Childish Gambino「This is America」が注目される理由 歌詞サイト「Genius」で史上最速100万PVを獲得

衝撃のMVと歌詞の内容に対して多くの考察が行われるなど注目曲になっている「This is America」が、歌詞解説サイトでも大ヒットする異例の事態になっている。
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2018.05.14 01:30

俳優ドナルド・グローヴァーとしても活躍するChildish Gambinoが今月リリースした新曲「This is America」が、各方面で話題になり大ヒットしている。 


「This is America」が注目を集める理由は?


「This is America」は、MVが公開されるや否や、その衝撃の映像と歌詞に注目が集まり、ネット上で大反響を獲得。特にMVでは、最初のトロピカルなイントロで始まる陽気なムードがすぐさま一転し、麻袋を被らされた人物がChildish Gambinoに射殺されるシーンや、途中で登場するゴスペル隊をライフルで惨殺するシーンなどが過激な映像が目を引く。  


そのような描写が盛り込まれた「This is America」では、Childish Gambinoがアメリカで暮らす有色人種、アフリカ系アメリカ人、つまり黒人目線から、現在のアメリカに蔓延する黒人差別によるヘイトクライム、そこに端をなす銃を使った殺人事件などを訴え、MVを見る者にリアルなアメリカの実情を伝える内容になっている。




様々な考察や意見がネット上に登場  


そのため、同曲はリリース直後から評論家やファンの間で考察が行われ、現在は様々な指摘や意見が溢れているといった状況だ。


同曲のMVで描かれた描写のうち、最初の銃殺は、黒人に対する暴力や形式的な人種差別の撤廃を訴える運動「Black Lives Matter」のきっかけになった黒人少年殺害事件、ゴスペル隊惨殺は、アメリカのサウスカロライナ州チャールストンの教会で起きた白人青年による殺人事件などを引用しているといった考察や意見がある。


歌詞解説サイトGeniusの解説ページが大人気に  


そういった細かいトリビアとも言えるこの曲に対する解説は、歌詞解説サイトのGeniusのコントリビューターたちによって細かに書き込まれ、この曲が何を表現し、訴えようとしているのかが理解しやすくなっている。そのため、多くの音楽ファンはもちろんのこと、このMVに衝撃を受けたという人々がこぞってGeniusの該当ページを訪問。その結果、「This is America」は、サイトに登場して以来、45時間で100万ページビュー(PV)を記録し、現時点ではGenius史上最速で100万PVを記録した曲の座を獲得した。



またGeniusによると同サイトではこれまで高PVを記録してきた曲は、例えば、740万PVを記録したRihanna「Work」や、1210万PVを記録したEminem「Rap God」といった曲には曲中歌詞が聴こえにくく、理解しづらいパートがあるため、閲覧回数が多かったが、「This is America」にはそういった要素はない。  


さらに他の閲覧人気曲のDrake「Back to Back」はディス曲、Big Sean「Control feat. Kendrick Lamar and Jay Electronica」は、リリース当時、Kendrick Lamarのバースが物議を醸すものとして注目されたため、その背景を知るために閲覧される回数が多かったようだが、そういった要素も「This is America」には見当たらない。しかし、リリースから2、3日が経過した段階ですでに200万PVを突破するほどの異例のヒットになっているそうだ。




解説ページでは印象的なダンスにも触れられている


そのGeniusのサイト上で興味深い解説は、最初の銃殺を起こす前にChildish Gambinoが奇妙な動きのダンスを披露するのだが、それは最近アメリカの若者の間でトレンドになっているBlocBoy JBの「Shoot」ダンスや「Roy Purdy dance」だとする解説がある。



Photo: Genius



その「Roy Purdy dance」とは、最近ヒットしたFamous Dexの「Japan」のムーブをスケーターのRoy Purdyが真似してSNS上に公開したことで有名になったもの。またMVではChildish Gambinoのほかにも若い黒人学生たちが彼と一緒に同じようにトレンドであるダンスを披露するシーンが見受けられる。



