ゲームの中で格差や差別のないフェスを。Minecraftで開催された「FIRE FESTIVAL」主催者にインタビュー

1月12日、13日Minecraft上で開催された「FIRE FESTIVAL」の仕掛け人にインタビューを敢行。ゲームと音楽とコミュニティを繋ぐ“フェス2.0”の魅力を探る。
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2019.04.12 03:00

Minecraft上で開催されたバーチャルフェス「FIRE FESTIVAL」が注目を集めている。イベントを主催したMax Schrampと企画を手がけ、出演を果たしたFoxskyにblock.fmが独自でメールインタビューを敢行した。




世界中が熱狂したバーチャルフェス「FIRE FESTIVAL」の魅力にフォーカス。主催・出演者にインタビュー


“マイクラ”の愛称で長年親しまれるオンラインゲーム『Minecraft(マインクラフト)』は2018年時点でプラットフォーム販売が1億4000万を超える人気タイトルだ。


簡単にマイクラのゲームシステムを説明すると、ゲーム全体が立方体ブロックで構築されており、プレイヤーはこのブロックパーツを自由に使い、世界を構築していくというもの。


立方体のブロックを使って無限のクリエイションがオンライン上で楽しめるというのが人気の秘密である。このシステムを使い、音楽フェスと結びつけたイベント「FIRE FESTIVAL」が2019年初頭にマイクラ上で大規模に開催され注目を集めた。


開催されたのは今年の1月。2日間にわたり行われたこのフェスは商業目的ではなく、収益が全額寄付されるというのがポイントだ。


「FIRE FESTIVAL」開催によって出た収益は世界138ヵ国、約10万人のユースが参加している若者の自殺防止や危機管理を行う団体『The Trevor Project』に寄付された。『The Trevor Project』はLGBTQのサポートを行っているため、「FIRE FESTIVAL」自体もジェンダーや年齢を問わず無料で誰でも参加できるボーダレスな仕組みを採用して好評を得ている。収支報告によると、コストを差し引いて出た利益は約1750ドル、日本円にして約20万円を全額寄付したことになる。


block.fmでは、「FIRE FESTIVAL」と、その前身となった人気音楽フェスCOACHELLA(コーチェラ)のバーチャル版、「COALCHELLA(コールチェラ)」フェスティバルのオーガナイザーMax Schrampと、「FIRE FESTIVAL」に出演したアーティストFoxsky(フォックスシー)にメールインタビューを敢行。音楽とゲームを結びつけ、音楽フェスの在り方をアップデートした「FIRE FESTIVAL」について詳しく聞いた。




「誰に対しても平等であることにこだわって作ったフェスなんだ。」


【インタビュー1:主催者Max(マックス)】


—バーチャル空間でフェスをやろうと思ったきっかけや理由を教えてください。


Max Schramp(以下Max):小さい頃からMinecraftで遊んでいたのがきっかけだね。オンライン上のイベント「spf420」(※特定のURLにアクセスすることで参加できるオンライン上のヴェイパーウェイヴフェスティバル)やオンラインラジオの「datafruits」のイベントにも参加したんだけど、その影響も大きかった。


—「FIRE FESTIVAL」を開催するにあたりにこだわった点や苦労した点は? 


Max:主に2点ある。しっかりとしたコンセプトを作りたかったことと、誰に対しても平等であることだ。1000人から1万人のフォロワーを持ってるアーティストが出演してくれたんだけど、全アーティストを平等に扱い、フライヤーに載せる名前の大きさやタイムテーブルを意識して作ったんだ。あとは、このイベントの世界ではいろんな人が集まるから、お互いにネットで繋がってやりとりすることも重要だったね。


—現実空間のフェスとの共通点、またその違いはどんなところでしょう? 


Max:現実との共通点は、やっぱりMinecraft側のサーバーが最初の数時間持たなかったことかな(笑)。違いは、各イベントに300%のスケールで人が集まることだよ。


—バーチャルリアリティーでイベントをやるメリットと、この企画の主催者にとってのメリットを教えてください。


Max:性別、年代、職業を問わず誰でも参加できることがとてもプラスなポイントだった。インターネットにアクセスできれば参加できるからね!  僕にとってのハイライトは、何ヶ月も頑張って企画してきたイベントが現実になったこと。そして何千人もの人が楽しんでくれた。それが何よりも誇らしいよ。


—最後にblock.fmと読者にメッセージをお願いします 


Max:僕たちのサイト「minecraft.xxx」をチェックしてね! 『The Trevor Project』にもドネーションしてもらえると嬉しいよ!   


minecraft.xxx URL:https://www.openpit.net/

『The Trevor Project』Twitter:https://twitter.com/TrevorProject






「LGBTやクイアの人も安心して参加できる、包括的なイベントだったと思う。」


【インタビュー2:企画・出演 Foxsky】


—「FIRE FESTIVAL」企画を手がけ、出演も果たしたアーティストとして、他のイベントとはどのような違いがありましたか?  


