019.02.19 08:30

毎週木曜日夜9時、block.fmで生配信中される、国際ジャーナリストでDJのモーリー・ロバートソンさんの番組『Morley Robertson Show』。今回の番組では「#MeToo」の時代に人々はどう変わっていくべきか? 土方巽(ひじかた たつみ)・大野一雄(おおの かずお)の暗黒舞踏を例に出しながら話していました。



毎週モーリー・ロバートソンのラジオが聴ける番組は、こちらをチェック。


「Morley Robertson Show」


生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30


モーリー:こんばんは。モーリー・ロバートソンです。東京、関東方面は今日はあったかい春先を思わせる陽気だったんですけども、また今夜から急激に冷たくなっていくという予報が出ております。地球の温暖化に伴ってですね、北極の渦みたいなもの、冷たい寒気団があっちこっちに分散してしまい、南極の下の方までごっそり溶けてしまって、海面も上がって。「わー、人類破滅だ!」みたいな。まあ、待ったなしで人類が自業自得で悪いことしたことを神様が、ガイアがパニッシュメントに向かってる状態なんで。


まあ、そのギロチンが落ちてくるわずか1秒の間に走馬灯のように自分の人生の楽しさを全部生きるっていう。そういう気合いで1日1日を生きていけたらいいな、なんて思っております。そこで前よりも輪をかけてですね、自分の気持ち良さを追求する。五感の気持ち良さを追求したいという、そういう欲求がシャープになっていく今日この頃です。


そうね。世界を見渡してみるとまあ、相変わらずの有様ですよ。何も先週と変わっていないですね。言うことはありません。トランプさんはトランプさん。日本は日本。中国は中国です。いろんなことが起きてます。で、要は私たちの細胞レベルでは変化っていうのがいつも起きていて。ねえ。100歳過ぎまで踊っていた大野一雄っていう暗黒舞踏の人がいるんですけど。白塗りのね、暗黒舞踏の創始者ですよね。彼と土方巽っていうダンサーが昭和の時代に……戦後、日本高度経済成長に入って、消費社会に向かうぐらいのタイミングかな?


その時に日本の町から、たぶん夜の灯なんかもあったりして、だんだんと影が消えていった。で、影が消えてくだけじゃなくて、たとえば見世物小屋とか、そういうものがやっぱり、もっときれいきれいなものに変わった。そうね。ハリウッド化していったのかな? アメリカナイズしていったとも言えますよね。その当時の日本は。その中で、ちょっと欧米に……「欧米」って言っても「アメリカ」ですけどもね。戦後のその時代っていうのは。


アメリカにコンプレックスを持って、「アメリカのような生活水準になりたい!」って言って、それが都会的で。それで田舎っぽい日本を恥ずかしく思っている世代なんかが出てきたわけですよ。豊かになってくると、戦後の闇市から抜けて、一生懸命じゃなくなって。少し余裕が出てくると逆に自分たちがみっともない、みすぼらしい存在なんだっていう風に、妙なコンプレックスみたいなものを持った時期っていうのがとっても強くあったんですね。


それで、土方巽さんの回想録の中身を私、又聞きしたことあるんですけども。彼はですね、戦時中か戦前にナチスの若者の鼓笛隊だったかな? なんかマーチングバンドみたいなものが日本中の津々浦々を日独の同盟があったので。ヒットラー・ユーゲント(ヒットラーの若者たち)って言う、青少年の美少年が集められたチームがいたんですよ。それが、ある種のジャニーズ効果で日本の津々浦々をあちこちデモンストレーションした時に土方はそれを子供の頃に見ていたらしいんですね。





それでいわゆるブロンドに青い目、碧眼の美少年、美青年たちがそこで笛を吹いり太鼓を叩いたりしてナチスのプロパガンダをやるわけ。で、彼はそれを見て、その地域の人たちはみんなそうだった。東北だったと思います。もうね、「こんなお人形さんのように美しい白人、ヨーロッパ人に自分たちは到底なれない。自分たちはもう色が浅黒いし、背は低いし、歩く時は田舎もんの歩き方するし。あんな洗練されたものには到底なれない。でも、なりたい!」っていう憧れが強かったらしいんですね。


で、要はそれを見て……子供の頃にナチスドイツのプロパガンダである少年部隊が日本を訪問して、日本中のあちこちを歩いて回ったと。で、それを彼の村で見た時に、強烈な白人への憧れが生まれたんだけども、戦後ダンスをするようになって、バレエだかモダンバレエみたいなものを目指したのかな? 当初は。だけど、それをやっているうちにもう体型が違うんだから、背丈も体の縮尺や寸法も違うお人形さんみたいな人たちがバレエを踊っているのに、何で自分が合わせるんだ?っていうことである時、パーン!って反対方向に行って。


なんかもうみっともない日本人、みっともない東洋の田舎者のホームレスみたいな歩き方でいいんだ! みたいな。で、それをダンスにしたら革命が起きたんですね。そこでまあ、暗黒舞踏が生まれたらしいんですけども。それと、別途大野さんの場合はたしかアルヘンチーナというダンサーが日本に公演で来たんです。で、その人が当時、フラメンコの女王だったのかな? 当時。で、それに心を奪われて。それで戦後、自分も踊るようになったんだったっけな?


