Para One × 80KIDZ 対談|佐渡島からブルガリアまで旅して作り上げた7年ぶりの作品『Machines of Loving Grace』

『攻殻機動隊』や『AKIRA』にも影響を受けたというサウンド制作について80KIDZがインタビュー。
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2021.05.26 09:00

毎月第4火曜日夜22時からblock.fmで配信中のラジオ番組「FM80」に、Daft Punk(ダフトパンク)やJustice(ジャスティス)などのオフィシャルリミックスを手掛けるパリ音楽シーンの重要プロデューサー、Para One(パラワン)がゲスト出演。


ルーツであるフレンチエレクトロやヒップホップから、最新アルバムではエクスペリメンタルに作風が変化した理由、嵐を越えて佐渡島まで渡り太鼓のサウンドを収録したエピソード、生楽器と電子音楽を融合させるためアプローチ、レーベル〈Animal63〉などについて80KIDZのALI&とJUNがインタビューした。


インタビューのアーカイブ視聴はこちらから。

▶︎FM80

https://block.fm/radios/48






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ALI&:最初に、久しぶりのリリースおめでとうございます!7年ほど前、WOMBで最後にあなたとお会いした時(覚えていないかもしれませんが共通の友人であるアランと一緒にいました)、映画の音楽を作ることや、しばらくリリースはしないかもしれないと話していたのを覚えています。今回またお会いできて嬉しいです。


まずは、前作『CLUB』から7年ぶりのアルバム『Machines of Loving Grace』をリリースするまでの心境の変化や、タイトルに込めたメッセージについて教えて下さい。


Para One:アランと一緒にWOMBで会ったのを覚えているよ!今回のアルバムは今までで一番制作に時間がかかった作品なんだ。世界各地のアーティストの音を使っていることが大きな特徴なんだけど、現地のアーティストの音を録るために旅をしていたんだよね。アジアでは日本とインドネシア、東ヨーロッパではブルガリアに行ったよ。


それだけでもかなり時間を要したんだけど、このアルバムの一部は映画でもあって、その映画を作るのにも時間がかかった。長いこと制作していたけど結果にはとても満足しているし、やっとリリースできて嬉しいよ。


『Machines of Loving Grace』というタイトルはアメリカの詩人Richard Brautigan(リチャード・ブローティガン)の詩にインスパイアされたんだ。彼も日本が大好きで、日本についてたくさん書いていた詩人だよ。


この詩はMan(人間)とMachine(機械)の間に存在する美しいハーモニーについて書かれた作品。僕は機械やコンピューターが大好きで、以前から機械には魂があり無生物ではないと感じていたから、アルバムのタイトルにこの詩を引用したんだ。



ALI&:もともとはフレンチエレクトロのイメージが強いのですが、本作はトランス、ミニマル、ダウンテンポ、デトロイトテクノ、アンビエントのようなエレクトロニックミュージックから、ガムラン、ブルガリア民謡などトライバルミュージックまでを横断する内容です。全体的にはエクスペリメンタルな印象を受けますが、本作でこのような音楽性に挑戦した理由を教えて下さい。


Para One:この作品の一部である映画に関係しているんだ。今僕が手掛けている作品の半分が映画だから、僕のルーツであるダンスやヒップホップのシーンから離れている。そのことを反映する作品を作りたかった。正直、ダンスシーンから離れることができて開放感を感じている。


音楽以外のものを作ったことによって、新しい僕が生まれたというよりも子供の頃の自分を追体験することができたと思う。例えば小さい頃にピアノで、弾き方はわからないけれどどうにかして自分で新しい音楽を考え出すような経験があるよね。同じように、この作品を通して新しい作品を生み出したかったんだ。


JUN:今もお話にありましたが、今回の作品は日本の佐渡島をはじめ、ブルガリアやインドネシアを旅して、その旅先の現地ミュージシャンをフィーチャーした音楽が収録されています。世界中の様々な音楽を制作に取り入れた理由と、どの様な方法で録音したのかを教えて下さい。


Para One:日本のポップカルチャーに影響を受けたことが大きいんだよね。フランスと日本はすごく影響しあっていて、僕も小さい頃からよく日本のアニメを観ていたし、東京の友達にもらった『AKIRA』のポスターも持っている。今回の作品には『GHOST IN THE SHELL /攻殻機動隊』や『AKIRA』に影響を受けた部分がある。映画の中で鳴っている音に魅了されて、どんなルーツを持つ音なのか実際に調べたんだ。