Foxsky:オーディエンスがフェスに参加するにあたり、経済的な格差や性別的な境界線がないというのがまずひとつ。インターネットにアクセスする環境さえあれば、誰でもイベントに参加できたんだから。Minecraftを持ってなかったとしたら難しいけどね。クラブや本当のフェスの現場に行くこととの一番大きな違いもそこにある。クラブには18歳、または21歳じゃないといけないところが多いからね。あとはクラブがある都市に住んでいないと、イベントに行けない人もいるよね。


あとは、インディペンデントなアーティストがイベントを企画したから、普通のイベントより音楽の幅が広かったことも特徴だよ。Minecraftの中で開催したイベントだからこそできる、普段のクラブやフェスでは聴けないセットが聴けた。ユーモアが伝わるようなジョークの効いたセットも多かったね。アーティストたちがプロモーターを喜ばせないといけないプレッシャーがなかった。


デジタルだからこその可能性を感じたし、LGBTやクイアの人も安心して参加できる、包括的なイベントだったと思う。


—Minecraft上ではどんな風にセットをプレイして、どのように参加したオーディエンスとコミュニケーションを行ったのですか?  


Foxsky:DJセットは全て事前に収録されたもので、その音源の上にコメントしたり、ジョークを言ったりしたよ。「みんな手を上げてくれ! 」とセット中に流れたら、ゲームに参加してたクラウドがジャンプしたり。ゲーム内にはもちろん参加者たちと話せるチャットがあったけど、ゲーム外のチャットもあった。イベント中に1000人以上がチャットで話してたんだ。だからゲームを持っていなくても、リアルタイムで参加してる人たちとチャットを介して、何が起きてるかを知ることができた。


—このイベントの企画を手がけるきっかけは何だったのでしょうか?  


Foxsky:初めてこのイベントが開催された時はもう何年も前だったけど、最初は仲間内のお遊びでやってたんだ。Maxの誕生日をMinecraftで祝う、みたいな。MaxがSNSでふざけて、大きなフェスにしようと大げさに言ってたら、当日多くの人が参加して、Twitter上で大きな話題になったんだよ。過去にもMinecraftでイベントをやってるところがあったけど、僕たちのように心をこめた企画はされてなかった。オンライン上で活動しているインディペンデントアーティストコミュニティーの視点から見ると、自分の音楽をショーケースとして表現できるプラットフォームにもなった。ちなみにこのイベントの売り上げはすべて寄付させてもらったよ。


—今回『The Trevor Project』に寄付した理由を教えていただけますか? 


Foxsky:『The Trevor Project』は、アメリカ国内のLGBTQのユースのサポートをしてる非営利団体だ。今回企画を手がけた人たちもLGBTQの人が多かったり、そういった友達が多かった。LGTBQを理由にいろんなことで苦労してきた人が多かったから、LGBTQをサポートする『The Trevor Project』に寄付することを決めるのに時間はかからなかったね。


—このイベントでの個人的なハイライトを教えていただけますか? 


Foxsky:才能のあるインディペンデントアーティストがたくさんいるけど、その才能を発揮する場、機会がないという人が多い。音楽アーティストやプロデューサーだけではなく、イラストレーターも参加してゲーム内で展示会を行ったりしてたよ。バーチャル世界でそのアーティストたちの絵を見ることができたんだ。30人以上のクリエイター、アーティストが集まって、こういった商業的ではない企画のイベントに参加してもらえたことはすごいことだよ。お金を儲けるためにイベントを開催してる人だけじゃないことも伝えることができたんじゃないかな。


アーティストとしてのハイライトは、Hudson Mohawke(※ハドソン・モホーク スコットランド出身のDJ/エレクトロ・ミュージック・プロデューサー。当時14歳でDMC英国大会ファイナリストとなり、フライング・ロータスをはじめLAを中心としたビート・アーティストと交流がある)の前にプレイできたことかな(笑)。


でも正直、何がハイライトだったか一つを選ぶことはできない。このイベントのおかげで、コミュニティーを感じたし、DJのセットを聴きながら、絵を見たり、本当に素晴らしい企画だった。オンラインのミュージックシーンだけではなく、現実の音楽シーン全体や音楽イベントに対してのムーブメントになったと思う。


Foxsky Twitter:https://twitter.com/MrFoxsky 





MaxとFoxsky、「FIRE FESTIVAL」の鍵を握る2人の言葉から、音楽への情熱、アーティストへの愛を感じ取ることができる。日本でもフジロック、サマソニといった主要フェス以外にも多くのフェスが大小問わず全国各地で行われるようになった。Foxskyの言うように「FIRE FESTIVAL」の成功は、バーチャル上だけでなく、現実においても今後のフェスの在り方に影響を与え、選択肢を提示するものではなかろうか。


また、世界中の注目を集めたこのバーチャルフェスが商業ベースではなく、音楽を通して社会に寄与、還元しているということを忘れてはならない。


Written by Tomohisa“Tomy”Mochizuki


Source:https://nesthq.com/fire-festival-minecraft

https://www.openpit.net/

https://www.thetrevorproject.org/


Photo:YouTube FIRE FESTIVAL 2019 TEASER NESTHQ



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