とにかく、戦時中とか戦前に強烈な若々しい頃の体験をしたのが、その憧れにもなったんだけども、ヨーロッパやそのアメリカ文化みたいなものに日本が心酔していってね、「自分たちが恥ずかしい。早く西洋化しなきゃ」みたいな時代に逆行した人たちがいたんですよ。暗黒舞踏だね。それで最近、それをよく思うことがあって。まあ、あるがままの自分を肯定するっていうのは「開き直り」じゃないんですよ。開き直りっていうのは「どうせ俺は負け組だよ。どうせ俺は西洋人なんかになれねえよ」みたいな。


たとえば「#MeToo」とかでね、それもちょっとこの前感じたのは、その「#MeToo」がだんだんと浸透してくると、日本社会で女性たちは「#MeToo」が何を意味するのかってのいうのはただ別に「セクハラ禁止」とか、あるいはその「コメディアンのセクハラネタ禁止」とか、そういう検閲の問題ではないわけですよね。そういう狭い解釈のフェミニズムじゃなくて、そもそも社会の構造の中で男性が当たり前のように与えられている様々な特権を女性たちが全く与えられなくて当たり前だった時代が長すぎて、それを50:50にしたら、いままで我慢し続けてきた女性ってものすごく競争力がついて、逆に男の中で落ちてくやつが多いんじゃない?っていう、そういうことも突きつけられてるわけですよ。


で、それをうっすらとわかってか、わからずか、「#MeToo」が来た時になんて言うか、「どうせ俺はそんなの、わからないよ」みたいに。それかどこかで「どうせ欧米かぶれなんだろ? 俺はどうせ欧米なんかにはなれないんだよ」みたいな開き直り、コンプレックス。自分が劣等感、被害者。で、その殻に閉じこもることで変わるまいとするという、ひとつの心的なストラテジーがあるわけだ。


なんだけど、暗黒舞踏がやったのはもっとワンステップ・ファーザー(one step further)であって。次のステップまで行っていて。開き直りじゃないんですよ。「どうせ俺たち東洋人は背が低くてちんちくりんで田舎もんだよ」っていうことじゃなくて、本来自分たちが持っていたもの、その土着の力だよね。地面からシャーマニズムというか、なんか暗い鬼、悪魔も含めて道祖神のようなものが体を突き抜けて出てくるわけじゃない? 農業の中で。


そういう四季の流れとか気の流れ、あるいはアジア圏で共有してきたいろんなものがあるわけですよ。道教であるとか。それをね、体を通すような動き。そこに西洋式の1、2、3、4……っていうミーターとかセオリーですよね。音楽理論にも繋がるような舞踏の理論はなくって、むしろ無意識に突き動かされるままに動くという、ノンメソッドなメソッドを編み出したわけですよね。それが非常に当時のモダンバレエとか現代舞踊の中では舞踏(Butoh)っていうのは大変な衝撃を世界に与える結果になったわけです。



だから、自分のあるがままを肯定して、その本当に奥の細胞レベルから出てくるもの。そうだ。今日、この話に急にスイッチオンしたのは細胞の話をしたからなんですよ。だから、世の中は変わらない。トランプも変わらないし、中国も韓国も、なんかやってる。ツイッターを見ると相変わらず、また誰か有名な人がやらかして、残念なことをやり、それをみんな評論して上から、斜め上から見て。あるいは、相変わらずの右と左が戦っているんですけども。


そういうのは相変わらずなんですよ。で、それはカルマというか、もう自分をリサイクルするんで、何も変わらない世の中なの。ところが、あなたは変われるんですよ。あなたの世界は細胞のレベルで身を任せて気持ちよさ、あるいは自分の中にある何とも言えない気持ち悪さでもいいや。「ゲッ!」って吐きたくなるような。それでもいいんだけど、そこを出してあげる。


Come Out And Playですね。誰も見てない時に引き出しをそっと開けて、おもちゃ箱から「出てきておいで」って言った時に出てくるその色とりどりのキメラ、オバケ。オバケがおもちゃ箱をひっくり返し……。そういう思いをできればね、細胞が開放されて。「Butoh Dance」みたいに次に行けるんじゃないかな?


ということで、今夜もお付き合いください。1曲目はMUST DIE!の『I DON'T WANT 2 LIVE』。僕は生きたい。でも、曲名は『I DON'T WANT 2 LIVE』。


MUST DIE!『I DON'T WANT 2 LIVE』




番組情報

 「Morley Robertson Show」

https://block.fm/radios/28

生配信:毎週木曜夜 21:00 - 22:30


モーリーのアンテナがキャッチする波動は、ひと味違う。あなた自身が住んでいる「不思議の国」を味わってほしい。気が付いたら、地球防衛軍に入隊していたとしても、不思議ではない。ここでは毎日が入隊記念日。いろいろな旅をする人のための時間。いっとき、モーリーの視点から世界をのぞいてみてください。



written by みやーんZZ



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