『AKIRA』に収録されている音楽はインドネシアのガムランに影響を受けていること、インドネシアと日本の音楽には繋がりがあることを知った。調べていくうちにどんどん興味が湧いてきて、70年代にその音を作っていたアーティストたちに会いに行ったんだ。ジャングルの奥にある村までたどり着かないと聴くことができないレアな音を探しに行くという旅が、今回の映画のストーリーでもある。


ブルガリアで音を録ったのも同じような経緯だよ。川井憲次はブルガリアン・ヴォイス(ブルガリアの民族音楽)にインスパイアされて『GHOST IN THE SHELL』のサウンドを作った。歌にもブルガリアン・ヴォイスの歌い手を起用したかったんだけど、実現しなかったんだ。その代わりに日本の民謡の歌い手が起用されて、その結果ブルガリアと日本の伝統的な音楽が見事に融合した。


そうやって別々のカルチャーが繋がってできるものが大好きで、僕もそういったものを作りたくて旅に出たんだ。子供の頃から世界各地のアーティストの音を収録することは一つの夢でもあったしね。どこにも出かけず収録したりサウンドパックを使うことが嫌で、実際にその音を奏でる人たちに会いに行って録音したかった。


才能あるミュージシャンたちに出会えて、彼らの素晴らしいストーリーを聞けて、収録の旅は本当に素晴らしい経験だったね。


佐渡島にはとても影響を受けて2回も訪れたよ。初めて行った時は太鼓バンドのKodoの人たちと会ったんだ。嵐の後、夜に到着したのを覚えてる。自分のプロジェクトについて、太鼓の音を録音するために佐渡島まで来たことを彼らに説明した。録音できる保証があって行ったわけではなくて、断わられる可能性もあった。でもグループのリーダーが「保証がないのに1万キロも移動してきたなんて!もちろんやるよ!」と言ってくれたんだ。






JUN:録音できる保証がないのに佐渡島まで移動したのはすごいですね。


Para One:運にかけてみるしかないこともあるよ。


ALI&:佐渡島に行く前から太鼓に興味を持っていたんですか?


Para One:以前から知っていたよ!Kodoはよく世界ツアーをしていて、パリに来た時にライブで観たんだ。太鼓のことはライブの前から知っていたけど、Kodoをライブで観るのは初めてで、すごく印象的なパフォーマンスだった。自分でもこういう音楽を収録したいと思っていたら、「彼らの音楽がそんなに好きなら彼らにお願いしてみれば?」と友達に提案されたんだ。自分でも流石に無理だろうと思っていたんだけど、まさか実現するとはね!


ALI&:佐渡島は日本に住んでいてもあまり訪れない場所なので、そこに行くこともすごいですよね。


Para One:Kodoは40年くらい前に佐渡島に移住したみたい。彼らにとって佐渡島に引っ越す大切な意味があったようだけど、彼らの音を収録するという目的がなければ僕も行ってないかも。でも実際に行ってとても素敵な場所だと分かったし、新潟はお米もお酒も美味しいからね。


ALI& : ちなみに日本で他に好きな場所はありますか?


Para One:日本にはたくさんの思い出があるよ!2014年から毎年1、2回は日本に遊びに行っているんだ。休暇、誕生日、ミュージックビデオの撮影、音楽のセッション、DJやツアーでもまわった。京都にも遊びに行くし、東京なら友達のTomoyoがオーナーをしてるゴールデン街の「La Jetee」というバーで1日を終えるんだ。Chris Markerが監督した映画にインスパイアされた名前の、とても小さなバー。東京にいてもそこに行くとアットホームな気持ちになる。


今、Zoom越しに見えるblock.fmのスタジオを見ると日本がとても恋しくなるよ。今は何よりも日本で一緒に遊びたいけど、残念ながらフランスで立ち往生だ。





JUN:これまでに「Institubes」「Ed Banger」、ご自身も運営に関わっていた「Marble」といったフレンチエレクトロを代表するレーベルからリリースしてきたと思いますが、今回のアルバムを「Animal63」からリリースしたのはどういう理由からですか?


