【インタビュー】サブベースジェネレーター『DeeSubBass』開発者が語る、超低音を生み出す仕組みと開発の背景

DeeMaxでおなじみDOTEC-AUDIOからリリースされた『DeeSubBass』。基本的な使い方から超低音を生み出す仕組まで語ってもらった。
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2019.11.11 06:00

DeeMaxをはじめ簡単な操作で強力な効果を生むエフェクトを数多くリリースするプラグインブランドDOTEC-AUDIOから、新製品『DeeSubBass』がリリースされた。シンプルな操作で使用できるサブベースジェネレーターで、原音に超低音を簡単に付加することができる。パラメーターはシンプルながら、サブベースジェネレーターとしては珍しい、Keyスイッチを実装しているなど、今回も同社ならではのこだわりが感じられる。


今回、日本では珍しいプラグイン専門ブランドとして成長を続ける同社にインタビュー。製品の使用方法や開発の意図、他製品との違いなどについて話を聞いた。



ーまずは簡単な自己紹介をお願いします。


重虎:DOTEC-AUDIOのサウンドプロデュースを行っているフランク重虎です。クラブミュージック出身ですがポップスや劇伴の作家、ミキシングエンジニアなど様々な角度から音楽と接してきました。


(DOTEC-AUDIOフランク重虎さん)


飯島:DOTEC-AUDIOの飯島進仁です。株式会社ふむふむソフトというソフトウェア開発・販売の代表取締役でありエンジニアです。DOTEC-AUDIOではUI等、音響以外の部分の開発や、販売システムの開発、運営を行っております。


(DOTEC-AUDIO飯島さん)


ーまずは、今回リリースされた『DeeSubBass』の各機能・効果的な使い方を簡単に教えて下さい。


重虎:サブベースと呼ばれる超低域を追加する機能を持ったプラグインです。

先に各部の説明ですが、

KEYでスケールの主キー(Cメジャー/マイナーならC)を選択します。

LEVELでサブベースの音量、DRIVEで倍音の量を調整します。

HPFは原音にかけるハイパスフィルターです。




後で詳しく説明しますが、KEYは固定でも良いのですが、VSTとAAXではMIDIノートで操作することができますので、ベースラインと別のサブベースも構築できます。

DRIVEでサブベースにオーバードライブを掛けるとチューブドライブのような歪みが加わり音色の幅が広がります。また、原音との帯域かぶりが出る場合もHPFで解決できます。


ー開発の経緯は?期間はどのぐらいかかったのでしょうか。


重虎:楽曲制作でサブベースをシンセのサイン波で作るのですが、超低域となるとWAVEテーブルだと綺麗に出なかったり、エンベロープもマッチさせるためのオートメーションが面倒であったり、たかだか単音のベースラインとはいえ本来のベースより作業が多いので、同じ作業をする人が楽になるように開発しました。常に思っていたことだったので、かなり昔から作ろうとは思っていました。


自分が担当するDSPに関しては設計とC++でのコーディングは合わせて2日ぐらいで完了して、あとは1か月ほど実践で使い倒しながら音楽的なチューニングをしました。グラフィックは部品レイアウトをイラストレーターの福田興業さんにお渡しして平行で描いていただいて、飯島さんのまとめのコーディングがあり、全体で一か月強ぐらいですね。


ーサブハーモニックの生成をするプラグインやWaves Maxx bass, Rbassのような低音を強調するプラグインはいくつかありますが、違いを教えてください。


重虎:まずサブハーモニックを生成する物と低音を感じやすくするプラグインは目的が別のため、後者にあたるMaxx bass, Rbassとは大きく違います。これらの製品は小さいスピーカーなどでも再生できる範囲にベース域からの倍音を

生成して、低音を感じやすくするプラグインです。ベースエキサイターとも呼ばれます。


一方でDeeSubBassがカテゴライズされるサブハーモニックを生成する物は、原音に無いような超低域を加え、ウーファーなど低音の鳴る環境でよりパワフルな音にするためのプラグインです。WavesさんでしたらSubmarine,LoAirなどです。


さらにサブハーモニックの生成方法が大きく分けて2種類あり、原音のピッチダウンによって生成するオクターバー方式と、サイン波を足すオシレーター方式があり、それぞれメリットデメリットがあります。


まずオクターバー方式のメリットは原音の1,2オクターブで下げたユニゾンとなるためキーを意識する必要がありません。デメリットはピッチチェンジのため生成した音に音量のムラができやすいこと。また、原音が上がればサブベースの域を超えてしまう事もあります。