ダンスについては、そのほかにアフリカ発のバイラルヒットダンス「Gwara Gwara」だとする指摘もあったりするのだが、このMVでChildish Gambinoが訴えようとしていることは、若者がネットを通じてトレンド化しているダンスに夢中になっている一方で、黒人が不当な暴力の対象になっていることには関心を持つことがないという現状だという指摘もネット上では数多い。  



Photo: Childish Gambino YouTube


さらにChildish Gambinoがダンスする理由は、このMVを見る人が、ダンスの後ろで起こる残虐な描写から注意をそらすことを目的にしているというような指摘もある。




黒人差別、銃規制など社会問題を描写 


また歌詞解説ページでは歌詞に該当するMVでのChildish Gambinoの銃を構える動きを19世紀に白人のコメディアンが演じた黒人キャラクターのJim Crowを模したものだという指摘や、ある歌詞の部分はiPhoneを拳銃だと勘違いされ射殺された黒人青年Stephon Clarkの事件の引用だという指摘など、日本に住んでいるとなかなか理解することが難しいアメリカの黒人社会に関する、この曲の背景にある物事について理解できるため、非常に興味深い。それだけに多くの人々がこのページを閲覧する理由がよくわかる。




なお、MVではそのほかに描写される自動車が全て、最新式のものでなく、あえて古い90年代の自動車である点をアメリカの大量消費的物質主義の成れの果てであり、その責任を有色人種、特に黒人に押し付けたことことを表す構図だという意見もなる。そして、舞台となる工場内が黒人たちにとっては、入り込んでしまうと抜け出すことができない場所として描かれていること、さらにはラストで何者かから追われ、必死の形相を見せるChildish Gambinoの姿は、昨年アメリカで話題になった黒人青年が主人公の映画『ゲット・アウト』を彷彿とさせるというものなど、とにかくこのMVに対しては様々な指摘や意見がある。




自分にとっては、おかしいはずなのにある人にとっては認識されてすらいない現実  


最近では黒人で社会的にも大きな影響力を持つ、Kanye Westが有色人種に対して、差別的な政策を行なっているトランプ大統領支持を表明したり、黒人奴隷制について物議を醸す発言をしたこともアメリカ社会の黒人コミュニティーを騒然とさせた。  


またヒップホップでは非黒人の若いSoundCloudラッパーたちがその人気を、InstagramやSoundCloud、YouTubeなどネットを介してまさに伝染病的に広げており、そのファンである若者たちはネットから得るそういったトレンドに関する情報には聡いものの、実際に起きているはずの有色人種たちに対する差別や暴力には気づかない。



このMVでChildish Gambinoは、2つの相反する現状をネットを介して広めていくことで、自分にとっては、おかしいはずなのにある人にとっては認識すらされていないということが実際に存在する現実社会の姿を告発しようとしたのではないか? というのが個人的な感想だ。  


もちろん、人の数だけ意見があるということの代名詞のようなMVだけに、これを見た結果の受け取りは様々だろう。しかし、Childish Gambinoが「これがアメリカだ」と訴えるように歌う「This is America」は、その背景に関心を持ち、理解しようとすればするほど、曲が掲げたテーマや内容にのめり込める類の曲だ。


 すでにYouTubeでは3400万回以上も再生され、Geniusでもこのまま順調に閲覧数が伸びると同サイトの「All-Time Top Songs chart」の上位にも食い込むことになると予想されている。 


本稿を読んで改めて「This is America」が気になった人は、この機会に是非Geniusの解説ページをチェックしてみては?


written by Jun Fukunaga


source: 

https://genius.com/a/childish-gambino-s-this-is-america-becomes-the-fastest-song-to-one-million-pageviews-in-genius-history

https://genius.com/14499446

http://www.mtv.com/news/1712321/big-sean-kendrick-lamar-control-reaction/


photo: 

Childish Gambino YouTube




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