Para One:マネージャーでアートディレクターでもあるManu Barronが様々なプロジェクトを自由にリリースできるように、このレーベル「Animal63」を立ち上げた。僕は一つの音楽シーンに縛られたくなかったから、そのコンセプトが僕のやりたいことと合ってたんだ。


今までリリースしてきたレーベルも大好きだし、中の人たちは親友でもあるけど、固定のサウンドのイメージが強い。でも僕はもう少し自由にアートに携わりたくて「Animal63」ならそれが可能だと思った。7年もの時間、Manu Barronと近くで仕事をしていたおかげで彼に励まされることも多かった。家族のような人と一緒に仕事をするのが大切なんだよ。


ALI&: 今後もしダンスミュージック作品を作るとしても「Animal63」でリリースする予定ですか?


Para One:「Animal63」から出すと思うよ。これからもダンスミュージックやヒップホップをリリースすると思うけど、ここが僕の新しいホームだと感じるんだ。アートに関して自由だし、今後成長して行けるところだと思っている。


ALI&: そう言えば先月Mydにインタビューをしましたが、Para Oneのことを“先生”と呼んでいましたよ!


Para One:最新のアルバムから、すごく楽しんでるのが伝わるよね。世界中が大変なことになっているから、そういう楽しさが今とても必要だと思うんだ。彼はいつも明るいエネルギーを持っている。彼に“先生“と言ってもらえるなんて嬉しいし、もう彼に先生は必要ないと思うよ!


JUN:この作品は、特にどんな音楽を探している人におすすめでしょうか?


Para One:“内なる少年”をなくしていない人。ありきたりと思われるかもしれないけど、純粋で素朴な人。外見ばかりに気を配るのではなく、夢があって、音楽を聴いて自由に想像できる人におすすめするよ。


ALI&:つまり、あなた自身の初期衝動を今回の作品にぶつけているという意味ですよね?


Para One:その通り。子供の頃から作りたかった音楽で、ファンタジーのような作品でもある。子供の頃はどんな音楽になるか、どこまでに自由に制作できるかを想像していた。そして、人生で初めて作りたいと思った音楽を今、大人になって作ることができたんだ。



ALI&:何度か繰り返して聴かせてもらいましたが、日本にいるのに日本の風景が浮かんでくるような、心安らぐ作品でした。


Para One:さっきも話したけど『GHOST IN THE SHELL』とブルガリア音楽との繋がりは、今回のアルバムに重要な要素だった。インスパイアされたミュージシャンに敬意を表したかった。様々なシンセサイザーの音も聴こえるはずだし、YMOの坂本龍一にインスパイアされたエレクトロニックミュージックの部分もあるんだ。そのコネクションが聴こえると言ってもらえてすごく嬉しいよ。


JUN : 先程「機械にも魂がある」というお話がありましたが、今回のアルバム全体を通して生楽器と電子楽器の音がうまく共存していると感じました。使用した楽器で印象に残っているものがあれば教えてください。


Para One:ありがとう!生楽器と電子楽器を混ぜるのはとても難しいんだよね。その2つをどう融合させるかが現代音楽の一つの課題でもあるから、その点については少し不安だったんだ。


数年前にCéline Sciamma(セリーヌ・シアマ)の映画『Girlhood』の音楽を制作している時に、彼女に生楽器を使うことを提案された。それがきっかけで生楽器と電子音楽の融合について考えるようになって、ライブアーティストの音を収録し始めたんだよね。できるだけ型破りな方法で収録したくて、パフォーマンスではなく音に集中するようにした。どういう方法で生楽器を収録するのがいいのか、その経験から見つけたと思う。


今までマリンバやゴングといった楽器の音を色々と収集してきた。ギターを収録するなら、クラシカルに教育を受けた弾き方よりSteve Reich(スティーヴ・ライヒ)が弾くようなスタイルを使う。一般的な方法ではなく、自分らしい収録のプロセスを意識しているよ。


JUN:『Girlhood』のような過去に手掛けた映画のサウンドトラックは、どういったアプローチで制作しましたか?