オシレーター式のメリットはシンセのような仕組みであるため、綺麗な波形を生成する事ができ、サブベースラインも自由に操作できます。デメリットは自由ゆえにキーを意識する必要があることですね。


DeeSubBassはオシレーター方式になり、この方式の多くは周波数指定のため音楽的な知識に加えて音階と周波数の対応表が必要だったり、再生環境を信じて耳で調整する物でした。これをKEYというピアノボタンに置き換えることにより音楽的に使いやすくしているのも特徴です。

音の心臓部であるオシレーターも64bit倍精度でリアルタイム演算させており、WAVEサンプルを伸縮させる物と比べて格段の音質差があります。さらにMIDIトラックでKEYを動かせることも喜ばれています。





ーKeyのスイッチはノンダイアトニックコードなど、スケール外のサウンドに対しても有効なのでしょうか。


重虎:結果からお答えしますと、基本的に1度と完全5度で拾うため変に動くことはありません。そのためメジャーマイナーなども省くことができました。これだけだと凄くいい加減な設計に聞こえますが、音の綺麗なオシレーター方式かつピッチ検出で完全なユニゾンを狙うタイプの製品を使うと、音色により残念ながら誤検出もあり、結果としてちょくちょく音痴になったりコツが多く必要な物が出来あがります。原音をどんな音にするかは作者の自由ですので、そこは追いきれません。


一方で前述の周波数指定の製品ではサブハーモニックの音楽的な目的上、固定でも成り立っています。その両方の前例を踏まえて、音楽的に失敗なく、かつ表情もあるサブベースを追加する設計にしました。そして動きを与えたい音楽のためにMIDI入力を設けています。

これによりサブベース用シンセを使った時と同じように完璧なユニゾンはもちろん、別のハーモニーを作る事も自在な上、エンベロープやタイミングは原音を追従するためにMIDIデータ的もベタ打ちでOKとなり非常に楽です。


ー付加する低音は60Hz以下とのことですが、実際にサブベースが生成されるトリガーとなる音は決まっているのでしょうか。(たとえば何Hz以下のサウンドが何dB以上なったら?など)


重虎:何Hz以下と絶壁で切るとミストリガーも生まれますので徐々にメインの帯域に向けてトリガーを強く叩くようになってます。通常はベースなどの音域に的をしぼりますが、それだけだと機械的な鳴り方をしますので音楽的な表情が出る仕掛けも入れてます。


ーSFアニメ風デザインもいいですね!モチーフになったアニメがあるのでしょうか?


重虎:ありがとうございます、これは今回のUIデザインをお願いした福田興業さんのおかげです。通称「ワカメ影」と呼ばれる効果に関してのオーダーでは「メガゾーン23 Part.2」などを資料に行いました。


飯島:私がイメージしていたのは80年代後半のロボットアニメの「マシンロボ クロノスの大逆襲」「機甲戦記ドラグナー」などですが、福田さんの方でもさらに「ガンダム0083」なども参考にして頂いたようです。無茶なオーダーににもかかわらず素晴らしいクオリティであげて頂いて本当に感謝しております。




ーお二人ともアニメがお好きなんですね。今好きなものはありますか?


重虎:今だと原作も読んでますが「ノー・ガンズ・ライフ」で、僕はサイバーパンク全般が好きです。中でもハードな物が好きですね。OVA含めたら「銃夢」が好きです。


飯島:私は昔からロボットアニメが好きなので、今ですと「新幹線変形ロボ シンカリオン」がイチオシですね!


ー重虎さんと飯島さんはどのように役割分担されているのでしょうか?ケンカになったりしませんか?


飯島:分担としましては「製品の企画・発案」「デザインコンセプト」「音響部分の実装」はもう完全に重虎さんです。私(ふむふむソフト)の分担は簡単に言えば「それ以外」になるのですが、要するに「重虎さんのアイディアと出音をプラグインの形にする」というのがこちらの仕事になりますので、主張がぶつかったりケンカになったりすることはまずないですね。


アイディア、音響に関しては完全に重虎さんを信頼しておりますし、UIに関してはアイディアレベルで相談したり提案しあったりしますが、どちらからでも良いアイディアが出れば「あ!それで!」で決まっちゃいますので、そこの話はめちゃくちゃ早いと思います(笑)。


重虎:そうですね。運営方法で意見がぶつかる事はありますが、開発に関しましては完全に担当範囲が別れてますので揉めることは無いですね。


ー今回もシンプルな操作で的確な成果が出ますね。バスドラやベース以外にも効果的な使い方があれば教えてください。


重虎:実は2mixでの効果も大きいです。グッと安定しますので味付け程度に加えてみてください。


ー60Hz以下の低音となると小さめのスピーカーのDAW環境では聴きづらい部分ですが、効果的にプラグインを使うためのアドバイスはありますか?


重虎:ウーファーを鳴らせない環境でサブベースを調整するときは、ヘッドホンを使うのがお薦めです。また、前述と少し被りますが、サブハーモニックの製品はウーファーでの迫力アップがメインのため、音の軽いスピーカーがターゲットの場合はベースエキサイターの製品をお薦めします。


ただ、DeeSubBassはDriveで中音域へ倍音を足せるほか、最近は1万円もしない安価なPCスピーカーでもかなり低音が出ますので、普通に使っても十分わかります。


一番大事な事は初めに「サブベースってどんな音だろう?」という事を知っていると耳のターゲットが定まり上手く調整できますので、音色ライブラリなどでサブベースという名前のついてる音を低く鳴らして聴いてみてください。

決してベースのような派手な音ではなく、文字にすると「ン〜」という感じですが、これが一緒に鳴るとあらゆるジャンルで安定感が段違いですよ。





ー開発していて難しかった部分や時間のかかった部分、悩んで病んだことなどはありましたか?


重虎:簡潔にわかるレイアウトにするため、どのパラメータを操作パネルに置くかという事は毎製品ごとに一番悩む部分です。何でもオートマチックの方が仕組みが複雑になるのと同じで、ユーザーでのマニュアル操作を減らすと代わりに機械が行う部分が複雑になります。かといって、完全にオートにすると作品に感性を加えられなくなります。その判別がとても難しく、曲作りを想定して入念に考えます。


今回は以前から構想があったため、必要なものは大体わかってました。ただ完成しても実際に曲作りでチューニングしてる間に変更することも多々あり、プロトタイプが完成してからのテストが一番時間かかりますね。


ー日本にはプラグインの専門メーカーが少ないですが、この状況についてどのように考えていますか?


重虎:A.O.Mさんが有名ですが、専門メーカーはとても少ないと思います。それでも音楽に使う道具ということで特に国別のメーカー数を気にした事はありません。KORGさんともKORG Gadgetでコラボレーションを行っていますが、電子楽器メーカーは大手が多い国ですからね。


飯島:もともと「プラグインを作って販売しましょう!」というアイディア自体が重虎さんが弊社に持ってきてくれたものなんです。最初は「まあ確かに技術的には作れそうだしやってみますか」くらいのノリだったのですが、結果的にこのような形でかれこれ4年くらい続いておりますので、それは本当にありがたいことだと思います。また重虎さんだけ、弊社だけでもプラグイン開発や販売は不可能でしたので、そういう意味でも本当に運のいい取り合わせだったと思います。


ーDotec-Audioの今後の展開や野望について教えてください。


重虎:皆さまに喜んで頂ける開拓分野が沢山ありまして、まずはメーカーの資金力を増やしたいです。率直ですけど。そのために良い製品を作って行きますので、デモを試して頂いて気に入ったら口コミをして頂けると凄くありがたく、売り上げに比例して開発ペースも上がります。宣伝って開発より予算かかることありますからね(汗)。あとは楽器や自動車メーカーがファンを持つように、愛されるメーカーになりたいです。


飯島:重虎さんからはストックしているアイディアがどんどん増え続けてむしろ開発するのが追い付かない状況ですので、これからも皆さんに喜んでそして驚いていただけるような製品を作り続けたいと思います。もちろんまだまだ知名度も低いので、今後日本だけでなく世界的にも認知を広げていけたらいいな、と考えています。


重虎:既存のアップデート、開発待ち、発売待ちの製品が山ほどありますので、楽しみにしてください!


飯島:今回のDeeSubBassはもちろんですが、それ以外の製品もそれぞれ使いやすく面白いプラグインが揃っておりますので、興味を持っていただけましたら是非DOTEC-AUDIOのサイトをご覧下さい!また、DOTEC-AUDIO製品はデモは無料でファイルをダウンロードできますので、気になったプラグインがございましたら是非お試しください!



少し使用してみた印象としては、クリアなサブベースが出力されるので原音がもやっとせず、自宅の小さめなスピーカーで、ほどほどの音量でも効果がはっきりと感じられた。この辺りはインタビュー中に語られていた発音方式の違いによるところではないかと思われる。大音量での再生時にはさらにはっきりとした違いがでて、特にキックドラムは簡単に迫力あるサウンドにすることができた。トラック制作をしていて低域に物足りなさを感じていた方は是非デモ版をお試しいただきたい。


DeeSubBass 商品ページはこちら



written by Yui Tamura



photo:

https://dotec-audio.com/deesubbass_jp.html





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