Para One:Céline Sciammaは大親友でもあり、20年前に一緒に映画について学んだ仲間だ。僕は音楽の教育を受けたアーティストではなくて不安を抱えていたけど、彼女のおかげで映画音楽を制作する自信がついた。2007年くらいから色んなアイデアを一緒に考えてきて、彼女にはいつも励まされていたよ。


2007年に彼女が監督した『Naissance des Pieuvres(水の中のつぼみ)』の音楽は、自分が持っているProphet-5、Juno、Minimoog、Tape Echoのようなクラシックなシンセサイザーのみを使って制作したとてもヴィンテージなサウンドトラックだ。『Naissance des Pieuvres』も『Girlhood』も10代の子のストーリーだけど、『Girlhood』では音を改めて作ろうと思った。『Naissance des Pieuvres』のように「水の音」ではなく、「空」や「空気」、郊外にあるブルータリズム建築を思い出すような冷たい音を作りたかった。


ハーモニーに関してはそれほどアイデアがなかったから、自分の強みでもある新しい音を探して、その音に知っているハーモニーを混ぜた。そのために弦楽器やギターを録音して、それが僕の制作スタイルだと改めて気づいたよ。



ALI&:今回のアルバムはあなたが監督した今年9月公開の映画『Sanity, Madness & the Family』とも強く関係する作品とのことですが、この2つを関連づけた理由は?日本でも映画は公開されるのでしょうか?


Para One:日本で上映できたらいいね!アルバム、映画、ライブショーの3つの要素を持っていて、全てが繋がっている作品なんだ。その3つを総合して『Spectrum』と呼んでいて、文字通り“スペクトラム(連続体)”を表す作品だよ。3つの要素は繋がっているけど、それぞれを単体で楽しむこともできる。


アルバムは映画の音楽でもあり、映画はどのようにアルバムの音楽を作ったかというストーリー。それぞれを別のタイミングでリリースすることになったのは、コロナで映画を上映することができないという理由もあるけど、3つを別々の独立した作品として受け取って欲しいという思いもある。だからこそアルバム、映画、ライブショーを分けて発表することが大切だったんだ。


ALI&:最後に、現在行っている活動について教えて下さい。


Para One:コロナの影響でみんなと同様DJの活動がストップしているけど、今は4つの映画の音楽を手掛けていて、あとは今回の作品のライブショーの準備もしている。ロックダウン中にライブショーの準備をするのは少しクレイジーだけど、今やらなきゃいけないんだ。あとは適当に音楽を作ってるよ。たくさん作ったから、いつか整理してリリースしたい。


ALI&:あなたのライブ配信を観たいと思っている日本のファンも多いと思います。


Para One:アルバムのリリースタイミングに合わせてInstagramライブでもやろうと思っているよ。オリジナルでできるような方法が見つかればいいな。


ALI&:また日本でライブやDJでお会いできるのを楽しみにしています!お体にも気をつけてください。


Para One:ありがとう!君たちもね。東京に戻れる日が待ち遠しい。今日のインタビューは1時間だけblock.fmのスタジオにいるような雰囲気を感じて、すごくハッピーだよ。いつか戻ってライブパフォーマンスをしたいな!


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【アルバム情報】




『Machines of Loving Grace』- Para One


配信:https://paraone.bfan.link/machinesoflovinggrace/

グッズ:https://wrwtfww.com/album/spectre-machines-of-loving-grace/


【Para One】

マルチタレントJean-Baptiste de LaubierことPara One。ヒップホップのプロデューサーとしてキャリアをスタートし、自身のレーベル「Marble」よりエレクトロニックミュージックもリリースし始めた。そこからソロアルバム『Epiphanie』、『Passion』、と『Club』をリリース。コンポーザーとしても活動し、Birdy Nam NamやMeryem Aboulouafaのデビューまで制作を手がけている。映画業界にも注目されていて、映画のオリジナルサウンドトラックも手がけている。その中の一つの作品は、Cannes Films Festival 2019で「Best Scenario」を受賞したフランスの監督のCeline Sciammaの作品。自身が監督とプロデュースをしたさまざまなショートムービーも担当。ニューアルバム『Machines of Loving Grace』は、初の映画「Sanity, Madness and The Family」のサウンドトラックとなる。この作品は、 Para Oneが数年間旅に出たことがきっかけで、日本、インドネシア、ブルガリアとフランスのアーティストとコラボレーションが実現した。


【MIX BLOCK】

Para Oneによるエクスクルーシブミックスもチェック!

https://block.fm/radios/912


【番組情報】

FM80

EVERY 4TH TUESDAY 22:00 - 23:00

80KIDZが送る音楽、カルチャー、ファッションなど彼らの最新の旬を紹介する番組。

▶https://block.fm/radios/48



Text:Amy

Additional contributions:Jun Fukunaga

Photos:Ilan Rosenblatt




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